Fate/GrandOrder×月姫 死徒徘徊都市 総耶   作:ryugann

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月姫イベント出たら配布は殺志貴で星4枠は秋葉様、星5枠はシエル先輩と大穴でカーナビ志貴、アルクェイドさんは復刻来ることに道満の魂を賭けます

追記
2023年8月21日、メインストーリー更新に伴い、一部変更しました。


狂わされた復讐者、迫る魔の手

 『犯人は吸血鬼。いえ、正しく言えば死徒ですね』

 「死徒、ですか?」

 『そう。藤丸君は聞いたことは?』

 「いえ、孔明から少し……血を吸う生き物のこと、ですよね?」

 『正直でよろしい。では説明しましょう!──と言いたいことですが、色々時間が惜しいので手短に話しますね!死徒とは真祖から血を吸われるか、魔術を極めるために身体を改造して誕生した生き物。死徒は血を吸った相手を眷属にして力を集めさせる習性があります。それと南米異聞帯でカマソッソが死者にしたディノスも含まれます。さっき襲ってきたのもそれですね。

 もう少し話したいですが、今はこれで良しとしましょう!」

 

 本当にあっさりと死徒の解説が終わったので呆気ないと頭を空に、っていや待て。

 

 「待ってください。今時間が惜しいって言ってましたけど何かあったんですか?」

 『あっ』

 

 「あっ」て……忘れてたんですね。

 

 『だから私言ったよね!早く藤丸に伝えるべきだったって!もう遅いけど!』

 『だって死徒ですよ!?自分の得意分野が出てきたら興奮するのは当たり前じゃないですか!?』

 『いや……確かにレースの話が出たら私の不死鳥が騒ぐけどさ……』

 『もー!君たち一回どいて!』

 『ごふっ!?』

 『ちょっ!?』

 

 ……向こうではとんでもないことが起きてるような気がする。

 ちょっとマイクから推測するとネモ・マリーンたちが何か運んでるようで、何を運んでいるかは突っ込まない方がいいだろう。

 

 『藤丸君とマシュ。それと両儀式、君にも関係があるから聞いてほしい。

 これは君たちがレイシフトしてから分かったけどここは特異点と呼ぶには異常すぎる。計測では抑止力の力はこの世界ではあり得ないくらい低下している。この事から私たちの世界じゃでたらめな存在が現れてもおかしくはない。その事を頭の中に置いてくれ。

 それとこれが一番大事なことだけど、藤丸君たちの魔力がレイシフトした時、まるで通行税(・・・)を取るように消失していたことが判明した。だから現時点、魔力の補給の手段が乏しい今はあまり魔力を大量に消費することは避けてほしい』

 「──え?」

 

 ダウィンチちゃんが言ったその言葉は俺たちに大きな衝撃を与えた。

 

 「やっぱりか」

 「式さんは知ってたの?」

 「まあな。レイシフトした途端に魔力が結構取られた。でも安心しろ。気配遮断は問題無いし、この眼も遠慮なく使える」

 

 それを証明するように青く光る魔眼を起動させてナイフを構える式さん。夜の路地裏で会ったら普通に怖い。ここがそうなんだけど。

 

 「マシュは大丈夫?」

 「はい。確かに魔力は心もとないですが先輩を守る分には充分です。ですが合流出来ずにいるサーヴァントの皆さんが心配です」

 

 マシュの言う通り、他のサーヴァントたちもこの事態は分かっていると思うけど安否が確認出来ないのが心配だ。一刻も早く合流を急いだ方が良いだろう。

 

 「方針も決まったようだし、そこの警察官を起こしてさっさとこの裏路地から出る──伏せろっ!」

 

 気絶している警察官二人を起こそうと向かった式さんが表情を一変させて警告した次の瞬間、吹雪(・・)が俺たちに襲いかかった。

 それは風通しが悪い路地裏では、雪もなく、無慈悲に生命を奪う厳しい寒さでもなく月が綺麗に見えるこの日、この場所では決して起こらないはずの現象。

 しかもこれはただの吹雪ではない。

 通常の吹雪が寒さを耐え、次代に生きるための試練だとすればこの吹雪は問答無用で殺すことしか考えてないもの。

 

