満月は完璧な存在を意味するらしい。満月の名を持つ彼女もまた完璧な存在である。しかし満月は同時にこれから訪れるであろう崩壊も意味するらしい。
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今回の依頼を終え、外で一服する。やはり屋敷内は禁煙らしい。時計を見るとそろそろ夕食の時間だ。直に咲夜が俺を呼びに来るだろう。
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「そろそろ夕食の時間です。食堂にお越しください。」
「もう少しゆっくりさせてくれよ。今火着けたところなんだよ。」
「知りません。お嬢様がお待ちですので早くしてください。」
「あと五分だから。」
「わかりました。それでは私は五分間貴方を見張ることにします。」
「ただ立つのも辛いだろ?」
「そうですが……、貴方が出来るだけ早く食堂に向かわせるのが私の役目ですから。」
「大変だな。」
「いえ、お嬢様のためならなんでもしますよ。それが私ですから。」
「いいよな、お前は。」
「何がですか?」
「お前を含めて、幻想郷にいる人たちは何か目的を持って生きているだろ?それが羨ましいんだよ。」
「そうですか?貴方もあるじゃないですか、生きる目的。」
「ん?」
「泥水をすするような真似をして必死に命を繋ぎ、毎日無駄金を叩いて毒を吸うという目的があるじゃないですか。」
「酷い言われようだな。」
「事実ですよ。『食事と煙草を買うお金さえいただければなんでもします。』という看板は伊達ですか?」
「まぁそうだけどな。因みに煙草には体にいい成分も含まれているんだぞ。」
「例えば何ですか?」
「煙草を吸うとな、口内炎ができにくくなるんだよ。」
「は?本当ですか?」
「らしいぞ。詳しいことは知らないがな。」
「口内炎が……」
「どうしたんだ?」
「いえ、最近、口内炎に悩んでいるものですから、少し気になっただけです。」
「そうなのか、なら1本吸ってみるか?」
「いえ、今からお嬢様とお会いするので、煙草の臭いがするのはちょっと……」
「もしかしたら口内炎がなおるかもしれないぞ。」
「……」
「どうする?どっちにしろ、俺が吸い終わるまで待ち続けるのは退屈だろう?」
「それでは1本いただきます。苦しかったらすぐ捨てますよ。」
「いいよ1本くらい。」
「……それでは……いただきます。」
「ほらよ。」
「……」カチッ スゥー
「おー、どっかのアホな魔法使いとは違うんだな。」
「なんの話ですか?」
「いや、こっちの話だよ。」
「それにしても、これ何かフルーツの香りがしますね。」
「香りつきのやつだからな。俺は苦手だけど最初はそういうのが吸い易いかと思ってな。」
「いつもの貴方が纏ってるような匂いがしないので吸い易いですね。」
「それはよかった。口内炎治るといいな。」
「はい。すみませんがその煙草どこに売ってますか?」
「俺の持ってる煙草は大体香霖堂においてあるよ。箱を見せたらすぐわかるだろうよ。」
「ありがとうございます。私の身体のことを気にかけてくださって。」
「いいよ。(……俺も香霖から広告料貰えるしな。)」
「何か余計なこと言いました?」
「いや、何も。」