東方友煙記(完結済)   作:まっまっマグロ!

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下野伊予(下野さきの母)の場合

人は悪を見つける。

 

例え、悪が悪でなくとも、悪を見つけ、悪を裁く。

 

例え、裁く力がなくとも、悪を裁き、首を捌き、掲げる。

 

――――――――――

 

校長に呼び出される。

 

恐らく、『例の件』だろう。

 

――――――――――

 

「失礼します」

 

「あら、相模先生、こんにちは。」

 

「これはこれは、下野PTA会長様。今日はどういったご用件で?」

 

「先日、うちのさきが相模先生に脅されたと泣いていましたので、事実確認に参っただけですわ」

 

「で、本心は?」

 

「本心は隠すものですよ。それは相模先生の得意分野では?」

 

「それもそうですね。じゃあ始めましょうか」

 

「では、一昨日の放課後、さきに対して罵声を浴びせた、これは事実でよろしかったですか?」

 

「間違いありません。確かに一昨日の放課後会長さんの娘さんに対して大声で指導を行いました」

 

「その事に関して、何か言うことはございませんか?」

 

「ひとつあるとすれば、もう一度怒鳴り付けたいですね」

 

「罵声を浴びせることが生徒指導になるとお考えですか?」

 

「もちろん、感情的になっていたことは事実であり、私としてもよい生徒指導ではなかったと考える点は多々あります」

 

「ならば娘に何か一言言うべきでは?」

 

「ですから、私から娘さんに対して謝ることも、私の考えを訂正することもしません。指導の方法に関しては不十分であったと思う点もありますが……」

 

「では、自らの非を認めるのですね?」

 

「話は最後まで聞けよ。幼稚園で教わらなかったのかメガネザル」ボソッ

 

「何か言いましたか?」

 

「いいえ、何も」

 

「コホン、先生は指導に関して不備があったとおっしゃいましたね?」

 

「はい、言いました」

 

「自ら、過ちを犯したことを認めるんですね?」

 

「認めませんよ。まず第一に、娘さんが他校の男子生徒と繁華街で遊んでいた時間は深夜であり、指導を受けるべき時間帯です。さらにあの繁華街はここ数ヵ月、少年犯罪が増加傾向にあり、近辺の中学校、高校に対して、県警の方から指導を強化するように通達を受けています。」

 

「……例えそうであったとしても、児童生徒に対する体罰は禁止されています」

 

「それはもちろん心得ています。しかし、そこで示す体罰というのは罰として成立しないほど過酷なものかどうか重大な論点です。例えば、生徒が授業に集中しないため、5分間の起立を命じたとすればこれは体罰になりますか?」

 

「なります。肉体的、精神的苦痛を与えることが目的であるため、それは体罰です」

 

「正解は否です。確かに肉体的、精神的苦痛を与えたかもしれませんが、5分間の起立は授業を聞かない者への罰として妥当であると判断されるからです。このように犯した罪、そしてそれに対する罰、これら二つが釣り合ってこそ指導は意味を持つのです」

 

「前時代的考えです。学校は学問を修得すべき場所です。子供の人格形成は家庭に一任するのがよいのでは?」

 

「確かにそれが一番正しい形なのかもしれません。しかし、テメェみたくガキかわいさに怒れねぇような馬鹿な親がいるからこっちに余計な仕事が回ってきてるんだよ」

 

「本性が出ていますわよ。こっちは貴方の言霊が必要なのですから速くゲロって頂けると幸いですわ」

 

「ならば結論を言いましょう。お宅の娘さんは社会的によくないことを、端的に言えば、悪いことをしました。それは普通であれば警察の厄介になるようなことです。しかし、幸いにも今回はそのような事態にはなりませんでした。しかし、今後同じように社会的によくないことをした場合、いつか必ず最悪の結果を迎えてしまいます。そうならないために、私は人として少し厳しい口調ではありましたが、娘さんに対して適切な指導を適切なタイミングで適切な方法で行いました」

 

「……」

 

「文句がなければこれで失礼します」

 

「相模先生……」

 

「なんでしょうか?」

 

「京都の大学を卒業されたらしいですわね」

 

「はい」

 

「在学中、何でもサークル活動に熱を出されていたとか」

 

「そんな熱血的な活動を行うサークルではなかったですけどね」

 

「楽しかったのでしょうね」

 

「そうですね、いい思い出だったと思っています」

 

「さぞ素晴らしい仲間と大学生活を楽しんだんでしょうね」

 

「そうですね。楽しんでましたよ。少なくともあの頃は」

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