Fate/GrandOrder×月姫 死徒徘徊都市 総耶   作:ryugann

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氷河の魔狼 フェンリル・ロボ

 

 ───ここはどこだ?

 

 彼、ヘシアン・ロボが世界からの呼び声に応じ、現界したがそこは薄暗い邪悪な儀式が行われていたかのように血や憎悪に汚染されていた場所だった。

 空は見えないことからかなり深い地下なのだろうと彼は考える。

 どちらにせよ、こんな悪趣味な場所に世界が呼んだとは考えられなかった。

 

 「やっと応じたか。リスクは大きかったが抑止力からこっちに無理やり引き込んだ甲斐があった。

 で、お望みの品はこちらでございましたか?お客さま?」

 

 この空間には場違いなほど愉快そうに声を上げる誰かがいた。そして小馬鹿にするようにお辞儀をすると、その先からカツンと靴の音が響くと共に身震いをするような寒さが襲ってくる。

 

 「……そのふざけた態度はやめろ。久方ぶりに吐き気がする。

 ───だが仕事としては上出来だ。これならば我が相棒に相応しい」

 

 はっきり見えるほどの姿を晒した瞬間、ロボは殺意が滾り、ヘシアンの制止を聞かぬまま黒のコートを来たヒトを噛み殺さんと接近し、まさか襲ってくるとは思わなかったヒトは対応に遅れ、その牙が首に迫って───

 

 「少し霊基がおかしいと思ったが……これは酷い!まさか人類を憎む類のものだったとは!しかし、流石にこれには焦ったとも。

 ──焦る程度、だったがな」

 

 動け、ない。

 口が、身体が麻痺したように自由が効かなくなった。

 あの男が何かしたのか?だが何をされたのか分からない。

 目の前に迫る男は自分が殺されかけたことにようやく気付くが、その顔に浮かべたのは怒りではなく笑みであった。

 そのことにヘシアン・ロボは背筋がゾッと冷えた心地だった。

 

 「獲物を食い殺さんと迫る気迫にすぐに実行に移せる俊敏さ。ますます気に入った。

 ───ただ、上のそれは駄目だ」

 

 男はロボに同じく硬直しているヘシアンに手を翳すとそこから青い炎が吹き上がり、ヘシアンを焼き尽くした。

 

 「─────!?」

 

 頭が無いため声は出せないが悲鳴を上げてるとロボでも分かるほどにその姿は凄惨の一言では収まらないものだった。

 炎が身体を覆った時にヘシアンの硬直は解かれたようで彼は炎を消さんとジタバタと地面に転がり回るも炎は消えるどころかさらにその勢いを強め、数分もしないうちにヘシアンは指一本も動かすことなく、燃える置物に変貌してしまった。

 その間もロボは一歩も動くことはできずその光景を見つめることしか出来なかった。

 

 「おいおい、いくら何でもこりゃ酷い!燃えるゴミは燃やすのは道理だが、あいつはまだ使い道があった。リサイクルは大事だって親に教えてもらってなかったか?」

 「黙れ。その口で御当主様を語るな。貴様が同じ召喚者に呼ばれてなければその身体ごと引き裂いていたところだ」

 

 嫌悪を一切隠さずに露にするもそれを受ける男は平然としており、涼しい風を浴びてるように手で扇ぎ、挑発していた。

 やがて付き合いきれんと視線を男からロボに移すと額に手を翳した。

 その時、ロボの脳裏に燃やされたヘシアンがよぎる。

 

 ───まさか自分も焼き殺す気か?

 

 そう考えた時点では別に何も思うことはなかった。

 自分が退場した程度で戦局が大きく傾くことはないだろうし、ここに喚ばれた時点で運が無かったと納得しながらこの男に憎悪を向けよう。

 

 

 だが、彼を襲ったのは熱ではなく寒さ。炎ではなく氷だった。

 すぐに霊核まで到達し、全身が狂いそうな寒さに身を震えさせる。

 

 「いきなり原理血戒を入れるか?それは流石に急すぎるぞ。まだ死徒にもなってない者に渡せば自滅する。仮にそれを避けれたとしても完全に服従したわけでもないからいつ裏切るか分からない諸刃の剣だ」

 「それも全て承知の上だ。こいつが裏切ろうが自滅しようがあくまでおれの足になればいい」

 「……まあ、そこまで言うのなら止めはしないとも。だがこれだけは伝えておく。

 旦那からの言付けだ。“カルデア”がそろそろ動くらしい。お前も戦力増強に勤しんでおけってな」

 「……“混沌”か。なら貴様は消えろ。これ以上貴様といると怒りで───」

 

 二人が交わす会話を最後にロボの意識は消えていく。

 ただ、思うところはある。

 奴らが言っていたカルデア。

 

 ──せめて、我が愛し子に似た彼が無事でいられるように──

 

 

 

 「そうだ、名を名乗らせるのを忘れていたな」

 「あ?名前など今さら意味があるか?それに狼とデュラハンの英霊なんぞ聞いたことがない」

 「そうか……ならおれが名付け親になるのも悪くはないだろう。安直だが氷の力を持つ北欧神話の獣の名を授けよう。

 ───フェンリル、それが我が相棒の名だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 志貴たちと分かれて、孤立したフェンリルを倒すべく、俺たちは彼の前に立つ。

