まれびとの旅   作:サブレ.

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サイヤ人編
第三十七話


日課の鍛錬を終えてシャワーを浴びる。髪を拭きながらカレンダーを見ると小さなメモが目に入った。

そういや今日は、悟飯を亀仙人たちにお披露目する日か〜。そもそも子供産まれたことすら報告してなかったし、驚く様子が目に見えるようだ。

俺はあとで合流予定。昨日の打ち合わせが夜遅かったので、仮眠取りたい。いや、寝ないで活動できなくもないけど、休むのって大事じゃん。悟空も亀仙人も休むのは大事だって言ってた。

軽く肩を回しつつ、ラジオをつける。

 

『速報です。巨大な隕石と思われる物体が〜〜地区に墜落しました。まるで野球ボールのような宇宙船だったと目撃者は語っています──』

「…………アタックボールか?」

 

アタックボール。一人用の宇宙船としては極めてメジャーなものだ。技術後進星(とはいえCCがものすごい勢いで躍進しているが)である地球のものではあるまい。可能性としては──

慌ててシンプルなパジャマを脱ぎ捨てていつもの服装に着替える。アームカバーをはめブーツを履き、飛んで行かないようゴーグルで頭に固定した帽子を被る。剣を背負ったのを確認してから瞬間移動を行った。空高くに移動したおかげか、人目につくことは避けられたようだ。筋斗雲を呼び寄せて足場にする。

眼下にはクレーターと、真ん中に鎮座する一つの宇宙船。相変わらず傍迷惑な着陸をするポッドだ。乗っていた者は移動したらしい。気を探ると、突然強大な者同士の戦闘が始まった。さて座標は……カメハウス!?

 

「やべえやらかしたか!?」

 

あああ休むとかアタックボールの場所を見に行くとか悠長なことしてる暇があったらさっさとカメハウスに行くべきだった!

慌てて瞬間移動でカメハウスまで移動する。見知った顔以外で目の前にいるのは、一人の大柄な男だった。腰に巻き付いた尻尾、長い黒髪、発達した筋肉、独特の戦闘服──。

 

「お前、侵略者か!?」

「なんだ、まだ戦士が残っていたのか」

「うわあーん!!!」

 

周囲には倒されたクリリンや悟空、小脇に抱えているのは泣き叫ぶ悟飯。平和な会合があっという間に修羅場に変わってしまったが。抜刀して構えを取るが、えー、不味い。非常に不味い。

こいつ、普通に俺より強いわ。

自分にしか感じ取れない程度だが、指先は気を抜けば震えそうで、背中には嫌な汗が伝っている。

 

「に、にいちゃん!」

「ふん、この男がにいちゃんだと?」

「まあそうなるな。お前、何者だ?あとどこの所属?」

「俺の名はラディッツ。そこにいるカカロットの兄だ。そして俺は、誰にも従ってなどいない」

「何故ここに来た」

「俺はサイヤ人だ。サイヤ人は血湧き肉躍る戦いこそ至高。故にこそ、我が弟であるカカロットの血を求めてここに来た」

「──ふうん」

 

冷や汗が流れるのを自覚する。言葉でとりあえず時間を稼いでみたものの、ダメだ全く隙も作戦も見えない。あと人質の悟飯が地味に厄介だが、取り返すほかないだろう。

すう、と息を吸い込む。

 

「……悟空、あんまり期待すんな」

 

そうとだけ言って、一気に地を蹴った。死角に入れるよう、あえて斜め下の方向に身を潜ませて、振り被らない剣の柄でラディッツの顎を狙う。脳震盪を期待したそれは、最も簡単に避けられたが許容範囲内。狙いは返す刀で、悟飯を抱えている腕を切り落とすことだ。

 

「はっ!」

「甘い!」

 

しかし、それを行う前に背後から鋭い痛みが襲った。思わずたたらを踏み、その盛大な隙を見逃されるはずもなく鳩尾に重たい蹴りが入った。ダイレクトに伝わる衝撃に体がくの字に曲がりそのまま吹き飛ばされる。なんとか体勢を立て直して、受け身を取った。どうやら尻尾で鞭打ちのような真似をされたらしい。鍛えたサイヤ人の尻尾、やっぱ怖えな。多分俺の背中ばっくり割れてるわ。

