東藤 春華 :婚約者→シキガミ
東藤 草史郎:婚約者父
市川 基 :ダークサマナー
第0課 :警視庁0課ログ
殺風景の中私は立っている。
見渡せないほどの荒野の中、目前には対岸が見通せないほどの川が流れている。
その川の上流も下流も見通せないほどの距離
多分きっとこれは三途の川。
ああ、私は死んだのか。
後悔は……ある
玲治さんとの心の距離を詰めれなかったことだ。
一緒に暮らし始めて数か月しかたっていないとはいえ、その距離は遅々として縮まらなかった。
むしろ少し離れたまである。
理由はわかる。年齢差と、能力だ。
玲治さんと私は18(大学1)と12(中学1)、並んでも良くて兄妹、悪ければ……親子?
私の体も問題だ。成長期が来ているとはいえまだまだ成長途上であり、身長も足りなければ体つきも子供っぽい。
お母さまもおばあ様達も若いころは女らしさをふんだんに持った方々だった。私も将来は期待……できるはず。
あと1年、いや2年あれば女らしい体つきになるはずだったのに……口惜しい。
そして能力。
玲治さんだけでなく、ガイア連合の方たちは霊能力者というものに目覚めているらしい─過去に覚醒と呟いたのを聞いた─
覚醒すれば、身体能力は常人を超え、見えてはいけないものが見えるようになる。そう聞いている。
具体的にどのようなものが見えるのか、どのくらいの身体能力になるのかは分からない。
だが玲治さんの身体能力は尋常ではなかった。引っ越し時の荷物運びをしていただく時、私では、いえお父様ですら苦労しそうな重いものを楽々運んでいらした。
私では……そういう部分で釣り合いが取れないのを分からされた。
前にどうすれば玲治さんのようになれるか聞いたことがある。
答えは芳しいものではなかった。『才能があれば、あとは修行。残念だけど君では無理だよ』と。
何か方法はないのかしら。
そうすれば、カゴの中の鳥から空を飛ぶ鳥になれるというのに。
カゴの中の鳥はか弱い、外へ出ればすぐ殺されてしまう。
大空を飛ぶ玲治さんについていくには、そして自らの羽で飛ぶ為に強くなりたかった。
だが、それも私が死んでおしまい。
最後の光景は、インターホンが2回鳴り、訝しんだ玲治さんが開けた瞬間、こちらに吹き飛んできたことだ。
なにかの気配が壊れた玄関から飛び込んできたと感じ、とっさに体当たりしたが……
玲治さんは助かったのだろうか。
助かったのならいいのだけれども、
他の女に取られるくらいなら、死んだことによって彼の心の傷になり、思い出の中に生き続けるのも悪くないかもしれない。
ただ残念なのは私がそれを見ることがかなわないということ。
化けて出れないかしら?
玲治さんにとって私は意に沿わぬ婚姻を押し付けられたかわいそうな少女
好きだと言ってみたところで、お家の為に頑張っているとしか捉えてもらえなかった。むう。
しかし……三途の川であるならば渡し守がいるはず……いや両親より先に逝ったものはここで石を積むのだったか。
この永久に変わらない寒々しさを持つ荒野の中で、私は座り込む。
もう誰の目もない、はしたない座り方でも構わないでしょう。
石を積みながら振り返る。
あの夜、飛び込んできたのはなんだったのか。
夜、玲治さんが宿題……いや大学生ならレポート?だったか。を行っているのに合わせて私も宿題をこなしていた。
お茶を入れ、他愛も無い話をし、
「私はカロン。魂の渡し守。死せる若人の魂よ、三途の川へようこそ」
カロン……なにかの神様かしら。
「若人よ、君には2つの選択肢がある……」
「一つ、我が後ろにある渡し船に乗り、苦楽無く永遠の安息に行く」
「二つ、我が指し示す方向に……ある光により、苦役に満ちた生を得る」
カロンが指し示すのはいつの間にか発生していた光の柱
先程は無かったはず……
私は……迷うはずが無い。
「私は生きるわ、ありがとうカロン様」
「迷わないのだな。生はもがき苦しむもの、そして悩みも尽きない
