まれびとの旅   作:サブレ.

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第二十七話

『始め!』

 

今までの試合とは違って、悟空と天津飯が同時に仕掛けた。これまで以上にスピードを上げた攻防に、実況ですらついていけていない。体格差による不利はなさそうだ。

ところで、排球拳をするのは良いけどいくわよーっていう掛け声とかそれに対する性別の変わったはあーい♡とか必須なのか?人格分裂してない大丈夫?

排球拳をモロに食らった悟空だったが、すぐに起き上がって復帰していた。やっぱり種族として単純に頑丈だなサイヤ人。

亀仙人とクリリンも横でめちゃくちゃ驚いてるし。

に、しても。息切れが全くない。体力が多いにしてもなんだか攻撃を上手い具合に食らった感じがする。

 

「悟空、まだ底見せてないな?」

「え?」

 

クリリンが一瞬こっちを向いた。いや、思い返せばクリリンとの戦いの時余裕あったなって。気絶じゃなくて場外負けだったし。

悟空に本気出させる天津飯もすごいな、これ。

そして、いざ戦闘用の本気を出した悟空に、次は天津飯が防戦一方となる。数度の攻撃の末に空中に蹴り上げた悟空はかめはめ波で追撃をかけようとして、切り上げる。

このまま撃っても、エネルギーを消耗するだけだと察したらしい。わかる、エネルギーの消耗を抑えるの、とても、大事。

 

『すっすごいっ!まったくものすごい攻防戦!』

 

実況が実況になってないのを聞き流しつつ、悟空の動きを追うと、次は亀仙人のレベルを超えた残像拳を繰り出していた。それに対抗して天津飯も太陽拳を繰り出すが、それは亀仙人のサングラスによって阻まれ……天下一武闘会、武器禁止のルールゆるいな。前から思ってたけど。

 

「…………に、しても」

 

流石にこれはアウトだろう、と、突然動きの悪くなった悟空を見て思う。超能力だっけ。ギニュー特戦隊にもそういうのが使える奴、いたなあ。あれ地味に厄介なんだよ。

さて、俺が出るべきか。それとも。

 

「亀仙人ちょっとちょっと」

 

人差し指で鶴仙人と天津飯、悟空と餃子を順番に指差せば、何を言いたいのか大体伝わったらしい。たった一人、クリリンだけが首を傾げている。

 

「一体、何があったんですか?」

「対戦したクリリンならわかると思うけど、餃子って超能力使えるだろ?」

「ええ、まあ、そっすね」

「その超能力で餃子が悟空に妨害かけてる」

「ええっ!」

「ただな、証拠がなんとも」

 

あくまでレフェリーは一般人であるし、観客もいる。彼らにどううまく妨害されているのか伝えなければ、試合を邪魔したとして俺……はまあいいとして、悟空にヘイトが向いてしまう可能性がある。悟空はなんとか食らいついているが、やはり厳しい。

やはりこういう場所でただの一観客、というのは厄介だな、どうしよう……と思ってたら、天津飯も違和感に気づいてしまったらしく、餃子を一喝した。

うーん、鶴仙人の弟子とは思えないくらいマトモである。俺がマトモであるとは言わないが。

 

「なあ亀仙人」

「なんじゃ」

「鶴仙人ってもしかしてクソジジイ?」

「気付いたか」

 

おおう、肯定されてしまった。

 

「悟空、待つんじゃ!」

「え?」

 

亀仙人の一声で、一旦試合が止まった。こういう時ネームバリュー便利だよな。

天津飯はポツポツと、鶴仙人に訴えている。この試合だけは、自分の力で本気で戦いたいのだと。その感覚はよく分かる。

つーか鶴仙人に天津飯、殺す気だったんかい。反省してるし殺したくないって言ってるからまあいいけど。

餃子もまた、天津飯に心が傾いているようだ。「天さんの試合を終わりまで見たい」という、大体そんなことを言っている。まともだ……。

そんなことを思いながら、亀仙人の動きを伺う。その挙動で何をするか察して、真っ先に叫んだ。

 

「天津飯、伏せておけ!」

「何っ!?」

 

ギリギリで指示に従った天津飯の頭上を、ものすごい勢いで気弾が飛ぶ。それは鶴仙人を空高く押し上げて雲の彼方へと追いやってしまった。

 

「……たーまやー?」

「…………」

 

クリリンがなんかじとっとした横目で見てくるけど気にしない。なんか言わなきゃならない気がしたんだよ!気を探ったけど生きてるっぽいし、問題ないだろ。

 

「案ずることはないぞよ。あやつはあれくらいで死ぬようなタマではない……。さあ邪魔者は消えた!両者とも心置きなく試合をせい!」

 

こういうの、俺できないんだよなあ。すげーよなあ。

空気がリセットされたことで、天津飯の胸のわかだまりがとれたことがわかる。それは、試合の終わりがすぐ近いことを示している。

天津飯は気合を入れた……と思いきや、腕が四本になった。

 

「!?」

 

さすがにちょっとビビった。つーか亀仙人戦で『どれだけ早くても腕が物理的に四本とかに増えなければ』とか考えては俺が馬鹿みたいじゃん!口に出してなくて良かった黒歴史が発生するところだった!

