カオ転三次 カオス転生の片隅で   作:FakePusai

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書いてる内に、やっぱりよく分からなくなってきましたが、連載に勢いは大切、孫氏にも書いてある。というわけで初投稿です。

後藤 将(ごとう まさる):地元の霊能力者
東藤 草壱(とうどう そういち):地元の盟主
谷田部 一郎(やたべ いちろう):主人公が通う高校の生徒会長



後藤 将、東堂 草壱、谷田部 一郎

後藤 将

20XZ年1月XX日

G県YY市 市役所 第一会議室

 

冬寒くなる1月、私は市役所に来ていた。

別になにかの届け出を出すわけでは無い。ガイア連合がこの県に敷く結界用施設の説明会だ。

もちろん表向きは結界用施設などとは言わない。役人に霊能(オカルト)の話をしたところで一笑に付されるか、頭の病院を紹介されるかだ。

 

ガイア連合、彗星のごとく現れ、数多の霊的問題を解決し、またしつつある異能集団。

 

我らも最近その幕下に加わった……いや正確に言うのであれば、哀れんだ我らを保護した、というところだ。

彼らにかかれば、我らが血反吐を吐き命を捧げながら抑えていた異界を、ものの数時間で消滅させてしまえる。

 

今回ガイア連合……企業としてはガイアグループの一員として出席している六道氏とこの場にはいないもう一人が、我らの場所に派遣されてきた。

 

最初はなんだこの若造達はと思ったものだが……霊的才能は年齢を問わないことを失念するほど疲れていたのかもしれない。

我らの話を聞くのに1時間、準備に30分……そして異界の消滅に30分だ。

 

正直信じ難かった、我らの努力はなんだったのか。

そしてふざけるなと思った。どうして早く来てくれなかったのだと。

 

分かっている、これは私のエゴだ。

彼らに我らを助ける義務など無く、我らがその力を使い果たし、終わった後に来て異界を封印しても良いのだから。

 

「えー、初めまして。本日はお集まりいただきありがとうございます。

ガイアグループ所属の六道 玲治です、よろしくお願いいたします。

本日は、○○市に展開予定の株式会社ジュネス○○市店につきましての出店計画の説明をさせていただきます。

 

まず私のほうから本計画の全体説明、まあ大雑把に説明をさせていただき、その後ジュネス店舗詳細については

ジュネス事業企画部の三島より説明させていただきます。」

 

そう、ジュネス出店の説明会なのだ。

ガイア連合は近年各地に出店ラッシュを行っているジュネスを隠れ蓑にし、方々に結界を敷いている。

 

土地所有者や税収を伸ばしたい県、市、納入を行いたい地元企業、ライバル関係となる地元商店街の代表。

そんな人々が説明会参加者だ。

 

私も土地所有者としての表の顔で参加しているが、結界を敷いてもらえる――それもガイア連合製の強力なもの――なら諸手を挙げて賛成するに決まっている。

多分説明会の看板をだしているが、方々の人達に水面下でわたりが付いているのだろう。特に苦々しい顔をした人は見えない。

 

しかし結界を敷くのに一般商業施設を使うとは思わなかった。

普通結界のための施設は、異能者であればすぐ分かるものだ。

我々なら碑や地蔵、神社などを起点とし結界を敷くし、メシア教であれば教会を作る。

 

だがそれらはある種の分かりやすさがある為、隠れて結界を敷くには不向きだ。

 

一般の人々が毎日利用する施設を用い結界を敷くとは、さすが現代に適応した異能団体だと驚愕したものだ。

 

だが口惜しや、我々の住む場所近くではない。

ジュネスによって県内の霊的な災害は、大まかには沈静化するだろう。

だがそれも取りこぼしが出る程度の範囲だ。漏れてしまったものは地元の霊能組織、そう我々が出張るしか無いのだ。

異界一つどうにもならなかった我々が、ガイア連合製装備を貸与されただけでてきめんに強くなる。

人の質だけなく、装備の差まで否応なしに感じさせられる。

 

「まず、大型商業施設としてのジュネスをこちら……資料では5Pとなりますが、XXの土地に概ねYY万平方メートルの施設となります。また、それに合わせて新規道路の敷設も行う予定です。道路敷設に関しましては次ページの6Pに記載しております。

 

これらの土地の土地転用許可は、現在県に対して申請中です。

地権者の方々に対してはガイアグループ全体及び県議会議員の東藤議員と共に説得済みとなります。」

 