永遠の安息を得ることは悪くはないと思うのだが……。まあよい、そなたは死すべき定めではなかったということだ」
私が光の柱に触れると意識が暗転した。
・
・
・
・
・
・
目を開けると、私は光に照らされていた。
まぶしさに目を細めると、人影が2体。
「よーーこそ、ガイア連合に!!!」
誰?目が明るさになれてくるとその内の一人は白衣を着た男性だということが分かる。
そしてもうひとりは玲治さん。
手術室で患者を照らすようなライトが2台、態々持ってきたのかしら。
私が今いる病室に似合うようなものでもない。
しかし……私は生き返ったのかしら。
「んーー、なにやら混乱されているご様子。だが時間は有限です。説明させていただきますぞぉぉ」
白衣をきた男性は大仰な身振り手振りを交えながら説明してくる。
彼の後ろにおいてある椅子に座っている玲治さんは呆れている様子。
玲治さんの……お友達にしては剽軽すぎるから、ガイア連合の方かしら。
「私はガイア連合所属、医療班のごとうと申します。5つの頭で五頭です。
決して五島でも後藤でもございません。そこの部分にご注意を」
ごとうって方はガイア連合でも有名な方なのかしら。
「えっと、五島って方は誰なのでしょう?」
「Oh、まずはそこから……いえ、今はいいでしょう、後でそこの六道君にでも聞いてください」
「あっはい」
「まずは……あなたは生き返りました。わー、ぱちぱち」
なんだろう、ものすごく残念な方に思える。心のこもってないこの拍手は一体なんなのかしら。
「驚いていらっしゃる……んー、驚くのも無理はありませんが、我らガイア連合の医療技術は世界いちぃぃ!できんことはなーいってな塩梅です」
いや、呆れているのですが……
彼は後ろに倒れかからんばかりに仰け反っている。何かの真似事なのか分からない。
呆れ果てた玲治さんがツッコミを入れる。
「おーい、いい加減その大仰な動作やめて、普通に話せよ」
「えー、この動作こそがマッドサイエンティストっぽくていいじゃんかよー」
「ガキかお前は……それに『狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり』って言うだろ」
「マッドサイエンティストのマネをすれば即ちマッドサイエンティストというわけだな」
「あー……もういいよそれで」
玲治さんが項垂れている。随分と親しそうですけれど、こんな方もガイア連合に所属されているのですね。
「あー、おほん。まあ普通に話すね」
普通に話することができるのですね……
「まず貴方は一度死亡いたしましたが、ガイア連合医療班と六道君の資産にて生き返りました。
生き返ったと言っても、通常の生き返りでは無く、貴方はシキガミとして生き返っております、ご注意を」
シキガミ……?
「その……シキガミとはなんでしょうか?」
「嘗て陰陽師が使役していた鬼神や人間の事を式神と言いましたが、我々の場合はガイア連合員に使役される人造生命体の総称となります。
貴方は彼、六道君のシキガミとして復活しました。彼に従う存在となったのです。
死にかけの貴方は、我々が制作したシキガミ用のパーツをですね、移植することで、なんとか復活させることができたんです。
そしてシキガミ用のパーツの力で覚醒した……そういうわけなんです。」
玲治さんのものになったということ?
まずい、顔の下が笑いそうになる。堪えなければ。
顔を下に向け、見られないようにする。手を交差し肩を持つ。こらえて変な顔になっているところは見せたくない。
「まあ混乱するのも無理はありませんが、えっと、これ見えますか?」
白衣を着た男性が、紙を見せてくる。私は笑いをこらえながら顔を上げ、紙の上にぼんやりとした光が見える。
だがそれがどうかしたのかしら?
「光が見えます」
「そう光が見えるんですが……これは霊能力者として覚醒している人にしか見えないのです」
私も……覚醒した?
