カオ転三次 カオス転生の片隅で   作:FakePusai

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いい加投稿期間が空き過ぎなので初投稿です。

当初はもっとサクサク投稿して終わらせるつもりだったのに……
こんな文章でも時間がかかるんやなって。


六道 春華(ろくどう はるか):結婚しました
田中 康(たなか やすし):玲治と同じ研究室だった
島田 淳二(しまだ じゅんじ):悪魔召喚プログラムを拾った。友人はジュンと呼ぶ
東 陽一郎(あずま よういちろう):上の友人。友人はヨウと呼ぶ


六道 春華、田中 康、東 陽一郎

六道 春華

20XE年XX月XX日

G県 神社

 

秋のごとく涼しくなってきたものの、山の木々が色づくには少し早い時期、私は白無垢に綿帽子の姿で、しずしずと歩いている。隣に歩いている玲治さんは紋付き羽織袴を着て神妙な顔をしていらっしゃる。

 

綿帽子を被ったとき、ちょっと暑かったけれども、神社の境内は夏の暑さは引き涼しげな空気が漂っているから今はちょうどいい。

 

神主の後を玲治さんと一緒に歩いている。これから神様に結婚を報告するのだが……ここに至ったあれこれが思い出される。

 

私が16歳になるとほぼ同時に玲治さんと結婚できるはなんとも僥倖なこと。最初は高校卒業後だと玲治さんはおっしゃっていたけれども、いくつかの事柄で決断していただけた。

 

日本以外の世界は末法の世となっているようで、人と人、人と悪魔が殺しあう世界。

いつ日本にそれが波及するか分からないから、先に籍を入れておこうと玲治さんに言われた時、私はすまし顔を維持できていたか……にやけ面になってしまったか、怖くて聞けなかった。

 

そしてメシアの方々が纏わりついてきたのも大きい。玲治さんを聖人と持ち上げ、自分たちに引き込もうと、あの手この手を仕掛けてきた。

美人局はもちろん、私と玲治さんの家に潜り込もうとしていたのは、私をして神の御許に送り返したくなるほど業腹だった。

せっかく助けてあげたのに失礼な方々であること……でも、結婚の後押しをしていただいたのだけは感謝いたします。

 

 

本殿に入場し、お互いの親族が左右に分かれる、座る。その後神主殿のお祓いを神妙に受ける。

神主が神台、そしてその向こうがわの神に向かって私達の結婚を報告している……そういえばこちらで祀っているのはどの神様でしたか……大山積神?それとも木花咲耶姫でしたか。

 

身じろぎもせず神妙にしつつも私の中で疑問が浮かぶ。玲治さんと一緒にオカルトの世界を生きるにつれ、神は本当に存在する事を私は強く認知した。故に結婚の報告も神様は認知されるのだろうし、もしかしたら何某かのお言葉をいただけるかもしれない。まともな神様でしたらいいのですが、なにせ中東の神様と違い、こちらの神様は十人十色ですからね。

 

そんな事を考えていれば、目の前に御神酒が用意されており、二人で交互にお酒を飲むように促される。そういえば玲治さんがヒノエ米で作ったお酒を渡していらしたような気がしたが、このためだったのかしら。

杯を持ち逡巡しているように見えたのか玲治さんが心配してくださる。

 

「春華大丈夫かい?お酒が駄目なら水に変えてもらうけど」

 

「いえ、大丈夫です」

 

私は笑顔をつくり、目の前の杯を干す。この体になってからアルコールどころか毒などにも強いのだ。今更御神酒程度でふらつくはずもない。

 

その後、事前に渡され懐に忍ばせていた誓詞を取り出し読む……いや読むというより二人で神様に結婚の誓いを行う格好だ。

 

内容をまとめれば、『神様、私達結婚しますのでよろしくお願いします』程度の話だ。

 

その後玉串を私達、両親と続いて奉納、指輪交換につづていく。

指輪交換だけは教会で行う結婚式風味だなと、自分の薬指に嵌っている霊力を感じる指輪を見ながら思う。

この指輪、ガイア連合技術部製の精神無効と呪殺無効がついた特別製だ。

なんで知っているかって?もちろん二人で選んだからですわ。ふふっ、大切にされていると感じると心が暖かくなりますね。

 

神妙な顔をして、しかし内心はほわほわと指輪の事を考えていたら儀式は終了していた。

もちろん儀式は熟していましたわよ。

 

お互いの家族が先に本殿から先にでて外で先に集まっているお互いの家族のもとに進めば、皆笑顔で私達を祝福してくださる。

もう役所に婚姻届けを提出していますから書類上私の名字は六道に変わっているけれども、神様と家族に認められたことによって、ちゃんと名字が変わったのだという実感が湧く。

ああ、私は六道春華になったのですね……と。

 

東藤の家はお兄様が後を継ぐし、六道は義妹となった京子さんが継ぐ。私たちは独立した別家を立てる。

この時代に別家を立てるということに大した意味はないかもしれないが、干渉されづらい立場を立てるのは良いことだと思う。私達はなにせ……オカルトに巻き込まれる可能性が高いですから。

 

「ああ……孫娘の婚礼衣装を見れるとは思わなかったよ春華、おめでとう。

そして玲治君、春華の事をよろしく頼むよ」

 

「ああ、ええ、その、しっかりと守っていきます!」

 

「もっと自信を持ちたまえ、こちらにもいろいろと”活躍”は聞こえてきている。君がうちの春華にふさわしくないというものは周辺にはおらんよ」

 

「おっと父さん、春華は私の娘なんですから絡む権利はありますよね。玲治君、春華のこと……そしてこの地元の事を頼むよ」

 

「あっ、はい、がんばります」

 

青空の下、私達を出迎えた中にいるお祖父様やお父様も今日ばかりは晴れやかな顔だ。

笑顔で玲治さんに絡んでいるお祖父様は片目に眼帯をかけており、渋さがにじみ出ている。

私が人間を止める切っ掛けとなった事件の責任を取る形で体の一部をささげた結果だ。

世を見通せない目は必要ないという、驕った人間への神罰を模っている。

 

玲治さんは優しいから、切り抜けられた案件で責任を取る必要はないとおっしゃられたけれど、権力に責任が伴うのと同様に、振るった力で失敗すれば罰を受けるのも道理。

 

とはいえお祖父様は、隻眼になったことを逆にアピールポイントとし選挙を戦っていた。

事故に会い隻眼になっても地元民の方々の為に働いていく……と。それに、その姿が似合っている事から見た目の印象も記憶に残り易かったらしく、ライバルとそれなりの得票差で通ったそうな。

まったく、ちゃっかりしているお人な事で。

 

ただ、地元内でガイア連合に粗相したことを理由に、東藤が持つガイア連合へのつながりを自分たちへ付け替えようとする動きがあった。

私としてはそれ自体はどうでもよかったけれども、婚約者を私ではなくそちらの家から出すなどという動きは見過ごせなかったので、お祖父様、お父様と協議しその動きは潰させていただいた。

 

ガイア連合に対し粗相したときに、あなた方に捧げられるものはあるのですか、少なくとも東藤はそれを示しましたよ、と。その場では尻込みし引いた方々だったが、権力をつかもうとする事を諦めたようには見えなかった。

