幻想の境界線   作:悪魔野郎

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ネムワールド

 

『マスターマスター』

 

「……威厳もクソもなくなったよ。この子」

 

 ネムは困っていた。確かに確定事項と定め簡単に済ませる事ができると思いながらも記念すべき最初の一歩として、かの魔王(宿敵)を己に封印する事をそれなりに張り切っていたのだ。

 

 ……それなのに

 

『マスター』

「分かったから! おんぶしてあげるから」

 

 ──幼女の姿をした魔王(トットムジカ)の世話を焼いていた。

 

 それは数時間前に遡る。

 エレジアの城に忍び込み、例の楽譜を手に入れたの所までは良かった。

 いざ、己の悪魔の実の真骨頂を発揮するとき……実際に手段自体は間違っていなかった。

 

 超人系の悪魔の実「ネムネムの実」は悪魔の実の中でも地雷級の代物だ。

 何故ならば、食べた瞬間に『覚醒』しないと永遠の眠りにつくからだ。例え海に沈められようが、体は生き続け永遠の夢を見る。体は老いず、体は動かず、生命を極限に昇華してやっと死ぬ。

 

 食べた瞬間にカチリと嵌った感覚は『覚醒』だったらしい。私は己に世界を作り出した。ウタのウタウタの実に近い……いや、恐らくはこちらこそがオリジナルの世界。名付けるのならば「ネムワールド」

 私の心象を表すこのセカイは、一言で表すのならば()()()。夜も昼も朝も全てが混ざりあったような空。地面には私が見た風景、思い出を切り取ったかのような写真が無数に広がっていた。

 そこには何でもあって、何もない。思いでしか振り返ることしかできず、このネムワールドが現実に何かしら及ぼす事もない。

 そんな事実を理解しながらも、不思議と不快感はなかった。

 

 もし──

 

「この世界が埋めきれないほどの思い出に飲み込まれたら、どうなるのだろう」

 

 そんなくだらない事を思ったことだ。

 

 そして、封印も思いついた。恐らく、この世界が私にとって最終地点。私が死んでも永遠にあり続ける世界。ならば、夢からしか干渉できない魔王も封印できるのではないのか? 

 

 それは正しかった。魔王は喚き悲しみネムを乗っ取ろうとしたが世界の主たるネムには勝てなかった。

 ウタワールドとはっきり違うのは誰でも入れるか否かだろう。故にネムが持つ制約はウタよりも限りなく少なく、強い権限を有する。

 忘れ去られたものしか辿り着けないはずのネムワールドにおいて、歌の魔王は無力だった。

 

 だが、ふとネムは魔王に情を持ってしまった。

 ネムはネムワールドに入った全てを知覚する。例えそれが異物だろうと受け入れ理解してしまう。

 決して『歌の魔王』の破滅の歌に心を奪われたのではない。本質的に理解してしまうのだ。そうであれとされた『歌の魔王』そのものへの哀れみ。

 だから、彼女は魔王に好きな姿を与えた。最初はネムを殺すための姿を取ったが次第に人の姿をとり始めた。

 

 ネムは聞いた。『歌の魔王』ではない『楽譜の歌』を。ネムは話した。自身の在り方を。歌は泣いた。喜んだ。そして自身を恨んだ。

 

 ネムは魔王の力だけを完全に封印した。そもそも現実と切り離されたこの世界に居るだけで、魔王は真の力を得られなかった。あるとすれば、それは楽譜にある負の感情のみ。

 ネムはそれを上回る正の感情を与えた。

 かつて、ネムが()()()()()()()()()それを。

 

 ──余談だが、ネムは思考を2つ持つ。

 

 主に思考する『ネム』が不要と考えて捨てた感情の集合体『悪夢(ナイトメア)』。それぞれ違った視点から見て最終的に『ネム』が自身の行動を決める。

 さて、幼き精神から青年に近づく上で失う感情は数多くある。ネムはそれを『悪夢(ナイトメア)』に押し付けて、できるだけ大人になろうとした過去がある。

 

 そんなことをした子供の感情を魔王に与えればどうなるだろうか? 

 

『マスター』

「……どうしてこうなった」

 

 ……結論、甘えん坊になる。ネムは過去の己を深く……ふかーっく後悔した。

 




プロフィール

名前:ムジカ(トットムジカ)
・容姿
ネムと同じく綺麗な黒髪だがボーイッシュな髪型で癖毛が強い。ネムの真似をしてスーツを着ており。それにトットムジカ特有のマントと黒いハットを被っている
・詳細
かの因縁の魔王の幼女化。トットムジカとしての負の感情とネムの幼き頃の正の感情を合わせ持っているので基本的に無害になった。

分岐点

  • 計画遂行編
  • 海軍編
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