私にもっと力がなければ楽しく過ごせたのかもしれない。人と楽しく酒を飲み、笑い、喧嘩をしながら過ごせたのかもしれない。
一一一一一一一一一一
「あんたが勇儀か?」
「そうだが……。あんたは?」
「万屋だ。ヤマメにあんたのことを聞いて来たんだが……。」
「ヤマメの知り合いか。それなら歓迎するよ。で、何か私に用事かい?」
「話をしに来たんだ。昔のな。」
「酒の肴になるような話なら大歓迎だが?」
「なんでも肴にしちまうようなやつだと聞いていたんだが?」
「クックック……。違いない。聞いてやろうじゃないか。」
「助かる。」
「酒は飲めるんだろう?一緒に飲み明かそうじゃないか。」
「鬼と飲み比べをするほど愚かじゃないさ。」
「それならゆっくり飲んで行きな。素面でするような話じゃないんだろう?」
「そうさせてもらうよ。」
~~~~~~~~~~
「ガッハッハ」
「笑いながら聞く話でもないだろ……」
「いや~悪い悪い。しかしだな、酒を飲んでいるんだから何でも楽しいに決まっているだろ?」
「そうかもな……」
「そうそう。辛いときは杯を空にする、杯が空になったら酒を注ぐ、杯に酒があるなら杯を空にする。これが一番さ。」
「途中から酒飲むのが目的になってるぞ。」
「酔ったら嫌なことなんて忘れるもんさ。違うかい?」
「違いないな。」
「そうと決まれば……ほら、ぐいっと行け。そのためのぐい呑みだろう?」
「そうだな。」
「お、いいねぇ。」
「……ところで」
「どうかしたかい?吐くなら厠に行きな。」
「吐きはしないから安心しろ。星熊には辛い話はないのか?今なら俺にも肴にできそうだ。」
「今さら、星熊はないだろう。酒を交わしたそのときから、その二人は親友であり、兄弟であり、親子でもあるんだからな。」
「親子は少し違うだろ。」
「違わないさ。酒には不思議な力があるのさ。新たな絆を結び、仲間を萃め、傷を癒してくれる。体の傷も……心の傷もな……。」
「本当に癒えているのか?心の傷は人に話すのが一番いいんだよ。ほら、話してみろ。」
「そんなに聞きたいなら、話してやろうかね。」
「短めに頼むぞ。長い話は聞いてる俺が寝ちまうからな。」
「注文が多いやつだな。手っ取り早く話すなら。裏切られたんだよ。人間にな。」
「辛かったか?」
「辛いと言うよりも自分が恨めしかったよ。馬鹿力のせいで畏れられ、その結果まともな勝負すらもしてくれなくなった。正面から堂々と喧嘩も出来なかったからな。」
「鬼も大変なんだな……。」
「人間だけが大変だと思っている方が間違いさね。」
「それもそうだな。」