 

 「■■■■■■■■■■ーー!!」

 

 フェンリルも先程のシエルさんの黒鍵流星群の餌食になり、黒鍵が何本も身体に刺さっているが、それで弱った様子は見せず吠える。

 

 「一気に仕留めるぞ!」

 

 エドモンの掛け声に合わせて俺たちは駆けていく。

 フェンリルもそれを迎え撃つべく大量の氷塊を展開させ、一斉に放つ。

 

 「皆さん、伏せてください!」

 

 マシュのハッキリと意思の強い声を聞き取るとすぐに彼女より前に立たないように後ろに下がる。

 氷塊は全て前面に立つ少女一人に絞られ、無慈悲にも彼女の盾ごと貫かれようとする。

 だが、

 

 「はぁぁっ!!」

 

 その全てが彼女の盾に、彼女の絶対に守るという意思の前には殺意の塊である氷塊など白くてふわふわする雪のように脆く、その悉くを難なく受け止めた。

 

 ───いや、全ては受け止めていない!?

 それをフェンリルが知覚する瞬間に目の前に自分が放ったはずの氷塊が迫っていた。

 

 「■■■……!」

 

 直撃は避けれたものの、当たった場所が黒鍵が刺さった箇所で、ぶつかるたびに肉を抉られ、不快になる。

 それを少女、いや可憐な騎士は誇らしそうに笑っていた。

 

 「カウンター、です!」

 「すごいよマシュ!流石俺の後輩!」

 「なんと、当たった瞬間に盾ごと身体を曲げて、軌道を変えるとは……この呪腕、我が事のように誇らしい気持ちです」

 

 こんな状況なのに成長したマシュを褒めずにいられなくて思う存分褒めるとマシュはキリッとした騎士から頬を赤く染める少女に戻っていく。

 ただ、もう一度言うがこんな状況だ。フェンリルも怒りで攻撃の手を緩めるどころか加速していく。

 氷塊を捌いた直後に飛び出したエドモンたちは苦戦を強いられていた。

 

 「くっ……こいつ、オレに間合いを詰められないように動いてやがる……!」

 「両儀の眼にはこいつも気付いてるということか。だがそればかり見てるとこちらからの攻撃に対応出来るか!」

 

 式さんの魔眼に警戒してるのか常に視線を彼女に合わせていて、仕掛けようにもフェンリルもそれに合わせて後ろに下がるから突破口が開けない。

 エドモンが空中から光線を放つが、フェンリルはその射線上に氷塊を出現させて防ぐ。

 ならばとシエルさんがいつの間にか手にしているアサルトライフルが火を噴いた。

 

 氷塊を展開し、防御に出たがあっさりと粉砕され、突破してきた弾丸がロボに直撃した。

 

 「やったか!」

 「いいえ……まだです!」

 

 即座に否定され、フェンリルの方をジッと見ると、フェンリルの前に透明な壁のようなものが弾丸を止めていた。

 

 『あれは……冷気で大気を固めたのか!?力押しの攻めからは考えられないほど器用に使いこなしてる!』

 

 ダウィンチちゃんが驚いているが、フェンリルの猛攻に対処するのに手一杯でまともに聞くことが出来ない。

 そのうち、フェンリルに隙を作ろうと駆け回っていたハサンが俺のところに戻ってきた。

 

 「すみませんマスター殿。どうやらフェンリルめはきちんとロボ殿の特性まであるようで仕掛けた罠がまったく当てになりませぬ!

 このままここにいても私は役に立たぬようなので志貴殿たちの応援に向かってもよろしいでしょうか?」

 

 確かにハサンの言ったことが本当なら搦め手が得意なアサシンではフェンリルの相手にはならない。

 それに少し志貴たちの方がどうなっているのか分からない今、ハサンを援軍に出した方が良いだろう。

 

 「分かった。志貴たちの応援に行って!それと、俺からもお願い。志貴たちを、助けて!」

 「───マスター殿……。ええ、勿論です、必ずあの方たちの助けになれるよう奮闘してみせましょう!

 ところでマスター殿、こちらを」

 

 俺からの了承を受けてすぐに向かうと思っていたら、何やらハサンは俺の手を出すよう仕草をしてきた。

 それに応えて手を出すと外套の内側から何かを掴み俺の手に握らせる。

 それが何か確認すると、一枚の葉っぱが握られていた。

 

 「これって草笛?」

 「はい。今は説明出来ませぬが、もし、奴の動きを止めたいと思った時はこれを吹いてください。───それでは、行って参ります!」

 

 ハサンは風のように速い速度で戦闘音が響く、反対方向に消えていった。

 これで状況が変わってくれるか───

 

 そう祈るように思いながらフェンリルの方を真っ直ぐ見る。

 フェンリルは式さんやエドモンの攻撃を躱し空に浮かんでおり、その隙を突いてシエルさんが蛇腹剣で一刀両断するべく動く。

 だけどフェンリルは落下予想地点に氷塊を出し、それを使って更に跳躍し、俺の方を睨んだ。

 

 「え───」

 

 フェンリルの狙いが俺に変わった時には既に遅く、重力を勢いに乗せての体当たりで俺は死んだ───

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