たとえ花になれなくても   作:名無

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久々の作品です。
拙いところも多いですがよろしくお願いします。


ある人間が生まれた時

 今頃になって彼女のことを語ろうとする自分に嫌気がさす。

 

 手を伸ばせば助けられたかもしれない。

 そうでなくても、何かできたかもしれない。

 そんな「もしも」や「たられば」を考る自分には嫌悪感しか感じない。

 

 一瞬たりとも変わっていない。

 糞で愚図で自己保身しか考えていない自分がなぜ生きているのだろう。

 考えるだけで自己嫌悪が止まらなくなる。そんな嫌悪している自分の善性に酔いそうになり、そんな自分をまた嫌悪する。

 あぁ、やはり、自分は真正の屑なんだと改めて痛感する。

 

 

 

 話を戻そう。

 あの研究所で最後の生き残りとして、私は彼女の存在を残さなくてはいけない義務がある。

 彼女とともに駆け抜けた時間を。

 彼女が残してくれた時間を。

 彼女が残した・・・残そうとした怨念を。

 

 

 

 

 

 2050年7月20日 甲州

 

 『本日でHUGEによる大規模侵攻から2日が経過しました・・・』

 『防衛軍とリリイ達による協力により被害は最小に抑えられ・・・』

 『先日の大規模侵攻で活躍した百合ヶ丘女学院のリリィには感謝状が!!・・・』

 『世界最強アールブヘイム特集!! 解説は元リリィで現在はリリィ専門家の・・・』

 

 世間一般では夏休みが始まった頃だろう。

 チャンネルを変えているとリポータの後ろにはたくさんの学生が見えた。

 学生たちの視線の先にはリポータと『リリィ』がいる。

 現行兵器では倒すことが困難な『HUGE』を倒す存在である『リリィ』。

 彼女たちが歴史の表舞台に登場した当初は化け物扱いされたりもしたが、メディアというのは恐ろしいもので、『化け物と可憐に儚く美しく戦う美少女達』というイメージを作り出した。

 別にそれに対してとやかく言うつもりはないのだけれど、なんというか、こう釈然としない。

 この感情は・・・そう、妬みだ。

 

 誰に対して?

 そりゃもちろん全員。

 私以外の全員だ。

 

 お前たちは私たちがいないと存在できなかったんだぞ。

 お前たちだけちやほやされて、金もらって、いい服着て。

 それをおだてている奴らもそうだ。

 バカめ、愚図め、役立たずめ。

 おだてることしか能のない糞どもめ。

 唯々生きていることしかできない、そう、私と同じ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 体が真っ二つにされ、死ぬ一歩直前だというのに、私はそんな鬱屈とした感情を抱いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 簡単な任務・・・とは思っていなかった。

 

 『実験用HUGEのテストをする。HUGE相手に性能評価するから暴走したら処分しろ。』

 

 それが今回G.H.E.N.A、私達の『飼主』から下された任務だ。

 もちろんこの任務は建前。

 本当の任務は、

 

 『実験用HUGEのテストをする。性能評価したいからお前ら相手になって適当に死んでこい。』

 

 これが正しい任務だ。

 任務が下だった後、私含め5名の反応は様々だった。

 

 もう終わりだと泣き散らかす奴。

 自分の能力を示すチャンスだと喜ぶ奴。

 幼なじみと家族の敵を取るんだと凄む奴。

 疲れ切ったような顔で反応すら示さない奴。

 

 そして、私。

 楽に死ねたら儲けものだと考えていた私。

 

 

 

 

 結論から言おう。

 

 私置き去りにして逃げやがった。

 

 

 

 

 まず、泣いてたやつがHUGEの存在に気付き、最初に逃げた。

 直前まで暑苦しく協力だ、チームプレーだ、勇気だとか言ってた奴は一度ブレードをぶつけた瞬間に吹き飛ばされ、そのまま戻ってこない。

 敵を取ろうと武器を振りかぶった奴は現実を知ったのか、とんでもない速さで逃げた。

 疲れ切ってたやつはよく戦っていたが、結局は逃げた。

 

 

 私?

 私は『最初から諦めていた。』

 生きて戻ったところで何かあるわけでもない。

 戦う理由があるわけでもない。

 生きる理由も。

 なにもかも。

 

 そんな奴が死ぬのは当たり前というわけで。

 私は体を2つに切り裂かれました。

 

 チャン、チャン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、終わってくれたら良かったんだけどな・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唯一の宝物であるラジオ。

 偶々拾ったそいつから流れるニュースを聞くのが生きがいだった。

 完璧な最後だ。

 愚図で無能で無知な私には勿体ないくらいの最後だ。

 

 

 だというのに。

 

 

 

 

 なんで・・・。

 「しっかりして!! 私の前で死なないで!!」

 なんで、

 「なにこれ傷が治りかけてんの!? プラナリアかアンタは!!」

 なん、で、

 「大丈夫よあのHUGEはもう倒した。手強かったけどもう安心して。」

 な・・・ん・・・で、

 「ちょっとは喜びなさいよ。意識あるんでしょ? 血が足りないのか? 

  早く医療班のとこ連れてかないと・・・」

 

 この出会いはきっと呪いだ。

 こんな出会いなければよかったんだ。

 もう終わらせてくれればよかったんだ。

 

 「認識票は・・・というかその制服はヌド女? アンタみたいな奴いたっけ? 

  というか『名前(・・・)』は?」

 

 

 

 

 

 

 「私、は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名前は・・・。

 

 

 

 

 

 

 




何も知らない。
何も感じることができなかった。
そんな自分はもうおしまい。

新しい誕生に感謝しろ。
たとえその後の人生が呪いに満ち溢れたものであっても。
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