 

彼らもガイア連合が権力などを求める普通の組織だと思っているようだが、それは違う。

今だから分かるけれども、ガイア連合構成員の方々はうち(東藤)が考えているような栄達には興味が無いのだ。

家や一族という単位で生き残るということや、権力を得るのではなく、もっと俗な要求を持っている。

 

海外で発生している破滅的な事が日本で起きても大丈夫なように、そして今の日本での生活レベルを落とさず生きる。そのことだけでまとまっているのだ。だから、それ以外の欲望については個々の方々で異なった考えを持っているように見える。

 

異性を宛がわれるよりも地方の名産を欲し、地方の王になるよりテーマパークで遊ぶことを尊ぶ。

日本が滅べばそれらは露と消えるから、彼らは助けの手を差し伸べるのだ。

 

もはやガイア連合からの有形無形の援助無しでは人々の生活は成り立たないところまで悪化している

これをどこまで隠せるのか、誰にもわからない。

 

 

場を料亭に移して、両家だけの飲食。談笑しながら交流する場ながら、東藤と六道ではやはり場馴れが違う。六道の御両親が気圧されているように感じる。でも殿方達はお酒が入ってるせいか、玲治さんにものすごく絡まれていて、さすがの玲治さんも親族だから強く出れずに困っておられる。

 

「おう玲治、まさかおじいちゃんもこんな美人さんと結婚するとは思わんかったぞ」

 

「俺も思わなかったよ」

 

「生きている間にひ孫ができることを期待しているぞ」

 

「そーいうの、今はハラスメントって言うんだぜ。それに春華はまだ16歳なんだからそのうちにね」

 

「そうですぞ、私もひ孫の姿は見たい。頑張ってほしいですなぁ」

 

「草壱さん、さすがに直ぐってのはまずいですから、せめて高校卒業してから、ね」

 

「んー、ウチの孫娘に魅力がないというのですかぁ?」「そーだぞ玲治、いいお嬢さんなんだからやることちゃんとやるんだぞ」

 

お酒の入った二人の祖父が両脇から玲治さんの肩に腕を回して、子供を作れと圧を掛けてらっしゃる。

……今のこの体で妊娠ができないのは残念ですけれども、シキガミネットワークではあの神主殿がなにかしら手を打ってくれるのでは無いかと期待の声がありますし、似合いの年になるまでに解決するといいのですけれども。

 

「最近の県内、農業生産量を増やしたくてですね、農協と役所の方々には汗を掻いてもらってるんですよね」

 

「はは、たしかに最近農業系の仕事が増えてきましたね……」

 

あちらではお父様と義父さんが会話されているけれども……まったく義父さんが引いてらっしゃるではありませんか。選挙区民の方には相手に合わせた会話をされるのに、親族になったから遠慮がなくなったのかしらね。

 

「春子さん、今度劇団が来られるのだけど、一緒に観劇しませんか?」

 

「い、いえ、私にはちょっともったいないかなって……それに仕事もありますし……」

 

「では……お食事会でもどうかしら。季節のお野菜をうまくつかうお店があるのだけれども。」

 

「び、貧乏舌な」

 

「お母様、あまりお義母様をいじめないでくださいまし」

 

お母様がうち(東藤)基準でのお使いを試みているのですけれども、六道のお義母さんは困惑と共に腰が引けておられる。農家時々霊能力者というお家には、誘い先が好ましくないのではないかしら。

お母様は私の結婚相手のお家─二人共家を継ぐわけではないけれど─六道がもつ霊能力という力が、今地元に求められていることを理解してしまった結果、なんとか仲良くしようとしているのは分かるのです。

それに取り扱いが面倒な他の霊能力のお家よりは親族の方が信用できる、それはわかります。

でも、お義母さんはその能力を用いて悪魔退治をする、というよりは農家の女性としての意識が強いと玲治さんから聞いております。どちらかというと妹の京子さんを捕まえたほうが良い……私はそう判断する。

 

「春華、そういうわけではないのですけれど……」

 

「大丈夫です、私がきっちりと橋渡しをしますから、ねえ京子さん」

 

私がお母様に注意をうながすとお義母様はホッとしたような顔を浮かばていた。何の因果か身分違いのお家と付き合う事となり、その現実に困惑しているのがよく分かる。

ごめんなさいねお義母様、私にとって運命の出会いでしたの。

それに実際の戦力として動いていただけるのは私達か、そちらの京子さんですから。

 

「え、わ、私ですか……あ、いやこれはその……」

 

美味しそうに食事を頬張る京子さんが、慌てて口を手で覆い隠す。さすがに口いっぱいの食事はまずいと思いますよ?お義姉様。

 

「ええ、玲治さんからマジックアイテム(アガシオン)を託されておりますし、修行もされておられるのでしょう?」

 

「あー修行ね、ええ、やってます、やってますよー」

 

慌てて誤魔化すように言うのですけれど、もしかしてあまりやっておられないのかしら。私は霊視もできませんし、アイテムもありませんが……まったく、少しでも鍛えなければ危ないというのに。

 

「京子 さ ん?、前にアイテムを渡してからレベルが上ってないようですけれども、何をしていたのかなぁ?」

 

お祖父様方から逃げきた玲治さんが─お互いの祖父は何か話しながらお酒を飲まれている─京子さんに怒っておられる。

 

「いやいや、あに……お兄様、私もちゃんとレベル上がってるって!」

 

「おやぁ?このアイテムだと7から動いてませんねぇ……どうしてかなぁ?

まったく、大学で遊んでないで少しは修行しろよ。ジュネスで事務やってると言っても実働もするんだろ?」

 

「いやーあに……お兄様から頂いたアガシオンちょー強いからこれでいいじゃんってね、あははは……

そ、それにほらDレベル?だっけ、あれだと22から24に上がったし?」

 

玲治さんが頭を抱えている。世の中悪い方向に流れているのに自己を鍛えない妹が信じられないようだ。

 

「あ゛ー、母さんもケツ叩いてよ。強くならないと今後ほんとにやばいから。

それにだな京子、お前さんもガイア連合に所属するならDレベルで考えるんじゃないよ」

 

「言ってるのだけど、どうも気が入らなくて困ってるのよねぇ……」

 

お義母さんも京子さんに呆れ顔だ。レベル7は弱いとは言えないが、強いとも言えない程度だし、結界の張られた県内に湧く程度の悪魔には対応できる程度でもある。

たしかに私や玲治さんのレベルは遥か上だが、私達がその程度の低い悪魔に出張るのは牛刀をもって鶏を割くが如し。他の方ができるのであればそちらで対処してほしい。適切な戦力の配分を願いたいものだ。

 

「お義母さんも申し訳ない。いざとなった時のバックアップの為にこいつ()に援助しているのですが……」

 

「い、いえ玲治さん大丈夫ですわ。ガイア連合の方々には十分に骨を折っていただいておりますから

ねえ、春華そうでしょ?」

 

「ええ、十二分に手を打っており、素晴らしいですわ」

 

もう、今ではガイア連合のほうがある意味立場は上だというのに、親族だからといってそこまで畏まる必要もないでしょうに。なぜだか玲治さんは腰が低い、場合によってはそれが問題を引き起こすかもしれない。やはり隣に私が必要ということですね。

 

 

宴もたけなわとなり、今日は料亭近くのホテルで一泊となる。私たちはトラポートがあるから家に帰れるのだけれども、両家族が泊まる以上流石に帰る訳にもいかなかった。

 

私はホテルの部屋でシャワーを浴びながら考える。今夜が……勝負だと。

玲治さんとは一緒に暮らして3年経つのに私に手を出してくださらないのだもの。異界での厳しい戦闘から高ぶってそのままというシチュエーションすらなかったもの。他のシキガミの方に聞いてみれば殆どのシキガミのマスターは場が整えばそのまま流れ込むという……

やっぱり私が元人間というのが邪魔をするのかしら?それとも年齢?

