Mは動かない    作:ワタリ3@ぼちぼち浮上

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Cの陰謀とは直接的なつながりは無いです。


EP1 Mは動かない/プロローグ

 

風都風花町の一丁目に豪華な屋敷が建てられた。

その屋敷には、平社員が頑張って建てた一軒家も涙目になるほどの、圧倒的な広さを有しているにも関わらず、住んでいるのは東京から来た男性たった1人という噂がある。

 

誰が住んでいるのか、何の為に風都に移り住んだのか、謎が多いこの屋敷に兄弟の空き家泥棒が侵入した。

 

「こんな夜中に玄関開けっぱなしとは不用心だな。」

「だな…それにこんな立派なお屋敷。きっと金目の物がうじゃうじゃだぁ!」

 

空いていた玄関から入った2人は、リビングへ繋がる扉を開く

18世紀のイギリスにタイムスリップしたかのようなアンティーク風な部屋の雰囲気に驚きながらも、金目の者がありそうだと期待が高まる。

 

「家主が起きる前にさっさと済ませようぜ!」

 

1人は巨大な棚、もう1人は部屋の真ん中に置いてある、漫画家が使う様な傾斜作業台や机の引き出しを漁り、それぞれ金目の物を探す。

 

実際、部屋のあちこちに飾られている絵画や小物はどれも高価な物だが、残念ながら2人にそれを見定める程の知識や観察眼は持ち合わせて無い。

 

ふと、泥棒に弟は、傾斜作業台に置いてあった数枚の漫画原稿を見つけ、手に取り軽く目を通した。

 

「漫画原稿?…これって髑髏探偵ソウジ!?」

 

それは学生時代よく読んでいた、少年漫画の生原稿であった。

 

「知ってるのか?」

「ええ、昔読んでました。いやー懐かしいなぁ…もしかしてここは岸田先生のお家?!」

 

髑髏探偵ソウジの作者……岸田一誠。

その界隈では名の知れた漫画家であり、数多くの名作を世に出して来た名作家だ。

 

 

2人は驚いていると、突如リビングの明かりが点く。

 

「いま聞き捨てならない事を言ったな?」

 

明るくなった事で、2人は初めて、レザーチェアに座っていた男性の存在に気がついた。

 

「お、起きてたのか!?」

 

「岸田一誠……やっぱり本物だ!!」

 

この屋敷の主人が普通にリビングにいた事に驚く兄と、本物の岸田一誠を目の当たりにして驚く弟。

 

彼の素顔は連載雑誌で何度か乗った事があるため、素顔を知るものは多い。

 

「家の主が何者か知らないで入って来たのか?思ったより素人だなぁ」

 

「な、なんだと!?」

 

岸田は持っていたGペンを弟に向ける。

 

「それより、今君“懐かしい”と言ったね?今は読んで無いのか?」

「え、あ、はい」

「何故だ?」

「え?」

「何故読んでいないかと、聞いているんだ」

 

岸田は立ち上がると、弟にじりじりと高圧的なオーラを放ちながら歩み寄り、問い詰める。

 

夜、2人の泥棒が不法侵入しているにも関わらず、怯えるどころか、今にも襲いかかりそうな雰囲気だ。

 

「い、いや……何となく読まなくなっただけで」

「お、おい!強盗が押し入っているんだぞ!怖くは無いのか?」

 

「僕が君達のようなこそ泥棒が侵入しやすいように、ワザと戸締まりをしなかったんだ。今後の漫画の参考のために泥棒がどんな()()持っているか知りたくてね。……だが今はどうでもいい。なぜ君が僕の漫画を読むのを辞めたのか、その理由を今は知りたい。」

 

Gペンを机に置き、懐を漁り出した岸田。

それを見た泥棒の兄は叫んだ。

 

「お、おい!何をする気だ!まさか警察を呼ぶきか?」

「警察は後だ、今はもっと重要な事だ」

「な、なに?」

 

それでも何をしでかすか解らない。本来の目的を達成するために、2人は最終手段として”悪魔の小箱“を取り出した。

 

岸田はそれに見覚えがあった。

 

「……ほう?」

 

「へへ、これが何か知ってるらしいな?」

 

それは風都の裏で出回っているという、人を怪人化させる悪魔のアイテム『ガイアメモリ』

 

2人は同じCのイニシャルが入った赤茶色のメモリを起動させる。

 

『『コックローチ』』

 

それぞれ、首元に生体コネクタ出現し、そこにガイアメモリを指すと2人はゴキブリの怪人“コックローチ・ドーパント”に変身した。

 

『大人しくした方が身の為だ。死にたくはないだろ?』

 

普通だったら、こんなグロテスクな見た目の怪人を見たのなら逃げ出したくなるのが人間の性である。

 

だか岸田は思いっきりため息をつき、不満を漏らした。

 