「まあ視力検査みたいなもんですね、これは。
そして見えるといことは貴方は戦う力を得たということです。
……これから六道君に付き従って戦いに身を投じる事になります。これに拒否権はありません。
まあ覚醒した貴方は……そうですね、漫画のキャラクターのようにですね、魔法が使えるようになっている。そういうことです。」
よし、世界は私に微笑んでいる。世界が私に玲治さんと一緒にいる理由をくれている。
そして……籠の中から出た鳥に世界と戦う力をくれる。
やはり、あそこで玲治さんとの婚約をする選択をしたのは間違いではなかった。
一緒にいるだけで私の人生をここまで劇的にしてくれるだなんて。
実は死んで得をしてしまったのではないだろうか。
「とはいえですね、貴方の体は謎が多い。ガイア連合でも初めての事例です。なので数日病院に泊まっていただき検査ですね。
とりあえず体調は大丈夫でしょう。後は……この鏡をどうぞ」
五頭さんが鏡をポケットからだし、私に向けて手渡す。
鏡の中の私は……髪が白く?なっている。そして顔つきも若干違うような。
毎日お手入れの為に見ていた顔だが、それとは少し……可愛くなっている……きがする。
でも身長は変わってないように思えるけれども、なにかを移植されたとの事ですが、成長するのかしら。
「髪の毛が、変わってしまっているのですね……」
「ええ、そこの玲治さんの好みなんでしょう。移植しなければそのような姿のシキガミが作られたはずです」
うむ、これは悪くないわね。
「余計な事言うなし」
玲治さんが五頭さんの頭に手刀を入れている。痛くはなさそうなので軽くなのだろう。
「まあ、そろそろ良い時間ですし、しなければいけない説明も終わりました。
あとはお若い二人でごゆっくり……では!アディオスぅぅ!」
そう言って五頭さんは扉を勢いよく開き、走り去っていく。
最後まで愉快なお方だった。
「はー…」
玲治さんがため息を付く、二人きりになってしまった。
お互い気まずいのか、会話がない。
病室内に据えられた時計の動く音のみが響く。
そうして10分くらい静寂が過ぎ去った後、玲治さんがおもむろに言葉を発する。
「その……すまなかった」
謝られた。何を謝る理由があるのだろうか。私が傷ついたのは私が理由だというのに。
「えっと、何を謝られるのですか。私が良かれと思ってやったことです」
「あーでも、ご両親から預かっている子を守りきれないのは、こちらの落ち度だよ」
なにをおっしゃられるのか。どちらかというと私の家の問題で同棲することになったというのに。
原因を突き詰めていけば、東藤が原因なのに。
まったく良い人なのは嬉しく、そして美徳だと思うのだけれども、行き過ぎた謙遜は周りが迷惑いたしますよ。ちょうど私のお祖父様のように。
これは……私が支えて差し上げなければなりませんね。
「何をおっしゃいます。こうなったのも突き詰めれば東藤の問題、玲治さんは悪くありませんわ」
「そうかなぁ……」
私は玲治さんの腕を取り、私の胸に押し付けながら言う。
「そうです。それに……私をこのような姿にした責任、とってくださるのですよね。ならば何の問題もありません」
そう問題は何もないのだ。多分お父様とお母様が怒るくらいだろう。
そういえばお父様とお母様には連絡があったのだろうか。
「あー、うん。その……これからよろしく」
「はい!」
私はとびっきりの笑顔で答える。笑顔の下のニヤケ顔は絶対に出してはならない。
私は思い出した風を装い聞く。
「そういえば、私が入院したこと、お父様などには連絡していらしゃいますか?」
「ああ、君が目覚める前に連絡しておいたよ……秘書の方が出て、連絡しておくそうだ。
ただなぁ……君のお父さんあたりに殴られそうで」
「まあ」
これは来たときに
多分私を連れ戻そうとするでしょうし、お母様も同調なされるわね。
「それと……マンションなんだが、多分だめになってしまったんで、住むところを探さないとなんだが、
せっかくだから家を買おうと思うんだ。幸い現「だめですわ」えっ」
「お祖父様に出していただきましょう」
「いや、悪いし」
「いえ、お祖父様は気にされておりました。県内のあれこれについて貰ってばかりだと。
ここで出していただいたほうが、心のしこりが取れると……思います」
玲治さんは面食らっている。小市民なのだろう、貰いすぎだと考えているのかもしれない。
しかし、ガイア連合はあまりにも強大すぎて東藤家のほうが釣り合いが取れないのだ。
現金を使うだけで釣り合いの取れなさが少しでも解消するなら喜んで支払っていただけるだろう。
「ふふ、その辺りの交渉はお任せください。ですから物件のほうはおまかせします」
「あっ、はい、わかりました」