 

「……うーん、ヤバい」

 

そもそも、俺の狙いが見透かされているのが問題だ。俺は悟飯を傷つけることなく取り戻さないといけないし、ラディッツは悟飯を傷つけても特に問題はない。

強いて言うなら悟空怒りのあまりスーパーサイヤ人に覚醒する可能性も無くはないけど、今の強さだとそれも望めないしな……。

 

「諦めるか?」

「まさか」

 

今のところ味方の中で一番強い俺が諦めてどうするんだよ。俺の好きなヒーローは、誰も彼も泣いてる子供を前に諦めたりしなかったんだぞ。

 

「なあ、悟飯返せよ」 

「断る。恨むならきさまの弱さを恨むんだな」

 

瞬間、ラディッツの姿がかき消えた。すぐに剣を無理矢理上空に回転させながら放り投げる。

次の瞬間、再び俺の体に走る衝撃。だがそれはもう経験済みだ。衝撃を逃してなお入るダメージは無視して、ラディッツの身体を鷲掴んで止めた。

 

「なにっ!?」

「ばーか!」

 

ラディッツを掴む俺の腕を悟飯が掴んだ。わあわあという泣き声が聞こえてくる。撫でて宥めてやる代わりに、全力でラディッツの身体を固定。

瞬間、上に投げていた剣が回転しながら降ってきてラディッツの尻尾をぶった斬った。地面に剣が刺さり、同時に切れた尻尾が地に落ちる。

 

「くっ……」

 

がくり、とラディッツが膝をついた。ぼてん、と悟飯もまた地面に落ちる。そこに、隙を狙っていた悟空が一気に駆け寄った。そうだそのまま悟飯を回収して、待てこいつ力が抜けて倒れたにしては重心の位置がおかしい!

 

「離れろ悟空!」

「遅い!」

「っ!?」

 

腕を掴まれた、と思ったらそのまま悟空のところへとぶん投げられる。俺の身体は悟空を巻き込んで、そのまま二人揃って海の中へと墜落した。口や耳に海水が入り込んで苦しい。あとバキッて音したから多分体のどっかの骨折れたな、俺。

とりあえず悟空と一緒に海の上へと顔を出して酸素補給。あーべったべただ。現実逃避してえ。しないけどさ!!!

 

「くそ、あいつ尻尾も克服してんのか……!」

「みたいだな。あーどうしたもんか」

 

折れたの左腕か。まあ脚が無事なら立ち回りできるしなんとかなるだろ。つーかなんとかしないといけない。圧倒的な戦力差ってこういうことを言うんだな。勉強になったわ。

 

「おとうさーん!」

「このガキを返してほしくば、俺のところまで力付くで取り戻しに来い!」

「悟飯を返せ!」

「落ち着け悟空!」

「ふはははは!楽しみに待っているぞ!」

 

ラディッツは悟飯を片手に抱えると、猛スピードで飛んでいった。とりあえず筋斗雲を呼んで俺と悟空を引き上げる。

 

「ち……ちきしょうっ!」

「落ち着けって言っただろ」

「あでっ!」

 

冷静さを欠いた悟空をとりあえずデコピンで落ち着かせる。

確かに圧倒的な戦力差だ。だが、絶望的なほどではない、と、思う。

 

「冷静になれ。頭に血が上って勝てる相手じゃないんだ」

 

筋斗雲でカメハウスまで戻る。無事だった剣を拾い上げて背中の鞘に納刀。体の調子は……うん、あちこち悲鳴が上がってるが、戦闘に当たって無視できる範囲だ。左腕の骨折以外は。

一度だけ深呼吸してから、家の陰に隠れている人影に視線をやった。

 

「ピッコロ、見てたんだろ?」

「!気付いていたのか」

「気付いたのさっきだけどな」

「腕は」

「使い物にならん。治るから千切らないでおくけど」

「ふん、不便な体だな」

「まったくだ」

 

俺、悟空、ピッコロ。

とりあえず地球のトップスリーが揃ったことになる。

さて、どう攻略したものか。




おまけ:現時点での戦闘力(概算&参考程度。最大値となります)

マレビト:2000
孫悟空:1500(かめはめ波)
ピッコロ:1400(魔貫光殺砲)


ラディッツ:3000
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