「ドーパント、しかもコックローチ……ゴキブリねぇ。はぁ残念だよ。コックローチの記憶は既に()()()。もうそれに興味は無い。」

 

『な、何を言っている?』

『大人しくしないんだったらやっちまおうぜ!』

『ああ!!』

 

死なない程度に彼を痛ぶり、金目の物を盗んでとんずらしよう、2人は岸田に襲い掛かろうとする……

 

 

しかし、彼ももまた懐からガイアメモリを取り出し、起動する。

 

 

 

『メモリー』

 

 

 

「「!?」」

 

 

岸田が持つガイアメモリは通常のドーパントメモリとは違い、半透明の美しい青緑色のパーツで構成されており、より機械的なフォルムをしていた。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、記憶は開かれた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、漫画家の岸田一誠!?あの有名な?」

 

「そうだ。代表作はビブリオユートピア出版の週刊少年ホッパーで連載中で最近アニメ化が決定した。探偵漫画『髑髏名探偵ソウジ』。この漫画のお陰で、舞台であるここ風都の観光客が数年々増えていってるらしい。過去作でいうと『オメガ戦士』『イマジネーション列車』『Spade &Heart』どれも面白れぇ漫画だった。最近は風都のローカル雑誌で連載している『ふうと君の4コマ漫画』も描いてるって話よ。

 

「く、詳しいですね刃野さん」

 

翌朝、岸田の元に風都署超常犯罪捜査課の刑事である刃野幹夫と真倉俊の2人が岸田の元を訪れていた。

 

あの後、2人の記憶を隅々まで()()()岸田は警察に通報し、ガイアメモリを所持していた事から、ガイアメモリ関連を担当する2人が直々に調査しに来たのだ。

 

しかし、泥棒の事などお構いなしに、浮かれる刃野刑事

 

「あったりまえだ、俺さ結構大ファンなのよ、さっきサインもらったんだ」

 

彼のツボ押し器には、デカデカと岸田一誠のサインが書かれていた。

 

「な、勤務中ですよ!?」

 

「まぁ、それより、強盗2人も取り押さえるとは、漫画作家にしてはなかなかの運動神経だな」

 

警察がついた頃には犯人の2人はすでにロープで拘束されており、所持していたガイアメモリも粉々に砕かれていた。

 

肝心の岸田本人は、現在、漫画原稿を書いており、刃野刑事に話しかけられてもなお、2人の方を見る事なく返答する。

 

「こういった職業でも体は資本だ。定期的にジムに通って鍛えている」

 

「いやいや、鍛えた程度でどうになできる相手じゃ無いですよ!ガイアメモリを持っていたんですよ?!」

 

「戦闘のいろはについては以前、プロの人から直々に()()()()()()()。メモリを使われる前に取り押さえたまでだ」

 

だが不審な点がある。

 

それは犯人の2人が異様に怯えていた事だ。

 

連行した時の2人の反応を思い返す。

 

『もう!もう勘弁してくれ!これ以上見ないでくれ!』

『関わりたくねぇ、思い出したくねぇよ』

 

格闘でとり抑えたにしては目立った外傷はなく、彼らの反応は明らかに可笑しかった。

 

だがこの件に関しては今は深く捜査はできない。

何故なら、()()()()()()()がまだ未解決であるからだ。

 

「へー、大したもんだ。だがな先生。漫画家であろうと一般人。こんな無茶なことをするもんじゃ無い。この街はなにかと物騒だ、()()()()()()()()()()()()ってニュース観てないのか?」

 

謎のドーパント大量発生事件

市民の多くが謎のガイアメモリにより、強制的に変身させられ大暴れしたという不可解すぎる事件だ。

 

現在、彼らの上司が単独で捜査にあたっているが、今のところ連絡はない。

 

「余計なお世話だ。あいにく自衛の手段は持ち合わせている。さぁ話は終わりだ、僕も暇じゃあないんだ」

 

「お、おいお前!「まあまあま」」

 

あまりの失礼な態度に真倉が説教をしようとするも、刃野に止められる。

 

 

「大変です!!」

 

警官の1人が急いだ様子で現れる。

 

「お、どうした?」

 

「風都タワーが……占拠されました。」

 

「「え!?」」

 

(ほう?)

 

原稿に集中していた岸田も流石に手を止め、急いでリビングのテレビを点ける。

 

 

『風都市民諸君に告ぐ』

 

画面いっぱいに映し出されたのは、黒いマントを羽織った白い戦士。

 

『(俺は仮面ライダーエターナル。ガイアメモリに命運を握られた、哀れな箱庭の住民達を解放する者だ)』

 

「仮面ライダー……。」

 

 

刑事の2人が信じられないものを見ている中

外では面白い事になっている事実に、岸田は思わず笑みを溢した。

 

 

(……だからこの街は面白い)

 

 

 

 岸田一誠……悪の巣窟である風都に刺激を求めにやってきた、どうしよもない天才漫画家である。

 

 

 

 

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