それとも玲治さんが不能……ということは無いと思いたいけれど

若いのに枯れていらっしゃるの?疑問は尽きない。

 

キュ

 

シャワーを止め、バスタオルを纏う。自分の体を見下ろせば、成長しそれなりに魅力的だと自画自賛できる体になったと思うのだけれども……

 

できれば家族風呂という名の混浴に行きたかったのだけれど、玲治さんはさっさとシャワーで済ませてしまった。

まさか私がやきもきさせられるとは、お母様もお祖母様も見合いで結婚したとは言え、こういう場合では主導権を握ったと教えてもらったというのに……不本意です。

 

部屋に戻れば玲治さんは持ってきたノートPCに向かって何事か打ち込んでいる。まったく、新婚の妻を放っておいて仕事とか私以外じゃ離婚ものですわよ。

 

私はタオルで包まれた体越しに後ろから玲治さんに抱きつく。

 

「んもう、どうしてここで仕事なさっているの」

 

「んー、まあ、やっておかないと仕事終わらないからね」

 

他の方々はもっと奔放に生きてられるのに、どうして貧乏くじみたいなお仕事をなさるのかしら。

修業(レベル上げ)だけでなく、私との時間も減ってしまうのはやはり不本意ですわね。

 

「玲治さん、どうしてそこまでなさるの?他のシキガミの主はもっと奔放に生きられておりますわよ」

 

問われた玲治さんは少し考え、答えを返す。

 

「そうだなぁ、俺はガイア連合が好きだからかな」

 

「好き…ですか」

 

「ああ、俺たちみたいなハグレ者が心地よく生きられる組織なんてそうないからね。皆が皆、それぞれ出来ることをやっているさ。だから俺もやれることをやっておくのさ。

ごめんね、あんまり時間とれなくて」

 

困った顔で謝ってくる。まったく、ひどいお方。分かっていてそのようなことに時間を割かれるだなんて。

 

「それにこの仕事はまあまあ実入りがいいから、皆の分のシェルターが早めに買えたしね。

マッカは装備品に使いたいしねぇ」

 

「もう……でも私の、東藤の分まではいらなかったのではなくて?」

 

そう、玲治さんは起きる……かもしれない世界の崩壊に向けてガイア連合のシェルターの権利を自分の家族だけでなく私の家族分まで確保しているのだ。どうしてそこまでされるのか。私が隣にいるからだとは思えない。

 

「家族は……大切だからね」

 

「六道の御両親は良い方達だと思いますけど」

 

「いや、そうじゃないんだ……そうじゃ」

 

玲治さんは窓の外、その黒き夕闇の果てを見ている。多分私にすら明かせない秘密があるのかもしれない。

 

「しかしまあ、春華も大変だね俺のところに送り込まれちゃって、でも両家族のことはなんとか」

 

私は玲治さんの言葉を最後まで言わせない為にすばやく回り込み唇でもって言葉を止める。

 

数分間の接吻。外からは鈴虫の音色、そしてかすかなPCの駆動音。

まったく……あれだけ気を引く事をしたのに全部無視するのですからもう直接的行動しかないではないですか。

 

「え、ええ……?」

 

玲治さんは混乱されている。精神無効が付いた指輪でもどうしようもない混乱、これは一本取れましたかしら。

ここは追撃しなければ、戦果拡張は相手が混乱しているときに最大のチャンスとなる。

 

「あら、私が玲治さんのことを恋愛対象として見ていないと一言でも言いましたか」

 

「いや、あー、言ってないと思うけど、でもガイア連合のバックアップが欲しい君の祖父が図ったと認識してたんだけどぉ?」

 

「年齢差もありますし、私が裏から手を回したんですよ」

 

「高度に政治的な……あれだよあれ、戦国時代の大名同士の結婚みたいなもんだと」

 

「ではいいじゃありませんか、16世紀の結婚では無く、21世紀の結婚なのがはっきりしたのですから」

 

「いや、うん、そうだけど」

 

混乱してあわあわされているのも可愛らしいですけど、これで理解していただけたかしら。

 

「分かっていただけましたか?」

 

「ああ、うん、わかったよ。望まぬ結婚を強いられたかわいそうなお姫様かと思ってたけれど……そうでもないなら遠慮はいらないかな」

 

「惚れた殿方を捕まえるために裏で手を回す、か弱き少女の仮面を被った女はお嫌いですか?」

 

「いや、頼もしいじゃないか。いろんな意味で後ろを任せられるよ……では、奥様、失礼しますよ」

 

そう言って玲治さんは私を抱き上げる(お姫様だっこ)をするとベッドの方へ歩を進める。

 

「ええ旦那様、これからもずっと……ずーっと、よろしくお願いいたしますわ」

 

 

この後どうなったかって?お互い人間をやめていて良かったと、そう言えますわね。

 

 


 

田中 康

20XF年XX月XX日

東京 週刊文夏 打合せ室

 

謎多き企業連合、ガイアグループ。その1企業であるガイアサービスの社長、六道玲治氏を知る人物へ弊誌はインタビューを試みた。謎多き企業の社長の姿とは?どんなつながりから社長になったのか、その手がかりを探る。

 

月間○ー XY月号

 

(取材:○○ □□)

 

─最初に、田中さん、良く取材を受け入れていただけましたね。

 

いや、上から言われまして。ぺーぺーのお前にできるコネなんだから、取材うけとけって(笑)

確かに仕事ができるかと言われると1年目の新人ができることはそう多くないかなって。

 

─同業他社の取材なので最初は拒否されるのかと覚悟はしておりました

 

そこは蛇の道は蛇なんじゃないですかね。ウチはム〇さんとは方向性がかぶりませんし(笑)

 

─たしかに文夏さんと弊社の雑誌を読む方は被らないかもしれませんね。さて、本日は田中さんの大学時代の同期、六道さんのことで取材させていただきます。

 

最初に六道の事を聞きたいって聞いた時、すわ犯罪でもやったのか!?って頭に浮かびましたけどね。ただ、すぐ冷静になってそんなわけはないなと。

 

─それはどういうことでしょうか。

 

犯罪関係なら取材元が違うだろうと。ム〇さんだからスピリチュアルな話なのかなと。ただ六道がガイアグループを構成する一社の社長とか、それは嘘じゃないか、同姓同名の別人では?って今でも思ってますよ。

 

─やはり信じられないと?

