存在しないはずのものを存在しないと言い切ってしまうには世界は広すぎるし、ヒトは小さすぎる
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お腹すきました。
里へと軽食を取りに行こうと思います。
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「あれ?バイトさんじゃないですか」
「小悪魔、俺が図書館で働いたのは一度きりだ。バイトというには少なすぎるだろ」
「ふっふっふ、バイトさんは一度、パチュリー様のもとで働きました。これはすなわち、私の後輩、もっと言えば部下に、極論を言えば手下になったと言うことになります。すなわち!バイトさんは私のサーヴァントになったということです」
「契約の手続きは済みましたか」
「もちろんです。ここにその書類があります」
「持ち歩いているのかよ……」
「バイトさんをいつでも使役できるように必要なものは基本的に持ち歩いています」
「確かに俺の筆跡だな」
「もちろんです」
「いつ書かせたんだ?」
「そりゃあ、いつもはあるはずのない入門表に細工をして……」
「いかさまじゃねぇか」
「けどそれは間違いなくバイトさんの手で書かれたサインです。後は血判をとって私の血を飲ませれば……」
「つまり、手続きは完了してないんだな?」
「8割方完了してます」
「それは完了してないって言うんだよ」
「なんなんですか!?私のサーヴァントは不満なんですか!?」
「不満以外の何がある?」
「ぐぬぬ……」
「仕方ない、紅魔館にいくぞ」
「何をしにいくんですか?」
「パチュリーにこの契約書の有効性について聞きに行くんだよ」
「頑張ってください」
「お前も行くに決まってるだろ」
「止めましょうよ。紅魔館の手前の森にものすごく恐ろしい化け物がいたんですから」
「どんなやつだ?」
「二本足で立ち、体毛は薄く、体にたいして腕も足も短く、その腕力もさながら、不意討ち、罠、木登りなど高度な知性を持ち、近くにいた動植物を次々と食い荒らし、火を自在に操り、体液は濃塩酸に匹敵する劇物、体長は一メートル以上もある地上生物にしては大型なものです」
「そいつは観ておかないといけないな」
「信じるんですか!?」
「世界は広いんだ。そんな空想みたいな生き物がいてもおかしくないだろ」
「誰も見たことないような化け物でもですか?」
「誰も見たことないってことは、これから誰かが見るかもしれないだろ」
「そんなもんですか?」
「そんなもんだよ。オレンジの火をはくトカゲがいても、音速で走るネズミがいてもおかしくねぇんだよ」
「不思議な世界ですよね」
「そうだよ。世界はこんなにもつまらなくて、素晴らしくて、穢れてて、美しいんだよ」