絵を描くのが好きなウマ娘の非日常   作:アベノハルカズ

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小説を書くのは初めてなので、温かい目で見ていただければ幸いです。


マジですか!?な始まり

走ることより、絵を描くことの方が好きだった。

 

走ることも好きなんだけど、まっさらなキャンバスに自分の世界を好きなように広げていくのは何よりも楽しいと思う。

 

走りの完成度を高めるよりも、自分の好きな絵を描きたい欲の方が強くてトレセンへ入学しようとは思わず普通の学校に進学した。

 

毎日学校が終われば一目散に帰宅し、お絵描き着に着替えて相棒とも呼べる画材たちをお気に入りのリュックサックに詰め込んで外に飛び出す。町の至る所にあるお気に入りのお絵描きスポットで夕ご飯に間に合うであろう時間まで時間いっぱい描くのだ。

 

ランニングシューズを履き今日もいつものように家を出る。今日は風景画が描きたい気分だったので、お気に入りスポットの一つである河川敷に行くことにした。

 

あの河川敷は景色は良いのだがそこそこ人通りがあって描いていると覗きこんでくる人もいる。小さい頃はそれが嫌でお気に入りとは言えなかったけれど、とにかくあそこは……雰囲気が良いのだ。色んな人が通っていてその話し声と川のせせらぎが作業BGMとしてすごく良い!しかも曜日と時間にもよるが中央トレセン生がトレーニングに精を出していて、絵に夢中なので姿こそ見ないもののその熱気やら気合やらにこちらも元気を貰えたりするのだ。

 

自分の絵にそこそこ自信が出てきて、覗き込んでくる人がいても「良い絵でしょ?」なんて内心で思えるようになってからはそれらの魅力に気づくことができ、今ではめでたくお気に入りの場所となっている。

 

そんなこんなで河川敷に到着した。ちょうどよく草が刈られている斜面に座り込み、画材とスケッチブックを取り出しいざお絵描き開始!

 

鉛筆で何がどこにあるか大まかに捉えるアタリをとる。そういえばここを写生するのは久しぶりだなあ。ちょこちょこ町の建物の様相が変わっている。でも河川敷はあんまり変わってないや。あそこの公園好きだったなあ遊具も結構あるし広くて走るのにもピッタリだしなによりあそこからの景色もいいからお絵描きにも最高だった。今日はあそこでも良かったかもなあ。木の配置がこうでこうで……

 

 

大まかにのはずが興が乗ってしまいそこそこ描きこんでしまった。まあいいや。というわけで絵の具を取り出す。今日はべたべた塗りたい気分なので水は少なめだ。すいすいと大まかに色を塗る。これは本当に大まか。全体に程よく色が着いたらここからどんどん描きこんでいく。この世界はとても多くの色で構成されていて同じ色だけだとすごくのっぺりしてしまう。同じようで微妙に違う色を複数作り直感でどんどん置いていくと少しリアルっぽくなる気がする。独学というか好き勝手にやっているだけだからこのやり方が正しいかは分からないけどやってて楽しいし満足できるから良いのだ。どんどんスケッチブックの1ページが色鮮やかに活き活きとしてくる。よぉし、あともう少しで完成かな?

 

 

完成した。満足したと言った方が正しいかな?今日もページいっぱいに描きこんで描きたい欲は満たされた。まあ帰っても描くんだけどね。

 

描いた絵を達成感を感じながら眺めていたら、突然後ろから声を掛けられた

 

「あっ……あのっ!!」

 

驚いて一瞬尻尾が逆立つ。とても可愛らしくて守ってあげたくなるような声に振り向く。

 

「い、良い絵ですね!」

 

「………………ア、アリガトウゴザイマス」

 

絵を褒められ、お礼を言ったけど、うまく言えたか分からない。その声の主に物凄く驚いたからだ。

 

「ライスシャワーさん……ですよね?」

 

「はいっ…!ライスのこと、知っててくれたんですね…!」

 

「知らない人いないと思いますけど…」

 

外ハネが特徴的な美しい黒い髪。大きめな耳に右目を隠した前髪に乗った青いバラのついた紺色の帽子。

どこからどう見てもあのライスシャワーさんだ。超有名人である。

 

確かに中央トレセンが近くにあるので彼女のような有名ウマ娘を見かける機会は少なくない。しかしそんな有名人に声を掛けられるなんて人生で初めてだ。しかも絵を褒められた。嬉しさと恐縮で頭が真っ白だ。

 

「あのっ…急に声を掛けられて迷惑でしたよね…ライス、悪い子だ…」

 

かわいい。こんな人がレースであんなに勇ましくなるなんて世の中わからない。というかネガティブすぎませんか。

 

「い、いやっ大丈夫ですよ!ちょっと驚いただけです!」

 

立ち上がってそう言うとライスさんは少しほっとしたようだ。かわいい。年上なのに守ってあげたい。

 

「あの…ライスね、ときどきあなたが絵を描いているのを見てたんです。とっても心が温かくなる、あったかい絵。トレーニング中だから少しだけだったけど、心に残って、頑張るぞって気持ちにしてくれて、ずっとお礼を言いたかったんです…!」

 

勇気を振り絞るようにライスシャワーさんが言う。嬉しい。そのように言われれば絵描き冥利に尽きるというもの。それはそれとしてすごく照れる。顔が熱くなるのを感じ、思わず頬を掻く。見ればライスシャワーさんも少し顔が赤い。可愛いけど気まずい。

 

「あの…また、ここで描いててくれますか…?」

 

ライスシャワーさんがおずおずと聞いてくる。もしかしたら声を掛けたせいで来なくなるかもと思っているのかもしれない。

 

「もちろん!ここはお気に入りなので、また来ますよ!」

 

そう言うと、ライスシャワーさんの表情が明るくなる。かわいいなぁもう。

とここで重大なことに気が付いた。そろそろ帰らないと、夕ご飯に間に合わなくなってしまう。家族揃って食べるのが我が家のルールなので、皆に迷惑がかかってしまう。

 

「すいません!そろそろ帰る時間なので!」

 

急いで荷物をまとめる。立ち上がって走り出そうとすると、ライスシャワーさんに呼び掛けられる。

 

「あ、あのっ!あなたのお名前は!?」

 

「僕はドロウワールドっていいます!それじゃライスシャワーさん!また!」

 

そう言って僕は自宅への道を走り出した。

 

この日から僕のお絵描き人生は、少しずつ賑やかになっていく。

 

 

 

「ドロウワールドさん…かぁ」

 

走り去るドロウワールドの背中を見て、ライスシャワーは一人呟いた。

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