玲治さんは混乱している。私がこんな女だと思っていなかったのかもしれない。
時間はいっぱいありますから、徐々に慣れていただきましょう。
混乱しているのを奇貨とし、私はベッドから出て玲治さんに抱きつき、耳元でささやく
「
・
・
・
・
・
・
玲治さんが出ていく。私達を襲ったダークサマナー?という人の居場所がわかったそう。
息の根を止める為に人を募集するのだとか。
覚醒したとて私はまだ弱い。後でLv?を上げるために訓練をするそうだ。
早く強くならなくては、隣に立てないではないか。
ベッドに戻ったが……今後のことを考える。お父様お母様の説得、自分の修行、
やることはいっぱいある。だが今の私は幸せな気持ちだ。
明日からの事を考えながら、今は寝ることといたしましょう。
私は病院のリノリウムの床を歩く。
周りでは数が少ないとはいえ入院患者本人や、入院患者の見舞客らしき人達が見える。
私の娘が入院している部屋までもう少しだ。隣には憔悴した妻もいる。
昨夜、私は後援会の集会に参加していた。今夏、父が我が県から衆議院議員に立候補し転出する為だ。
前々から参加していたため、参加者の方々とは概ね顔なじみだし、父の路線を概ね継承する気であるため、特に厳しい目線もなかった。
ただ、昨今の……所謂霊能関係者だけは縋るような眼で見ていたのが印象的だった。
父の跡を継ぐとして方々に顔を出し始めたが、確かにオカルト的な被害は、私の想像していたより多く県内に起こっていたようだ。そしてそれを概ねなんとかしたのがガイア連合なる団体であることも知った。
宴もたけなわな時間、私に耳打ちする秘書から、娘がなんらかの存在に襲われ、病院に担ぎ込まれたと知った。
その場で顔にださないようにできたのは、偏に自制心のたまものだと自画自賛したいところだ。
だが、さすがにすぐ中座するわけにもいかず、結局病院にこれたのも次の日の朝になってしまった。
東京の学校に進学した娘が何故入院しなけれなばならないのだ。同居しているレイジ君は何をしていたのか。
レイジ君がガイア連合内でも一廉の人物であることはなんとなくわかる。地元の人々のガイア連合や関係者に向ける目は熱い。
何せ経済的にあれこれを持ってきてくれるだけでなく、裏の……霊能関係まで利益をもたらしているのだから。
だが、それはそれ、これはこれだ。
娘が傷つくことを悲しまない親がいるだろうか。
私は娘が入っている病室の扉を開ける。
娘は……髪の毛が白い?
「あら、お父様……それにお母様も」
「春華!」
妻は扉の前で止まってしまった私を押しのけて病室に入り、娘を抱きしめる。
「ああ、なんてこと。おぐしがこんなにも白く……
一緒に帰りましょう。こんな目にあう都会においておけないわ。私心配したのよ、昨晩だって、あなたが病院に運び込まれたって聞いて本当に心配したの」
「大丈夫ですよ、お母さま、そんなに心配なさらないで。
髪だって一時的な事かもしれないのですから」
心配する妻を娘はたしなめるが、私としてもできうるなら連れて帰りたい。
私は妻に同調するように娘を諭す。
「春華、母さんの言う通りだ。我々は心配したんだ。一緒に帰ろうじゃないか。
態々危険な都会にいることもないだろう?」
だが我々の心配は娘には響かなかったのか、首を縦に振らない。なんでそこまでここにとどまろうとするのか。
普通の女の子であれば、傷つけられた恐怖から親元に帰ろうとするのではないのか?
そんな娘に妻はなおも言い募る。
「いーえ、連れて帰りますからね。貴方はまだ幼いのだから、母の忠告には従わなくちゃ。大丈夫心配いらないわ。あれこれの手配は私と、お父様がやりますから、あなたはただ車に乗り、あの育った家に帰ればいいの。」
まくしたてる妻と、困ったような顔を浮かべる娘。状況は妻の方が押しているし、私も同意見だ。
だが娘は数か月離れているうちに成長してしまったようだ。それも私たちの想像だにしえない方向に。
「
その声は、私たちを圧倒した。なにか、本来あるはずの無い物理的な力すら感じる。娘はいったいどうなってしまったのか。確かにベテラン政治家(私の父も含む)はただ話しかけるだけで圧を感じさせることができる。それは人生経験や見た目、抑揚の付け方などによるものだが、まだ幼い娘にはどれもないはずだ。
娘の声で凍り付いた部屋の中、時間だけが過ぎる。妻は信じられないものを見る目を浮かべている。
その時、扉をノックする音が聞こえる。気づかない我々に来訪を告げるため、白衣をきた男性が内側からノックをしていたのだ。
「あー、すいません、春華さんの治療を担当いたしました五頭と申します。
えーと、そうですな。お父様に春華さんの状況を説明いたしますのでついてきていただけますか?