なんとも手回しのいいことだ。

既に東藤議員を抱きこんでいるとは信じがたい。

東藤氏はこの県の盟主といえる存在だ。今回、我々も東藤氏を通じてガイア連合に助けを求めた。

 

ガイア連合が勃興し、その影響力を増加させているとは引き換えに、根願寺はもうだめかもしれない。

少なくとも地方においては根願寺の権威は急速に衰えつつある。

 

この県での動きを見れば、他県に建設されているジュネスも、それぞれの土地の地主や名士・盟主を抱き込んでいるのかもしれない。

いやきっとそうだろう。

 

昨今の霊能災害は目に余る。

それぞれの土地に根付いてる人たちはきっと気付いているのだろう。

そして気づいたとしてもどうしようもないことに絶望もしていた。

 

そこに現れたガイア連合、その威力は絶大だ。

なんらかのマッチポンプなのだろうかと疑うくらいだ。

 

「また、ジュネス以外の弊グループの施設も建設予定です。

これはグループ内の相互協力をスムーズに行うための施設となり、どちらかというとBtoB用の施設となり、BtoCには活用しない予定です。ご理解ください。

 

この部分の詳細資料は15Pの内容となります。

建設場所といたしましては県内各所となり、本市内だけではありません。」

 

この部分で我々が関係する。

我々が血で贖って封印した異界を復活しないよう、結界施設を立てる。そのための施設だ。

一部はガイア連合の出張所となると聞いている。

出張所は我々が逆立ちしても勝てないような装備の数々を備えると……

 

「どうも、株式会社ジュネス、事業企画部の三島です。これからは建設されますジュネスの具体的内容などの説明させていただきます。

まず、20Pの内容となりますが、建物内部の割り当てについては地元業者様のスペースとして~~」

 

まあ私にはジュネスの内部はどうでもいいのだ。結界さえ敷いてもらえれば、商業施設として利用することは……あまりないだろう。

それよりも一仕事終えた顔をしている、あの六道氏だ。

 

知らなかった事だが六道氏はこの県内の霊能力者の一族という。

それがガイア連合に入り、このような場に出てくるほど出世しているとは……

 

惜しい、実に惜しい。

先に知っておれば、女でも……男でも侍らせたというのに。

 

だが東堂氏がいる。なんでも彼の孫娘と六道氏は婚約しているとか。

さすがに彼の顔を潰すわけにはいかん、拾った命を怒らせて捨てるわけにもいかん。

 

「えー、他に質問はございませんか?

 

……無いようですので、最後に東堂議員の発言をいただき本説明会を終了させていただきます。

 

では東堂議員どうぞ」

 

他のことをつらつら考えているうちに説明会も終わろうとしている。

 

「紹介いただきました東堂です。ガイアグループ、また株式会社ジュネス様のご協力を頂き

本県に大型施設を誘致することができました。先程六道氏の仰った通り地元の方々とも協力し、さらなる県及び市の発展が望めるものと、私は確信しております。

是非皆々様もご協力をしていただき、計画を推進していきましょう!

 

以上となります。ありがとうございました。」

 

東堂議員の閉めの言葉で、神妙に拝聴していた参加者たちが三々五々帰っていく。

 

私には帰る前にやることがある。

せっかくなのだから少しでも六道氏との縁を深めたいのだから。

 

─────────────────────────────────────────

 

東藤 草壱

20XZ年2月XX日

G県YY市 東藤宅

 

「父さん、僕は反対です。春華と一緒に暮らさせるとか……正気とは思えません」

 

目の前の息子は怒りの表情で私に食って掛かる。机の向こう側にいるのに怒りから発せられる熱で身を焦がされそうだ。

何か正当な理由がなければ許さんぞと表情が語っている。

まあ普通はそうだろう。自分の大切な娘がよく知らない男と暮らすなどと聞けば怒り狂うだろう。

だが、秘密は知る人が少なければ漏れづらい。どう答えたものか、思案していると。

 

「答えてくれよ、父さん」

 

机に手を叩きつける”バンッ”という音と共に、息子が身を乗り出してくる。

 

「私が、国政に転身するかもしれない話は知っているな」

 

「見延さん*1が引退するけど、後継者が居ないからって父さんが代わりにって話でしょう?

