まれびとの旅   作:サブレ.

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第二十一話

とりあえず怪我人の手当てをしながら情報をまとめる。俺も温厚なサイバイマンに血を拭いてもらったりしている。俺が留守にしてる間に襲撃してきた者は桃白白というらしい。悟空が持っていた三個のドラゴンボールは奪われたが、懐に入れてた四星球だけは残っていた。

と言うことは、また襲撃してくるなあいつ。

 

「にいちゃん。あいつ、このボールも取りに来ると思うんだ。そのときに取られたドラゴンボールもまとめて取り返してやる……!」

「でも、負けただろ?俺がやろうか」

「オラがやる!!!」

 

おおう、意地というやつだろうか。これは首突っ込む方が野暮だな。しかしどうやって鍛えよう。

そんな俺たちのやりとりを見ていたウパの父親、ボラが、徐に口を開いた。

 

「ならば、このカリン塔に登ってみてはどうだろうか」

「いいのか?あんたらは番人なんだろ」

「君たちは命をかけてわたしたちを救ってくれた恩人だ。そのような者が塔を登るのを止める理由もない」

「よーし!オラ登ってみる!ウパ、にいちゃん頼んだ!」

「逆じゃないのか。頑張ってこいよ」

 

俺は休む。

というわけで、悟空は何倍もの力を得られるという超聖水を求めてカリン塔を登って行ってしまった。あとには、俺と親子、サイバイマンが残される。

 

「間に合わなくて悪かった」

「……いや、あのままだと私は殺されていた。礼を言うのはこちらの方だ」

「そうかよ。なら、礼がわりにひとつ聞かせてくれ。アレ、なんだったんだ」

 

オリジナルに程近い、この地球の何よりも強いサイバイマン。少なくとも俺でなくては死んでいた、否、その気になれば地球人を簡単に虐殺できてしまう、そんな生き物。それが、聖地と呼ばれる場所にいた。

 

「そうだな……私たちも詳しくは知らない。というのも、あれはサイバイマン一族が先祖代々守ってきたものであるらしいのだ」

「へえ」

 

つまりウパたちの一族はカリン塔を、サイバイマン一族はあのオリジナルを守ってきた存在であるらしい。守る必要あるか?という疑問は置いておく。誰かがいたずらに起こしてしまわないようにという意味だろうか。

 

「そしてかのサイバイマンは、この地を訪れると言われるある者を祝福するために長い時を眠っていたのだという」

「祝福?」

 

なんて悪趣味な。アレが祝福だって???

絶対祝福()だろあれは。だれがあんなもん喜ぶんだ。

 

「ああ。そして我が一族にはもうひとつ言い伝えがある。それは、いずれこの地に“稀人”が訪れた際は、その者を迎え入れるように、というものだ。──おそらくは、サイバイマンが待っていた者は、マレビトのことだったのだろう」

「……えーっと、俺別にサイバイマン喜んでないんだけど……」

 

むしろ背中ズキズキ痛くて嫌なんだけど。誰が仕込んだのか知らないけど、趣味悪ゥ。

……でも、わざわざ迎え入れるように、だなんて、変な言い伝えだ。温厚な方のサイバイマンの群れも、会ったはじめはともかく、今は俺の怪我を労わるような動きをしている。

気になるな、少し休んだら会いに行ってみよう。

カリン塔のてっぺんに住むっていう、仙人のところに。

 

+++++

 

夜。

二人は疲れもあって眠ってしまった。俺も眠いけど、頑張って起きて筋斗雲を呼ぶ。別に会えればいいから、スキップしてもいいや。自力で登るのめんどくさいし。

雲に乗って空を駆け上れば、あっという間にカリン様とやらの場所に着いた。悟空は大の字になって爆睡してる。よしよし、とりあえずしばらくは起きんだろ。しかし問題はカリン様も寝てるところか。

 

