煙草の煙は恐らく俺の知らぬところで迷惑をかけているだろう。
俺は恐らく気づかぬうちに誰かを傷付けているだろう。
俺は笑って誤魔化すだろう。
あいつは恐らく俺を傷付けていることに気付いていないだろう。
笑顔が如何に美しかろうと笑って誤魔化される俺ではない。
一一一一一一一一一一
メディスンと別れ太陽の畑へと向かう。
彼女は俺を見て、美しく笑った。
一一一一一一一一一一
「あら万屋さん、何をしに来たのかしら?」
「いや、お前に新しく育ててほしい花があるんだ。」
「なんの花かしら?貴方が態々来るのだから余程美しい花でしょうね。」
「まぁな、俺はちゃちな頼み事はしないんだよ。」
「どんなお花なのかしら?」
「淡い藤色の花だ。形は夕顔ににているかな。」
「あら、本当にきれいなお花みたいね……懐かしいわね。」
「なにがだ?」
「貴方が来たばかりの頃、煙草の葉を育ててほしいと言いに来たことがあったわね。」
「そうだったな。」
「もちろん、そんなつもりでお花を育てるつもりはないし、力づくで追い払ったわね。」
「そういえば、そうだったな。」
「それにしても、今回はなんで煙草の葉が必要になったのかしら?」
「勘違いしないでくれ、俺は純粋な気持ちで煙草の花が見たくなっただけだ。」
「ようやくお花の素晴らしさに気づいたのかしら?」
「まぁ、そんなところだ。ところで幽香。」
「何かしら?」
「煙草の花言葉を知っているか?」
「さぁ、知りたくもないわ。」
「この花には様々な花言葉があるんだがな、そのなかで共通しているのは『信頼』と『孤独』だ。」
「信頼と孤独……。相反するもののようだけど、どうせあなたのことだから何か考えがあるんでしょう?」
「まぁ、そうだな。信頼と孤独は一見、相反するものだがな、俺はそう思わない。」
「その心は?」
「人はなぜ信頼する?俺は孤独が怖いからだと思う。人と親密になるにはそれだけ自分から歩まなければならない。では、なぜ人は孤独になる?そもさん。」
「説破。貴方が言いたいのは歩み寄るのが怖いから。でしょう?人は誰しも自分の心の範囲をもつ。そこに歩み寄られることも自ら歩み寄ることも恐れる。これでどうかしら?」
「あぁ、その通りだと思う。自分から自分の国に入られるのは怖い。しかし、入れないと他人を頼ることも、頼られることもない。そのような矛盾、パラドックスの中で人は生きているんだ。」
「それがどうかしたのかしら?」
「決して自分から踏み込むことはせず、いつも一歩引いたところから、決して人を信じすぎることもないお前ももう少しこちら側に来てもいいんじゃないのか?」
「疑問に疑問で返すのね……。そこは言い切った方が男らしくて素敵よ。」
「お前には敵わないな。」
「誉め言葉としてとっておくわ。」
「あぁ。」
長かった(三話)花言葉シリーズも終わりました。