天津飯は悟空の四肢を四本の腕で掴み上げるが、悟空が手足の如く操る尻尾に殴打されて不覚を取った。

それを見た悟空は、素手を素早く動かして、“腕だけの残像拳”で手を増やしたように見せて攻勢に出る。それを踏まえて、天津飯は腕を仕舞って、本当に本当の最終手段に出ることを決めたらしい。

ふわり、と宙に浮く天津飯。その手の構えの向く先は眼下の闘技場で、悟空に対する避けろの言葉──

なるほど、そういうことか。

 

「気功砲!」

 

放出されたエネルギーがまっすぐ直撃する。その威力に多くの人が息を呑み、目を逸らす。

そして落ち着いた頃には、地面がポッカリと陥没していた。直すの大変そう。

悟空は直前に飛び上がって無事だが、舞空術を使えない悟空は不利であり、事実天津飯は勝利を確信している。でも。

 

「……まだやれるだろ?」

 

ここまで来てなんの抵抗もなく素直にやられるわけがないのだ、悟空が。

案の定、悟空はかめはめ波を撃ち出し、その推進力で石頭による頭突きを繰り出した。痛そう。

両者共に力尽き、落下していく。遠目から見る限り天津飯が先に落ちるか……と思ったところで、悟空は天津飯に先んじて車に激突した。

 

「ありゃ」

 

不運なこともあったものだ。

こうして今大会、天津飯の優勝が決定した。

 

+++++

 

「や、悟空。不運だったな。はいこれ服」

「マレビトさん、用意いいっすね」

「前大会も似たような感じだったしな」

 

ついでに言うと、悟空の服買うの初めてでもないしな。

 

「天津飯も、優勝おめでとう」

「いいのか?マレビトは孫悟空を応援していただろう」

「お互い納得した上での決着だろ?俺が口出すのは野暮ってもんだよ」

「ほっほっほ。運も実力のうちと言うしの」

 

天津飯はなんか色々気にしてるらしく、賞金の半分を渡そうとして悟空に断られていた。まあこれから鶴仙人の元を離れて生活するなら色々と元手がいるだろうし、持ってても別にいいんじゃないのかな。

 

「ま、せっかくだし夕食ぐらい一緒に食べてけよ。俺が奢るから」

「しかし……」

「俺、こう見えて天津飯より歳上だし、ブルマほどでは無いけど金持ちだから、遠慮するなよ」

 

ただ、手持ちの金がこのままだと心許ない。トラブル防止のために必要以上の大金と無駄に黒いカードを置いてきてあるのだ。一旦瞬間移動で帰った方がいいな。

 

「あっいけねえ!じいちゃんのドラゴンボールと如意棒!」

「おまえくたくただろ、いいやオレが取ってきてやるよ」

「すまねえサンキュー」

「俺も一旦お金取ってくる。食べたいもの話し合っといて」

 

クリリンが建物の方に消えたのを確認してから、俺も少し離れた場所に移動して家に瞬間移動する。玄関で靴を脱いでリビングに上がり、棚の引き出しからカードと、念のため下ろして置いた現金を手にした。

 

「あいつ今回いくら分食べるんだろ」

 

考えただけで笑えてくる。厨房には頑張ってもらいたい。

さて、瞬間移動で戻るために靴を履いて一旦外に出ようと、ドアを開けた。

 

「……──」

 

目の前に。真っ黒な男が立っていた。

身長は俺よりも低くて、ターバンのようなものを巻いている。何を考えているかわからない瞳が異質だ。

この感覚は、覚えがある。

 

「……地球のカミサマのお使いか」

「そう。わたし、ミスターポポ。神様の付き人」

「ふーん。で、要件なに?出てけって言われたらめっちゃ落ち込んでから出てくけど」

「要件、ちがう」

 

違うのか。

 

「神様から、伝言」

「いいよ。なに?」

「とてもわるい奴が復活した。でも、手を出さないでほしい」

「神様関係ってか」

 

……まあ、神様の問題に稀人が首を突っ込んだとなれば色々めんどくさい問題になりかねないしな。

とりあえずどんな奴だろう。適当に星全体の気を探って──

 

「……!?」

 

クリリンの気がない!?殺されたか!?

悟空の気配はどこだ!?

 

「ミスターポポ、ひとつ言っておく」

「うん」

「“ピッコロ大魔王に手を出すな”という条件は飲む。それだけだ!」

 

いた、悟空!無事だな、まだ会場か!?クリリンの他も揃ってるな!?

剣が背中にあるのを確認する。兵装は整ってる。動き出しても問題ない。地を踏み締めて、瞬間移動のために意識を集中した。

 




次回投稿は11月18日となります
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