生きた屍に憧れた時期もありました
「死して尚も生きる」って何となくかっこいい気がしたのです
14才の頃の話です
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小さな唐笠に呼ばれ墓場へ向かう
理由は未だにわからない
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「だーれーだー」
「里の万屋だ。用事があってきた」
「万屋?」
「誰かと思ったら邪仙の付き人か……」
「芳香は娘々のお供だー。付属品っていうなー」
「そこまで言ってないだろ」
「で、用事ってなんだー?」
「ここに住む唐笠に呼ばれてきたんだよ。何の用事かは知らされてない」
「唐笠って……」
「知ってるだろ、青髪の……」
「小傘のことかー」くわんば
「あーそうだな、その小傘に呼ばれてきたんだよ」
「あいつは何考えてるかわからないからなー」
「お前が言うな」デコチョップ
「痛いじゃないか。やーめーろーよー。弱いものいじめはよくないぞ」
「はいはい」
ぴゅーーー
「風が出てきたな」
「風は嫌いだー。お札がとーれーるー」
「最近、曇りばかりで知らなかったな……」ウワノソラ
「おーふーだー」
「今日は満月だったんだな……」
「少しは相手をしてくれないのか?」
「悪かったな宮古芳香」
「構わないよ。君はあの姿が嫌いだって言っていたしね」ニカッ
「会話が成り立たないのが嫌いなんだよ。深夜のペンギンの周りに集まるやつらくらい嫌いだ」
「そうだったね。君はそういう人間だったね」
「人の好き嫌いは昔から多いんだよ。ガキの頃の知り合いは半分近く言葉が通じなく……ん、」(人差し指で口をおさえられる)
「人の癖に変に達観した振りをするのは君の悪い癖だ。我々からしたら君は赤子とそう変わらないってことを忘れないでくれよ」
「お前は20年も生きてないだろ」
「君は浅はかな人間だ。関節が曲がらないから、心臓が動いてないから、その程度のことで人の生死が説けるとでも思っているのか?」
「生物の定義は酸素を取り込み二酸化炭素を出すことだ、お前にそれができているのか?」
「君の定義なら蝋燭も生きていることになるな」
「もうひとつある。酸素と有機物からエネルギーを取り出し水や無機物を出すことだ」
「君が以前話してくれた『自動車』……だったかな?あれの仕組みはとても興味深かったな」
「外部からの刺激を電気信号に変えて行動へと還元することができる」
「そういえば、勝手に止まる車があったんだろう?実に興味深い話だね」
「負けたよ」
「はじめから勝負する気などない癖に減らず口だね」
「そうかもな」
「ところで……」
「本当のところ、生物の定義とはなんなんだい?さっきから君の問答の片手間に考えていたのだけど結局答えはでなかった」
「一つの言葉じゃ表すことができないらしい。有機物からエネルギーを取り出し、自らの体内で作り出した物質をもとに自分と同じ機能を持つ子孫、細胞を造る、っていうのが一番短いと思う」
「難儀だな」
「そうだな」
「しかし、君と私は似ている」
「突然どうした?脳でも腐ったか?」
「一度死に、邪仙のお陰で再び息を吹き返したこの宮古芳香と、生きながらに死んだような生活を送り、まさに死のうとしたときに賢者お陰で再びいきることにした君と、似ていると思わないか?」
「そうかもしれないな」
「ならば、宮古芳香も生物として扱われてもよいかもな」
「さぁな……ところで誰に聞いたんだ?そんな昔の話」
「芳香は忘れっぽいからな、いろんな人や妖怪がいろんなことを話しに来るんだ。そのとき聞いた」
「あいつも来たのか……」
「あいつと言うのが誰かは知らないが君の思うその人なら来たぞ。君が昔『パッフェ』とやらを食べたときの話もしてくれた」
「あのおしゃべり賢者が……」
「やはり君も可愛らしいところがあるんだな」ペタッ
「今すぐ忘れてくれ……頼むから」
「んー?」
「芳香か……」
「私の芳香さんになにかご用でしたか?」
「邪仙か」
「芳香さんは私の芳香さんなんですか誰にも渡しませんよ」
「わかってるよ」