 

大学生活を通して会社を興したり、バイトにのめりこみ過ぎて正社員になった人は居ました。ただもれなく大学を辞めてましたね。世の中の皆さまには文系は緩いと思われておりますし、実際に理系に比べれば時間がありますが、それでもやる事はいろいろあります。大学生と社長の二足の草鞋はさすがに難しいと思いますね。

 

─研究室ではそのようなそぶりは無かったのですか?

 

研究室で一緒になった六道ですけど、勉強はできるし、知恵は回るし、体力もあるしで、かなりできる奴でしたね。正直あの研究室じゃなくてもっといいところに潜り込めたんじゃないかと思います。

 

─勉強できたんですね。

 

ええ、ペーパーテストや小論文はいい点取ってたはずですよ。それに授業にちゃんと出席してましたし。

 

─模範的な生徒だったんですね。

 

私みたいなボンクラ生徒と違って真面目に授業うけてましたね。ただ四六時中ノートPCに向かって何か打ち込んでいました。さすがに内容については見ていません。一応プライベートはありますからね。ただ一度何をしているか聞いたときは仕事だと回答されました。

 

─バイトでは無く、仕事とおっしゃられたと。

 

その時はなんかのバイトの仕事をしているんだなと。大学生もいろいろいるのは知っておられると思いますが、いつも金の無い苦学生から親の金で遊んでる学生まで居ます。六道は金のない側なのかと思ってたくらいですね。

 

─傍目にはお金があまりなさそうだと思える動きですね。

 

ええ、あと飲み会の参加もほとんどしませんでしたしね(笑)

 

─傍目には社長に就任されているとは思えなかったと

 

まあ、今でも社長業やっているという話には懐疑的ですけどね。それにガイアサービス本社は東京からはそこそこ離れてますよね。社長が会社にいないってのはどうかと思うんですよ。

 

─離れすぎていると

 

ええ、警察さんに捕まるくらい車を飛ばしても2時間はかかるでしょうし、電車だったらもっと掛かるでしょう。会議に参加して学校に戻る、なんてやった場合往復4時間以上でしょ。さすがにそういう人材を社長にはしないんじゃないかなって。

 

─確かに学校と会社の往復は無理でしょうね。ただここから弊誌的な話になるんですが、実は六道氏、テレポートの魔法か、マジックアイテムを持っているのではないかと考えております。

 

確かに〇ーさんらしい話ですね(笑)。確かにドラ〇もんのど〇でもドアみたいなアイテムがあれば両立はできるかもしれませんね。ただそれでもものすごく忙しいと思いますよ。私は今の仕事と学生両立しろって言われたら移動時間ゼロでもどっちか諦めますよ。

 

─仕事しながら学生やるのは、テレポートが使えても辛いのはわかりますけどね(笑)

ただ六道氏というより彼が所属しているガイア連合という終末思想系宗教団体は何かスーパーパワーを隠しているのは確かだと考えております。六道氏は教えを広める等、研究室でなんらかの行動をされておりましたか?

 

無かったですね。普通に研究室にきて、教授や私なんかと会話して最終的に論文書いて、はい卒業でした。本当に宗教のしの字もなかったですよ。

 

─ガイア連合との繋がりを感じさせる”何か”も無かったんですか?

 

うーん、記憶している限り無かったと思うんですよね。聖書じみたものを配るなんてこともなかったですし。集会に誘われることもありませんでした。むしろこっちがいろいろ誘いたかったくらいでしたね。

ああ、でも、あれはそうだったのかなぁ

 

─小さいことでもいいので、つながりを感じさせる事があれば知りたいです

 

繋がりかはわからないんですが、私や六道が所属していた研究室はご存じの通り、所謂歴史を取り扱うところだったんです。で、昔(この場合歴史的な)やり取りされた手紙や日記などを現代翻訳し、地方ごと、家ごとの繋がりなんかを推定し、論文を書き、情報の蓄積をしていました。

 

─時々ニュースで発表される、新発見の文章がってやつですね。

 

ほとんどの資料は、集められたけれど中身が精査されてないだけですね。注目される時代─戦国時代や幕末あたり─以外は学会なんかでちまちま発表されるだけです。

で、六道はいつのまにか地方の旧家・名家などの家からの資料を大量に集めてたんですよ。これは相当すごいことですよ。

 

─集めるためにガイア連合を利用したと?確かに貴重な資料なのかもしれませんが、ガイア連合が行う理由が分からないですね。

 

そうなんですよね。ただ、六道単独であれが成せたとは思えないんですよ。20ちょいな学生が地方の旧家名家から資料を借りることは不可能でしょう。

 

─教授のお名前を借りしたのでは?

 

教授も驚いていたので(名義を)借りたわけではないと思います。それに、教授が直接交渉したとしても無理な場合がほとんどですよ。

 

─本題とずれますが、それは何故でしょうか

 

資料となると大体は手紙や日記となります。手紙は時候の挨拶程度であれば問題ないんですが、日記となると現代目線だとあくどい事をやっていた記載もあったりします。故に資料を大学や研究機関に渡すのは嫌がられるんです。それに場合によっては紛失や破損のおそれもあります。

 

─名を傷つけられるということですか

 

そうですね。当時としては普通の行動だったとしても資料として公表されてしまうと、マスコミがセンセーショナルに使うことも考えられます。

まあ、そのマスコミに就職した私が言うことでもないんですが(笑)

 

─耳が痛いですね(笑)

 

地方では力があっても東京大阪あたりのマスコミを掣肘する力はないですし、

否定するほうがコストかかりますから、資料を出さない選択肢をする理由が十分にあるんですよ。

 

─でも六道氏はできてしまったと。

 

ム〇さんの言うところの、裏から日本を支配するガイア連合ならできると思います。ただそんな団体に六道が所属しているなら態々大学にこないんじゃないかと思いますけどね。

 

─案外、大学が楽しいから通ってたかもしれませんよ

 

楽しかったならいいんですが、あの忙しさで良かったんですかね。

 

─ガイア連合のこと以外で六道氏のエピソードはありますでしょうか。

 

そうですねぇ、話せそうなのは、学祭で竹割、映像撮ってた、いつのまにか結婚してた事くらいかな。

4年になってからの話ばかりで申し訳ないですが、その前までは接点がほぼ無かったんですよ。

 

─どれも興味深いですがまずは竹割?のエピソードでよろしいでしょうか

 

大学なので色々なサークルがありまして、その中で真剣を使った剣術のサークルがあるんです。で、OBに警察官が居たりするので、真剣を使って練習しているみたいです。普通に人が切れる凶器なわけで、このご時世使わせてくれるとは思えないんですが、まだ残ってます。で、六道もそこに所属していたんですよ。

 

─なんだか物騒ですね

 

安全管理にはかなり気を使っていたようで、事故が起きたとは聞こえませんでしたが、圧力で無かったことにされていた場合はわかりませんけどね(笑)