お母様は、ええ、そのまま春華さんについていてください」
妻の方をちらりと見て状況を察したのか、私だけが呼ばれた。いったい何を説明されるのだ?事件の内容か、それとも娘はかなりまずい状況なのか?
疑問を浮かべながら案内されたのはエレベーターに乗って地下の部屋だった。
医師の診察室のように思えるが、見慣れない機器も置いてある。
「どうぞおかけください。今お茶をお持ちいたしますので」
「いや結構だ。早く説明していただきたい」
私はここにお茶をしに来たわけではないのだ。早く娘の症状について教えてほしい。
「そうですか、では早速ですが……お嬢さんの髪の毛の色を見たと思いますが、
あれ、一度死んだ為なんですよね」
……んっ?今死んだと言わなかったか?いや死んで復活するのはどこかの預言者くらいだろうに。
「ああ、信じられないと?まあそうですよね、写真ご覧になります?まあ、あまり見て気持ちの良いものではありませんが……」
五頭氏が手元のパソコンを操作すると、ディスプレイに何か写る。
……たしかに娘の面影がある物体だ……
「うっぷっ」
「ああ、やっぱり……」
まずい、胃の中ものが逆流しそうだ。だが……だが本当に娘は死んだのか?死の間際まで行っただけではないのか。
だが、今見た画像は深い傷と共にどす黒く変色した娘の肉体だった。
「ご自宅のマンションでですね、えー、うちらは悪魔とよんでおりますが、まあオカルト的な存在が襲撃してきたみたいでですね。
六道君が応戦したんですが、そのときに巻き込まれたと。その時の傷がもとでこのような状態になってしまったんですよ」
そのようなことを笑顔で答える五頭氏に薄ら寒いものを感じる。
「ほ、本当に娘は一度死んだのか?し、信じられない。死んだのなら、何故……、何故娘は生きているんだ!?」
「ええ、まあ信じられないでしょうね。ただ、我々ガイア連合の技術にて復活した形になります」
「復活……?いや死者を復活させるなんて、そんな芸当が……」
信じがたい。そんな神の御業が人の手でなしえるのか?ただのハッタリではないのか?
だが目の前の人物は嘘を言っているように見えない。いやハッタリの可能性もあるが……
「特殊な移植手術を行うことで、復活しております。まあ信じがたいと思いますのでこちらをどうぞ」
そこから見せられた動画は、ある種の冒涜さを持っていた。
肉体に、他から持ってきた肉体を繋ぎ合わせるだなんて、まるで人形の改造だ。
私が動画をみて放心していると、さらなる追撃の言葉がくる。
「まあ、そんなわけであなたのお嬢さんは復活し、そして覚醒いたしました。
草史郎さんは、お父さんの草壱さんから聞いておられるでしょうから言ってしまいますが、覚醒いたしますと、まあ人間をやめてしまうんですよ。
そのため、まあ、ある意味普通の生活は不可能。と我々は知っているのです。」
そんな……まさか娘が覚醒するだなんて!?
ただ私の政治家の部分が、『いやこれは奇貨である、ガイア連合の内実に食い込めるのではないかな?』と囁いてくるし
親の部分は、『どうなったとしても私の娘なのだ!』と囁いてくる。
頭を抱える。これは私一人では手にあまる。父に相談しなければならない。
いや父に相談したところで、不幸中の幸いとでもいいそうだ。
だが妻に説明できるか……? いや難しいだろう。彼女は普通の女性だ、今は理解できまい。
苦悩に満ちた顔を浮かべる私に五頭氏はなんともなしに言う。
「お嬢さんである春華さんも納得していただいておりますし、……今頃お母さんの説得も終わったのではないでしょうか
まあ戻りましょうか」
五頭氏は手元にあったコーヒーを飲み干すと(いつの間に来たんだ? 私のほうにもある)席を立つ。
いきましょうと言わんばかりの表情だ。私はついていかざるをえない。
・
・
・
・
・
来た道をそのまま戻り、病室に入ると、妻が娘を抱きしめていた。
「ああ、あなた戻ってきたのですね。ぐす、いつの間にか春華は強くなられました
こんなに強くなったのなら……春華、がんばるのですよ」
「はい!お母様」
何が起きたのだ、あんなにも連れ帰ろうとしていた妻が、残ることを承諾している!?