「なんじゃ、そんなに見つめて」

「ありゃ、起きてた」

「起きたんじゃよ。そんなところにおらんで来い」

「いいのか?俺稀人だけど」

「かまわん」

「へんな仙人だな」

「武天老師も同じだったはずじゃが」

「……あっ」

 

そういえば、今俺が乗ってる筋斗雲をくれたのは亀仙人だった。なんかこの星の仙人とかそういう人たち、俺に優しいな……。

お言葉に甘えて屋根の下へ。ぐーすか寝こけている悟空のほっぺたをツンツン突いたが全然起きる気配がしない。

そんな俺と悟空を見て、カリン様はふくふく笑った。

 

「そやつはな、お主に勝ちたいと言っておったぞ」

「そなの?」

「眠っていたサイバイマンと戦うときのお主を見たのじゃろう。桃白白に勝てぬようではお主に勝つなどできんと張り切っておったわい」 「お、おう」

 

あの“孫悟空”に目標にされてるって考えるとありえない前提に背筋がぞわっとくるけど、弟分の孫悟空の目標って考えるとちょっと嬉しい。そっかー。意地張ってんのか。お前も武道家だもんな。

 

「それより、その怪我では眠ることもままならんだろう。仙豆でもやろうかの」

「他人事……聖地の生き物だろ……」

 

ほいっと投げ渡された豆の数はふたつ。俺ともうひとりの分はボラのだろう。なんとなく今すぐ食べるのは憚られたのでポケットにしまう。そのまま座って、剣を抱える体勢で手すりにもたれた。

 

「なーカリン様、サイバイマン一族っていつからいるんだ?」

「随分昔からじゃよ。わしが生まれた時には既におった」

「カリン様何歳?」

「八百歳とちょっとじゃ」

「じゃあ、俺の方が百五十年くらい歳上だな」

 

しかし、カリン様よりさらに昔からいるのか。フリーザ軍のサイバイマン、こんなに昔から存在していたっけという疑問が募るが、頭を振って思考から追い出した。これ以上考えても何も発展しなさそうだ。

ふー、と息を吐いて、この辺りの生き物から気を少しだけ分けてもらう俺を、カリン様は呆れたように見ている。

 

「その力はどこで手に入れた?」

「ああ、この能力?独学だよ」

 

生命エネルギーの強制徴収、とでもいうべきか。一応元気玉に酷似しているが、独学故に似て非なる能力となってしまった。

気を生み出す力が少ない俺は、周囲から気を吸い取って溜め込んで生きている。普段は食事だとか、あとは吸い取られたことに気付かない程度の量しか取らないけど、その気になれば惑星の一つくらい滅ぼせるんじゃないだろうか。

そんな気なんてさらさらないおかげでこの技術の練度が低くて、戦いながら吸い取るのは無理だけど。

 

「その能力が無ければ、受け入れる星も多かっただろうにの」

「しょーがないだろ、これないと死ぬんだから」

「なぜ、そうまでして生にこだわった」

 

んー、何故、ときたか。

人が死にたくないのは当たり前じゃないのか、という反論は無視。だってこの体が患った病気の持ち主は俺だけじゃないし、複数の罹患者の中でこの能力を得るほど生に執着したのはマレビトだけなので。

今思えば、この能力を得た時の俺はずいぶんと死にたくなかった。何故ならば。

 

「……いえに、かえりたかったんだよ」

「今も、帰りたいか」

「いいや。もうなんか、しょーがないかって諦めた」

 

それきり、口を閉じる。カリン様も、これ以上は突っ込んでこなかった。無言の空間に、スピスピと悟空の呑気な寝息が聞こえる。

……戻るか。

 

「じゃ、カリン様、悟空のことよろしく」

「ふむ、任された」

「おーい筋斗雲ー」

 

外に飛び降りると、金色のもふもふの雲が俺を受け止めた。疲れ切ったので筋斗雲の上に横になる。睡魔に身を任せようにも、背中が痛い。

……あのサイバイマン仕込んだやつに会ったら、一発ぶん殴ってやる。

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