そこのサークルは、学祭で演武を行うんですが、刀で竹を切り裂くのを見せてくれるんです。

他の人は5本くらい束ねた竹を斜めに一発で切ったりしてましたが、六道だけちょっと違ってまして、竹が1本だけだったんです。で、鞘に入った刀の柄を握ったと思ったら振りぬき終わってたんです。それだけでも超高速抜刀だったんですが、切ったはずの竹は微動だにしなかったんです。そこから鞘で竹をつつくとバラバラに、そうですね17分割くらいになったんです。それを見たときは漫画見たいに切ったのにくっついてるみたいな事ができるんだなーって拍手喝采でした。

 

 

─元々カットされていた竹ということはないのでしょうか

 

その時にもそんな声がありました。でもう一本だしてきて、今度はみんなに触ってもらってました。種も仕掛けもございませんと。

そして、もう一度やって見せたんですよ。

 

─田中さんも触られたのですか

 

ええ、触ったところ硬い青竹でした。達人になるとそんなことできるんだと素直に感心しました。

 

─やはりガイア連合幹部の方々は超常的な力をもっているとの証言ありがとうございます。(※編集注:他のガイア連合幹部の能力については弊誌のバックナンバーをご覧ください)

 

どうなんでしょうね。六道の見た目は普通でしたけどね(笑)

 

─話は変わりますが、映像撮っていたという話は如何でしょうか

 

あー、映像撮っていたというより協力していたというのが正しいかな。大学のサークルで映像研究会っていうのがありまして、演じる側が足りないので協力していたみたいです。

 

─演じる側が足りないのは珍しいですね。

 

ええ、その年は撮る人や編集出来る人が居ても演じる人が卒業してしまったらしく知り合いの六道に声をかけたみたいです。六道自身も知り合いに声をかけたみたいで3人が協力したようです。

 

─ストーリーはどのようなものだったのですか?

 

あれです、仮○ライダーか○隊モノみたいなスーツを身に纏った正義の味方が悪の怪人を倒すというどこかで見たようなものでした。時間として20分くらいだったかな、学祭で映像を流してたのを見まして、最後のスタッフロールを見て魂消ましたね。

 

─六道氏の演技はどうだったんですか。協力するくらいなら結構上手かったとか?

 

アクションシーンはかなりすごかったですが、それ以外の演技は大根でしたね(笑)

悪の怪人側の人も動きはかっこよくて、そこだけ抜き出した映像でいいんじゃないかと思ったものです。

 

─スーツアクターとして運動部の方などが協力したとか?

 

いえ、その三人が中の人もやったそうです。

 

─身体能力がとてもすごい方々だったのですかね。私もその映像みたいですね。

 

編集の力かもしれませんね。めちゃくちゃスタイリッシュなアクションでしたし、人間が出来る動きじゃなかったです。それに怪人を必殺技で倒したときお約束の大爆発も起こしてました。大学内で火薬は使えないでしょうからやっぱり編集かなり入ってたじゃないかなと。

 

─最後となりますが、六道氏は学生結婚されていたのですか?

 

たしか4年の秋頃でしたか、研究室で姿を見なかったなと思ったら指輪してたんです。で私や他の同僚が「なにーいつの間に結婚しちゃったの!?」みたいに茶化したら「ああ、結婚したんだ」って普通に返されて我々が

なんにも言えなくなりましたね。

 

─お相手の写真などはご覧になったのですか

 

ええ、流石にびっくりしましたので強引に見せさせましたね。すごく可愛かったので六道が憎たらしいくらいでしたね。

それに何枚かのうち一枚がお嬢様学校の、○○学校だったんです。そういう相手と結婚できるとか実はすごい所のお坊ちゃんじゃないのかと思ったが実家は農家とか……嘘でなければですが。

 

─農家は農家でも豪農や名家だったかもしれませんね

 

さすがにそこまでは突っ込みませんでした。むしろム○さんの記事ネタになるのではないかなって(笑)

 

─そうですね。上に調査させてくれと頼んでみます(笑)さて、長々とお時間頂きありがとうございました。

 

こちらこそ取材を受ける側の事が分かったのでありがとうございます。

 

 

次号の特集記事ではガイア連合所属を噂される政治家A氏を知る方へのインタビューを掲載いたします。

 


 

東 陽一郎

20XE年XX月XX日

東京 XXX大学

 

カリカリカリ

カチャカチャ

 

俺は静かな図書館の中でA4用紙に向かって手を動かす。どうして手書きなのか、隣の先輩らしき人はノートPCに向かってレポートを書いているというのに……このご時世にまだ手書きレポートを提出させるあの教授は化石に違いない。

 

資料が必要ということで、休みの日に大学の図書館に来ているわけだが、周りを見れば真面目なご同輩ばかりだ。皆、資料や教科書を広げて勉強している。

 

ジュンのやつがいればと思う。やつがいればこんなレポートもサクサクと仕上げられるはずなのだが……ここ数ヶ月どころじゃないくらい引きこもってやがる。

最後にあったとき、研究するべきことを見つけたんだ!とか言ってたが、それは夏休み全部どころか終わってからも大学に出て来ない理由になるほどの事なんだろうか。

このままじゃ奴は留年するんじゃないか……そんな考えが頭に浮かぶ。

電話は出ないしメールしても研究がいい感じとしか返ってこない。

心配だからそろそろ直接押し掛けるか。友人といっても忙しいのに押し掛けるのはどうかと思ってたが、そろそろマジでやばそうだ。

 

そんなことを考えていると、参考書の上に置いてある携帯が震える。番号を見やればジュンのやつだ。噂をすればなんとやらかもしれんと手に取り、うるさいよという周りの顔にジェスチャーで謝りながら移動する。

 

「もしもし?」

『ヨウか?今な、すごくすがすがしい気持ちなんだ。心血を注いだ研究が完了するってこんなのにもいいものだとは思わなかったよ』

「いや何言ってんだよジュン、学校こいよ」

 

ジュンのやつは俺のことをヨウと呼んでいる。そして開口一番何言ってんだジュンのやつは。

 

『いやー、終わった研究がさ、めっちゃ面白くてな。公開すれば世界が変わるぜ、まじで』

「そんなことはいいからさ、ちゃんと飯食ってんのか?お前の親父さんに頼まれてるんだぜ、俺は」

『まったく親父も……大学生の息子を気にしすぎなんだよな。』

「そう言ってやるなよ。心配なんだろ?うちと違っていいお父さんじゃねーか」

『はは、両親の話は置いておいてだな、家に来てくれないか。さっき言った研究がいい感じに終わったんだよ。ちょっと見せたくてさ。なあいいだろ?じゃあよろしくな』

「お、おい、ちょっとまてよ!」

 

無情にも電話は切れる。一方的に話して一方的に切る。昔からそういうところがあるから人付き合いが苦手なんだよな……まあいい。顔を見ておかないと。下手すると偏った食事しかしてなさそうだし、いくら俺たちが若い大学生でもさすがにそれじゃな。

それにいい加減大学に引っ張り出さないと単位落としちまう……そういや履修登録してるのか?あいつ……

 

 

ジュンのマンションに行く途中スーパーに寄り食料を買い込む。とりあえず肉を買っておけば文句は言うまい。夏休み前にジュンの家に行ったときの記憶を思い起こせば米が合ったとうっすら残っている。もう少し野菜を買えばよかったかと思いながらジュンが住んでいるマンションに着く。