その話と今回の件に何の関係があるっていうんですか」

 

「その話は本決まりになりつつある、その後県での椅子はお前が座ることになるだろう

そろそろ独り立ちの時期だ。県内での話はお前が取りまとめるんだ」

 

息子は困惑している。話がすり替えられていると思っているのだろう。

そういうところはある、だが物事はすべてつながっているのだ。

 

「次の”会合”からお前を連れていく。出ればわかる。」

 

「出ればわかるって、えぇ……」

 

息子は私がこれ以上何も言うことが無いことを察したのか、しぶしぶ部屋を出ていく。

 

「説明しなくてよろしかったんですか」

脇で仕事をしていた秘書が問いかけてくる。

現在の東藤家の立ち位置を1から10まで説明するのはひどく骨だ。

 

「私の100の言葉より、困っている有権者の言葉の方が効くだろう」

 

会合には県下の霊能で問題を抱えている人も出席する。

そこで生の声を聞けば、少しは認識するだろう。細かい説明はそれからでいい。

 

私に入ってくる情報はこの世界が変わりつつあるということを示している。

心得がある人にはほんのりと判る形でこの世界が侵食され、そして今では異能の才の無い私ですら感づくほどに進行している。

終末の足音が聞こえ、終わりが始まる。

 

悪魔が世界を乗り越えてやってくる。そういうオカルトの話はテレビの向こう側であれば楽しんでいられたが、現実に影響を及ぼすとなると真顔になる。

普通の人には見えない害獣がそこらをうろつき、退治できる人材は貴重。

これは、米ソの核弾頭が世界の頭上につり下がっていた時代よりも、人類滅亡に近い気さえする。

 

だからこそガイア連合との縁は切ってはならない。

彼らには力がある、民草を悪魔から守る力が。

 

彼らに切られてしまえば、我らは徒手空拳で砂漠に放り出されるのに等しい。

 

六道君との縁はつないだが、そこから踏み込むか引くか。その選択肢はひどく難しい。

ガイア連合の方々の内、幾人かに私は会った。

聖人君子ではないが蕩児愚人でもない。善性と悪性を共に持つ方々。

つまりその方々の性根は一般市民と同等ということだ。

 

善人であるならば、我らは助けを乞えばいいだろう。悪人であれば利益を提示すれば釣れるだろう。

だが善と悪の濃淡がある人への望みはどうすればいいのだろうか。

 

普通の人であれば、地縁、血縁、利益関係などで縛れる。縛る鎖から抜けだし、自由となるのはひどく難しい事だ。

だが鎖を引きちぎれる力がある人達には何を用いればいいのか。

 

踏み込めば逃げることも反撃することも可能な方々だ。彼我の立ち位置を見定めるのは困難。

藪をつついて蛇が出るということも十二分に考えられる。

 

何が地雷かわからないから慎重にならねばならないが、地雷を恐れて進むのを止めれば待っているのは死だ。

だから立ち止まることは許されない。私は行動せねばならぬ。

 

思い出したかのように秘書がこちらに投げかける。

 

「お嬢様の婚約の件であれだけうるさかった親戚の方々も随分静かになりましたね」

 

「ガイアグループの若き幹部*2ともなれば文句も言えまい。手のひら返して褒め殺ししてきたわ。

逆に利益をよこせとうるさくなった、まったく邪魔な手合よ」

 

「確かにガイア側代表者の一人として来るとは思っても見ませんでしたね。ガイア連合の人材が足りないのか、彼が優秀なのか……」

 

ジュネス事業計画の説明会に出てからは、県内の有力者が彼に秋波を送るようになってしまった。

最近ガイア連合傘下に入った連中は特に必死だ。だがその思いに、彼は引いていたな。

連合内有力者とのつながりを作れば、装備などの優遇を受けられると考えているのだろうが、目に余る。

その場ではなんとか引き剥がしたが、県内にいれば面倒なことになるかもしれん。

 

私には霊的才能が無いためよく分からないが、彼が何気なくもってきた装備やアイテムは伝説級のアーティファクトだと、ガイア連合外の霊能力者は言っておった。

つまりは技術力に天地の差があるのだろう。

そんなものをチラつかさせれば、腹の減った犬のようにもなろう。

 

「草史郎君の言い分ではないですが、やはり中学生と大学生の同棲は如何なものかと思います。

言われた彼も引いていたじゃないですか。よろしいんですか?」

 

分かっている。だが……縁が切れてもまずいのだ。やるべきだと、私は判断した。

孫娘の頼み事でもあるしな。

 

「仕方あるまい、彼が大学進後そこで連れ合いでも作られたらたまらん。

残念ながら今はこちらのほうが下手となってしまった。幸い孫娘は嫌われてはおらんようだし……

嫌われず、なおかつ他の女を作らせない微妙な舵取りができるといいのだが……」

 

