通りゃんせ通りゃんせ
行くも帰るも闇の中
前の見えぬ恐ろしさ
どうか明かして下しゃんせ
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普通にぬえと会いました。
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「あれ?万屋じゃん。何してるの?」
「今から酒盛りの時間だ。来るか?」
「止めとくよ。後が怖いからね」
「真面目にやっているようで何よりだな」
「そりゃどうも」
「帰るのか?」
「日が落ちるまで羽伸ばしてこいって聖に言われたからね。とりあえず彷徨いてるよ。」
「不思議なものだな……」
「何が?」
「都を大混乱に陥れた大妖怪の正体がこんなちんちくりんなんだからな」
「ちんちくりんは失礼じゃない?それに私の場合、実際の姿形は意味をなさないの」
「そういえばそうだったな。で……」
「何?」
「もう隠さないのか?」
「隠すもなにも、姿の見えない、意味不明なものを勝手に勘違いして化け物にしたてあげたのは人間じゃない」
「そう言うなよ。訳のわからないものは人間なら誰でも怖いんだよ」
「人間っていつもそう、わからないもの、知らないものが怖い。怖いから知りたい。けど、それでもわからないものは神秘として、謎として、奇跡として残す。本当に欲張りよね」
「俺は新しいことを知ると言うよりも、古いものを伝える仕事だからな、そこら辺はよく知らないな」
「行方不明、原因不明、正体不明、意味不明……」
「けど、すべてを知るのもつまらないだろ」
「全てを知ろうとするのは人間の定め。与えられた奇跡をもれなく享受するのが生き物の定め。与えられた奇跡を奇跡のまま維持し続けるのが妖怪の役目だとしたら、貴方はどうしたい?」
「すきま風の音を化け物の鳴き声、迷子を神隠し、悪夢を貘の仕業と考え続ける生活は無理だろうな」
「話が重いわね。止めにしましょうか」
「そうするか」
「ところで聖から聞けって言われたんだけど、」
「何だ?」
「今後の予定は?暇ならうちで修行させたがってるんだけど、来る?」
「修行は嫌だな。適当に用事があるとでも言っておいてくれ」
「本当は?」
「急ぎの用事はない。だが、そろそろ忙しくなるかもしれないな」
「何かあるの?」
「ちょっと遠出の予定だな」
「外に行くの?」
「さぁな。賢者様の命令だからな。逆らわさせてくれないと思うぞ」
「そりゃあ貴方も大変ね」
「だから聖にもいつか行くと伝えておいてくれないか?」
「しょうがないわね。頼まれてあげるわ」
「助かる」
「で、」
「何だ?集る気か?」
「違うわよ。……いや、違わないのかしら?」
「土産なら買ってきてやるから安心しろ」
「何買ってくるつもりなの?私の働きはお土産の内容によるわよ」
「そうだな……鉄の輪、八ッ橋、ワラスボ、あごだし、木刀……」
「貴方は修学旅行でも行くつもりなの……?」