まれびとの旅   作:サブレ.

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第十一話

西の都に到着。さすが都会、人が多い。

一時的にブルマの家に居候することになったので、部屋を借りて一日休んで、翌日早速脳内のアイデアをノートに落とし込んでいく。

やろうとしていることは、前世で自分もやっていたTCGを売り込もう、というものだ。特許とかそういうのを取れば何もしなくても金が入る。上手くいくかは分からないけど物は試し。

 

「やっべルール細かい部分まで覚えてねえ」

 

朧げな記憶を書き出し、なんだこれと思うものは修正したり、この世界に合わせていくつかルールを書き足したり減らしたり。

ついでに腕につけてゲームをするための道具の簡単なイラストもなんか前世であったので作っておいた。あれかっこいいんだよな。

四苦八苦すること十日。なんとかカタチにして、ブルマを通じておもちゃ会社に原案提出、何度も会議を重ねて商品として売り出すことに成功。 

 

 

結果、異次元に売れた。

 

 

「……どうしてこうなった」

 

そもそもTCGというゲーム自体この世界になかったのだ。だからこそ企画を持ち込めると判断したし、売れるかどうかは半信半疑だったのだが、そんな心配は杞憂だと言わんばかりに馬鹿みたいに売れてブームになった。

そんなこんなで金の心配をしなくても良くなったんだが……前世のアイデアを借りたので持ち上げられるには申し訳なさが強い。ごめんなさい。

 

+++++

 

売れてしまったものは仕方ない。忙しさがひと段落してから、大量に入ってきた金でパオズ山近くに適当な山を購入、なだらかな斜面を開拓してログハウスを建てた。ついでにブルマからもらった独立祝いのカプセルハウスは仕事専用の建物として隣に建てる。

 

「……やっといて何だけど、景色のアンバランス感半端ない」

 

カプセルハウスがなんか中途半端に近未来的に見えるのは隣のログハウスのせいだろうな。

ログハウスは、一階の二つの空き部屋は置いといて、二階のリビングと寝室が俺の生活スペースということになる。

……適当に図面だけもらって自力で建てたけど、部屋多すぎるな。

それでもやっちまったもんはしょうがねえ。

二階の寝室に、ベッドと小さい勉強机と、アップライトピアノを置いた。部屋が思いの外ギチギチだけど、すごく満足。荷物の搬入には引っ越し祝いを兼ねて、ブルマとヤムチャがやって来てた。なんだかんだ今のところ上手くやってるらしい。

 

「こんな小さい家に住むの?」

「うるせえお嬢様。俺は庶民だからこういうのが一番落ち着くの。仕事用の家はCCの使ってるんだからそれでいいだろ」

「でも中々いい家じゃないか」

「あ、これ引っ越し祝いね」

「ん、二人ともありがとな」

 

引っ越し祝いを受け取った。中身はリクエストしていた、小学生向けの学習教材。まずは国語算数が揃っていて、あとは簡単な歴史の本に、初心者向けのピアノのレッスン本。ノートに鉛筆たくさん。

うわあ、キラキラ星懐かしい。

 

「こんなので良かったのか?」

「いいの。ありがとう助かった。こういう事情は全然知らなくてな」

 

新築したばかりの家でお茶を飲んで、二人は帰って行った。後に残されたのは俺だけだ。楽しかったけどそこはかとない気疲れを感じる。

 

「……あー、ようやくひと段落か」

 

カレンダーを見たら、悟空と別れてから半年以上経過していた。ずーっとドタバタしていたせいだろうけど、月日が経過するのがめっちゃ早い。

明日からは今まで通り実力が落ちない程度に体を動かして、そしてピアノの練習と勉強を始めよう。どっちも中途半端なままこっちの世界に来て、それから何百年も経ってしまった。

誰かに誉めてもらえるわけじゃないが、それでもワクワクしながら鉛筆を丁寧に削って、キャップをはめる。消しゴムのビニルを破って、定規と赤色ボールペンを筆箱にしまう。新品のルーズリーフと付箋を並べて、三色組の蛍光ペンの箱も開けて……

 

 

 

……………

 

 

 

ドラゴンボール揃ったときより嬉しいかもしれない。

 

+++++

 

日課となった勉強はずいぶん楽しかった。最初は小学生向けのごく単純なものばかり解いていたはずなのに、いざ答え合わせをしたらぼちぼち間違っていたのはだいぶメンタルに来たが。簡単な分数問題すら間違えるって……。小学三年生レベルだぞ。一応前世では高校受験のために勉強していたから流石に堪える。

あと、ピアノスキルは完全にゼロになってた。この身体でのピアノ経験ゼロだから仕方ないけど、これは勉強以上に落ち込んだ。まじか、まじかぁ……。一からやり直す以外に道はないんだけどさ。まあ、アスラがピアノ上達するたびにテンション上がってたから、それでよしとしよう。

そんなこんなで八ヶ月。今日もそんな風に過ごしていたら、電話が鳴った。

 

「もしもし」

『もしもし、マレビト君?』

「お、ブルマじゃん久しぶり。なんかあった?」

『ヤムチャが天下一武闘会に出るんだけど、アンタも見にくる?』

「天下一武闘会……ああ聞いたことある」

 

前世と今の両方で、という心の呟きはもちろん口に出さない。

なんか『ドラゴンボール』の世界だって自覚してから、ちょっとずつ『ドラゴンボール』の知識を思い出してってる。メモ代わりのノートを開けば、思い出した単語一覧に確かに『天下一武闘会』って書いてある。が、詳細は流石に覚えてない。ぶっちゃけ何回開催されたか、優勝者すら分からん。

それはそれで、楽しみが増えるのか。

 

『来る?』

「自分の足で行くよ。場所と時間だけ教えてくれ」

 

修業してるっていう悟空もいるかもしれないしな。邪魔しないよう連絡取るのは控えてたけどこれくらいはいいだろう。

 

『アンタは参加しないの』

「しないよ。だって俺、徒手空拳じゃなくて剣使いだからな。武器の持ち込み禁止されてるだろ」

『それもそっか。じゃあ!当日会いましょう』

「じゃあな」

 

ふつん、と電話が切れた。

カレンダーに早速予定を書き込む。お、あとちょっとじゃんか。

悟空も出るのかなあ、出るんだろうなあ。

楽しみが増えた。ウキウキ気分でピアノの前に座る。最近ちょっとずつピアノの腕が上がってきたから、試していることがある。

 

「えーっと、歌詞がどうだっけ。……【このよーはーでっかい宝島】……」

 

ドラゴンボールの曲の再現に挑戦している。歌詞とか、リズムとか、手探りだけどちょっとずつ形になり始めたところだ。悟空が天下一武闘会で優勝したら、悟空の歌なんだぞーってプレゼントしよう。

さて、がんばらないとな!




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