正直むずかしいだろう。

ひどい話だが、彼から孫娘に手を出してくれればと思わずにはいらなれない。言葉に出してしまえば……私はあの世行きだろうがな。*3

 

「家事はどうされるので?お嬢様もある程度できるでしょうが……

自分の過去を思い出せばわかりますが、男の大学生なんてひどいものですよ」

 

「通いの女中*4を雇う、今信用できる人間を選定中だ。

こちらで住む場所を提供するのだ、問題ないようにしなければな」

 

「こちらから派遣せず……そして、住み込みでもないのですね」

 

「住み込みにはしない。監視されていると思われても面白くないからな

ただ……定期的にこちらに報告はしてもらう」

 

表向きはそうだが、孫娘の希望でもある。困ったという思いと頼もしい思いが交錯する。

 

「付かず離れずですか、まだ先の話ですが彼の卒業後はどうするのですか?」

 

「そこまではわからん、まあ我が孫娘の手腕に期待というところかな」

そう分からない。この世界が残っているかどうかもな。

 

願わくばお互いの仲が深まってほしい。

本当に頼む。一族の為、県民の為に、そして場合によっては日本の為に。

 

─────────────────────────────────────────

 

谷田部 一郎

20XZ年12月XX日

G県YY市 YY高等学校 廊下

 

「すまんね六道君」

 

「あー、まあどっちかっていうとお疲れ様ですは生徒会長のほうじゃないっすかね

そろそろ生徒会交代の時期でしょ?引き継ぎやらなんやらあるし、受験も控えてるでしょうに」

 

「僕は推薦だから、まあ」

 

「そいつは羨ましい、俺の方は普通にテスト受けなきゃならんのですよ、頼まれなきゃ今頃自宅で勉強ですよ」

 

「はは、重ね重ねすまんね。校長先生からも言われてね、君ならできるって聞いたよ。」

 

「できるかもしれませんが……なんでまたこの時期なんですかね、まったく」

 

ぶつぶつと文句を言う六道君に、僕も相槌をうちながら夜の学校を歩く。

なんでこんなことになったかといえば、幽霊がでるって噂のせいだ。

まったく、小学生じゃないんだぞとも思ったが、女子生徒一人が何かに襲われたとかで、安全を取って、部活なども日が出てるいる内に切り上げだ。

 

隣にいる竹刀袋を持って僕と一緒に歩いている男は六道玲治、同じ三年生の男子生徒だ。

事件を受けて生徒会として夜中の見回りすることとなったとき、学校側から彼に手伝ってもらえと言われ困惑した。

彼は生徒会役員でもないし、武道系の部活にも所属してもいない。さらにいうなら僕と同じクラスになったことが無いから、噂だけは聞いたことあるという程度の人だ。

 

その人柄は知らないが、噂だけはいろいろある。

曰く、剣道ではなく剣術道場に通い、人斬りの訓練を行い、夜な夜な人斬りをしている、とか。

曰く、パトカーに乗って犯罪現場に駆け付け、凶悪犯逮捕に協力している、とか。

さらには、地元有力者のイヌとなって策謀に協力しているなどなど。

 

どれもドラマの見過ぎじゃないかと疑う、荒唐無稽な話ばかり聞こえてくる。

そんな正義の味方か馬鹿なのか分からない人だが学業は優秀だ。

うちの学校は上位50人ほどはテストの成績が張り出されるが、彼は大体一桁にいる。

 

勉強はできるが、噂からくる姿は凶悪犯罪者な彼だが……火が無いところに煙は立たずを実感できる。

隣を歩く彼をちらりと見れば、その芯が入った歩きは武道─それも高段者─を嗜んでいることを感じさせる。

僕の身長は172だが、彼の頭はこぶし一つ分大きい、多分180くらいか。

でかくて強そう、そして頭もいいが……油断なく周囲を見回す目は鋭い

……失礼な物言いだが、もてるタイプじゃないな。

 

そんな彼だが話してみると普通の生徒にしか思えない。

 

「なあ、今回の件、何が原因か予想できるかい?」

 

「原因って言われましても、先生が言ってる通り動物か、もしくは不審者じゃないんですか?」

 

「いや、被害にあった女性生徒は、こっくりさんをやってたそうだ」

 

「そういうのは小学生で卒業しておいてほしいところですね、高校生になってまでなんでまた」

 

「そこのところはわからないよ。襲われたというのは表向きの事で、トイレで倒れていたそうだ。」

 

「はぁ、そうなんですか」

 

