それは割といきなりではあった。
何時もの様にチャレンジャーを返り討ちにして帰宅し、日課となっている姐さんとの特訓を丁度終えた時。
幾度となく経験してきたレベルアップの感覚と、初めて経験する身体が熱くなっている気がする感覚。押し込めようと思えばできるのだろうがあまりしない方が良い気がした事、これが進化であればお嬢のひとつの目標であろうピンク色のクロバットに1歩前進する事を考えてこの感覚に身を委ねる事にした。
身体が大きくなり、口も身体の前面の大半を占める程に大きくなる。
ぶら下がる事しか出来なかった足も簡素なものながら立てるものへと進化した。
そして何より辛うじての明暗しか分からなかった眼は目の前にいるダイヤ姐さんをしっかりと認識出来る位にまで見える様になっていた。
『姐さん!!どうですか!!』
『まずは進化おめでとう。まだ夜遅いって訳でもないしミカにでもお披露目しようか。』
『はい!そうですね。お嬢は進化するところ見たかったって言うもしれないですけれどもね。』
『確かに言いそうだね。まぁ、とりあえず行こうか。』
道すがら、というかお嬢の家に向かう途中ではマンムーのメロンさんに
『あ、モモちゃん進化したの?おめでとう!』と祝われたり、
『モモンくん、まずは進化おめでとう!次はクロバットに進化だけれども、ミカちゃんとモモンくんの仲の良さならきっとすぐに進化出来るよ!頑張って!\(>∀<)/』とエールを貰ったりしつつ。
無事お隣のお嬢の家に。
『アザミー、ちょっと来てくれー!!』
「ダイヤちゃん、どうしたの〜?……あ!
ちょっと待っててね、みぃちゃん連れて来るから!!」
ちょっと顔を覗かせた直後、急いでお嬢を呼びに戻ったママさん。
少ししてからママさんと一緒にお嬢が出てきて。
「……色ちがいのゴルバット……モモンちゃん?」
なんか気の抜けたお返事を頂いた後。
「しんかするところ見てみたかった……。」
と追加のコメントを聞いて姐さんと少し笑ってしまったりしつつ。
「それにしてもモモンちゃん、大きくなったね。
みぃちゃんも負けていられないから頑張って大きくなってね。」
『いや、ポケモンには進化があるのでそれは酷というものでは……?』
「でもモモンちゃんしんかできるからずるい……。」
『これはお嬢のおっしゃる通り。』
「みぃちゃん、そんな事言わないで〜。
モモンちゃんとダイヤちゃんもそんな目で見ないでよ……。
ってそうじゃなかった。みぃちゃん、さっき進化するところ見たかったって言ってたけど。じゃ〜ん!こんなのあるんですけど〜!」
そう言ってママさんが取り出したのは青色の包装がされた飴玉……ってこれはもしかしてふしぎなアメ?ってことは今此処でクロバットにさせる気ですかママさん……。
恐くふしぎなアメであろうものをママさんから貰ったお嬢は包装を剥がして飴玉を俺の口に入れてくれた。って言うか今気付いたけど口は完全には閉まらないんですね……。まずは出来るだけ口を閉じてそして舌の裏位でゆっくり舐めてゆく。多分飲み込めるしその方が早いけどそれはなんか勿体ないので……。って言うか自分のことながら舌長いな。でも初代ポケモンの青色ver.で舌出しまくってたもんな、それはそうか。
「モモンちゃん、それなんかきもちわるい。」
……すみませんでした。確かに閉じきらない口から舌がうねうねしているゴルバットとか見たら多分俺も似たような事思うかもしれない。
って本日2日目のレベルアップとこの感覚。改めてふしぎなアメは凄い代物であると思う。
日々努力して上げているレベルアップが飴玉1つで叶うのだから。
そんな訳でさようなら俺の足。
針金か木の枝の様な簡素な足は姿を変えて絶えず空を飛ぶ為の新たな翼に。身体の前面に大きくあった口は小さくなり、ズバットの頃と同じ位の感覚に。勿論、身体自体が大きくなっているのでズバットの頃よりは実際には大きいのだろうけど。そして、ズバットの頃にはなかった目は今まで使えなかった感覚と言うのもあり解放感と改めて此処がポケモン世界なんだという事を感じさせる。個人的には使い慣れたサイズ感の口に戻ったしズバットの頃には使えなかった視覚を得られて割と満足している。簡素とはいえ自立出来た足は魅力的ではあったがゴルバットであった時間はほんの少しだったし、これまでズバットとしての自立出来ない生活にも慣れて居るので凄い不便ともあまり思わなくなってきた。
そして1番はこの色違いの身体!ピンク色のこの色違いの身体はまぁ目立つ。毛並みもママさんとお嬢のおじいちゃんによる食事管理と姐さん達とのトレーニングによって大変良好である。
「お母さん!モモンちゃんクロバットになったよ!」
「そうね、みぃちゃんとモモンちゃんは仲良しだったしきっとそのお陰ね。あ、モモンちゃんみぃちゃんに撫でて貰いたいみたいよ。」
さあお嬢、待望のピンク色クロバットですよ!
まずは地面に前後の足で着陸する。うむ、ギリギリ四足歩行出来そうだなコレ。多分そんな事するより飛んだ方が手っ取り早いけど。
「ちかくで見るとおもってたよりも大きい……。」
そうですよね、クロバット1.8m︎って表記だから翼云々抜きに身体自体もかなり大きいですよね。
多分お嬢乗せて飛べるのではなかろうか。落とすのが怖いから緊急事態でも無ければ飛ぶことはしないだろうけど。
そうして撫でられることからそのまま抱き付かれていると、
「そうだ、クロスポイズンおぼえる……。
つかって無いのはくろいまなざしかなぁ……。」
そんな訳でお嬢に撫でられると言うよりは寄りかかられながらくろいまなざしを忘れ、クロスポイズンを覚えたのだった。理由としては逃げられると困る相手は特にいないからだそう。まぁお嬢は基本的にポケモンバトルを挑むことは無いし、空のモンスターボールは持って無いからポケモン捕まえられないからね……。