私は薄ら寒いものを感じる。
なんだか大いなる陰謀の渦中……もしくはドッキリか?世界が自分をだましにかかってるいるように思える。
実は病院を出たら夢から覚める。そんなありもしない空想が頭をよぎる。
娘に見送られながら私は病室を出る。心配だった私の顔は困惑に変わっているだろう。
隣の妻は涙を浮かべながら娘がいかに成長したかを話している。
私は病院のリノリウムの床を歩く。今度は病院から帰るために。
待たせていた車を呼び帰路に付く。行きに心配だった心が不安に変わっている。
いったい東京で何が起こっているのか。そしてガイア連合とはなんなのだ?
遠くから戦闘音がする。ここが気づかれたか。やはり適当な下っ端では相手にならんな。
この地下施設はバブル期に開発が開始され、バブルが弾けるとともに放棄された場所。行政上の書類ですら残っているか怪しい場所だというのに見つかるとは、さすがガイア連合というべきか。
俺が敷いた結界すら貫通して探し当てるのは、よほど腕のいい術師を揃えているとみる。
数年前の仕事を失敗してから俺は、俺の邪魔をしたあいつを殺すためにあれこれとしてきた。
ガイア連合という新参の、そして強大な組織に所属するということを突き止めることさえ苦労した。霊的な探し方をすれば確実に感知される。ならば一般人を使うしかない。
田舎というものは見知らぬ人がいるとわかりやすい場所だ。だから俺の邪魔をしたあいつには手が出せず、時々その情報を得るくらいしかできなかった。
だが状況が変わった。大学に進学したのだろうターゲットは東京にでてきたのだ。
ターゲットが故郷から離れ、この東京に来たときはしめた!と思ったものだ。
霊能力者は不可知の監視には強い関心を払うが、普通の人間からの監視には甘いものだ。特に都市たるこの東京では、金さえ払えば人一人を監視するなど容易いことだ。
襲撃計画は完璧だった。ターゲットの生活サイクルを把握し、ここから俺の契約悪魔を飛ばす。ターゲットが霊能力者だろうが、結界も敷いていない建屋とは不用心で若干信じ難かった。誘われているのかと思い、襲撃を数か月待ってしまったくらいだ。
しかし失敗した。最初はこれならいけると思ったのだ。俺とリンクした契約悪魔は、霊的装備を身につけていないターゲットを追い詰めた。
だが、ターゲットが携帯を回収し、どこぞに連絡してから一変した。
信じがたいことだが、転移魔法によって駆け付けた人間は俺の契約悪魔を一蹴した。
ターゲットを倒すために、数年前の悪魔よりさらなる強きものと契約する為、骨を折ったのだが……無駄になった。
俺の契約悪魔を一撃で滅ぼした者の姿が一瞬だけ見えたが、若いどころか幼さすら感じる顔と髪が長い若造とかしか分からなかった。人の身で神をも超える力を持つ存在がおり、さらにはターゲットの背後についていたとは……己の調査不足を呪う。
何故だ、何故俺は勝てないのだ。
若き頃は熱心に修行もした。だがそんな俺を一族は認めなかった。術の実力だけではなく、心も鍛えろとうるさく言われた。心が弱いということを理解できなかった。霊能力者は実力が一番だろうに……
俺は。そんな一族を俺は捨てた。だが殺しはしなかった。その程度の情は俺もあった。
何年も経った頃、故郷の一族がメシア教に滅ぼされたと風の噂で聞いた。
そのころには霊能力を自分のためだけに使う立派なダークサマナーになっていた。だが故郷が滅んだと知った時、虚しさと共に心の中の棘が抜けた。
それまでは殺しの依頼はなるべく避けていた。だが故郷が滅んだあとは関係なくなった。
あそこが俺の最後の良心だったのかもしれない。自分ではよくわからなかったが……
そんなことを考えていれば足音がどんどん近づいてくる。
過去の事ばかり浮かぶということは、俺も最期なのかもしれん。
扉を蹴破る勢いで入ってきた人数は、10名と4体。
半分くらいの人間は見目麗しいが……あれが噂のガイア連合の式神か。
ガイア連合は多種多様な見た目の式神を使役するという。どのように作ったのかは分からん。だが、見た目だけでなく、その実力も確かという。
先頭で入ってきたのは、俺が殺しきれなかったターゲットか。
その男が開口一番、頭を下げ、手を合掌しながらながら変わったことを言う。
「どーも、六道です。ダークサマナーさん」
……理解できない。何故奇妙な挨拶をするのだ?これは心理戦なのか?
