まれびとの旅   作:サブレ.

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第二十話

聖地カリン。……聖地か。相性めっっちゃ悪いんだよなあ俺。一体何度神様とか、長老とか、そういう人たちに追い出されてきたことか。地球っていう名前の星から追い出されたらしばらく落ち込む自信あるからな。

とりあえず子供を人質に取ってるレッドリボンの飛行機を蹴って揺らし、落っこちてきた子供を受け止める。それと入れ替わりで、悟空がパンチでイエロー大佐?とやらをノックアウトしていた。

 

「や、無事か?」

「……!」

「ウパ!」

 

下にいるのは、父親だろうか?体格のいい男と、その周囲でウロチョロする緑色の、小柄な、人間のような生き物が俺たちを見上げている。

……えっ?

 

「にいちゃん!レッドリボンが連れてた緑のやつだ!」

「だよな。にしては、ウパの父ちゃんと仲良さそうにしてるけど」

 

踊りを思わせる動きでウパの無事を喜び合ってるように見えるんだが。ハイタッチしてる個体もいるし。

よくよく観察すると、死体になってるバイオーム人間と、その周囲でコミカルに動いているバイオーム人間?の二種類に分かれていた。

話を聞いた方がいいな、これは。

 

 

「息子を助けてくれてありがとう」

「レッドリボンのやつをやっつけるついでに助けただけだよ。なあ、そっちの奴らは?」

 

とりあえず地面に降りて挨拶。生きてるバイオーム人間?は協力して死んでるバイオーム人間を埋葬している。一部は俺を遠巻きに見守っている。

結構警戒されてるな。

 

「彼らはサイバイマン一族」

「さいばいまん」

「サイバイマン……いちぞく??????」

 

なんかすげえ単語が出てきた。一族だと……?俺フリーザ軍の技術に関する知識とか表面上しか知らないけど、サイバイマンって種から生える生物兵器の一種じゃなかったっけ?

何故に、地球で自生してる?

 

「我々の一族がこの地に住まうよりもずっと前から、この聖地カリンに生きる者たちだ。私たちは先祖代々、彼らと共にこの地と、この塔を守っている」

「へえ……ちょっと失礼していいか」

 

死体と化しているバイオーム人間と、それらを運ぶサイバイマンを比べてみる。当たり前で意識してなかったが、バイオーム人間にはあるレッドリボンのマークが、サイバイマンには存在しない。

 

「……サイバイマンって、自爆したり、溶解液出したりする?」

「いいや、そのような話は聞いたことがないな」

「そっか。変なこと聞いたな」

 

多分、ここのサイバイマンがバイオーム人間のオリジナルだ。サイバイマン改良verとでも言うべきか?

そもそも、なんでサイバイマンが自生してるんだっていう問題はあるけど、とりあえずレッドリボンのバイオーム人間の出どころという謎は解明した。もっとでかい謎が誕生したというのは置いといて。

あと、サイバイマンってそんなに昔からあったっけ?

 

「あっ!おじさんが持ってるのドラゴンボールだっ!ねえ見せて見せて!」

 

そんな思索に耽っていると、悟空がドラゴンボール、しかも探していた四星球の存在に気がついて大喜びする声が聞こえてきた。とりあえずヒントも何もない状況で悩んでても仕方ないので思考から浮上する。

 

「なるほど、その球にはそんな秘密が……」

「でもオラの願い事はないから、このじいちゃんの形見の四星球を中心に探してたんだ」

「俺はあくまで付き添いだし、な!?」

 

突然、巨大な気が生まれた。数値に換算するなら1000を軽く超える……1200くらいあるだろうか。数字上で言うなら、俺よりも少しだけ強いくらいか。次に質を探ると、目の前のサイバイマン一族とほとんど同じ。

 

「悟空下がってろ」

「おい、にいちゃん!」

「俺の敵だ。悟空のじゃない」

「まさか……目覚めたのか!?」

 

背負っていた剣を抜いて警戒態勢に入る。森の奥で生まれたその気配は、ゆっくりとこちらに向かってきた。目的は、俺か?

