Fate/GrandOrder×月姫 死徒徘徊都市 総耶   作:ryugann

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会議は踊る、されど進まず

 身体を洗い終わり、部屋でのんびりとしていると翡翠さんがノックをして入ってきた。

 秋葉さんから今から三十分後に一階の居間に集合するようにと言伝を預かってみたらしい。

 それを了承したけど部屋にいてもやることが無かったのですぐに居間に向かっていく。

 それから三十分後、志貴さんが最後に入って全員が揃い、志貴さんに冷たい目を向けていた秋葉さんは咳を立てて切り替えてここに集めた意図を話した。

 

 「どうやら疲れも取れたようですし、食事にしたいのは山々ですが、何しろこれほどの人数ですのでもうしばらく時間がかかるとのこと。

 ですが、この時間でカルデアを名乗る皆様と情報交換をしようと思い、この場を設けさせてもらいました」

 「俺もそれには賛成だ。情報の共通は現時点での最優先事項。それを拒否するのに理由など無い」

 

 エドモンを筆頭にマシュたちも賛成の反応を見せる。俺も情報交換には賛成だ。

 だけど交換ということはカルデアの情報も話さないといけないのは当然だが、簡単に話せるものではないし誤魔化すのも秋葉さんたちじゃ無理だろうし、どうするか。その判断はゴルドルフ所長に委ねるしかない。

 

 「所長、どうしますか?」

 『何を言うかと思えばそんなことか。確かに秘匿しなければいけない情報もあるが、この特異点は現地にいる彼らと協力しなければ解決は困難なものになるだろう。

 なら遠慮せずに喋ってやりなさい。責任はそれを許可した私が取るから。……ただし、異聞帯については相手から聞かれない限りは喋らないように。また聞かれてもなるべく大雑把に説明して誤魔化すことを心がけてくれ』

 「……はい、分かりました」

 

 最後の箇所は俺にしか聞こえないぐらい小さな声で伝えられ、静かに了承する。

 この世界が漂白したと言われても信じられないだろうし、俺たちが、異聞帯を滅ぼしている、ということを知ったらどんな反応をするのか不明だから所長は気にかけてくれたからこそ注意したんだと思う。

 

 「では、こちらから尋ねますが、“カルデア”とは一体どのような組織なのでしょうか?そして重ねて申し訳ありませんがなぜここに来られたのか、目的を教えてください」

 

 秋葉さんからの質問に俺は出来る限り知っていることを、異聞帯のところは避けて話していく。ちょっと迷った部分があるとマシュが補助してくれたからとても助かった。

 

 「──ということです」

 「特異点、英霊、人理の維持を目的とした組織……それに、ここがその特異点になっているとは……

 なるほどここに来た目的も分かりましたし、ありがとうございました。私からは以上です」

 

 秋葉さんは頭を下げて感謝を述べる。その動作も一切の隙が無く、優雅で華麗で思わず目を見張ってしまうほどに綺麗としか言いようがなかった。

 次に手を挙げたのはマシュだった。

 

 「この特異点の状況を詳しく教えていただければ」

 「ならオレからも質問だ」

 

 すると、マシュの隣に座っていた式さんも挙手をしてマシュの質問に乗る。

 

 「単刀直入に聞くが、なんでお前たちはオレたちを──いや、サーヴァントを警戒してる?」

 「……どういう事か、聞いても?」

 「分からないって態度は無理あるぜ。そこにいる眼鏡もシスターも殺気こそ出してないがいつでも殺せるように手前の武器を仕込んでいるのは見え見えだ。

 そんなんで、情報交換なんて出来るわけないだろ?」

 

 確かに、式さんの言う通りで、志貴さんたちは明らかにこっちの動きを観察していたのは気になっていた。

 勿論、俺たちもそれに警戒して、いつでも逃げれるように、戦えるようにしていたせいで場の雰囲気は会話の内容からそうは思えないほど最悪なものになっていた。

 両陣営の放つ気配がより険悪なものに悪化する。

 

 「……はあ。くだらない。やっぱり俺は腹の探り合いなんて向いてないな。

 秋葉、こんな茶番劇は止めて話を進めないか。何かあったら全ての責任は俺が取る。そういう話でまとまっただろ?」

 

 この一瞬でも動いたら戦闘に入りそうな空気に躊躇なく入り込んできたのは志貴さんだった。

 

 「──馬鹿なことはおっしゃらないでください。その何かがあったら兄さんだけの問題ではなくなるのを、理解しているんですか」

 「秋葉も分かってるはずだろ?この現状を変えないとジリ貧になっていくのは俺たちだ。それが変えられるならそれぐらいのリスクは受け入れるべきだ」

 「そのリスクが兄さんの命ということですか!?どうして兄さんはそんなに自分のことを軽く見てるのですか!」

 

 冷静沈着で気品ある女性だと感じた秋葉さんが、あんなに感情を剝き出しにして怒るなんてことは少し意外だった。

 ただ、それを止めたのはシエルさんだった。

 

