カミカゼ☆エクスプローラー NextTime 作:Gショック
[キーンコーンカーンコーン]
「お、終わった~・・・」
ダルイ授業より、ピリピリした男子の視線が・・・。
既に、クラスの連中はグループを作って教室を出ていっている。
「大和ちゃん、大丈夫?」
「[キョロキョロ]・・・ああ、まぁな」
「???」
周囲を警戒しながら夕花に答える。
「じゃあ、夕花、私は部活に出るから。大和もまたね」
「うん、またねっ」
「また明日な」
雪路は、エナメルバックを肩に担いで教室に出ていった。
・・・そろそろ、俺も出ようかな。
「うっし・・・夕花。この後、予定とかあるか?」
「ううん。今日は非番だから」
非番・・・? あ~、そういえば、夕花は風紀委員だった。
しかも、その委員の中でも実力のある"特殊班"というのに所属しているとの、雪路からの情報である。
ちなみに、昔は"特別取締り班"と呼ばれていたらしいが、「学園内の安全を確保するため、メティスを行使して風紀を保つ特別班」という名目が付き、"特殊班"と名称になったようだ。
「んじゃ、イチゴパフェの食える場所に行くとするか」
「えっ!? いいの!?」
「・・・涎、垂れてるぞ」
「///!?」
「ん~~~♪♪♪」
「・・・本当、美味しそうに食べるな」
『ヴィルフランシュ』という名前の喫茶店で、約束通りイチゴパフェを奢った。
しかもスペシャルサイズなので、値段が1000円を超えている・・・まぁ、あえて俺はそれを奢ったのだが。
「♪♪♪」
この幸せそうな顔を見れるだけで、なけなしの金を注ぎ込んだ甲斐があるってものだ。
「そういえばさ、おじさんとおばさんは元気か?」
「っ・・・」
「夕花?」
さっきまでのポワポワした空気が、一気に凍り付く。
「どうしたんだよ?」
「・・・あ、あのね。お母さんとお父さんは─────」
「きゃあああああっ!!」
「「っ!?」」
悲鳴が轟いた後、パリンッパリンッ! 皿が店内の床に飛散した。
その後、男たちの怒号が響き渡ってきた。俺達は顔を見合わせて、すぐにテラスから店内に駆け込んだ。
「────この野郎、もう一度言ってみやがれ!」
「ああ、何度でも言ってやるよ。女にしかデカい面が出来ない弱虫小僧共ってな」
屈強な体躯を持つ男子生徒に、二人の男子生徒が突っかかっている。
野次馬はその様子をただ遠巻きに眺めていて、その中でもウェイトレス姿の背の低い女子が、どうしていいのか分からずにオドオドしていた。
「大和ちゃん、危ないから下がってて」
「お、おい夕花────」
俺が止めに入る前に、夕花が一歩歩み出た。
制服の腕に"風紀委員"と彫られた腕章を付け、堂々と一言を発した。
「止めなさい!」
「ああ?────げっ! 風紀委員!?」
「これ以上、騒ぎを大きくするなら実力行使で連行します」
パフェを幸せそうに食べていたあの夕花は、もういない。
腕章を指で見せびらかし、堂々と男たちの前に立つその姿に、俺はまたもや見惚れてしまった。
「チッ・・・行こうぜ」
男二人はそそくさと退散し、相手の男子生徒も舌打ちを打って喫茶店を出る。
「ま、待って、ガンちゃん!」
その男子生徒を追うのは、先ほどオドオドしていたウェイトレス。
・・・あの二人、知り合い同士か?
「ふぅ~・・・大和ちゃん、戻ろっか」
「いや、まぁいいけどさ・・・めっちゃ注目を浴びてるぞ」
「ふぇ?」
ようやく、そこで夕花は周囲に意識を向けた。
店の従業員も、野次馬達も「すげぇ!」だの「かっこいい!」だの、黄色い歓声を上げていた。
「///」
[グイッ!]
