Fate/GrandOrder×月姫 死徒徘徊都市 総耶   作:ryugann

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死徒徘徊都市 総耶

 「──なるほど、これが世界の違いというということか」

 

 一つの謎が解けたにも関わらず、ホームズは苦い顔をする。

 

 「彼らの話から察するに、英霊と聖杯についての情報はほとんど無いに等しい。おそらく彼らの世界では英霊召喚は存在しなかったのでしょう。それに比べて死徒の勢力が我々の世界よりも強くなっている。この中で最も死徒について詳しいシオンが語った死徒よりも上の階級があることから明白です」

 

 世界の違いを思い知らされたシオンはというと、すぐにその事実を吸収することが出来ずに必死に頭の整理をしていた。

 そのそばでゴルドルフは急いで召集させた教会勢力に与したサーヴァントに情報の真偽を確かめていた。

 

 「死徒については最低限は知っているのですが……祖というものは残念ながら存じ上げません」

 「うーん……私もありませんね。私の話にはそんなものはいませんでしたし」

 「申し訳ありませんが私も深くは知りません……生前そのような話はありませんでしたし、当時、国を救うべく軍を率いてたのに精一杯で……」

 「死徒、ですか?……ああ、人々を襲う存在として私も何体かはタラスクと一緒に殴って──コホン、平和に“お話”で解決しましたとも。ですが、祖や後継者のことは分かりませんね。

 ところで、向こうで私が負けたとか聞きましたが本当ですか?」

 

 ひととおり聞いたが結果は不明。

 マルタは上級死徒とは戦ったというが、祖と後継者はマルタを警戒したのかそもそもいなかったのか見たことが無かったという。

 

 「まったく収穫が無かったな……」

 「そう落ち込まなくても大丈夫だよ。いたのか分からないっていうことは分かったのは大きな一歩なんだから」

 

 少女の姿をしたダヴィンチが大の大人であるゴルドルフを励ますのを微笑ましいと一周回ったことを考えながらホームズは頭を悩ませていた。

 

 (祖という存在がどれほどの脅威か。彼女の話が本当なら今の戦力では特異点攻略はまったく出来ないと言っても過言ではない。

 攻略の鍵は特異点となる前の現地にいたとされる彼ら。……まったく、これではワトソン君に笑われてしまうな。

 それにしても……死徒が動く街、か。

 “死徒徘徊都市総耶”、中々的を得てる名称だ)

 

 さらりと薬をキメながらホームズはマイク越しに伝わる話を一言一句逃さないように耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 世界の違いを知った俺たちはシエルさんにお願いして祖のことを教えてもらうことにした。

 

 

 「なるほど……立香さんたちの世界には祖や後継者がいないとは……道理で他のサーヴァントたちも知らないわけですね。

 まず後継者ですがその名の通り、祖の後を継ぐ者ですがこの特異点の性質上、後を継ぐことは意味が無いので、頭の隅に置いておくだけで結構です。

 ただ、問題は祖です。

 祖とはただそこにいるだけで星を汚染する呪いの最たるものであり死徒の王、また特異点と呼ばれています。彼らを相手にすることは国一つと戦争することを意味します。

 祖に至る条件はたった一つ。原理血戒(イデアブラッド)を継承することのみです。と言ってもあなたたちには関係ない話でしょうし、覚えてもらわなくても構いません。

 祖は二十七いることから死徒二十七祖と我々はそう呼称しています」

 「死徒二十七祖……」

 

 俺たちの世界にはいない。だけど俺たちの敵として立ちはだかるであろう存在を脳内にしっかりと刻み付ける。

 

 「二十七祖のメンバーはご存知なのでしょうか?」

 

 マシュは恐る恐るシエルさんに二十七祖の内情を聞いてみる。するとシエルさんが何か服の中から紙を渡してきた。

 

 「そういうと思ったので、予め作っておきました。仲間の方々と読んでください」

 

 お礼を言って受け取ると俺たちはその中身を見る。

 

