まれびとの旅   作:サブレ.

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第十六話

筋斗雲で空を飛びながら、悟空に亀仙人の元での修業の話を聞かせてもらう。すごく興味深くて、加えて修業の概念を根本から変えてしまうような、そんな話だった。よく食べて寝て学んで鍛えて遊ぶ。それが一番だいじなのは凄くよく分かる。

そうやって育てられたから。

 

「それでさ、畑では何を育ててたんだ?」

「色々やったぞ。大根とかにんじんとか、牛蒡とかネギとか」

「あっははは!豚汁セットだ!」

 

なんか引っかかるけどまあいいや。多分そこまで重要なことじゃないし。豚汁食べたくなってきた、今度作ろう。

 

「工事もやったのか、アルバイト代って悟空にも入ったのか?」

「うん」

「へえー、亀仙人そういうところしっかりしてるんだな」

 

たくさん話を聞かせてもらいながら筋斗雲はぐんぐん進む。疲れた悟空がとうとう撃沈してぐーすか寝こけている。気温はあったかいから風邪はひかないだろう。

 

 

来たる朝。

ふあ、とおおあくびをして悟空が目覚めた。

 

「悟空、おはよ」

「もう朝か!にいちゃんおはよう!」

「レーダー借りていいか?」

 

悟空からレーダーを借りてドラゴンボールの場所確認。その間、悟空は川辺で水分補給中。お、だいぶ近い場所まで来たな。気になるといえば、ここからそう遠くない場所にそこそこ強い気が感じ取れるくらいか。

 

「近いか?」

「あっちの方だな」

「よしっ!」

「あっ待てよ」

 

とりあえず借りてたドラゴンレーダーを投げて返してから、俺も筋斗雲に乗って悟空の後を追う。しばらく行くと、武装した二人組があちこち何かを探している光景に出くわした。レーダーの位置関係から推測するに、多分ドラゴンボールを探しているんだろう。

悟空はというと、そこに遠慮なく降り立ってあっさりとドラゴンボールを見つけ出してしまった。だがまあ、ドラゴンボールは誰のものでもない。邪魔をしてない以上、早い者勝ちでいいだろう。

 

「四星球か?」

「えっと……なーんだ、星六つか。六星球だ──じいちゃんのじゃねえ」

「ん、残念。次に行こうぜ」

 

かちゃりと、金属音が聞こえてきた。それと、無線機の雑音も。脅し取ろうと言う魂胆らしい。うーん、やっぱりこういうやり方は好きになれない。

 

「なんか用か?」

「おい、その玉俺たちに寄越しな!」

「って言ってるけど?」

「なんで?これどうすんの?」

「つべこべ言うんじゃねえよ死にたかないだろ?」

「そんな言い方じゃべーっ!」

 

舌を出して断る悟空だが、内心同意。人に頼む態度ではないと思うんだ。男たちは怒ったように一人は銃を向け、もう一人は車へと走っていった。車の中には……例の、そこそこ強い気が感じられる。戦闘力は、数字に換算して八十程度?今の素の悟空と大体変わらない。

 

「?」

 

首を捻っていると、悟空があっという間に一人目の男を倒していた。まあそれはいい。じっと車の方を見ていると、出てきたのは頭でっかちで子供くらいの体格の、全身緑色の人型の生き物だった。おおよそ知性というものは感じられない。

てかこれ知ってるわ。サイバイマンだわ。見たことも聞いたこともあるわ。

それにしては、なんか弱っちい?けど。

 

「行け、バイオーム人間!あの小僧を殺せっ!」

 

男は悟空を指差して叫んだ。サイバイマン、もといバイオーム人間は視線を一旦悟空に向けたあと、一気に狙いを定めて走り出した。

俺に向かって。

 

「悟空じゃなくて俺かよ!筋斗雲!」

 

咄嗟に筋斗雲を呼び出して、その上に飛び乗った。バイオーム人間は流石に空までは飛べなかったらしく、俺がさっきまで立っていた場所に着くと何もできないまま俺を見上げた。

その隙を、悟空が黙って見ているわけもなく。

 

「か、め、は、め……波!」

 

背後から放たれたかめはめ波を背中にもろに受けたバイオーム人間が、一瞬にして撃沈した。そりゃ、そうなるわな。油断しすぎだ。

 

「ひ、ひええ……」

 

切り札であったサイバイマンことバイオーム人間があっさりとやられたことで男は流石に戦意喪失したのか、ほうほうのていで去っていった。一度筋斗雲から降りて、悟空とお互いに顔を見合わせる。

 

「にいちゃん、なんかやったんか?あいつオラをやれって言われたのににいちゃんに向かってったぞ」

「さあ……そもそもバイオーム人間とか会ったことないし……」

 

見た目とかサイバイマンに酷似してるのも気になるが、でもサイバイマンって種から生えてくるんだよな?さっきのバイオーム人間は車から出てきたし、最初から気を感じることができた。つまり種から生えるにしても、今回は最初から人型であったと考えるのが妥当だろう。

そもそも、サイバイマンなんだろうかこれ。培養できる人型の戦闘用生物がたまたまサイバイマンに似てたとか、そんな可能性は?種を悟空が持ってるってのは考えにくいし……。

うーん、わからん。

 

「わからん!」

「そっか!じゃあにいちゃん、次のボール探そうぜ」

「よし、そうだな。方角どっちだ?」

「あっち!」

「だいぶ北の方かー。途中でコート買ってくか」

「つぎはじいちゃんの球だといいな」

 

六星球を拾って、二人でそれぞれ筋斗雲に乗り込んだ。ドラゴンレーダーの示す方向へと向かって筋斗雲を走らせる。ふと嫌な予感がしたので、悟空の襟首を掴んで持ち上げた。

瞬間、筋斗雲が爆発した。ロケットランチャーが直撃したらしい。

 

「あっ、筋斗雲!」

「下、あいつか」

 

襟首を掴んだまま下に飛び降りた。ロケットランチャーを構えた、ロングコートの大男。いかにも悪そうなやつ。

 

「おまえ何者だ?」

「それはこちらの台詞だ。貴様らはなんでドラゴンボールを集めている?なんでそう簡単にドラゴンボールを見つけることができたのだ……我がレッドリボン軍のレーダーではそこまで細かい位置はわからん……」

「レッドリボンかよ」

 

聞いたことある。悪の軍隊だっけ。詳細は知らないけど、ここに来て日が浅い俺でも名前は知っている。

ていうか地味に答え教えてもらったのだけど無意識か?

 

「ペッペッ!筋斗雲を壊しちゃうようなやつに教えるもんか!オラに謝れ!」

「小僧……レッドリボンのシルバー大佐を舐めるなよ……」

「はいはい」

 

悟空は完全に相手をする気がないようで、プイッとシルバーに背を向けた。なので遠慮なく、デコピンで沈めておく。一発で気絶したのを確認、ヨシ。

 

「にいちゃん、筋斗雲無くなっちゃったから乗せて」

「いいぞ」

 

俺の筋斗雲、悟空より広くてよかったわ。あぐらをかいてその上に悟空を座らせる。悟空の荷物は前で抱えてもらって、さらにドラゴンレーダーを受け取った。

 

「んじゃ、行くか」

「おう!」

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