明日を生きたいです。
短い人生を長く生きたいです。
矛盾してますよね?
一一一一一一一一一一
日中、里を散歩していると阿求に会いました。
一一一一一一一一一一
「臭いです。どっか行ってください。」
「酷いな。」
「ただでさえ短命なのに、これ以上寿命を縮めさせないでください。」
「いいだろ。あと十数年の命なんだろ?」
「そうはいきませんよ。私は死ぬ前に転生のための準備期間が必要なのです。それを貴方の煙草を吸いたいという勝手な欲求のために邪魔される訳にはいかないのです。」
「そうか……。」
「辛いですよ。生きながらに死ぬことを望まれる人生も。」
「なるほどな。だが、それがお前の運命であり、生きる意味だろう?」
「それです!!」
「どうしたんだ?」
「私はこういう運命の星のもとに生まれたんだと諦めるのは簡単です。しかし、そこで諦めてしまっては稗田の名が廃れるというもんです。なので、少しだけ抗ってみることにしました。」
「大丈夫なのか?」
「もちろん転生のための準備はしますよ。今は優れた薬師もいますし、いつもより少し長く生きたいと思ったのです。」
「なるほど、それでこれ以上寿命を縮めたくないという訳か。」
「その通りです。短命な私からすると一日一日が大切なんですよ。」
「通算で200年位生きているのにか?」
「そうですけど、死ぬ度に交遊関係が消えるのは辛いですよ。あと、十数年経って今の私が死んで、次に転生したときにはもう貴方も霊夢もいないんですから。」
「月並みな言葉だが今が大切なのか?」
「いえ、将来が大切なんですよ。私は現世にいる時間が短いですからね。人の死に目にも、その人たちの老いる過程も見ることができないのです。」
「お前も苦労してるんだな。」
「人間は生きていれば必ず苦労はします。大切なのはその苦労に気づけるかどうかです。」
「苦労することが必要みたいな言い方だな。」
「もちろんです。苦労は人の根底を作るものの一つだと考えています。苦労を知らない天人の我儘っぷりを見ればわかるでしょう。」
「かもな。けど、苦労のせいで心を殺しちまうやつがいることを忘れるなよ。」
「忘れませんよ。……と言っても忘れられないんですけどね。」
「それならよかった。」
「この力がなくとも貴方のことは忘れないでしょうね。」
「そうか?」
「ええ、私の密かな野望の邪魔をした悪魔として、ですけどね。」
「それは酷いな。」
「けど、それほどにまで貴方の印象が強いのも事実です。人の身であり、しかも特別な力を何も持たないにもかかわらず魑魅魍魎と対等の立場で商売を行う。この事はしっかりと幻想郷縁起に記載します。」
「なんか照れるな。俺の記事が幻想郷縁起のしかも英雄伝の頁に載るっていうのは。」
「何を勘違いしているんですか?貴方が載るのは英雄伝ではなく、妖怪図鑑の方ですよ。」
「は?」
「貴方は幻想郷で最も妖怪に近い人間なんですからその事を肝に銘じて清く正しく生きてください。私が生きている間に英雄伝の内容を妖怪図鑑用に書き換えるのは些か面倒ですから。」
「……わかったよ。」