ジュンの家は金持ちだ。大学からそう遠く離れていないところにマンションを買い与えられるくらいにはね。俺に一緒に住まないかと、ジュンの親父さんから誘われたが、さすがに悪いと思って断った……が、後々バイトで苦労したことを考えると、あの時うなずいておけばよかったかと少し後悔した。

大学に入ればそれぞれ友人もできるし、なにより彼女なんかできたらやばいと思ったんだその時は……

まあ、それも徒労になった。お互い彼女なんてかけらもできてない有様だしな。

 

ピンポーン

 

「ジュンいるかー」

『ああ、開けたから入ってくれ』

 

勝手知ったる家とは言えセキリティがそれなりに備わってる。チャイムを鳴らして家主に鍵を開けてもらわなければならない。俺の住んでいるボロアパートに比べて涙が出る差があるんだよなぁ。

 

扉を開いて見ればすえた匂いがする。玄関付近にゴミ袋が放置されて折り、匂いの元となっている。

やっぱりめんどくさがってゴミ袋には入れたがゴミ捨て場まで持っていくのを諦めて玄関に放置してるな……

 

「おいジュン、ゴミはちゃんと捨てろよ、臭ってるじゃねーか」

 

まじでガサツなダメ大学生そのものな生き方をしているジュンに文句を言いながら台所に買ってきたものを起く。流石にこの環境はまずいだろう。

ジュンの部屋は奥にあり、微妙に明かりが漏れているからそこにいるはずだ。インターホン越しに声が聞こえたのに在宅していなかったらホラーだし、仮に俺をだますにしても理由が無い……はず。

 

そんなことを思いつつ何度も訪れたジュンの部屋に入る。ジュンは卓上のPCに向かって何事か打ち込んでいる。

相変わらず乱雑に散らかった部屋だ。パソコンが置かれた机とベッド、そしてよくわからない機械。機械は、最後に来たときは影も形もなかったはず。これが研究結果なのか?

 

「いるんなら返事しろよ。それにあの玄関のゴミはなんだよ、めんどくせーのは分かるが捨てろよ。ハエ湧くぞ」

「あー、すまんな。所謂寝食を忘れてというやつだ。後で捨てとくから勘弁な……でだ、何か見えるか?」

 

絶対に後でやらないコメントを頂きましたー。

すぐにやらせようかと考えていると、ジュンが変なことを言い始めた。

見えるって何がだよ。コバエならいそうだがそういうことでもなさそうだし。この年で中二病にでも発症したか?

いや、こいつは小さいころからナニかが見えるような事言っていたなと思い出す。

 

「見えるって、何がだよ。幽霊でもいるのか?昔からなんか見えてるみたいな感じだったけど……」

「そうか……」

 

すげー残念そうな顔されてもな。さすがに見えないものは見えないぞ。もしかして脳に異常でも起こって見えないものが見えるようになっているのか?うーむ病院に連れていくか……?

 

「まあジュンが見えるなら見えるのかもしれないけどさ……なあちょっと落ち着いたら病院行こうぜ。最近できたガイアグループ系の病院は評判いいらしいからさ」

「調べれば何か分かるかもしれないが、ヨウ、そういうことじゃないんだ。やれ」

「やれって、ど……!?」

 

いきなり体が押さえつけられ床に叩きつけられる。体が動かせない。顔をひねり後ろをみても入ってきたドアしか見えない。

 

「お、おい、なんなんだよこれ。ジュンがなんかしてんのか!?」

 

藻掻いても体が動かせないのに焦りながらジュンに声を掛けるが、悲しそうな顔をしながら俺の問いには答えず、昔話をしてくる。

 

「なあ、ヨウ。お前さんと知り合った小学生のときからさ。俺にはナニかが見えてたんだ、知ってるだろ?」

「確かに俺には見えないものが見えてるっぽかったが、それがこの状況と何が関係あるんだよ」

「ヨウは信じてくれたけど、他の連中は信じちゃくれなかった。それどころか俺の事を気味が悪いといじめてきやがった。確かに当時の俺はおどおどしてたし……見目も悪いからな」

「確かにあったけど、俺が一喝してからは無かったはずだぞ」

「ああ、ヨウのおかげで表面上は無くなったよ。だが裏に潜ったってやつだ。あの糞共は絶対に許さん……」

 

確かにジュンは虐められていた。だが俺が庇った後は、収まってたはず……俺の力が及ばないばっかりに……

 

「すまん……俺が至らないばっかりに……」

「いやいいんだ。ヨウには感謝しているさ。おまえさんは態度も顔もイケメンだからな。だがそういうヨウの隣にいるのが俺というのが、気に入らなかったやつもいたけどな……」

 

え、なにそれ俺は知らないぞ……?俺の困惑顔をよそにジュンは語り続ける。

 

「小学校から中学高校、そして大学でも俺の立ち位置は変わらなかった……だがなぁ、最近【力】を手に入れたんだ」

「【力】……?」

 

力ってなんだ……?もしかして……銃や爆発物……?まさか力を得たからいじめっ子に復讐……?

まずいぞ、翻意させないとジュンが犯罪者になってしまう。

 

「お、おいジュン。力が銃だか爆弾だかしらんけど、復讐なんてやめようぜ。親父さんも悲しむぞ」

「銃……?ふっ、そんなちんけな力じゃないさ。俺が手に入れたのは【悪魔召喚プログラム】さ」

 

ジュンの中二病エンジンは今日は全開だ。悪魔を召喚するプログラムって……そんなものがあるなら世界はめちゃくちゃになってる……いやまて俺を押さえつけている不可視の存在はもしかして

 

「ま、まさか俺を押さえつけているのが悪魔……?」

「そうさ、押さえつけている姿は、俺にははっきり見える、だがヨウには見えない。だから残念なのさ」

 

俺が身動きがでないくらいの力で、尚且つ不可視であれば人を殺めるのは簡単だろう。証拠も残らない……本当に世界がめちゃくちゃになってしまう。

 

「なあジュン、復讐なんてやめようぜ……そんなことしてもむなしいだけだろ?」

「押さえつけられた状況でそう言えるヨウは、やっぱりイケメンだよ……」

 

俺を褒めるにしては悲しげな表情だ。

 

「それにだ、ただの復讐じゃつまらない。俺が見え、他のやつらが見えなかったモノを見せながら事を成す。その為にこれを作ったんだ」

 

そういいながらパソコンと接続された。パソコン本体より二回りくらい大きな装置を指さす。

 

「この装置は、一定の範囲内のゲートパワーを上昇させる装置なんだ」

「ゲートパワー?」

 

「なんというのかな、異世界と我々の世界のつながりの強ささ。ゲームみたいな表現で言うなら、より強い敵が現れるという指標。それ以外にも、一定以上になれば一般人でも悪魔の姿が見えるようになる。そう認識してるよ」

 

ニヤリと笑いながら言い放つ。

つまりあれか、態々姿をみせてから復讐するってことか?