「ゆ、夕花・・・?」
耳まで赤くした夕花は、俺の手を引いて、店から脱出する。
何で、あそこまで堂々と出来たのに、今はそんなに恥ずかしがっているんだか・・・。
結局、人気のない道をただただ引っ張られ続け、気付けば上ヶ瀬市で恋人の隠れスポットになっている(比呂が情報源)臨海公園まで来てしまった。
「おい、もういいだろ・・・夕花っ!」
「はうっ!? あ、あれ? ここは?」
無意識でここまで来たのか・・・怖ろしい。
「ったく、格好いいと思ったが、素がこれじゃあな」
「ふぇ? なに?」
「いんや、何でもない・・・よっと」
近くのベンチに腰を下ろすと、自然に夕花も俺の隣に座った。
"恋人の隠れスポット"と言っても、平日のまだ日が昇っている時間だ。人の気配が無い。
「・・・変わったよな、お前」
「そう? 大和ちゃんの方が変わったと思うよ」
「そうかぁ?」
「そうだよ。だって、私の知ってる大和ちゃんは、自分勝手で、無鉄砲で、すぐ頭に血が昇って、すぐに手が出て、嫌なことがあると怒鳴って────」
「あー分かった! もういい・・・!」
くぅぅ・・・まさか、あの頃の行いが今更になって返ってくるとは・・・!
「んで? 今の俺は少しは落ち着いてきたと?」
「うん。しっかり大人になってて・・・ちょっと───いいなって」
「そ、そうか・・・///」
ボソボソとした声だったが、俺にはハッキリ聞こえた・・・"格好いいな"と。
「お前も十分、大人になってるよ」
「本当!? どこがっどこがっ!?」
身を乗り出して聞いてくる夕花の目に、"期待"の気持ちがキラキラと溢れ出していた。
俺は、ちょっと重そうな双丘に目が言ったが、すぐに正面に顔を向けて話を続けた。
「ゴホンッ!・・・まぁ、それは追々、な」
「え~~」
「それよりも、喫茶店での話・・・続きを教えてくれないか?」
そう言うと、またもや夕花の表情は曇った。
普通だったら、夕花の気持ちを気遣ってこのまま聞かないのが当然なのだろうが、俺はどうにもそういう気遣いが出来ない。
謎を謎のままで放っておくことに我慢ならないのだ。
「・・・うん、分かった。・・・あのね、上ヶ瀬に引っ越した後に、私は上ヶ瀬のメティス研究所に通ってたんだ」
「メティス研究澄之江本部、だな?」
「うん。私はそこで"セカンド"に関する実験に協力していたんだ」
「メティス・セカンド・・・だけど、あれって机上の空論なんじゃないのか?」
「私もよくは知らないんだけど、過去にね、『アイギス』使いがその"セカンド"の域に達したって記録もあるらしくて」
「なるほどね・・・それで、それとおじさんとおばさんの関係は?」
そう投げかけると、さらに表情に影が差した。
しばらく、黙っていた夕花は、一度深呼吸して荘重に口を開いた。
「お母さんとお父さんは、そんな実験に明け暮れる私を見て、遊園地に連れていってくれたんだ。ほら、あそこ」
指差した先には、今も稼働している観覧車が小さく見える。
『上ヶ瀬ウェンディランド』・・・ここ上ヶ瀬市で、最大級の遊園地である。
でも、あそこは昔───
「『パラドックス』のテロが・・・」
今から2年前。
『パラドックス』と呼ばれる"メティスパサーを世の中から除去するための攘夷運動を行う"テロリスと集団が、『上ヶ瀬ウェンディランド』の入園者を人質に取った事件があった。
「うん・・・それに私も巻き込まれた」
「なにっ!? あの事件は────」
「死傷者は約100人。その内の殆どがテロリストのメンバーだったけど、犠牲になった一般人もいた・・・あっ、これは世間に発表されてないから誰にも言わないでね」
「そんな事はどうでもいいっ!」
だいいち、日本は銃の発砲を許さないのに、銃撃戦が起きた大事件だ。
そんな中で、一般人の死傷者が出なかったって事自体がおかしい。
「───まさか、おじさんとおばさんは」
俺が震える声で聞くと、コクッと夕花の首が縦に動いた。
グラッと意識が飛びかけた・・・あの優しかった二人が────
「私のせいなの」
「え・・・?」
「私はメティスパサー。だから、私を人質にするのは当たり前」
「ちょ、ちょっと待てよ───」
「銃口をこめかみに突き付けて言うんだ。『悪魔の子、悪魔の子』って」
「おい! もういいって!」
「でも、お父さんとお母さんは、それに反発して・・・それで────」
「やめろって!!」
「私のせいなんだ。私のせいで、二人とも殺されて、戦闘が始まって・・・」
・・・何で? 何で、笑ってられるんだ?
