さて、修業というものを我もしてみよう、と思ったはいいものの。
「修業って、そもそも何?」
ただ強さを求めるだけでは修業と言ってはいけない気がする、のは、フリーザとかギニュー特戦隊とか、あと桃白白みたいな例を見てきただろうか。いや、めっちゃ遠くから観察してるだけならギニュー特戦隊けっこう面白いんだけど、やってることがな……。何回か子供だけでも逃がしてくれっていう依頼受けた身としては思うところがある。
思考がズレた。
嫌気性症候群のことがあるので安易に強くなってはいけないが、だからといって修業というものから離れるのはまた違う気がする。
うんうん悩むこと数日。あんまり悩んで思考が袋小路になっても仕方ないので、ヘルプを求めに行った。
相手はもちろん亀仙人だ。下手の考え休むに似たりってな。
「と、いうわけなんだが」
「うーむ」
亀仙人の反応は微妙だった。一応真面目に相談してるんだけど。
「おぬしにとって修業とはどのようなものじゃ」
「……高みを目指して学び変わること」
「分かっておるならわしから言うことは何もない」
「えっ。いやあの、これ受け売りというか、俺個人の考えじゃないんだが」
「しかし、きちんと自分で考えてこうであると思ったからそれを受け入れたんじゃろう。ただ黙って真似をするような人間には見えんよ」
高みを目指して学び変わる、ぶっちゃけ俺が小さい頃のヒーロー番組のナレーションである。しかし、修業という言葉に真っ先に思い出すのがこれであることも事実だ。この言葉を覚えていたから、ただ戦闘力を上げるだけの努力に修業という名前をつけていいのか悩んだ。
亀仙人はそれでいいんだと言う。
「俺は今まで、現状維持を選んでて」
「うむ」
「できることしかやってこなかったんだ。ピッコロ大魔王に挑んだ悟空とか亀仙人みたいな、出来ないかもしれないけど挑む、ってことから逃げてた」
「じゃから、変わりたいと思って修業したいと思ったんじゃろう」
「うん」
「ならそうしなさい。厳密にはわしの考えとは少し違うが、わしの考えだけが正しいということもないじゃろ。お主は間違っとらん」
「そうなのか」
「そんなもんじゃよ」
そんなもんなのか。
でもまあ、俺としては、小さい頃に夢中になったヒーローのあり方を否定しなくていいのだと、そう言って貰えるだけでとても嬉しい。
これから、昔好きだったヒーローの在り方を目指してもいいのだと。
俺は武闘家にはなれないから、せめて、心の中に残っているヒーローの在り方を少しだけ真似しよう。
孫悟空をヒーローにしないためにも。
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げてカメハウスを退出する。亀仙人はこういう時ばかりひらひら気軽に手を振って、またこいよなんて年上の貫禄を見せつける。実年齢的には俺の方が上なんだが、精神面の成熟で亀仙人より上を行っているとは到底思えないのがちょっぴり悔しい。
うーん、敵わない。
さて、ひとつ目のしこりが解決したところでむくむくとふたつ目のしこりが生まれたのを感じた。
このモヤモヤを感じで高みに登れるはずもない。そう決心して気を探る……おっいた。
というわけで瞬間移動。
「おす」
「……………!?」
ピッコロ大魔王の生まれ変わりというか息子というか。
ともかく、二代目ピッコロがそこにいた。ちっちゃくて目つき悪い。
にしても。
「……か」
「か?」
「かわいいな!」
ちんまい!ふくふくしてる!かわいい!
俺そんなに子供好きって訳じゃないけど、悟空のあのふくふくを経験したからか、あのときのもちもちを思い出してテンション上がってきた。俺の知り合いのナメック星人、出会ったときにはもうじいちゃんだったんだもん仕方ないよな!ナメック星人の子供(幼児)とか初めて!
「おい離せ!」
「あ、悪い」
さすがに嫌がってたもんだから離した。警戒心強いな、まあ仕方ないけど。
「何をしにきた」
「元気かなって見にきた」
「……それだけか?」
理解できない、とピッコロ(小)が睨みつけてきた。警戒されてるなあ、当たり前だけど。
ぶっちゃけピッコロ大魔王と孫悟空、どっちの味方?って聞かれたら俺は孫悟空の味方だ。
だけど、両方の味方になれるなら、そっちの方がいい。
「ピッコロは、生まれたばっかりの子供じゃん。だから心配になったんだよ」
「孫悟空は父のカタキだ!そのうち殺すぞ!」
「うん、頑張れ。まあ悟空が負けるとは思えないけどな」
「バカにしにきたのか」
「いや別に。それが生きがいなら止めないよ」
ぶっちゃけ、サイヤ人憎しで生きている種族最後の生き残りとかたくさんいるし、そういう人に『そんなのやめなよ』とか言えないし。ピッコロのこの言葉も、多分そういうことなんだろうとは思う。
「ただ俺は、お前が生きる場所に、美味しいご飯とあったかいお風呂と柔らかいお布団があるのか気になっただけだから」
「それだけか?」
「子供はそうやって過ごすべきって、俺の中では決まってるから」
でもナメック星人って水だけで過ごすんだっけ?じゃあ次会うときは綺麗で美味しいって話題の天然水でも持ってくるか。
「おまえのほどこしなどうけん」
「それでもいいよ」
自分で一人を選ぶのと、一人でいるしかないって、同じようで違う。選択肢の有無というのはそれだけで心の安定をもたらすのだ。無駄に長い人生の経験則である。
それにまあ。ひとつ思いついてしまったことがあるので。その詫びということで。
シンプルな倉庫のようなカプセルハウスをひとつプレゼントとして渡す。あれだ、ちょっと遅い誕生日プレゼントというやつだ。ついでに通信機も渡しておく。
「そんじゃまたな。困ったことがあればそれで俺に連絡しろよ」
ばいばい、と手を振って瞬間移動で家に帰ってきた。
やってきたことはまあ自己満足であるが、まあ最悪俺が責任持ってしばき倒せばいい話ではある。
……俺の方が強い今だからできることだな。
「さて、やるか」
ピッコロ大魔王関連のドタバタでストップしてしまった仕事に、俺自身の修業もしなければ。とりあえず世界地図を広げた。水の産地はどこがいいかな。あ、それと悟空にあげる曲ももっと完璧に仕上げないと。
ううん、やること山積みで脳がクラクラしてきた。いい意味で。さあ何から取り掛かろうかな!