気の抜けた返事とは裏腹に彼の目が鋭く変化する姿を見逃さなかった。

彼はそんなオカルト話を嘘だとは思っていない。

 

「発見した別の女子生徒は、おかっぱ頭の小さい子供を見たと証言してるらしい。

昔の映画じゃないけど、トイレの花子さんでも出たのかもしれないね」

 

「トイレの花子さんですか、そりゃまた……」

 

彼はなにか思案しているようだ。

持ってきている竹刀袋を強く握っている。

 

「その持ってきている竹刀袋だけど、なにか出たらぶっ飛ばすのかい?」

 

「何か出たら、そのつもりですよ。でも抜かぬ太刀が一番って昔の人も言ってますからね。」

 

「そりゃ何もでないのが一番さ、倒れた女子生徒が回復して、あれはなにかの見間違いだった。そうなるのが一番面倒がない」

 

「生徒会長としていいんですかそれ」

 

「進んで苦労を背負い込みたい人はそう居ないでしょ……二階のトイレ、確認よし」

 

教室を見回り、トイレその他の部屋に何か居ないかを確認していく。

人っ子一人いない学校内は、気温も相まってか寒々しい。

 

「何か感じるかい?」

 

そう隣に問いかける

 

「ここには居なそうですね」

 

まあ、居てもらっても困るし、どうせ幽霊の正体見たり枯れ尾花という風になにか違うものを勘違いした口だろう。

3階に上がっていくと玲治君が話かけてくる。

 

「生徒会長、今からでも遅くないんで生徒会室で待ちません?別に生徒会長自らやらんでもいいんでしょう?」

 

いや何を言っているのだ。率先垂範だろうに、僕がやらなければ誰もやらないぞ

 

「あ そ び ま しょ」

 

「いや、生徒会長なのだからやら……、何か聞こえたかい?」

 

「……」

 

彼は何も答えない。声は3階の女子トイレから聞こえたような気がする。僕らは慎重に近づく。

 

「生徒会長は俺の後ろに」

 

「ぼくが……いや任せた」

 

彼の鬼気迫る形相にびびったのではないと言い訳しておく。無いったら無いのだ。

彼が竹刀袋から竹刀を……いや刀!?

 

彼が取り出したのは鞘に入った刀であった。

嘘だろここは学校だぞ、凶器を持ち込むんじゃない。先生は分かって彼を推薦したのか!?

 

彼が抜き放った刀を持ち、女子トイレに扉を開けた時僕の後ろから声がした。

 

「あ そ び ま しょ」

 

廊下の真ん中に便器がある。そう、便器だ。

目がおかしくなったのか?勉強と生徒会長としての業務で疲れたかな。

だがそこにあるはずの無い便器は廊下に鎮座している。目をこすったとしても消えない。

 

「バックアタックかよぉぉ!!」

 

六道君が吠える。

 

僕の目には半透明でおかっぱ頭の少女が見える。だが……ただの少女じゃない!

 

少女から死の霧が漂ってくるように感じる。

目に見えるはずのない死の概念が僕に(なんだっけ、波のように?)

僕は死ぬ。絶対的な死だ。

 

だがそれは後ろからの発光(テトラジャ)によって霧散した。

 

「あっ、あっ!?」

 

うまく言葉がでない、いつの間にか尻もちをついており、立てない。腰が抜けてしまったのかもしれない。

 

「すまんね!生徒会長殿」

 

そう言って六道君が脇の教室に僕を放り込む。

痛い!力任せに放り込まれたせいで僕の体が教室内の机と椅子を薙ぎ払う。

 

焔よ!(アガシオン)

 

彼が何事かを叫ぶと、炎のようなものが彼の胸から飛び出す。

刀を抜き放ち斬りかかる彼をひっくり返りながら見る。

なにか現実味が無い。何が起こっているんだ?

 

彼の周りを回る炎から炎が発射され、おかっぱの女の子を焼く。

僕はいつのまにかゲームの世界に転生していたのかもしれない。

刀を抜いた生徒が学校内で武器を振り回すとか、ゲームか漫画でしか許されないぞ。

ということは、ここは非現実世界なのだ。

 

僕が体の痛みと精神的ショックで現実逃避している間にも六道君は戦闘を繰り広げている。

 

し ん じゃ え(ムド)

 

死の気配が六道君を包むが、彼が取り出した石を握りつぶすと辺りを光が満たす。

あの石がなんらかの対抗策なのか。

 

「これで……終わりだ!」

 

彼の刀がおかっぱの女の子を貫くと、その体が煙のように消えていく。倒したのか……?