 式さんの警告に咄嗟に動いたマシュが盾を構えて守ってくれたため俺とギリギリで警察官を抱えて入ってきた式さんは無事だ。

 ただ守っているマシュの顔は苦しいものに変わっていて、気休めかもしれないけど手を握った。マシュからの握る手は力強く頼もしく、こんな状況なのについ頬が緩んでしまった。

 

 

 吹雪はすぐに終わりを迎えた。

 それと同時にダウィンチちゃんからのカルデアの通信が入ってくる。

 

 『藤丸君!マシュ!大丈夫かい!?急に通信が途絶えたけど何が起きたか──いやそんなことは後だ、今すぐそこから逃げて!サーヴァント、それもおそらく聖杯を保有してると思われる存在が近づいてきてる!』

 「聖杯を……!?」

 

 だけどさっきの吹雪を起こしたのがそのサーヴァントなら納得できる。でも、だからこそもう遅い。

 

 

 

 ──敵対者を威圧させる足音が路地裏を支配する。

 それはヒトがするものではなく大型の獣がする野生の強さを示すもの。

 だがその唸り声には野生の獣にはない憎悪が混じっていた。

 路地裏の闇からそれは現れる。

 

 「えっ……」

 

 それは誰の声だったのか。藤丸かマシュか、或いはカルデアメンバーか。

 だがそれも無理はない。それほどまでに吹雪を放った正体は本来の彼とかけ離れていたのだから。

 

 「ロボ……?」

 

 復讐者(アヴェンジャー)のクラスで召喚される狼王はカルデアにいる彼とは違う雰囲気を纏いながらこちらをただジッと睨んでいた。

 

 

 

 

 

 「狼王ロボ……!確かに特異点では召喚されることがあるためこんなこともあるだろう。だが、あの魔力反応は異常すぎる。それに彼に吹雪を放つ力は無かったはずだが……?」

 

 ロボの出現で混乱している司令部でホームズはいつものように語り始める。

 

 「えっ、吹雪って何?もしかして向こうで一時的に通信途絶えたの吹雪が原因なの?」

 「はい。通信が回復してモニターを見れば分かりますが道の上は雪や氷に覆われていて、通信が通絶する最後、僅かだが風の音がしていた。風、そして雪と氷。それを組み合わせれば吹雪が吹いていたことが分かります」

 「そ、そうなの……うん?そういえばヘシアンがいないな。ロボと言えばヘシアン。ヘシアンと言えばロボなのに」

 

 ふと呟いたゴルドルフのこの一言はホームズの何かに触れたようで、ホームズは黙ってぶつぶつと聞き取れないほど小さい声で推理を始めた。

 こうなってはホームズが納得するまで終わることはないだろう。

 

 「解析班、そっちはどうなってる!?」

 「はーいこちらプロフェッサー。今スタッフの皆さんと解析してますけどあっちのロボさん、中身ぐっちゃぐちゃですねー。

 霊基も復讐者(アヴェンジャー)から何故か槍兵(ランサー)になってて、神霊級、までにはいかなくても大英雄クラスじゃないと撃退及び撃破は難しいかとー」

 

 解析班から明かされる特異点のロボの異常。それはダウィンチの予想を遥かに上回る規模であることを理解し、それでも今向こうで対峙している彼に指示を出す。

 

 「っ……!聞いたかい藤丸君!撤退するんだ!路地裏から出て街中に入ったらそこまでは追って来れないはずだ!」

 『了解っ!』

 

 

 

 

 

 ダウィンチちゃんからの撤退命令を受諾すると、すぐに周りの状況を確認する。

 状況はこちらが明らかに劣勢。今いる戦力になるマシュと式さんは魔力が充分ではないため満足に戦うことは出来ない。それ以前に式さんの腕には気絶している警察官二人を抱えていて、戦える状態ではない。

 その中でロボはこちらを睨むことはするが、追撃はしてこない。

 

 「背中を見せないでそっと後退しよう。マシュはロボに警戒して」

 「はい、了解しました」

 

 マシュは俺たちの方に攻撃が届かないように盾を構えるのを確認して一歩ずつ、ロボの琴線に触れないように撤退を開始する。

 ロボはその間、一歩も動かずに俺たちを睨むばかり。ロボの狙いが分からない。

 あの吹雪がロボの唯一の攻撃手段で今はその力を溜めているのか?それとも本当に興味を失ったか?

