まれびとの旅   作:サブレ.

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第十二話

天下一武闘会の会場はなかなか混雑している。それなりに注目されている大会らしくて楽しみだ。……宇宙のレベル?今は忘れよう。それにしても筋斗雲途中で降りて正解だったな、目立つに違いないし。

早めに着いて、受付のところで待ち伏せしてみた。受付の人には美味しいと有名な洋菓子を袖の下、もとい“寄付”したので大目に見てもらっている。こういう下準備、大事。

袖の下あるかないかで上の心情って結構違うってのは何百年の放浪で学んだのだ、ここで活かさずどう使う。 

気を探ってると……来た、正装した悟空と、同じ格好の誰か。兄弟弟子とかかな?悟空は俺に気がつくとぱあっと笑顔になって飛びついてきた。

 

「や、悟空久しぶり」

「にいちゃん!にいちゃんも出るんかっ!?」

「俺は見学。もしかしたら悟空出るのかなーって思って来た」

 

似合うなあ悟空の正装。なんか七五三みたいだけどとっくに十歳超えてるんだよな。持ってる力もこの前とは比べ物にならないくらいに増えてて、ああ頑張ったんだなって分かる。

もちもちの悟空のほっぺたを久し振りに堪能してから、改めて悟空を鍛えた亀仙人と、その兄弟弟子と向き合う。みんな揃って正装しているのはなんだかおかしい。

 

「お久しぶりです、そして初めまして。マレビトだ、以後よろしく頼む」

「うむ、久しぶりじゃのう」

「初めまして!クリリンと申します!あの、マレビトさんは悟空のお兄さんで?」

 

……なんだっけ。ほとんど覚えてないけど悟空兄ちゃんいた気がする。クリリンの言葉でようやく思い出したぐらいだから、情報とかほぼないけど。

ただまあ、クリリンの疑問にはノーだ。俺尻尾生えてないから。

 

「いいや、俺は悟空の兄じゃないよ。前に悟空の家に世話になったことがあってな、そのときにそんな風に呼ばれていたってだけだ」

「にいちゃんはにいちゃんだ」

「そんなわけだ。別に畏まらなくていいよ、そんな偉い人間じゃない。気軽にマレビトとでも呼んでくれ」

 

俺そもそも余所者だから偉いとかそういう次元から外れてるしな。

 

「じゃあ、マレビトって呼ぶぞ」

「いいよ。悟空が世話になったなクリリン、亀仙人」

「なあに、師匠が弟子の面倒を見るのは当然じゃ。ほれ二人とも、受付が終わったんじゃ、さっさと着替えて会場に行かんか」

「はっ、はい!」

「二人とも、頑張れよ」

 

時間が若干押しているので、二人は会場へと向かっていった。後には俺と亀仙人が残される。

亀仙人はというと、二人が視界から消えてから物陰に隠れて着替え始めた。わざわざカツラを接着剤でくっつけてまで。

 

「マレビトよ、あの二人には」

「ナイショだろ?なんとなくやりたいことは分かるよ、黙っておく」

「すまんの」

 

ジャッキー・チュンと名前を変えて、亀仙人は受付を済ませると会場入りした。俺はどこで見ようかな。筋斗雲で空から見てもいいし、ブルマと合流してもいい。だけどとりあえず出店で何か買おうと思った。たまにはいいよな。

 

「カキ氷に〜フランクフルトに〜」

 

どうでもいいけど、フランクフルトってそもそも地名じゃなかったっけ。地理が元の世界とかけ離れてるのに名称も内容も全く同じ料理が存在してるのなんでだろう。

ほんっとうにどうでもいいけど。

もりもり食べて、気を吸収。こういう場所で気を吸い取るのはあんまりよろしくないのでご飯をいつもより多めに食べないとな。

別に屋台飯が食べたい言い訳ではない。断じて。

 

「おっいたいた。ブルマ〜」

「あれーっ!マレビトじゃない!久しぶり……でもないわね」

「仕事の関係で定期的に会うからなー。ヤムチャはもう受付終わってんのか?」

「ええ。今は予選をやってるはずよ」

 

プーアルウーロンも一緒で、なかなか懐かしいメンバーが揃っているのではないだろうか。

ジュースを買って飲みながら場所を確保する。それにしても人が多い。武闘って人気あるんだな。

そんなこんなで本戦開始を待っていたら、たまたま亀仙人と出くわした。ということは予選終わったのか。

 

「あら?あら、あらー!?」

「ん?ん、んー!?」

「よ、亀仙人さっきぶり」

 

亀仙人も交えて同窓会状態。いや、会ったのほんの何回かだけどさ。しかし悟空達より早く予選終わらせたのか。さすがというかなんというか。

そんなんなのにパフパフを求めてブルマにしばかれている。だからちょっと微妙な心地になるんだ。それでいいのか武天老師。

そんなやり取りをちょっと引いた場所で眺めていたら、知っている気配が近寄ってきた。悟空とクリリンだ。この様子だと予選突破してそうだな。めでたいめでたい。

 

「ウーロン!」

「悟空ーっ!わーっ久しぶりだぜーっ!」

「ほんとだなーっ!ブルマとプーアルも元気だったかっ!?」

 

うん、こういう楽しい再会を見るのはすごく好きだ。やっぱり子供は笑顔でいるべきだよ。悟空もブルマもプーアルもウーロンも、にこにこしているのが一番いい。クリリンの紹介も済んだところで、本戦出場者の集合アナウンスがかかった。二人がちょこまか去っていったので、俺も亀仙人とアイコンタクトを取って素知らぬふり。

いい師匠に巡り会えて良かったなあ、悟空とクリリン。

 

+++++

 

出店巡りを口実にブルマ達と別れて、一人で観戦することにした。チョコバナナを食べ終わったので次はフライドポテト。こういう場所で食べるご飯ってどうしてこんなに美味しいんだろ。つーか一人暮らししてからこんなに美味いご飯は久しぶりな気がする。

 

「さて、悟空たち以外の出場者は……」

 

とりあえず悟空、クリリン、ヤムチャ、ジャッキーチュンの四人は確定してるだろ?あとは誰だろうな。純粋な強さで探るなら後二人くらいすぐ脱落しそうなものだが。

 

『えー、皆さん大変おながらく待たせいたしました!ただいまより第21回天下一武闘会をはじめます!』

 

わあっと盛り上がる会場。ちなみに優勝者の賞金は50万ゼニーらしい。しょっぱい。今度出資してみようかな……金あるし……。

 

『では第一試合が始まります前に、ここ武道寺の館長よりひとことご挨拶を!』

 

犬系の館長がマイクを持つ。はてさて、一体どんな長ったらしいご挨拶なのか。

 

『わん』

『ご挨拶でした』

「こふっ。ん、ふふ、ふっ」

 

ちょ、ちょっとまて。

やべえツボった。頑張って抑えてるけど堪えきれるだろうか。

いや、わんて。たしかに一言だけどさあ!

ふるふる震えてる間にあっという間にトーナメントが表示される。クリリンは第一試合、悟空は第四試合……お、ヤムチャと亀仙人が一回目で当たるじゃん。運がなかったなヤムチャは。

さて、なんやかんやでクリリンの実力を見るのはこれが初めてだ。お手並拝見、ってやつになるのかな。

 

まあ俺、偉そうに語れるほど強くないんだけど。


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