人は人の上に立つことで生きていく。
上に立つことの許されぬヒト
上に立たれることのないヒト
幸福者とは?
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九十九姉妹の演奏の後、家に帰るとやたら偉そうな小物がいました。
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「ようやく帰ったか」
「お尋ね者様、どうしたんだ?地下を追い出されたか?」
「お、私を知ってるのか。ならば話は早い。手を貸せ」
「俺の手は煙草と酒で埋まっている。貸し出せる余裕はない」
「ならば体を貸せ。今は数が必要だ」
「なぜ俺に拘るんだ?半年前にも断った記憶があるんだが」
「弱小妖怪の地位を向上させようと思わないのか?」
「残念ながら俺はヒトだ。妖怪ではない」
「嘘だね」
「なぜそう言う?」
「妖怪はヒトを化かすから妖怪なのか?」
「妖怪はヒトを化かすものだ」
「しかし、化かすものがすべからく妖怪ではない。人も人を化かす」
「で、人を化かす俺も妖怪であると?」
「少し足りないね」
「何がだ?お前への配慮か?」
「妖怪はヒトを化かすものであり、化かす人の成れの果てでもある」
「嘘つきは妖怪の始まりか……」
「嘘つく人はヒトでなくなる。将来は二口女か?飛縁魔か?」
「嘘つきは天の邪鬼だ。心にもないことを言い続ける。嘘をつき続ける。」
「残念だったな。天の邪鬼は心にもないことを言い続ける訳ではない。心がいつの間にかにそうっなているんだ。心がそうなっているならば嘘にはならない。嘘とは事実ではないことを言うこと。心が嘘を信じたならば、それは事実になる。そう思わないか?嘘つきさん」
「嘘をついたことはない」
「ならば本心を語ったことはあるか?自分が思うことを自分の言霊に乗せて放したことはあるか?」
「……」
「自分の心を語ったことがない!?それは自分の心に嘘をついたのと同義じゃないのかい?」
「……」
「あんたの夢は、望みは、野望は何だい?これまでの友人の中に嫌いなヤツもいただろう?仕方なく付き合ってきたヤツもいただろう?したくもないことをさせられて自分に『仕方がない』と嘘をついたことはないか?笑って済まないはずのことを笑って済ましたことはないか?それでも嘘つきでないと言うか?」
「……嘘はついた」
「やっと認めたね」
「嘘をついたことを悔いたことはない」
「あんたはそれでも心に嘘をつくか」
「嘘は心に付けるもので心を浸けるものだ。そして突き抜けなければ誰かを傷つける」
「……もし……あんたが後1㎜でもこちら側に来るのならばもう一度ここに来る。それが弱小妖怪の味方『鬼人正邪』様だ」
「半年前にもそう言っていたな」
「私は過去は捨てる主義なんだよ」
「お前は嘘が下手だな」
「あんたよりも巧いよ。少なくとも自身を傷つけるようなヘマはしない」
「それもそうだな」
自分自身に嘘をつき、騙せる人は嘘発見器に引っ掛からないそうですよ。
私も嘘発見器を騙したことがあります。
貴方の心は貴方のものですか?
それとも
貴方の心に棲む貴方のものですか?