 

あたりは静まり返っている。戦闘が起こった後とは信じられないほどだ。

もしかしたら僕がこの部屋で寝ていただけなのでは?

だが教室内の散乱する机と椅子が現実を教えてくれる。

 

「生徒会長、立てますか?」

 

心配したように声をかけてくる。

 

「あ、ああ。」

 

まだ体が痛いがなんとか立ち上がる。

 

「今のはなんだったんだ??? 僕は現実に生きているのか???」

 

「あー、まあ夢のようなもんですよ。悪夢っていうとびっきりクソなやつ

 

まあ、多分終わりましたんで、先生に報告して見回りも終わりにしましょう。」

 

そういえばなんで先生が来ないんだろうか。職員室から離れていても聞こえるんじゃないか?

 

「多分先生が来ないって不思議に思ってるみたいですが、一応説明しときますとね、

一時的に異世界になってたんですよここ、だから音は職員室まで届いちゃいませんよ

 

まあ、信じられないとは思いますが。」

 

「そう言われても、僕はとても信じられないよ。」

 

「そりゃそうだ。逆の立場だったら俺もそう言いますよ。

だから……夢でも見たと思って全て忘れちまうのが一番いいんです」

 

そう言って彼は歩いて行く。

 

「あー……赤字だぜ、依頼にしてもらったほうが良かったか……でもなー……」

 

「ちょ、ちょっとまってくれ」

 

ブツブツ言う彼を追いかける。

こんなところに置き去りにしないでくれ。あんな化け物がでなくても死にそうだ。

 

痛む体をひきずり職員室に報告し─何も無かったことにしたが─家路に付く。

彼は何者なのか、そんなことを考えながら。

 

 

3月、卒業の季節だ。

あの後、学校では特に何もなかった。

吹き飛ばした後、そのままにしてしまった机と椅子が少々問題になったくらいだ。

 

結局六道君が何者なのかはわからないままだ。

 

彼と僕とでは進学先は違う。卒業してしまえば会うことは無いかもしれない。

だから最後に言っておきたいことを言う。

 

「六道君ちょっといいかな?」

 

「なんです、生徒会……いや元生徒会長殿? 愛の告白なら受け付けておりませんぜ」

 

「いや、そういう話じゃないだが……」

 

今日はテンション高いじゃないか。卒業ということで未来に思いを馳せているのか?まあいい。

 

「君は……勇者だったのか?」

 

「はっ?」

 

彼はマヌケな顔を晒している。何故だ、渾身の質問だったのだが。

 

「いや、特別な力を持ち、裏で悪魔から世界を守っているのだろう?勇者じゃないか」

 

「あのー……、そのー……、ム○みたいな雑誌を愛読していらっしゃいます?」

 

「そんな本があるのかい?」

 

彼は頭を抱え始めた。おかしい、ここは認める流れだったろうに。

しかし勇者でないとすると何者なのだ。

 

「元生徒会長殿は……割りと愉快な人だったんですね、知りませんでしたよ。

 

ハハ、早くに知り合っていれば、楽しくつるめたかもしれませんね。

 

まー、裏世界で動いてるのはあんまり間違いじゃありませんが……詳しく知ってしまうと、死んじゃいますよ」

 

最後の方の言葉は、僕の耳に口を寄せ囁くように伝えてくる。

 

「おっ六道、お前元生徒会長殿に告白かー?お前がホモだったとは卒業するまで知らなかったぜ。

もしかして俺の尻でも狙ってたのか?」

 

「何馬鹿言ってんだよ。ホモだって好みがあるんだぜ」

 

「はっ、よく言うぜ。俺ほどのイケメンはそうは居ねえぜ? ほら早く行こうぜ待ってるぞ」

 

彼の友達なのか、馬鹿話をしながら僕の前から去ってゆく。

最後に彼が振り返り僕に伝える。

 

「縁があったらまた会うこともありますよ。じゃまた会う日まで」

 

また会う日までか……いい言葉だ。

微笑みを浮かべる自分がいるが、悪い気分じゃない。

未来は分からない。再会した時、お互いどういう立場かわからないが、きっと楽しいだろう。

 

そんな思いを胸に僕も踵を返す。

*1
県選出国会議員 覚えなくていいよ

*2
勘違い

*3
でも微妙な態度には出てた

*4
お手伝いさん




名前設定したのに文章中では出てこないってマジ?

サラッと書くつもりが膨れてる気がする。
次は掲示板、がんばります。
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