 「ヴローヴはやっぱり二十七祖だったんだね……」

 「バツのマークがあるのは既に倒されたのでしょうか?」

 「何だこれ?“タタリ”って変な名前の奴もいるんだな」

 『“ネロ・カオス”……?うーん、最近お会いしたような気がするんですが……』

 『って、はあ!?“ゼルレッチ”!?あの魔導元帥がそっちじゃ死徒やってるの!?それに“ヴァン・フェム“とか“リタ・ロズィーアン”とか、私たちの世界じゃ名の知れた人物?いや死徒?が連なっているの怖いんだけど!?』

 『あれ?この“グランスルグ・ブラックモア”ってグレイの住んでいた墓地でそんな名前があるって聞いたことあるような……エルメロイ二世も呼んで確認してみようか』

 『(……誰も“ORT”の名前を出さないのは口にしたくないってことだよな。触らぬ神に祟りなしだ、僕は知らないぞ)』

 

 二十七祖の中には俺たちの世界でも同一人物っぽい名もあるようで、ちょっとした混乱が起きる。……あと孔明は胃が痛みそうだからやめてあげてほしい。ってあれ?

 

 「番外位?二十七祖なのに一つ多いですね?」

 

 “ミハイル・ロア・バルダムヨォン”という名前だけど他の祖と何が違うんだろう?

 その言葉を聞いたシエルさんは一瞬、ただならぬ気配を放った後、にっこりとした笑みで次のように言った。

 

 「それはただのオマケですからお気になさらず」

 

 ……これは、無視するべきものなのだろうか?

 どうするか迷っていると、空気の流れを変えるため、ハサンが挙手をしてくれた。

 

 「失礼、私たちはこの特異点にて祖の一角であるヴローヴと交戦したのですが、他にも祖はいるのですかな?」

 「……ええ。英霊というのは既にこの世にはいない者が世界によって生前の形を持つことを許された者のことでしょう?

 私たちは生きたまま何故かなってますが、これは滅多に起きない例外でしょうし、深く考えなくても良いでしょう。

 私たちが確認した祖は第十九位ヴローヴ・アルハンゲリ、番外位のロアの二体です。他に可能性があるのは第七位腑海林アインナッシュ、第二十二位クロムクレイ・ペタストラクチャ、第二十五位剣僧ベ・ゼあたりでしょう」

 

 シエルさんの説明は現状を知るために必要でありがたいのだけど、死徒のことなど殆ど分からない俺には何を言っているのかちんぷんかんぷんで、混乱してしまう。

 どうやらそれは志貴さんも同じようで顔が宇宙の果てを見たように虚ろになっていた。

 ……あと、シエルさんには悪いのだけどその例外、カルデアにたくさんあります。イリヤとかエリセとかグレイ等々。

 

 「──と、そういえば皆さん、ヴローヴと交戦したようですがその時何か手傷か何かを負わせましたか?」

 

 何か気になったことがあったのか説明を止めて俺たちにヴローヴのことを聞いてきた。

 ヴローヴには負わされた傷はたくさんあるけどこっちが与えたダメージは──

 

 「心臓を握りつぶしました」

 「私は彼の脳天をかちわりました」

 

 あっ、それがあった。結局ヴローヴを倒すことは出来なかったから忘れてた。

 

 「……は?脳天はともかく心臓を?」

 

 ハサンの宝具を知らない人からすれば意味が分からないことを話したようにしか見えないのは無理もない。

 だけどシエルさんと志貴さんそれをポカンとした表情から一瞬で冷酷な表情に急変し、ソファから立ち上がった。

 

 「──それが本当なら今夜のヴローヴは間違いなく血を求めて街中を徘徊する。急ぎましょう遠野君。彼らと戦闘になる前に息の根を止めなければ」

 「ごめん秋葉、琥珀さんたちには今日は食べられないって伝えてくれ」

 「はい……兄さんも気を付けてください。」

 「えっと……どうしたんですか?」

 

 志貴さんたちはテキパキと動いてる中、何が起きてるのかまったく状況を掴めないでいる俺たちは、いや式さんやエドモンたちは武器の手入れをしている。まるでこれから戦闘が始まるのを予見するかのように。

 

 「……そういえば、両儀さんの質問に答えてませんでしたね。

 今から私たちはヴローヴの討伐に向かいますが、実のところ、ヴローヴは既に倒されていたはずなんですよ」

 「え?」

 

 ヴローヴはもう倒されていた?