乗り越えられたからか・・・いや違う。
「悪かった」
「・・・変わったね、やっぱり」
夕花は、ベンチから立ち上がってそんな事を言う。
夕方の日が、彼女の後ろ姿を映している。俺はその姿に少し見とれた。
「大和ちゃんは、そんなに思いつめた顔はしなかったはずだよ。「今度は俺が守ってやる!」ってぐらいに、宣言するのが大和ちゃんだよ」
阿保抜かせ・・・そんな大見得切った発言、言える訳がないだろう。
でも、振り向かれた満面な笑みを見てしまったら、そんな事も言えなくなってしまった。
「お、俺は────」
「ここに居やがったか~」
「「っ!?」」
声が聞こえた先には、喫茶店で険悪なムードを作り出した男子生徒二人組だった。
俺は、ベンチから立ち上がって、夕花を俺の背中に引っ張った。
しかし、すぐに俺を押しのけて夕花が一歩前に出た。
「何か用でしょうか? 笹川先輩と水俣(みなまた)先輩」
どうやら、この二人は先輩のようだ。
「"何か用でしょうか"・・・決まってるだろ。さっきの鬱憤を晴らすんだよ」
「よくもあん時邪魔してくれたな!」
「上ヶ瀬市全体の風紀を守るのも、委員会の義務です。あなた方の粗暴な行動は、目に余ります」
「後輩の癖に生意気なんだよっ! 『シバ・ゲイル』!」
一人の先輩がそう叫んだ時、とてつもない強風が吹かれた。
「『アイギス』!」
すぐさま、夕花がメティスを発動し、見えない壁が俺らを守る。
だが、その瞬間を待っていたかのように先輩の口角が吊り上がる・・・そして、もう一人の先輩の姿が見えない事に俺は気が付いた。
「『アイギス』は正面でしか展開できないんだよなぁ! 『アルギス・グラビティ』!」
背後に回り込んでいた先輩は、臨海公園に設置されていたベンチを、軽々と持ち上げて投げてきた。
「夕花っ!」
俺は夕花の腕を掴み、近くの茂みに飛び込んだ。
『アイギス』の盾が消滅し、強風とベンチがぶつかり合って、ベンチはボキボキにへし折った。
「くそっ、二人っていうのが気に食わねぇな・・・!」
「大和ちゃん、二人が狙ってるのは私だから。だから大和ちゃんは────」
「嫌だね。一人だけのこのこ逃げるくらいなら、最後まであがいて、逃げ切ってやる!」
「大和ちゃん・・・でも」
「いいから黙って、応援でも呼びやがれ!」
夕花の手を引きながら、茂みを掻き分け進む。
「『アルギス・グラビティ』!」
茂みを脱したところで、またもやベンチが飛んできた。
「あぶねっ!」
「きゃっ!」
夕花は通話中で『アイギス』を展開できない。
俺は脊髄反射で、夕花の頭を抱え込み、もう一度茂みの中に逃げ込んだ。
その弾みで、夕花は携帯を落としてしまった。
「あっ!」
「おい、危ねぇから出るな!」
「で、でも───」
なお食い下がる夕花をまた無理やりに引っ張って、考えを巡らせる。
(何で、俺達が出てきたところが分かったんだ? この公園の規模はかなり広い・・・待ち伏せてたなら、どうやって俺達の位置を?)