「おい、すべってんぞ」
「掲示板に影響うけすぎただろwww」
「いや、アイサツをうけているのにアイサツをかえさないとはシツレイなやつだぞ」
「相手マジ顔なんだから真面目にやれwww」
「実は心理戦だった可能性が微レ存?」
何か小声で会話をしている。やはり心理戦だったのか。心を乱してしまえば術が不発するからな……ただの霊能力集団ではないと思っていたが、やはり油断できん。
「はっ! 六道とやら、俺が放った悪魔に殺されていれば楽になれたろうに。何故殺されにやってくるのだ?私のねぐらに招待した覚えもないぞ」
はったり半分、本気半分で問いかける。
こちらには最終兵器がある。使いたくない最終兵器だが……
「そりゃ、こちらを殺しにくる奴がいるんじゃ、おちおち寝てられないでしょうに。
やばいやつは始末しておかないと……
逆になんで俺を殺しにくるか知りたいくらいなんだけど」
「貴様は数年前、俺の仕事の邪魔をした。仕事に失敗したダークサマナーの評判はわかるか?舐められるのだ。失った評判は取り戻さなければ、その後の仕事に支障がでるのだ、わかりきったことだな。
そしてやることは、まずは原因を取り除くことからだろう?」
「あー……あの時のモムノフ使役してたのアンタだったのか。あの件自体は覚えてるけどさ、その後に起こった事がジェットコースターだったんで、正直今の今まで忘れてたわ。
それにさ、別にリベンジとかしなくてもいいんじゃないの?お互い不幸になるしょ」
「お前らガイア連合にしっぽをふれというのか、そこまでして生きたいとは思わぬ。」
「ひどいやつだw」
「相手あきれてんぞ」
「一方的な憎しみとか、火サスかな?」
「いじめられた側だけ覚えてるやつですね、わかります」
「相手の顔、しにそうじゃねーかwww」
はなから相手にされぬとは……我が人生の中でも一番の屈辱よ!
やはり生かしては返せぬ。
「俺をなめるとは……やはり生かしては返さぬ。契約悪魔ですら勝てぬお前らだ、俺単独では勝てぬだろう……、だが俺には切り札がある!我が結界が敷かれしこの場所に来たことを後悔しながら死ぬがよい!!!」
「お、すごいボスっぽいぞ」
「何してくるんだろうな」
「印を結んでるから陰陽系なのかな、あーでも他の技術も併用してるっぽいな」
「これでスカったらどんな顔をすればいいかわからないの」
「笑えばいいと思うよ」
「みんな、少しはまじめにやれよ」
何を言おうともう遅い。我が秘術にて印を結び、体内のマグネタイトを凝縮していく。
ここに仕掛けていた陣を起動させるとあたりに光が満ちていく。そして私のマグネタイトと命を門とし、神を召喚する!
WAGACHIWOSASAGE KOKONI KOURINSEYO
祝詞を唱えれば自分の体が崩壊していく。だが崩壊する塵の中から神が召喚されていくのを最後に残った私の意識が感じる。
目の前の連中が殺される姿を見れないのは残念だが、あの世で先に待っているぞ!