 「こうなっては遠野君はてこでも動きませんよ。それに遠野君の言うことも感情論で無視出来るほどメリットが大きい。秋葉さん、貴女は私たちのために犠牲を覚悟でこの現状を突破しようとする彼の気持ちを無下にするのですか?」

 「……」

 

 シエルさんはそれだけ言うと服の中にあった黒鍵を全て手放し、脅すことはしないことを示した。志貴さんもポケットからナイフを取り出してこちらに差し出すように俺たちの近くに置いた。

 秋葉さんはまだ納得してないようで、あからさまに敵意を隠すことなど忘れたようにこちらに向けている。

 すると、式さんたちも武器を手放していた。

 

 「あちらが武器を手放したのです。なら私たちも同じ条件でなければ対等とは言えません」

 

 それは確かにそうだ。

 ……だけど短刀をあからさまに置いたエドモンは手からビームを出せるし、べディヴィエールとハサンも腕の方が脅威だと思うけど、突っ込むのは野暮なのだろうか。

 秋葉さんも俺たちが手放したのを見て、少しだけ警戒を解いてくれた。でもこれではまだ話し合いは無理そうだなと思っているその時だった。

 なんと、志貴さんが置いていたナイフを取って自分の首に向けたのだ。

 

 「いい加減にしろ秋葉。この件は俺が責任を取るって言ったはずだ。そんなに藤丸さんたちのことが信用出来ないなら責任を取って首を搔っ切って交渉成立するなら喜んで俺はするぞ」

 

 志貴さんの手に迷いが無い。本気で自殺する気だ……!

 この行動に誰もが目を剥くほど驚いていて、その中でも秋葉さんが一番うろたえていた。さっきまで俺たちに敵意を見せていたのが信じられないぐらい蒼褪めて動揺している。

 

 「ま、待ってください……!分かりましたから……!もう彼らを敵とは見ませんから!その手を、放してください……!」

 

 罪人が救いを乞うような懇願を聞いた志貴さんはあっさりとナイフを元の場所に置いて何も無かったようにソファに座った。

 

 「遠野君?妹さんを脅しておいてその態度ですか?何か言うことありますよね?」

 

 だけど場を引っ搔き回した罰としてシエルさんの折檻が志貴さんを襲った。

 ソファに座った瞬間に目にも止まらない速さで志貴さんに近づいての犯行で、止めることなど出来なかった。阻止する気は無かったけど。

 

 「イダダダダ!す、すいませんでした先輩……!でも、こうでもしないと話が進まないというか……」

 「手段も問題ですが、首を切ろうとしたのは本気なのがたちが悪いです。それに、謝るのは私ではないですよ?──ちなみに、間違えたら遠野君の腕はしばらく使い物にならないでしょうね」

 「……ごめんな、秋葉。こんなことでお前を脅したのは悪かったって思ってる。俺もちょっとやりすぎたって反省してる」

 「いえ……頑固になって、周りを見なかった私が悪かったです。もっとしっかりしないといけないのに兄さんに庇われて……自分が恥ずかしいです……」

 

 『……何とか落ち着いた、ようだ?』

 

 急な展開で話についていけてなかったゴルドルフ所長の言葉の言う通り、今のこの空間にはさっきまでの険悪な空気はもう無かった。

 それにしても、一つ思ったことがある。

 

 「秋葉さん、悪い人じゃないんだろうけどさ……安全じゃなかったね……」

 

 シエルさんがあんな目で志貴さんを見つめていた意味が分かった。そしてそれ以上に怖いのがさっきの蛮行に加えてあれをいつもの日常のような感じで受け止めていた志貴さん。

 

 「……オレも人のことは言えないが、異常だぞあいつ」

 

 目の前で起きた喧騒をよそに呟いた式さんの言葉に無言で同意する俺たちであった。

 

 

 

 

 

 数分後、ようやく場が落ち着き、秋葉さんから謝罪されてやっと本題に入る。

 

 「少々取り乱しましたが、マシュさんと両儀──さんの質問についてお答えしましょう。いくつかはシエルさんから聞いたのでしょうが復習ということでもう一度耳を傾けてくだされば。

 この特異点、という場所は一ヶ月前に現れたものです。昼間、太陽が出ている時間は何の異常も無い普通の街ですが、夜になれば死徒という存在が出現し、人が襲われる魔都に変貌します。

 どういうわけか巻き込まれた私たちもこの現状を見過ごすわけにはいかないので、死徒を狩っているのですが……やはり親元である祖を倒さねば根本的な解決に至らずにこの現状が続いているのです。

 今も街で祖の行方を追っている仲間がいるのですが……まだ見つからず……」

 

 そういえばヴローヴは自分のことを祖をって言ってたような……

 

