舞踏会にはお面をしていきましょう。
家柄も顔も関係ない。
踊りたい人と踊りましょう。
鉄仮面さん。
目も鼻も口すらも隠している。
貴方はどのような顔で笑うのですか?
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能というものを初めて見た。
やはり、古典芸能に疎いのだと改めて感じる。
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「お疲れ様」
「珍しいお客様ね。新しいお客様が来ることは嬉しいことだわ。それこそ頬が弛み、落ちるほどに」
「頬が落ちそうな気配は一切しないがな」
「そう?」
「いつも通りの無表情だな」
「これでもいつもより口角は上がってるし、目は細めてる」
「分かりにくいな」
「でも、私はお面が変わる。口調が変わる」
「そうだな」
「でも、貴方の持つお面はピエロのお面一枚きり」
「そうか?」
「また笑ってる。貴方は笑っていれば何事も上手く転がると思ってる」
「違うか?」
「それは本当の笑顔の持つ力。でも、貴方の笑顔は仮面。目が笑ってない」
「生憎、笑うのは苦手なんだよ」
「知ってる。」
「知られていたか」
「貴方が笑えない理由を教えてほしい」
「なぜ?」
「笑えない理由を知れば、その理由を排することで笑えるようになれるかもしれない」
「理由は教えない」
「ならばどういう状況におかれているのか教えてほしい」
「珍しく食い下がるな」
「カメーンだって笑う。ならばお面も笑えるはず」
「カメーンの笑顔だって怖いだろう?」
「それでも無表情ではない」
「それもそうだな」
「で、」
「何だ?」
「教えてくれないの?」
「わかったよ。そこまで言われて断るのは大人気ないからな」
「私、1400歳。貴方、31歳……大丈夫?」
「わかってるよ。自分の年を忘れるほど老けてない」
「教えて」
「俺の心の状況だったな。……忘れ物をして言い訳をするときの気持ちって言えばわかりやすいか?」
「愛想笑いのことね」
「まとめるなよ」
「人というのはわからない。たかが数十年しか生きてないのに、巧く嘘がつけるわけがないのに嘘をつきたがる。「りすくまねじめんと」が下手。昔話でも言ってる「正直者が報われ、嘘つきは罰を受ける」と」
「目前の利益に囚われているから目前の危機にしか目が届かないんだよ。たかが数十年しか生きられないんだ。未来のことは二の次なんだよ」
「人というのはわからない。簡単に心を壊してしまう。そのくせ、こころが壊れたことを認めない、もしくは気付かない」
「そんなもんだよ。ヒトは弱く、強い。誰かが思っているよりもな」
「誰かって誰?」
「ヒトよりも強い誰かだよ」
「ヒトよりも弱いのによく言うわね」
「ヒトよりも弱いから人の弱さがわかるんだよ」
「また屁理屈捏ねてるのね」
「いつも通りだよ」
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