Fate/GrandOrder×月姫 死徒徘徊都市 総耶 作:ryugann
立香たちがロボの霊基を乗っ取った
彼らがフェンリルを倒すまでヴローヴの足止めを目的として志貴たちも激突した。
「セェェイ!」
領主としてではなくオスマン帝国の将兵を蹂躙してきた将軍の側面が強いヴラドが召喚した杭を槍として扱い、ヴローヴへと突き刺す。
だがヴローヴは片手に持つ概念武装の槍“ゼリア・アッフェンバウムの永久凍土”で迎撃を始める。
その一方でヴローヴの背後に迫らんとするのは忠義によって選ばれた円卓の騎士ベディヴィエール。
前にヴラド、後ろにベディヴィエールに挟まれた状態での攻防を余儀なくされたヴローヴだが聖杯からの魔力供給があるせいなのか多少、傷を負っても余裕で二人の攻撃を流し続けていた。
「くそっ、二人がかりでもダメか!」
この戦いについていけない志貴に出来ることなど何時でも殺せるように隙を伺うことだけだった。
だが、それによってヴローヴは志貴の方に意識を向けなければいけなくなり、膠着状態へと移行した。
向こうで立香たちがフェンリルを倒すまで続けば理想だが、それをさせるほどヴローヴも甘くはない。
「眷属よ、我が敵を殺せ!」
その言葉に周囲を警戒する三人。
シエルの通称“黒鍵流星群”でヴローヴ配下の死徒は全滅したはずだと思っていたがまさか生き残りがいたのか、或いは隠れ潜んでいたか。
しかしいつまでもその気配が無い。
そこでようやくヴラドはヴローヴの意図を理解し、叫ぶ。
「死徒なぞいない!狙いは貴様だ、アサシン!」
「っ!?」
そう。ヴローヴの発言はブラフであり、その目的はベディヴィエールとヴラドの連携を崩し、そこで起きるであろう隙を利用して遠野志貴を抹殺すること。
事実、ヴローヴは包囲から抜け出し、一直線に志貴の方へと迫っていた。
「っ!このままやられてたまるかっ!」
ヴローヴの攻撃を直接見てきた経験とサーヴァントになったことで身体能力が飛躍的に向上したことで再び皮一枚で回避することに成功する。
だがその幸運も一回限りで、容赦なく追撃の槍が前に出る。
避けても遅いと判断した志貴はナイフでギリギリ狙いを中心から逸らしていく。
時間はまだ一分も経ってないが、その時間があればヴラドとべディヴィエールは志貴の下まで戻り、再び先ほどの攻防が展開された。
しかし、そこに新たな要素が加わる。
「皆様ご無事ですか!呪腕のハサン、助太刀に参りました!」
フェンリル討伐チームからハサンが応援に来たのだ。
べディヴィエールの剣とヴラドの槍、そして合間から繰り返されるハサンの援護射撃。
これらが加わったことで、ヴローヴは先ほどよりも苦戦を強いられることになる。
一人一人の負担が軽くなったことで口を開ける余裕が出来たことで、べディヴィエールはヴローヴに一つの問いを投げた。
「見たところ貴方は、死徒になる前はさぞ名のある騎士だったのでしょう。だからこそ問います。
無辜の民を犠牲にしてまで叶えたい願いとは───なんぞや!」
「……オレの願いか。決まっている。───ご当主様を生き返らせることだ」
ヴローヴは答えを出すと、そのまま饒舌になって己の気持ちを解放する。
「そうだ。オレはご当主様を生き返らせて、再びその下で武を振るう。それこそが我が願い、我が悲願……!
かつては蛇によって絶たれたこの宿願、此度こそは必ず果たして見せる……!」
ヴローヴの願い、その覚悟を聞いた志貴たちは動きを止めてしまう。それほどまでにヴローヴの覚悟は凄まじかった。
だが、その中で一人。べディヴィエールはヴローヴの前に立つ。何かに納得したような顔をして。
「べディヴィエール……アーサー王伝説に登場する忠義の騎士。オレとの一騎打ちを望むか」
「いいえ、その気はありません。……ですが、今の答えを聞いて納得しました。私と貴方は似ている。
───ですが、その上で根本的に違う!」
「……なに?」
ベディヴィエールは元々、英霊では無かった。
かつて第六特異点で獅子王こと、聖槍に呑まれたアルトリア・ペンドラゴンに三度目にですら返せなかった聖剣エクスカリバーを返還した功績によって、人理を取り戻す間だけサーヴァントとして現界することが許された存在なのだ。
命令を聞けず、その結果、王を殺したベディヴィエール。
第三者が原因であるが、主を殺したヴローヴ・アルハンゲリ。
主への不忠を犯してしまった騎士という共通点を持っている二人だが、致命的に違う点があった。
それは罪を償ったこと。
ベディヴィエールは己の過ちを正すために千年以上の時を放浪し、その果てに王に聖剣を返還した。
しかしヴローヴは違う。
「ヴローヴ・アルハンゲリ!主を蘇らせたいと言ったが、その姿を見せられるのか!騎士とは言えぬ醜態を晒したその姿を!」
「……っ!黙れっ……!」
「私もかつて過ちを犯した!王を生かしたいという我欲に囚われ、その結果が王を殺してしまった!
ですが、務めを果たしたことで王の騎士であることを赦されました!
お前はどうだ!ただ民の血を吸うことしか出来ない者が、胸を張って騎士を名乗れるのか!」
「黙れぇぇ!!」
ヴローヴはヴラドとハサン、そして志貴までも意識の外に追い出してベディヴィエールに攻撃を集中させた。
ベディヴィエールも怒涛の攻撃に顔を歪ませるが、円卓の騎士として負けるわけにはいかないと全力で受け止める。
「貴様が何を知っている!ご当主様を!愛する方をこの手で殺した感触を!吐き気がする!あんな思いは二度としたくない!その気持ちを貴様が!貴様に!理解出来るものかぁっ───!!」
「くっ……!」
ヴローヴの魂からの咆哮によって激化する攻撃を一身に受けるが、遂に剣を飛ばしてしまった。
その間、ヴラドたちもヴローヴを止めようと攻撃を再開したが、その全てをほぼ無防備に喰らっても攻撃の手は止まることはなかった。
杭に穿たれ、暗器に刺される見た目は満身創痍の状態であるのにも関わらず、ヴローヴの手に持つ槍がベディヴィエールの胸を貫き、心臓に届こうとした瞬間だった。
───音が、響いた。
「……?」
それを耳にしたヴローヴは一瞬、その動きが止まった。
敵の罠か、或いはフェンリルが倒されたか。
後者はあり得ない。ヴローヴとフェンリルは同じ霊基を持つからこそ、互いの安否が分かる。
そして今もその反応がある。
ならば敵の何かの合図と疑うが、両方が対処に手一杯の状況で何を仕掛けるのか。
とにかく敵を一人でも仕留めようと力を込めようとした。
だが、後ろから現れた魔力反応に思わず振り向くと、そこには心臓を握っていた呪腕のハサンがいた。
(……オレの心臓には触れていないはずだ。ならば誰のもの──まさかっ!?)
「この時を待っていました、マスター殿!氷狼よ、眠る時ぞ!───“
その心臓を潰した直後、向こうで戦っていた
さあ、決着の時だ。