 『失礼、質問をしてもいいしょうか』

 「シオン?」

 「──い、いえ。どうぞ許可します」

 『ありがとうございます。私が聞きたいのは死徒のことです。

 我々、カルデアはここに来るまでにヴローヴという死徒と遭遇したのですが、異常な強さが気になりまして』

 「シオンさん、それはどういう事でしょうか?」

 『良いですかマシュさん。死徒というのは英霊とは正反対の性質を持っており、サーヴァントとして現れること事態が有り得ないことなんです。

 そこは特異点ということで納得出来たとしても、ヴローヴの戦闘力に説明が出来ません。いくら聖杯から魔力が供給されているとしても数体のサーヴァント相手に優位に戦えるというのは異常すぎる。生前がどれほど強くても、です』

 

 確かにシオンの疑問は俺も感じていた。

 死徒という実物を見たことがないけど孔明から知識だけは教えてもらっていた。

 その中で、死徒とサーヴァントが戦ったらどうなるか聞いたら、孔明は迷うことなくサーヴァントが勝つと断言した。

 いくら死徒が強くても神代を生きた者、その武を世界に認められた者では相性が最悪でない限りは圧勝するらしい。

 確かにギルガメッシュやエルキドゥ、クーフーリンが負ける姿が想像出来なかったから納得していたけどヴローヴと相対した時からその考えは一瞬で消えていった。

 

 だけど、志貴さんたちは、特にシエルさんは呆れた目でここにはいないシオンを見つめていた。

 

 「あれ?おかしなことを言いましたか?」

 「ええ、あなたたちが死徒をそんな甘い目で見ていたことに、です。確かに私たちが見てきたサーヴァントもそんなふざけたことを言ってましたが、結局その姿は見ていません。確か名前を……モードレッドと言ってましたね」

 「なっ!?モードレッド卿が敗れたのですか!?」

 

 同僚としてその強さを知るベディヴィエールとロンドンやキャメロット、そして秦でその強さを示し、俺たちが頼りにした騎士がこの特異点に現れ、敗北したことは大きな衝撃が襲ってくるのは必然だった。

 

 「いえ、モードレッドだけではありません。私たちが知っている限りでは渡辺綱、イヴァン雷帝、ロビンフッド、聖女マルタ、燕青、そしてヘクトールは既にこの特異点には存在しません。

 なお、これはあくまでも私たちが知っているだけで、知らないところで討ち取られたサーヴァントはかなりいるでしょうね」

 

 シエルさんの口から呼ばれたサーヴァントたち全員が一筋縄ではいかない味方としては頼もしく、敵としては恐ろしい強者なのに、彼らは全滅した?

 

 『いくらなんでもそれは有り得ない!一流と言えるサーヴァントたちが何も成せずに全滅するとは到底信じられんぞ!』

 

 ゴルドルフ所長の悲痛な否定はこの部屋に響きわたる。

 

 『おかしい……いくら聖杯から力を与えられていても上級死徒では歴戦の猛者たちを相手に圧勝するのは到底不可能なはず……』

 「?おかしなことを聞きますね。上級死徒程度なら彼らも私たちもかなりの数を狩りつくしてますよ?」

 『は?ですが今、貴女は死徒によって全滅させられたと……』

 「はあ……そう言いましたけど、なにか?」

 『?』

 「?」

 

 ……おかしい。シオンとシエルさんの話は何だか食い違っている。

 サーヴァントを倒せる可能性があるのは上級死徒だけ、のはずだ。それ以下の死徒では勝負にもならないって聞いたことがある。

 でもシエルさんの言うことからは上級死徒では相手になっていないと。なら、誰が彼らを倒したんだ?

 

 『……ふむ、議論に熱中している時に横やりしてすまないが聞きたいことがある』

 「む。失礼ですが貴方は……」

 「私の名はシャーロック・ホームズ。呼び方は好きに呼んでくれ、ミス・シエル。

 さて、私が聞きたいのは死徒についてです。私は推理が得意分野ですが、この分野に関しては素人でね。考察する材料が無ければ推理のしようがないのです。

 死徒には階級というものがあるようで、そちらが構わなければ、その階級を下から言ってほしい。勿論、シオン。君も頼む」

 「それくらいなら、お安い御用ですが……」

 『こちらも了承します。謎が解けるならなによりですし』

 

 疑問を持ちながらもホームズの言う通り、死徒の階級を喋っていく二人。

 

 

 

 ──さて、急に話を戻すがこの特異点はなんでも、二つの世界が混ざっているらしい。

 それがどういうものなのか立香たちは分からなかったが、ここで自分たちの世界との決定的な差を知ることになる。

 

 

 

 『下からでしたね。

 最初に死者、次に屍鬼、不死、夜属、夜魔。そして下級死徒と上級死徒です』

 「最も弱い死徒は死者、そこから屍鬼、不死、夜属、夜魔。そして下級死徒と上級死徒。──最後に後継者と祖(・・・・・・・・)。これでよろしいですか?」

 『──え?』

 

 その違いを明確に知った時のシオンの声は今まで聞いたことがないくらい感情が抜けていたのだった。

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