「おい、あいつらはどこに行った?」
触れた物の重さを変えるメティス『アルギス・グラビティ』を持つ先輩が携帯で、強風を発生させた先輩に連絡を取っている。
『そっから反対側の道路だ』
「OK・・・それにしても、空気の微妙な流れ、相手がどこにいるかって分かるなんて、便利なメティスだよな」
『だろぉ?・・・ん?』
「どうした?」
『────いや、何でもない。ほら、さっさと行かないと逃げられるぞ』
「ああ」
「いや、何でもない。ほら、さっさと行かないと逃げられるぞ・・・[ピッ]・・・ふぅ」
「て、てめぇ・・・!」
俺の足元でボコボコにされて地面に伏している先輩は、鋭い目つきで俺を見上げる。
久々に喧嘩とかしたから、ちょいと手こずったが、メティスに頼り切る野郎に勝つのはそう難しくない。
メティスを発動させなければいいのだから・・・。
「なんで、俺の能力が分かった・・・?」
「一回の待ち伏せで、大方の予想はついていたんだ。分からなかったのは、先輩が"強風を起こす"能力と"風の流れを察知できる"能力の二つがあるってのが、疑問だったんです」
だって、もしそうなら強過ぎでしょ。
最初の敵は大抵、強そうに見えて弱いのさ。
「先輩の能力は、"強風を起こすメティス"じゃない。周囲の風力や風の向きを感知できるメティス・・・まるで────」
「大和ちゃ~ん! 言われた通りに回ってきたよぉ~!」
「おう、サンキュ。じゃあ俺達はここで帰りますよ────」
「待ちやがれっ!」
「っ! 『アイギス』!」
飛んできた自動販売機を夕花のメティスが防ぎ、[ガコンッ!]と自動販売機はアスファルトに重々しく落ちた。
もしこれが直撃していたら・・・と思うと、ぞっとするぜ。
「随分と早いですね。もっと稼げると思ったのに」
「口真似なんてせこいメティス使いやがって! もう容赦しねぇ!」
メティスじゃなくて、特技なんだが・・・。
「待ちたまえ!」
「っ!? 誰だっ!?」
「委員長っ!」
向こう側から、背の高い男子生徒とそれを取りまく男女生徒が五名。
「夕花、大丈夫!?」
その中に、朝方に会った小っちゃい女生徒がいた。
「我々は風紀委員だ。メティスの無断使用に加えて公共物の破壊、これだけで反省室行きの処分になる。大人しく付いてきてくれると助かるのだが」
「な訳ねぇだろっ!」
もう手持ちに投げ飛ばせる者がない先輩は、夕花が"委員長"と呼んでいた背の高い生徒に殴りかかる。
「『アルギス・グラビティ』」
「うぐぅっ!?」
委員長は一切動いていない。
しかし、殴りかかった先輩はその場にうつ伏せに倒れた・・・いや、メティスの力でねじ伏せられたのだ。
「お、俺と、同じ、能力だ、と・・・!」
「メティスネームは同じだが、仕様は違う。詳しく知りたくば、しっかりと授業を受ける事だね・・・連れていけ」
「ハッ」
二人の風紀委員が未だに暴れる先輩を、残りの二人は伸びている先輩をタンカーに乗せて運び出す。
「大丈夫だった、夕花?」
「はい。大和ちゃんのおかげで」
「・・・曽良 大和」
ん? 何か目つきが朝方の時より鋭いような・・・ってか、殺気が滲み出ているような?