 でも昨日見たのはヴローヴじゃなかった?それとも倒れていたのが復活したのか?

 

 「あの炎使い(・・・)の吸血鬼が死んでた?じゃあ、昨日オレたちが見たあいつは何なんだ」

 「先輩、その言い方は誤解を招いてます。正しく言えば俺たちはヴローヴをあと一歩のところまで追いつめていたんだ。

 でも、邪魔が入って取り逃した」

 「邪魔……?」

 

 ヴローヴが殺されるのが困るってことなのだろう。ならそれは仲間の死徒だと考えるのが普通なのになぜそんなことを?

 ──待って。それは式さんの質問に答えるのに必要なことじゃない、はずだ。何か関係あるはずなのは間違いない。

 でもそうだったら邪魔をしたのは──

 

 『君たちと同じサーヴァント。それもおそらく私たちの世界から来た抑止力の一種だろう。だから君たちは同じ世界から来たとされる私たちを警戒した。違うかい?』

 「流石は世界が誇る名探偵。正解です。私たちは死徒だけでなく人理の抑止力たる英霊も相手にしています。先程述べた英霊たちですが、そのうちの何体かは私たちが倒しました」

 「そんな……なぜですか!?」

 

 平然に言い放つシエルさんにマシュは理由を問う。

 だけどその答えはシエルさんでなく志貴さんが口を開いた。

 

 「勘違いしないでほしいけど襲ってきたのはあっちからだ。共闘をしようと言っても聞く耳なんて持ってない。俺たちも理由なんて分からないくらいだよ」

 

 それは嘘だ。

 俺たちが知っているヘクトールたちなら敵を増やすような愚は起こさない。共闘を蹴ってまで二勢力と戦おうとすることを彼らがするとは思わない。

 でもそれは本当だ。

 ヘクトールたちが手を組めばヴローヴだけじゃなく特異点の解明は進んでいるはずだ。彼らの力量なら充分あり得る。

 だけど理由は?

 

 『それは抑止力のせいだな』

 

 ホームズでもダヴィンチちゃんでもゴルドルフ所長でも、シオンでも無い声が聞こえる。

 だけどその声を俺は知っている。ダヴィンチちゃんとあり得ない出会いをした恐竜と夏の冒険に行った時に同行した一人?

 

 「煉獄、ちゃん?」

 『ちゃんは止めろちゃんは。今度言ったら主にあることないこと喋るぞ』

 「ごめんごめん。それで、どうしてここに?オルタは?」

 『ちょっと目がデカイ方のジル・ドレェに追われてな。逃げてたらいつの間にかここにいた。主は茶々とアイス食べてる』

 『いやいつの間に!?』

 

 ジル・ドレェについてはこちらにも伝わるほど凄まじい怒気を発してるジャンヌにお任せするとして、煉獄の言ってたことが気になる。

 

 「さっき言ったことはどういうこと?」

 「ああ、さっきのサーヴァントたちが手を組まないで敵を増やしてるのはな──」

 

 煉獄が話を続けようとした時、それを遮ったのはシエルさんだった。

 

 「──待ってください。今、ヴローヴを炎使いと言いましたか?それは違います、彼は──」

 

 煉獄の言葉を遮ってまで介入したシエルさんが伝えたいこととは?

 それを告げようと脳内から命令が下され、喉を通り、唇を動かし、口を開けたその瞬間────

 

 

 

 

 世界が、特異点そのものの温度が消失し、凍りついた。

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