俺が絶句しているとジュンは楽しそうな表情から悲しげな顔に変わりながら言う。

 

「ヨウは俺側かと思ってたのさ。もしかしたら見えるかもって……っさ。まあしょうがない、まあ見てみろよ。上に乗っている存在がどんな存在かさ。」

 

ジュンが機器のスイッチを操作すると静かな動作音がし、インジケータが赤から青に切り替わる。世界が変わった感じはしない、だが俺を押さえつけるナニかがいる背中を振り返れば、羽が生え黒い体をした化け物が俺を押さえつけているのが見える。

 

「う、うおおおお?」

 

焦った俺は体を捻ってなんとか逃げ出そうとするがピクリとも動かない。プロレスラーでもここまであっさりと成人男性を抑え込めないだろう。

 

『ケケケケ、ご主人、こいつは殺さなくていいのか?』

 

しかも喋る知能があるときたもんだ。ジュンのやつはこいつと何らかの契約を結んで使役してるいうのか?これが悪魔と呼ばれる存在なのか?

 

「抑えているのは俺の友人なんだ。殺しては駄目だ。殺りたいのはもう少し我慢しろ」

『まったく、注文の多いご主人だぜ』

「まあ、そんなわけでヨウには寝ててもらうぜ」

 

【ドルミナー】

 

ジュンがタブレットを持ち何事か操作すると俺は途端に強烈な眠さに陥る。いやまてまだ昼間だし、さっきまで眠気のねすらなかったじゃ……ぐぅ。

 

 

母さん……俺は今、大学の屋上で縛られています……なんでだよ!

ジュンのやつの不思議な力で眠らされてから起きてみればどこかの建屋の上に、それも縛られた状態で転がされている。もぞもぞと動きながら周りを見回せば見たことのあるビルが見える。多分ここは俺たちが通う大学の屋上か。

つまりジュンの奴は復讐の第一歩を大学から始めるということか……

俺が見てないところで何かがあったのか?それとも手近なところから始めるだけなのかが分からない。

 

少なくとも、縛られて芋虫のごとく転がされてる俺では復讐ののろしを止めることはかなわないという現実。

 

ジュンのやつはどうやって持ってきたのか分からないが、自宅に置いてあった装置をこの場所でいじっている。

なんとか思いとどめることはできないか、実力行使を行う事すら叶わない状態で、俺は声を掛けることしかできない。

 

「おい、なんでこんなところから始めるんだよ……ちょっと恥ずかしいだろ?そういうのはさ、中学校で卒業しておくもんだろ、な」

「ふ、俺は復讐の為なら悪にでもなるさ。それにヨウ、よく見ておけ……これが俺の世界に対する復讐の一歩よ」

「おいまて、正気に戻れ!」

 

俺の声むなしく、子供の頃みた特撮の悪役のように、屋上から高らかに宣言を行った。

 

「俺の才能を認めない者共を、我が悪魔召喚プログラムによって粛清する!」

 

ああ……言ってしまった。これから行われる殺戮への諦観と、ちょびっとの恥ずかしさがないまぜになる。

恥ずかしい宣言から繰り出される人死が本当に起こってしまうのか?何かできることはないかと考えているところに、俺とジュン以外の声が響く。

 

「まて!」

「お前の企み、なさせるわけにはいかん!」

「お、おれた、俺たちが阻止してやる!」

 

え???どういうことなの?

もしかしてジュンの仕込みだったの??

 

だがジュンを見てみれば……とても混乱している!?

 

「ふっ……じゃ、邪魔者が居ても関係ない。殺れ!我が配下たちよ!」

 

【サモン:ダイモーン】【サモン:ダイモーン】【サモン:アンドラス】

 

悪魔の姿が見える。俺を押さえつけていた黒い悪魔と鳥人間のような存在がそこに居た。

ジュンの作った装置はちゃんと動作しているということであり、俺みたいな一般人にとっては絶望の始まりということだ。

つまり、ノリで反応している下の三人はこれから死んでしまう可能性があるということだ、止められない俺を許してくれ……

 

「その程度の悪魔で俺たちを止められると思うとはずいぶんなめられたものだ」

「俺たちの正義の心の前にはその程度、敵じゃない!いくぞ、二人とも変身だ!」

「ぉ、おう」

 

『へ ん し ん !』

「へんしん」

 

三人が”変身”と叫び、ポーズをとれば体が光り輝きはじめる。

まぶしい光に目を開けていられず閉じ、そして開けると特撮ヒーローを彷彿とさせるスーツを身にまとった姿が見える。どういうことなの?

三人はそれぞれ黒、紫、青を基調とした色のスーツを着ており、まるで特撮の変身ヒーローに見える。コスプレにしてはあの光はなんだったのか、俺の頭はさっきから混乱に支配されているんですけど?

 

現実にヒーローものが存在したのか?縛られて頬をつねることはできないが、きっとこれは夢に違いない。

 

「いくぞ!」

『ケケケケ、人間ごときが我らにかなうかな』

 

目にもとまらぬ速さで黒い悪魔がとびかかるが、変身した三人もさるもの。俺では絶対に避けられないような攻撃を、ぬるりと避けながら反撃のパンチを繰り出している。

 

テレビで見るような速度どころでは無く、動画を3倍速で再生したような速度で格闘している。

そして拳や蹴りが当たった時の音は鉄をハンマーで殴ったような大きく鈍い音がする。

 

後付けの効果音では無く、現実の音であるなら相当のスピードとパワーで殴りあっている事になるが、にわかには信じがたい。

 

ボケっと見てしまっているが、ふとジュンを見てみれば、信じられないといった表情で戦いを見ていた。

その姿を見れば、これが仕込みでもなんでもないことが分かる。

 

このチャンスになんとかこの拘束をとけないかと周りを見回してみれば、いくらか離れた場所にガラスの破片があるのが見える。馬鹿学生が酒盛りでもしたのか……いやなんでもいい、この状態をなんとかできるのであれば。

 

俺がもぞもぞと芋虫のように動き、ガラスの破片でなんとか拘束を解こうとうごめいている間に、戦いは佳境になっていたようだ。下の方から聞こえる格闘音が減り、スーツを身にまとった男たちの声がする。

 

「ふっ、なかなかやるじゃねえか……だが俺の必殺技を喰らって耐えられるかな!」

『何をいっておる、苦戦しているのはこちらだろう!』

『キキキキ、こいつイカレているぞ』

「やかましい!くらえ……とぅ!」

 

とんぼ蹴り(ライダーキック)

 

黒を基調としたスーツを着た男が、空中に飛び上がると物理法則を無視したような軌道を描き、鳥人間に突き刺さる。

 

スーツの男が振り返り、ポーズを決め……鳥人間が大爆発する。

 

ああ……これは夢なんだ。勉強に疲れてジュンの家で寝てしまったんだな……子供の頃みた特撮ヒーローものとこの前みたアニメ、そして現実の友人が混ざり合った不思議な夢。

 

「最後はお前か……」

「く、くるんじゃない!」

 

いつの間にか屋上に居た三人のスーツの男たちがジュンにじりじりと迫る。

 

「くそ、これなら!」

「遅い!」

 

取り出したタブレットを操作しようとするジュンに対して一人の男が拳を繰り出し……吹っ飛ぶ。

 