 

 「──おい」

 

 突然、式さんから声をかけられて、ロボの方に集中していた俺は内心ビックリしてしまう。

 だが次に式さんの口から告げられた言葉は驚愕していた俺の脳内を冷やしてくれることになった。

 

 「囲まれた。後ろからさっき殺した連中の仲間が近づいている」

 『っ、本当だ!?いつの間にか十を超える敵性反応が現れてる!?しかもこんな近くに!?まさか、さっきの吹雪の時に潜り込んでたのか!?』

 

 そこでロボの本当の狙いが分かった。

 ロボは自分から姿を現してそちらを警戒させて、無防備になった後ろから挟み撃ちにする気だったんだ……!それならわざわざ動かないでもいいわけだ。

 挟み撃ちされた時点でロボの目的は達成された。なら、後は──

 

 「式さん!片腕が空いてたら突破出来る!?」

 「──勿論だ。こんな連中、束になっても片腕あれば充分だ!」

 

 そう言うなり式さんは片方の腕で抱えていた警察官を俺の方に投げて、死者の群れに走っていった。

 やっぱり大人一人の体重は重かったがレオニダスやベオウルフと鍛えた肉体のおかげで難なく持てた。

 すると後方、マシュのいる方から鈍い音が聞こえる。

 

 叶ってほしくない願いほどよく実現するようで、挟撃に成功したと判断してとうとうロボは動き出し、こちらを襲ってくる。

 それを防ぐのは数多の魔獣、英霊、神霊、そして今は亡き宿敵の攻撃を通すことの無かった我らカルデアが誇る俺のサーヴァント(パートナー)

 その守りを崩すことなくロボの攻撃を受け止めてくれる。……だけど。

 

 「ク、ウ……!」

 

 マシュはもう限界だ。魔力が心許ない状態に加えて、ロボから放たれる冷気や氷弾が彼女の体力を奪う。

 このままじゃ、全滅する。どうすればいいか、なんてもう決まっている。

 

 『あまり無茶はしないでね?私もゴルドルフ君もホームズも、カルデアのみんな、君たちが傷つくのは見たくないからね』

 

 レイシフト前によく言われたダウィンチちゃんの言葉を思い出す。

 

 ごめん、また約束守れません。

 

 心の中で皆に謝り、そして──ガンドを放った。

 

 「ッ!?」

 

 重量と勢いに任せてぶつかった体当たりをマシュが受け止め、動きが止まった瞬間を狙って放たれたそれは狼王の身体を停止させることに成功する。

 前を見る。式さんはこれまでの鬱憤を晴らすように十を超える敵を相手に無双していた。これなら──突破出来る!

 

 「マシュ!全力で逃げるよ!」

 「はい、先輩!」

 

 俺とマシュは動こうにも動けずに苦しんでいるロボを後ろにして、式さんの切り開いた道を進んでいますいく。

 後ろを見る余裕は無いから分からないけど、きっとロボは視線だけで殺せるような形相で俺たちを睨んでいるだろう。

 “待て、逃げるな”と言っているかのように吠える憎悪の雄叫びを耳に残しながら、俺たちは路地裏を後にした。

 

 

 

 

 おのれ、忌々しい人間共め……

 ガンドの硬直から立ち直ったロボは、ロボだった(・・・)それは人間たちが去っていった方を睨みながら歯を砕きかねないほど歯軋りをする。

 だが追うことはせずに元の住処に戻っていく。

 

 もう追う必要は無いのだから。

 藤丸立香は考えすらしないだろう。まさかあのガンド(魔術)によって英霊(ロボ)としての最後の理性が亡くなったことを。鬱陶しいものが消え、機嫌が良かったのも見逃した理由の一つだ。

 これは狩りだ。狩りとはむやみに獲物を殺せば良いものではない。獲物の一手を読み、その上を容易くいくのが狩人だ。

 後は相棒(・・)に任せていれば憎々しい獲物の死に顔は見れないのが癪だが奴らの血で手を打ってやろう。

 本来ロボがするはずが無い外れた思考をしながらそれは撤退していった。

 

 

