地上の月兎は月を見て涙をこぼす。故郷を思い涙をこぼす。過去を悔やみ涙をこぼす。今を恨み涙をこぼす。
一一一一一一一一一一
永遠亭へと向かう。途中大きい兎に出会う。涙を流す彼女は儚く美しい。
一一一一一一一一一一
「何かあったのか?」
「あら、何しに来たの?」
「永遠亭に向かう途中だ。」
「そういえば、あなたが来るのは今日だったわね。」
「あぁ。」
「それなら永遠亭まで案内するわね。」
「頼む。」
「……。」
「……。」
「あのね。」
「どうした?」
「泣いていた理由、聞かないの?」
「聞いて何か得があるなら聞く。」
「私の気持ちが晴れる。これでどう?」
「それでいい。道中ずっと気にかかるのも煩わしいからな。」
「ありがとう……。貴方ってやっぱり変わっているわね。」
「よく言われるよ。なんなら座るか?」
「そうするわ。」スワル。
「それじゃあ、話してくれ。何かあったんだ?」スワル。
「月を見ると思い出すのよ。ここに来たときのことを。」
「逃げて来たんだったかな?」
「そうよ。私は地上の人間を恐れて、月を裏切ってここに逃げてきたのよ。」
「後悔してるのか?」
「勿論よ。あそこにいる友人も恩師もすべて裏切ってきたのだから……。」
「それなら俺も同じだ。ここに来るとき、慕ってくれていた後輩を、世話してくれた先輩を、唯一無二の親友を、家族を裏切って来たからな。」
「けど貴方は不可抗力でしょう?私のように進んで裏切った訳じゃないでしょう?」
「そういえば、俺がここに来るときの話はしてなかったな。」
「えぇ。それが?」
「ここに来る前、俺は死のうとしていた。ビルの屋上に立ち、最後の月を見ながら煙草を吹かしていたんだ。そうしたら、後ろから声がしたんだ。『死に場所を探しているなら付いてきなさい。』ってな。」
「それが隙間妖怪ね。」
「あぁそうだ。それから神社に飛ばされ、霊夢に拾われ、魔理沙と出会い、様々な異変と遭遇するうちにお前らと会ったって訳だ。」
「それが裏切りとどういう繋がりがあるの?」
「俺はここに死にに来たんだ。そのつもりだったんだ。それまで『俺はミンナヲ看取ってから死んでやる。』とか息巻いていたのにな。」
「そんなことがあったのね。」
「それでも俺は後悔しない。ここに住むことで生きる意味を初めて知った気がするからな。お前は後悔するのか?」
「後悔なんかしたくないわよ。でも……。」
「……俺からは気にするなとしか言えないな。例えお前が後悔しても時を戻すことはできない。『月の時計』でもそれはできないことだ。それならできることはただひとつだと思うぞ?」
「何?」
「今を楽しむんだよ。どうせ消えない罪だ。それなら罪を悔やまず前を向けよ。少し説教臭いがこれが一番だと思うぞ。」
「そういうものなの?」
「そういうものさ。但し、罪の償いをした後でだけどな。」
「そう……。でも償いって何をすればいいの?」
「俺もお前も元いた場所には帰れないからな、罪の償いようがないんだよ。」
「屁理屈ね。」
「わかってるよ。」