「はい、カ―ット!」

 

ようやく拘束を解いた俺はジュンに駆け寄る。意識はないようだが、脈をとってみればまだ生きている。吹っ飛ばしたさっきの三人は

俺には興味がないようで、いつのまにか撮影機材を抱えた人たちと何か話している。

 

チャンスと見た俺は意識を失ったジュンを抱えて学校を後にする。幸い撮影を眺めていた他の学生たちもただの撮影だと思っているのか俺たちに声を掛けてくるやつはいない。

 

 

外傷自体が無かったし、病院の場合問題になるかと思ってジュンの家まで当人を運び込む。

俺の家?電車で移動が必要なのに気絶したやつを運んだら何が起こるやら。

 

ベッドに寝かせたが、なかなか目が覚めないが、俺も疲れからか意識が飛んでしまう。

はっと起きてみれば時計は午後10時を指示している。

 

「ヨウも、目が覚めたか……運んでくれてありがとよ」

「あー、いいんだ。俺たちダチだろ」

「すまんな……」

「で、体は大丈夫なのか?最後スーツを着た男に吹っ飛ばされてたけどさ」

「体が痛え……なんだろうか、骨が折れたというより全身筋肉痛みたいな感じだ」

 

数メートルを、文字通り吹っ飛ばされていたように見えたが命に別状はなさそうだ。

 

「まー、後で病院にいっとけよ。こけたとか言っておけば深くは聞かれんだろ」

「その……ヨウは俺を許してくれるのか」

「あー……まあ死人はまだ出てない……出てないよな?」

「そうだな……誰も死んじゃいねえ」

 

さっきの事を起こす前に誰かを殺してなくてよかった。少なくとも人殺しにはならなくてすむってことだしな。

だがさっきの人たちは一体何だったんだ?俺を軽く押さえつけられる人外を粉砕するとか、あの人たちも人間じゃないのか?

 

「なあ、さっきのスーツに……変身?した人たち、知ってるか」

「いや知らんよ。あんな連中いたら俺はこんなことしてないさ」

 

まあ、そうだよな。普通の人間が警察や自衛隊に喧嘩をうらないように。力を持つ奴らがいるなら。

 

「で、お前の悪魔だかを召喚したものはどこで手に入れたんだよ」

「ネットで拾ってな……中身をみたら罠があったからそれは解除して、いろいろ弄ってたら契約できたよ。ガチの天才はいるってそう思ったね。ゲートパワー上昇装置はまあ別だけどな。」

 

それをいじれるこいつも天才なんじゃないかと思ったが、それは置いておこう。

今の問題はあのスーツの三人組が俺たちに対して攻撃を仕掛けてくる可能性があるということだ。

”正義の味方”を気取っていれば、目の前のジュンを倒しに現れる可能性は十二分にある。

 

カリカリカリ

 

音がするような気がして顔上げ、音のする方に耳を向ける。ジュンがその動きを訝しんで声をかけてくる。

 

「何してんだ?ネズミか……Gでもでたか?」

「しっ!」

 

訝しみながらも声を抑えてくれる。音はなおも継続し、最後にカチリという音がする。

まさか、泥棒か?

 

「いいんですか、住居不法侵入ですよ」

「いいんだよ、街中で暴れる力は放置できんからな」

 

くそ、ジュンを殺しにきたか。確かに街中で暴れ、人を殺せるやつを普通は放っておかない。俺だってそんなやつがいるなら警察がんばれよって無責任に思うさ。だがそれがダチともなると他人事ではなくなる。

なんとか……なるか?必死に考えるが多分無理だろう。俺を押さえつけられたやばいやつを粉砕したもっとやばいやつなのだ。

 

カチャリ

 

最後のドアが開く、果たして入ってくるのは……くそやっぱりあの時のスーツじゃないか。だが人数は二人、黒スーツと青スーツか。俺はジュンを庇うようにベッドの前に立つ。

 

「何者だ、あなた達は!」

「名乗るほどのものではない……私が用事があるのはそこに後ろの人間だ。君にはどいてもらいたいのだがね」

「おいジュン、俺のことはいいんだ」

 

だが退く訳にはいかんのだ。俺はダチを売るようなことはしない。そんな事をすれば自分が自分でなくなるような気がするんだ。

だが実力では敵わない。ここは……

 

「な、なんでもするからこいつを許してやってくれ、お願いだ!」

「……ん、今なんでもするって言ったよね」

「い、言ったさ!」

 

「どうするんですこれ」

「脅して帰ろうかと思ってんだけどな……いいことを思いついたぜ」

 

二人のスーツ男が俺に聞こえない小さな声で会話している。

 

「ふっ、これをやろう」

 

黒いスーツの男が俺に何かを放り投げる。つい受け取ってしまったが、これはいったいなんなんだ。装飾の付いたベルトのように見える。

 

「そいつを身につければ、俺たちと同じような力が手に入る……その力でお前の正義を成せ」

「せ、正義?」

「そうだ、そこの後ろのやつがやろうとしたことを止めるのも良い。お前が考える悪を成敗するも良しだ……後ろのお前、どうせ弄れる能力をもっているのだろう?お前ら二人で一心同体だ」

「あ、ああ……」

 

思わぬ展開に混乱する。今日は混乱しっぱなしだがこれは特別だ。なんで俺に力を与えるんだ?裏があるんじゃないかと思わずにはいられない。

 

「あ、あんたが悪なら俺が倒してもいいっていうのか?」

「ふん、お前がそう判断するならそれでいいだろう。だが勝てるかな?」

「くっ……」

「以上だ。俺はお前さんが何を成すのか遠くから見ていてやろう」

 

勝手な言い草だ。だが俺はそれを否定することも止めることもできない。

 

「なあ、あんたはどこの誰なんだ?」

「そうだな……ガイア連合所属……ふっ、名前はお前が何かをなしたら教えてやろう。じゃあな」

 

そう言うと何かを唱え、そして消える。

 

「なあヨウ。俺たち助かったのか?」

「助かった……いやチャンスをくれたのかもしれんな。失敗すれば結局は処分かもな」

 

手に持ったベルトがずっしりと重く。これが現実であることを主張する。

まったく……東京の闇は深いな……

 

 

その後どうしたって?東京にスーツを身にまとった悪魔狩りの男が誕生したってことだけさ。

 

最後にあの男が残したガイア連合という言葉、その言葉が意味する組織がとびきりやばい連中だということが朧気ながら分かり、死ななくてよかったと胸をなでおろしたよ。

あの男は俺たちの前に姿を現さないが、俺たち宛てに時々荷物が届く。もっと頑張れなのか、よくやっているな、なのかは分からないが、俺は今日も今日とて街を行き、悪魔を狩る。これが俺の精一杯の正義。

 

「いくぞ!、へ ん し ん!」

 

 




こんな文章でもめっちゃ書いては止まってを繰り返したんだ……

そして、このライダー?もの、どくいも氏なら片方TSさせるなと、書きながら思ったのは秘密だ。

次は掲示板だからそこそこ早いはず……ワンちゃんどくいも氏のごちゃまぜサマナーが完結する前に、俺の物語の終わる可能性が微レ存?
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