「速瀬君と曽良君、無事で何よりだ。しかし速瀬君、何かが起きた時は単独行動は厳禁だと、風紀委員会の訓示にあるよね?」
「ご、ごめんなさい・・・」
「でも、被害は少なくて助かった。ありがとう」
[ナデナデ]
「・・・」
何だ、コイツ? 何、馴れ馴れしく夕花の頭を撫でてやがる。
しかも夕花自身、気持ちよさそうだし・・・あれ? すっげぇムカついてきた。
「うん? 曽良君も撫でてあげよっか?」
「結構です」
ムカつく上に気持ち悪い・・・。
「よし、学園に戻ろう。二人を教員に引き継ぐまで気を────」
「うぉぉ! 離しやがれえぇ!」
「うわぁぁ!?」
俺らが気付いた時には、一人の風紀委員が宙を舞っていた。
後ろに回された両手に拘束具が取り付けられているのにも関わらず、抑え込もうとする風紀委員を軽々と蹴り上げていく。
(いや、メティスの力で風紀委員の奴らの体重を軽くしているのか)
「逃げるが勝ちだ!」
先輩自身も体重を軽くして、一気に跳び上がって逃亡しようとする。
が────
「逃がさない、『アルギス・グラビティ』」
「ぐわぁっ?!」
「『アイギス』!」
先輩は再び地面にねじ伏せられ、宙に投げ出された風紀委員を夕花の『アイギス』が受け止めた。
「古里さん」
「はいっ。『ダイダロス』!」
小っちゃい子が地面に手を置くと、ねじ伏せられた先輩に向かって、光の筋がアスファルトを這っていく。
「な、何だ何だ!?」
光が先輩に到達すると、アスファルトが粘土のようにうねりだして、先輩の体を取り込んでいく。
「翠(みどり)先輩の能力は、あらゆる物体の形状を変化させられるんだよ」
夕花が補足を入れてくれたが、俺は違う事に驚いた・・・先輩だったんだ。
「くそぉ! もう反省室は懲り懲りだぁ!」
「ならこれをキッカケに、心を入れ替える事をお勧めするよ」
「ふっざけんなっ! うぉおおおおおおっ!」
往生際の悪い先輩の咆哮が、臨海公園に響く。
[ふわっ]
「え?」
気付けば、俺達の体はふわりと宙に浮いていた。
「うがぁあああああっ!!」
「O.C.(オーバーコンセントレーション)!?」
「このタイミングで、か・・・」
古里(小っちゃい)先輩が言った単語に、委員長が冷静に呟く。
O.C.・・・簡単に説明すると、メティスに意識を乗っ取られて起きる、メティスの暴走状態だ。
よくこれで、メティスによる事故が起きている。
「速瀬君。『アイギス』の準備をして、みんなが落ちたら受け止めるんだ」
「・・・」
「速瀬君?」
「あ、夕花は高い所ダメなんですよ」
[きゅ~~~]
「がくっ」
「ああぁ! 夕花がっ!」
小っちゃい先輩が青くなっている夕花に近寄ろうとしても、まるで無重力空間にいるみたいにその場でじたばたしているだけだ。
唯一、夕花の近くにいた俺は、夕花を手繰り寄せ、自分の体に密着させた。
「ふ~ん、どうしようか?」
「別に、あなたのメティスを使えばみんな助かるんじゃないんですか?」
ずっと発狂して暴走状態の先輩は重力を操作するメティス。
同じ系統のメティスを持つ委員長先輩なら、対処できるだろう。
「いや、私のメティスは、地表から3メートル以内の物体のGを増大させるものなんだ・・・もう軽く20メートルは超えてしまったよ」
「え? じゃあ、どうするんです、これから?」
「う~ん・・・どうしよっか?」
「「「"どうしようか"じゃないです!」」」
小っちゃい先輩含む風紀委員全員とハモった。
全員がこういう反応するという事は・・・まさか打つ手無し!?
(おいおいおいおいおいっ! マジでどうすんだ!?」
「起きろっ、夕花! 今はお前の力が必要なんだっ!」
「ううぅ~・・・」
必死に肩を揺り続ける間、俺らの身体は50メートル上空まで上昇していた。
しかも、発狂していた先輩の声が弱くなっている・・・もしかして、このまま真っ逆さま!?
(編入してまだ一日目だぞ! 何でこんな目に遭わなくちゃいけないんだ!? 風紀委員どもは使えないし、肝心な夕花は気絶中だし・・・!)
「ぅぁ・・・ぁ・・・」
「ぅっ!?」
「「「うぁわあああああああっ!!??」」」
ついに、俺たちは50メートル以上の高さから落下を始めた。
俺は必死に夕花の身体を抱きしめる。
『大和ちゃんは、そんなに思いつめた顔はしなかったはずだよ。「今度は俺が守ってやる!」ってぐらいに、宣言するのが大和ちゃんだよ』
(そうだ。俺が・・・俺が守るんだ!)
でも、どうやって・・・?
(俺に、夕花と同じ能力が・・・夕花の"代わり"が出来ればっ!)
[ッッッ]
「え・・・?」
何かが俺の中に入ってくる・・・これは、夕花からなのか?
────いける! 俺が俺を信用すれば・・・夕花を信用すれば!
恐怖に震える体と心を抑えつけて、俺は肺に空気を送り込む───そして叫ぶ。
「『アイギス』!」
・・・