■■月■■日 ■■■■■■■■で発生した丙号事案についての報告書
■■月■■日 ■■区■■■■■■にて地域住民から人が争う音がするとの通報にて所轄署員が急行。
マンション■■■■■■■の■■■■氏自宅にて家屋内部の破壊されているが確認された。
また、住人■■■■氏に対する傷害が確認され、先に到着していた救急隊員が病院に搬送したことを確認。
内部の破壊状況は、鑑識からの報告では刀状の物体による破壊と判定。非常に深く傷ついた跡から判断される犯人像は、非常に力の強い人間もしくは動物とのこと、注意されたし。
詳細は添付文章001号参照
救急搬送先は■■■■■■病院。この病院は宗教団体■■■■■関連の病院であり、通常は緊急搬送に対応していない病院である。後の聴取では、対応した救急隊員は上記病院への搬送決定時の記憶があいまいとのこと。
詳細については添付文書002参照
所轄署員による住人への聴取では■■■■■■■が襲ってきたとのこと。
また、署員の記憶によれば、その場に別の第三者がいたとのことだが報告書に記載なし。
所轄署員による報告書は添付文章003号参照
上記の為、所轄署員及び救急隊員への記憶ないし意識操作の形跡があったと判断。第0課■■■■課長の宣告により、当該事件担当が0課へ移管された。
事件後の地域住民への聞き込み調査では■■時■■分ごろから5分程度、ドン!という大きな音が断続的に響いたとのこと。
事件前後での不審な人影は目撃していないとのこと。
管理会社による監視カメラの映像の提供をうけ解析を行ったが、不審な人影は確認されなかった。今後、聞き込み調査範囲の拡大、周辺配置の監視カメラ映像の確認を行う。
■■月■■日追記
都議会議員■■■■氏によるお願いあり。
■■月■■日追記
衆議院議員の■■■■■氏によるお願いあり。
■■月■■日追記
被害者による被害届取り下げあり。
■■月■■日追記
■■■■課長による宣告により、本案件に対する調査は終了とする。
■■月■■日追記
被害者■■■■氏を2号対象者とする。
0課所員は注意されたし。
報告書001 廃棄
報告書002 廃棄
報告書003 廃棄
被害者調書 廃棄
・
・
・
・
・
「なんなんですこれ」
「見ればわかるだろ、オカルト事件があったが何もしないって報告書だよ」
「いいんですか、そんなので……被害者でてるし、この被害状況みるに、どうみてもヤバいやつが東京をうろついてるってことじゃないですか」
「ガチでやばいやつは自衛隊か……根願寺の仕事だよ、それにだな、この両議員はガイア連合との繋がりが噂される人物だぞ。俺はそんな人物を深堀したくないね」
「いまをときめくガイア連合ですか……きな臭いですね。
この子はガイア連合と揉めたんですかね」
「ガイア連合と揉めたのか、ガイア連合の人間なのか分からんし、わかりたくない。俺は自分の命が大切だよ」
「せめて国民の命を優先してくださいよ、警察官なんですから……」
「それは分かるがね、正体不明の存在に殺されたら、殺され損だよ。
それより五島陸将の調査の方が重要だと思うぞ。226の再来でもされたら敵わん」
「陸将まで出世した人がオカルトとはわかりませんね」
「陸自さんは脳筋だからな。厳しい訓練の果てに、見えちゃいけないものが見えたのかもしれんぞ」
「スピリチュアルな話は本人だけで終わってればいいんですけどね……
影響力ある脳筋は周りを巻き込みますから」
「これは噂だが……メシアの連中がガイア連合を認め、正式な国防霊的組織に認定したって話だ。先生方にも筋を通したってことなんだろう」
「はーー?あんな胡散臭いカルトっぽい宗教団体をですか???
えっ、つまり……協力して事案の解決することもあるかもって……ことですか?
メシアの連中神の声とやらを聴きすぎて頭おかしくなってるんじゃないんですか」
「めったなことをいうな。どこに耳があるかわからん。
それに……五島陸将もガイア連合に接近してるって話もある。」
「根願寺を放っておいてモテモテなことで。ガイア連合、メシア教と五島陸将の取り合いで真っ二つになればいいのに」
「俺の見たところ、メシアと五島は水と油だが……石鹸水があれば案外混ざるかもしれん」
「ガイア連合が界面活性剤の役割をすると?」
「分からん、わからんから俺たちが捜査しなきゃならん」
「五島陸将とメシア教とガイア連合が腕組んで踊ってるかもしれない話を捜査するとか、あーもうめちゃくちゃだよ……
こんなんだったら転属願かかなきゃよかった……」
「この情報が上のどこで止まってるかわからんし、俺たちがただ蚊帳の外の可能性もある。先生方だけでやってるのかもしれん」
「この部署、もっとかっこいいものだと思ってましたよ」
「なんだぁ、ドラマに影響受ける口かい。
相手が変わっても警察だったら足で稼ぐ、どこでも大して変わらん」
「あーあ、現実と理想、光と闇ってやつですかね」
「愚痴ってないでいくぞ」
「へーい」
コンゴトモヨロシクをやりたかっただけである。
書く項目増やすと時間がかかってしょうがないので増やすんじゃなかったと後悔。
そして、ドクイモ氏のほうでシキガミ化したTSキャラでたから間違いじゃなかったと安心