まれびとの旅   作:サブレ.

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第三十八話

「悟飯の場所わかるか?」

「ああ、悟飯の帽子にはじいちゃんの形見の四星球をつけてるんだ。ドラゴンレーダーで分かるはずだ」

 

よし。これで地球全体を探し回るという手間は省けたことになるな。ふるふると頭を振って髪の毛の海水を飛ばす。

 

「兎にも角にも、まず優先すべきは悟飯の安全と奪還だ。まあこの辺りは二人とも異論はないとは思うが」

「あたりめえだ」

「作戦はあるのか?」

「臨機応変?」

 

実質無策と同意だ。

悟空は頷いて自前の筋斗雲に乗り込む。俺も俺自身の筋斗雲に乗り、ピッコロは舞空術で並走することになる。

……それにしても。

 

「考え事か?」

「まあな」

 

サイヤ人はかなり長い期間、フリーザ軍の元で侵略者として働いていたはずだ。しかし飛ばし子だが記憶を無くして地球人として振る舞っていた悟空のような例もある。

あるのだが、ラディッツはこのパターンに当てはまらないような気がする、のだ。

 

「集中しろ」

「おう」

 

ピッコロに注意されて思考を打ち切る。スカウターは持っていなかったようだから、奇襲は有効打になりうるだろうか?

アタックボールが置いてある場所は、集まっていたはずのメディアがことごとく消え去り、代わりにラディッツが悠然と立っている。死体が見当たらないのは全員逃げたのか、はたまた死体も残らぬほど消し飛ばされたのか。

 

「一旦俺が先行して適当に仕掛ける。隙ができたら頼んだ」

 

その場所は荒野に見えて、まだらに木が生えている。そのうちの一つの影に隠れるようにそっと降りて陣取った。悟飯はアタックボールの中のようだ、気功波などで巻き込む可能性が消えたな。

 

「……フー」

 

剣を抜いて、一旦上に掲げる。剣を充電するようなイメージで気を流し込むことで、膨大な生命エネルギーが剣の中に集まり始めた。

流石にここまで気を集めればラディッツも気づいたようだ。しかし、視界が塞がれているというのは自分が思っているより情報を遮断されているものだ。何が起きているのか把握されるよりも早く、剣を振り下ろす。

 

「エクス──カリバー!!!」

 

前世で最も有名な聖剣の名前を借りた技、まあ要するにかめはめ波を剣で撃ってるだけなんだが。

エネルギーの塊は木をぶち抜いてラディッツに向かって一直線に飛んでいく。それは何かに直撃したかと思えば、盛大な土埃と閃光をあたり一面に撒き散らした。

これはダメだな、同じく気功波で相殺されたと見ていいだろう。しかし巻き起こした閃光と土埃が煙幕の代わりとなり、まったく同じタイミングで悟空とピッコロが戦闘を仕掛けた。

……ん?気功波で相殺?

 

「と、それより悟飯回収しねえと」

 

左腕が使えないのでとりあえず納刀。悟飯抱えたらマジで攻撃防ぐ手段が限られるが仕方ない。瞬間移動をしてアタックボールの真横に移動、ドアを掴んでこじ開け──

 

「うわっ!」

「わーんわーん!」

 

めっちゃ簡単に開いた。は?もしかして最低限のロックもかけてなかった?

一応、ラディッツが超弩級のアホという可能性もなくはないが、そんな奴がさっきみたいに、尻尾切られた瞬間の演技をするか?

 

「うう……お……おとうさんを、いじめるなー!!!」

「あっコラ!」

「うわあーん!」

「なにっ!?」

 

悟飯が泣きながら、ものすごい勢いで悟空とピッコロと戦う、もといなぶっているラディッツ目掛けて飛び出した。慌てて首根っこを掴んで自分の方に引き寄せ、迎撃のため手を伸ばしたラディッツに代わりに掴まれる。折れた腕を基軸に、遠くまで投げ飛ばされた。勢いは敢えて殺さず、俺の体はあっという間に遠くまで転がっていった。

 

「び、びびった……。ごはーん、怪我ないかー」

「ひっ、うっ……」

 

