その日もいつも通りの一日だった。
筈だった。
ブルンブルンとエンジン音。ガソリンの匂い。
悟空が慣れない存在に落ち着きを無くしているのが遠くからでもわかる。俺は目が覚めるほどの驚きと、未来への予感を抱いた。いつも携えている剣を背中に固定して、様子を窺う。
何かが違う。新しい始まりが近づいている。
足を向けた先では、ブルマと、悟空が出会っていた。パンパンを始め色々やらかす悟空に思わず眉間を押さえた。何をやっているんだあいつ。思わず尻尾を掴んで持ち上げる。へにゃ、と力の抜けた悟空を抱えた。
「おう、悟空が悪かったな」
「アンタ誰よ」
「悟空の家の居候だよ。マレビトとでも呼んでくれ」
「なあにいちゃん、コイツ女だぞ」
「見れば分かるわ」
「えっ!すげぇな!」
頭が痛いが仕方ない、うん。
でかい魚を二匹取った悟空と一緒に、とりあえずブルマを招き入れる。家に入って悟空はまずじいちゃんの形見のドラゴンボールに挨拶をした。ら、ブルマの目的はそれだったらしい。
「へえ、一人で集めたのか」
「そうよ?大変だったんだから」
「でも、なんでこれ探してるんだ?数珠にするのか?」
「まさか!」
「七つ揃ったら願いが叶うんだよ」
「げー!す、すげぇな!」
「な」
なんでこんな球でいろんな願いが叶うのか、改めて摩訶不思議だ。広いな世界。強いなナメック星人。
……なんでナメック星人の願い球が地球にあるんだ。
そんなことを考えてボーッとしてたら、ブルマが悟空を籠絡しようとスカートを自分で捲っていた。やめろ破廉恥な。恥じらいを持て。
「ねえアンタからも説得しなさいよ!」
「アンタじゃねえぞ!にいちゃんの名前はマレビトってんだ!」
「じゃあマレビト、何か言いなさいよ!」
「それは悟空の持ち物だから悟空に聞け」
「使えないわね……そうだ!アンタたち一緒に球探しを手伝ってよ!」
「そうきたか」
それなら確かに悟空は四星球を持ったままドラゴンボールを集められる。まあ願いが叶ったら石になるんだが、悟空はそこまで気にしないだろうな。なんか一緒に生活してたから分かる。
「にいちゃんは行かねえのか」
「いや、行くわ。ちょっと他の球とか興味あるし」
「へえ、二人も着いてくるなら頼もしいわね」
そういや俺は元々ドラゴンボールを集めるために地球に来たんだった。すっかり忘れていた。ずーっとここに閉じこもっているよりずっと良いだろう。それに、悟空の歩みをもうしばらく見ていたいし。
あと、悟空の世間知らずがめちゃめちゃ心配なのもある。俺は一応何回か麓の村で情報収集してたけど、悟空それすらしねえんだよ。
如意棒でカプセルの自動二輪車を突っつく様子を見て、不安は確信に変わった。
世間知らずにも程がある。箱入り息子か!