まれびとの旅   作:サブレ.

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第二十四話

あっという間に飛び出して行った悟空が、あっという間に帰ってきた。何故か服が変わって。

 

「服ダメになるの早いなおい」

「おーい!」

「見つかったのね!」

「ああ!ホラ!」

 

悟空は一度、ブルマに一星球を見せびらかすと、風呂敷に集めていた残り六つのドラゴンボールの元へと駆けて行った。そして、合計で七つ全て集まったドラゴンボールを、俺にスッと差し出す。

 

「にいちゃん、はいどーぞ!」

「ありがとう」

「えへへー」

 

受け取った七つのドラゴンボール。それを一度改めて風呂敷で包みなおした。ここで呼び出してもいいけど、みんなの目の前でなんとなく気恥ずかしい。

 

「じゃ、ちょっと願い叶えてくるわ」

「えー、ここで呼び出せばいいじゃない」

「別にどこでもいいだろ」

「あ、わかった!エッチなお願い叶えてもらうつもりでしょう!」

「違うわ!!!」

 

そんなやり取りをしてから筋斗雲を呼び出して、闘技場から少しばかり離れた場所まで飛んで行った。あたり一面なにもない荒野。気を探っても着いてきてる様子はない。

地面に風呂敷を敷いて、七つのボールを並べた。さて、呼び出しに答えてくれるかどうか。

 

「──神龍よ、出でよ!」

 

数拍の沈黙。ダメか?と思った瞬間、空が真っ黒に染まり、ボールが発光した。大きな光がボールから立ち上ると、巨大なドラゴンがその姿を形成していく。

よかった、出てきた。目前で見るのは初めてだなそういえば。

 

「さあ、願いを言え。どんな願いもひとつだけ叶えてやろう」

「この肉体の、病気を治すことは?」

「それはできない。私の力の範囲を大きく超えている」

 

なんでも叶えてくれるんじゃなかったのかよ。ただまあ、ここは想定内だ。ならば次点の願いを言ってみる。

 

「なら、俺の病気について、全て教えてほしい」

「───」

 

また、数拍の沈黙。やや待ってから、神龍がおもむろに口を開いた。どうやらこの願いはオッケーだったらしい。

 

「その病の名前は『嫌気性症候群』」

「嫌気性症候群……」

「強さに応じて、自力で生み出すことのできる生命エネルギーが減っていく。そして、一定の強さに達すると、生み出せる生命エネルギーの量がゼロとなる」

「うわキッツ。……原因は?」

「遺伝子だ」

「遺伝子疾患かよ」

 

生まれつきだなとは思ってたけど、生まれた時点で詰んでたんかい。よく考えれば一族郎党同じ病気持ってたな。母体から感染したと思ってたけど違ったんだ。 

 

「俺以外の誰か、例えば孫悟空とかがこの病気を発症している可能性は?」

「ない。この宇宙において、嫌気性症候群を患っているのは一人だけだ」

「……治療法は」

「少なくとも今は、ない」

「だよなあ」

「願いは叶えた、さらばだ」

「おっと」

 

神龍が消えて、ボールが散り散りに飛んでいく。その寸前で飛び上がってとりあえず四星球だけキャッチしておいた。

さて、情報を整理しよう。そも、生命エネルギーである“気”と戦闘力はほぼイコールだ。強くなれば気の最大値も増えるし、消費量も増大する。それが俺の場合、強くなればなるほど気の量が減っていくというわけで。なんだこのバグじみた構造は。

 

「──発症者俺だけって点で満足するしかないか?」

 

完全に石になった四星球を手のひらで弄びながら悩む。でも俺にできることって何もない。ただ生命エネルギーの徴収の技は対症療法としてクリティカルだったらしい。なんとなく食べないでおいた仙豆も、病気の治療には使えないしな。取っておくか。

難しいことは後々考えよう。案外この病気が役に立つ日が来るかもしれないし?

それはないか。

 

「おーい、筋斗雲ー!」

 

筋斗雲を呼び出して、闘技場で待ってるみんなの元に戻る。少しの間飛んで、あの場所に降り立つ。

 

「や、悟空。これ四星球」

「にいちゃん、願い叶ったか?」

「ああ、叶えてもらった。すごく助かったよ、ありがとう」

「どういたしまして!」

 

悟空に四星球である石を渡して、ひと段落。さてこれからどうするか。悟空たちは天下一武闘会に向けて修業の日々を送るらしいが、俺は特にやることがない。

次の天下一武闘会は三年後か。

……故郷の星に行くのもいいかもしれないな。瞬間移動使えばすぐ行けるし。いや、故郷とっくの昔に滅びてるっつーかぶっ壊れてるんだけどね。残った星の残骸が引力で集まって小惑星くらいの大きさになって形だけ復活したから、短期滞在ぐらいはできるんだ。

一回行ったことあるから分かる。まあスケールでかめの墓参りと洒落込むか。一族が滅びた直接的な原因である病気の詳細も分かったことだし、報告だけでもな。

 

「マレビトはどうするんだ?」

「墓参りに行こうかなって」

「それもよいな」

 

そんなふうに、各々の方針が決まった。悟空は修業のために走り出し、亀仙人たちも走って帰っていく。俺は筋斗雲で帰る。別に手抜きじゃない。俺は移動で鍛えるまでもなく強いだけだ。

 

「じゃあな占いババ。色々ありがとな」

「そうかい」

 

お礼を言って筋斗雲で家まで真っ直ぐ飛ぶ。

ああ、今回の旅も楽しかったな。

 

+++++

 

傷が治ったので、墓参りを決行した。

カプセルに沢山のご飯と、花束と、お酒を入れる。お酒買うの苦労したな。最終的にブリーフ博士に泣きついたわ。ついでにタバコも用意してみたけど、誰か吸うやつ居るんだろうか。

 

 

「何もない」

 

瞬間移動でもう一つの故郷に帰ってきてみたはいいものの、何にもない。俺以外に生きてるものが存在しないし、故郷の面影ひとつない。一回ぶっ壊れたから当たり前ではあるが。

この世界、軽率に星がぶっ壊れるから困る。星座とかいう概念ないだろ。

適当な場所に腰掛けて、お供え物を並べて、やることがないのでピクニック感覚で食べる。

 

「あの世で美味いもの食べてるのかな」

 

悪いことは(そこまで)してないから、地獄に落ちてはいないと思うんだけどな。アスラとか俺が入るまで大体伏せってたから悪いことする余裕すらないし。

ご飯をあらかた食べたので色々とお片付け。最後に火をつけた線香と、花束だけ残しておく。空気が乾燥してるしドライフラワーになりそうだ。引火したところで火事になるものすらないし、そこは気楽である。

試してみた酒とタバコは両方むせた。二度とやらん。

 

「墓参りって言うのか?これ」

 

そもそも墓標すらねえ。まあいっか。そんなもんだ。

最終的に火のついた線香と花束ひとつしか残らない荒野とも言えない地面。すう、と息を吸い込むと線香の独特の香りがする。

 

「──【だんだん心惹かれてく、その眩しい笑顔に】」

 

うわっ、下手。

だけど俺以外誰も聞いてないし、いいや。

せっかく再現したんだ、周りを憚らず歌ったっていいだろ。

思う存分歌ってスッキリした。線香も燃え尽きた。

 

さあ、家に戻るか。

 

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