腕が明らかに変な方向に曲がった気がするけどまあいっか。治るだろこれくらいなら。アドレナリン切れた時が一番怖いな。

さて、ある程度距離を取れたので一度思考を整理……の前に、悟飯をどっかに送り届けないと悟空も俺も安心できないな。

亀仙人たちは、と……あ、近づいてきてる?この動きは飛行機でも出してきたかな。

 

「よしよし悟飯、一旦泣きやめ」

「うえーん!」

 

だめだ泣き止まねえ。元々悟飯の救出が主な目的だからここで一人置いて救援に行くこともできやしない。

仕方ないので悟飯を片手に、飛行機の中に座標を指定して瞬間移動。視界が一瞬で移り変わる。

 

「マ、マレビトさん!」

「よおクリリン、悪いけど悟飯頼んでいいか?」

「ええ、もちろんです!」

「よし……あっ思ったより力強い」

 

確かにこの中で悟飯の顔見知りなの俺だけだが、ちょっと今それは困るんだ。頑張って引き剥がして、手当と世話をクリリンにおしつけ、もとい頼む。腕が変な方向に捻じ曲がってるのはブルマにドン引きされた。仕方ねーだろ。

 

 

そうして戻ってきたら、まあまあ大変なことになってた。ピッコロは地に伏せてるし、悟空は食らいついてはいるもののラディッツにはどこか遊びが見える。そんな様子を目前にして、思考はどこか落ち着いていた。

さて、状況を整理しよう。

 

そもそも、ラディッツは何をしたいのか。

 

誰にも従ってなどいないと言ったから、おそらく侵略を目的としてはいない。加えて俺の初撃のエクスカリバー、あれはおそらくラディッツのスピードなら避けられた筈なのだ。だが、視界不良を起こしながらも迎撃という手段を選んだ。そしてトドメに、いつでも抜け出せるよう開けっぱなしだったハッチ──

 

「おーい、ピッコロ」

「……なんだ」

「あっよかった生きてた。ちょっと試したいことがあるんだ、フォロー頼むな」

「なんだと?」

 

ピッコロの戸惑う声を背に、悟空とラディッツの方を向いた。すう、と息を整えて瞬間移動の準備を整える。背中の剣は納刀したままで、ひたすらにタイミングを伺った。

 

「やはり、きさまは生ぬるい!」

 

たたらを踏んだ悟空に、これまでで一番大きくラディッツが拳を振り翳した。その瞬間を狙って、瞬間移動で割って入る。敢えて無防備で、体格の大きなラディッツの拳は小柄な俺の顔面目掛けて繰り出されて──

 

わずか数センチ先で、その動きを止めていた。

 

「……なぜ、分かった?」

「こう見えて俺より強いやつから逃げたりした経験は山ほどあってな……まあ色々と判断材料はあったよ」

「俺が本気で殺しにかかった場合はどうした?」

「その時は俺の肉体を使って固定したあと、ピッコロに撃ち抜いてもらう予定だった」

 

さっきまで俺が立っていた場所のすぐ後ろでは、ピッコロが魔貫光殺砲をいつでも撃てるように待機している。一番硬い部分は無理でも、眼球あたりから脳を貫けば致命傷には至るだろう。その程度の足止めは覚悟していた。

 

「ふん、見かけよりは随分と冷静で頭が回るようだな」

「お褒めに預かったようで」

「それに比べて……」

 

ラディッツはそう言うと、状況について行けないのか、ぽかんと俺たちのやりとりを見守っていた悟空を振り向いた。苛立ったような口調がその感情を窺わせる。

 

「カカロット!!!きさまなんだ、その体たらくはっ!」

「いいっ!?お、オラ!?」

「当たり前だっ!きさま以外に誰がいる!そんなんだから俺ごときに息子をさらわれるのだ!!!」

 

なんだか正座しての説教が始まりそうな雰囲気だ。とりあえず脅威は去った、どころか最初から無かったらしいことが判明した。弛緩した空気を感じ取るとどっと疲れが湧いてくるが、話を進めないわけにも行かないだろう。

 

「あー……ラディッツ。とりあえずお前が敵じゃないことは理解した。だがお前の目的がわからん。なぜこのようなことをしたのか、話を聞かせてほしいんだが」

「ああ、構わん」

 

ラディッツが素直に頷いたので、とりあえず移動することになるだろう。これからやることを考えたら、体がさらに重くなったのを感じた。昨日から色んな意味で頭を回しっぱなしな気がする。

休みてえ。

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