 

 

 

 ロボの気配を感じなくなった頃にはあらかた敵を倒したようで返り血すら無い式さんと合流する。

 街中の光が微かだが見えてきた。もうすぐであの血生臭い路地裏とはおさらば出来る。

 そう思うとさっきまで重かった足取りが軽くなる。

 

 「周囲に敵性反応無し。もう大丈夫です、窮地は越えたかと!」

 「そりゃ朗報だな。オレも流石に疲れた。ところでこいつらはどうする?交番前に置くわけにはいかないだろ」

 「でもこの辺りに置くのはちょっと危ないからここから離れた場所にしようか」

 

 後ろをちらりと見る。ロボは勿論、あの吸血鬼の眷属たちの気配も無い。

 前にはもう科学の結晶である電気の光が眩しい街中だ。

 

 「……でも、ロボに一体何が起きたんだろう?」

 

 だから、その疑問を口にした。

 吹雪を吹いたのも変だけど、氷弾と冷気の攻撃も普段の彼はそんなことは出来ない。

 一番違和感を感じたのは挟撃なんてことをしたのと逃げる俺たちを追撃しなかったことだ。

 

 確かにロボなら挟撃する考えは浮かぶだろうけど実行するかと言えばしないと思う。生前はともかく今、人間を憎悪しているロボはそんな真似は自分からはしない。

 それに、ロボと初めて遭遇した新宿ではアルトリアのバイクに跨って逃げても追いかける程、執念深い彼が何の理由も無く諦めるはずがない。

 へシアンがいないのも気がかりだ。

 

 「──ほう、俺の相棒が気になるか」

 「っ!?」

 

 ロボに起きた異変を熟考していた俺の精神はその声で現実に戻ってくる。

 マシュや式さんもその声に気付かなかったようでどこにいるのか警戒する。

 だけどそんな警戒する俺たちを馬鹿にするように声の主は現れた。そう、俺たちが安全だと思っていた路地裏の出口から。

 

 声の主は声の低さで分かっていたが男だった。右手には鉈のような剣を握っていて、黒のコートのようなものを羽織っている。

 

 『そんな!?探知には何の反応も無かったはずだ!?今度は妨害される障害は無かったのに、どういうことなんだ!?』

 

 ダウィンチちゃんの驚愕からカルデアの方も何度目か分からない混乱が起きる。

 まさか、また後ろからも来ている──!?

 そう思い、背を向ける。だが後ろからは何の気配も感じない。

 

 「敵の目の前で背を向けるか、愚か者が」

 

 男が空いた左手をこちらに振りかざす。その瞬間、全てを燃やし尽くさんとする炎が発生し、襲ってきた。狙いは俺だと一目瞭然だった。

 

 「っ、先輩!」

 

 マシュはそれに気付いてすぐに前に出て盾を構える。でも、間に合わない。

 

 「──消えろ」

 

 だけど、マシュより早く動き、一番前に出た式さんが炎の死を視て斬って、炎は消滅した。

 しかし式さんにダメージが無かったわけではなかった。

 式さんは喉に手を押さえて、苦悶の表情を見せていた。

 

 「式さん!」

 「……安心しろ。喉を焼かれただけだ。後、マシュ、お前もこの炎には近づくな。酸素が一瞬で無くなった。サーヴァントじゃないと死んでいる」

 「運が味方したか。……それに、貴様、やはり死が視えているな」

 

 こいつ、式さんの眼に気付いた……!?

 

 「へえ……やはりってことはお前、この眼を持ってる奴に会ったことがあるみたいだな。正解だ。オレは死が視える人間だよ」

 「一度、手痛い一撃を喰らった。それにしても、これがカルデアか」

 「カルデアを知っているのですか!?ならあなたは……!」

 「お前たちの想像通り、敵だ。……本来なら名乗る必要は無いが、我が悲願のためだ」

 

 男は溜息を吐いた。この気温では不自然な白い息がするがそんなのは何も気にならなかった。

 口元から見える鋭い犬歯。それはまるで吸血鬼そのものだ。

 

 「我が名はヴローヴ、ヴローヴ・アルハンゲリ。死徒の王、二十七ある祖の一角(一人)として不相応にも立ってしまった愚者の名だ」

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