なるほど、今回は力づくで聖地から排除されるパターンか。落ち込んでいいかな。

やがて目の前に現れたのは、一体のサイバイマン。見た目や大きさは地球に自生しているものやレッドリボンに所属しているものと同じ。俺が知っている、ごくごくスタンダードな見た目だ。

たったひとつ違うのは、その強さ。

間違いない。これは俺の知っている“オリジナル”に限りなく近いサイバイマンだ。

 

「こいつ……つええな」

「そうだな」

 

ゆっくり呼吸をして、切っ先をそいつに向けた。

 

+++++

 

先手必勝。とりあえず地を蹴って接近して、サイバイマンを遠くの森の中に蹴り飛ばす。余波が及ばない場所まで吹き飛んだそいつに追撃をかけるように剣を振りかざす。一撃必殺を狙ったそれは、ギリギリの所で受け止められた。

 

「……ちっ、とぉ!?」

 

流石に上手くいかない。しかし衝撃そのものは簡単に殺し切れるものではない。サイバイマンの右腕は歪に折れ曲がり、剣を直接受け止めた掌はズタズタに引き裂かれている。

さらに下から迫ってきた蹴り技をギリギリで回避するも、避けきれなかった爪が頬と額を切り裂いた。ぼたぼたと血が流れるが大雑把に拭うにとどめた。

攻防で簡単な力関係を把握する。スピードは若干俺の方が上、力は向こうが上。つまり上手く立ち回らないと普通に負ける。

 

「厄介だなあ!!!」

 

一旦木の上に登って身を隠す。気を探れないのはオリジナルと同じようでキョロキョロと見失った俺を探していた。俺の場合、気を消すのはデフォルトだから、音を可能な限り消して剣を握り直した。

俺の居る場所が、そいつの視界から外れた、時を狙って背後に瞬間移動、一気に振りかぶった刃が無事な方の腕を切り落とす。そのままこちらに殴りかかってきたそれの攻撃を剣でいなした。そのまま逆に、上から、下から、攻勢に出る。

 

「ギギギ……!!」

「……落としといてよかったなこれは!」

 

腕二本だったら確実に競り負けてた。そのまま上段から強めの一撃を降らせると、残った片腕で受け止められる。頭が──開いた。

飛び出す溶解液を紙一重で避けて、急所であろう開いた頭の中に、残った溶解液で皮膚が溶けるのも厭わず右手を突っ込んで……いってえ!!!普通に怪我するのとはまた別で痛え!

左手の剣で腹を刺して動きを固定して、脳髄を握りつぶす。重力に従って落ちてきた溶解液が背中に降りかかって皮膚を焼くが知ったことか。

ぐぎゃっ!なんて気持ち悪い声が聞こえて、そのまま沈黙した。

 

 

「あー……強かった」

 

死にかけた。死ぬかと思った。背中めっちゃ痛い痛みで気絶しそう。これ神経毒入ってるんじゃね?あの溶解液の降ってくる角度によっては死んでた。いやあ、強敵だった。俺死にかけたから回復したら戦闘力上がってそうだな……面倒だな。俺の気を生み出す能力ただでさえ低いのに、強くなったら必要な気の量増えるじゃん。

さて、大真面目に戦闘に踏み切ってしまった。悟空を置いてけぼりにしてしまったなあ。申し訳なく思いながら気を探る。あれっ、なんか悟空より幾許か強い気配が……

 

「ちょ、待て何があった!?」

 

とりあえずなりふり構わず瞬間移動!

さっきまでいた場所の上空に駆けつけると、宙に浮いて今にも槍で刺し貫かれそうな体がある。慌てて手を伸ばして助けようとして、さっき大怪我した傷が痛んだ。それでもギリギリ急所を外して、二人でゴロンと地面に叩きつけられる。

いってえ。このやろ、無駄に大怪我させやがってサイバイマンめ。あとお前誰だよ。

俺たちが死んだと勘違いした悟空が、そいつに飛び掛かって、やられた。あの軌道だとドラゴンボールが入ってるから大丈夫だな。それを判断して、死んだふり。

やがてそいつは去っていた。全く、引っ掻き回しやがって。

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