カメハウスに戻ったが、なんとなく警戒心のようなものは抜けきっていないのは当然だろう。ちなみにラディッツは警戒されるのは慣れていると言わんばかりにどっしり構えて、一応出した茶を啜っていた。
神経が図太いなこいつ。
腕の手当てをしてもらいながら眉間を揉んだ。ラディッツの話を聞くのはいいが、ある程度前提知識の説明から始めなきゃならんしな。
「アー……とりあえず俺が主導で話を進めていいか?分からないことがあったら聞いてくれれば、都度答える」
「うむ、その方がいいじゃろう」
亀仙人が頷いたことで話し合いの方向性が決まる。それを踏まえて、ラディッツが湯呑みを置いた。
「改めて名乗ろう。俺の名はラディッツ。サイヤ人の生き残りであり、そこにいるカカロット……この星の名前はソンゴクウといったな。そいつの兄だ」
「サイヤ人はほぼ絶滅状態だって聞いたが、何人残ってる?」
「俺たちが把握している限りではあるが……俺と親父とカカロットを除けば、フリーザ軍に二人、カカロット以外の飛ばし子が一人、そして幼少期に惑星ベジータから追い出された第二王子がいたはずだ」
「じゃあ合計で八人か?……フリーザ軍所属が思ったより少ないな。もう少しいなかったっけ」
「惑星ベジータ消滅の直後ははもう数人が生き残っていたが、侵略で既に命を落としている」
「なるほど」
「はい、質問……ってほどじゃないけどいい?数あわないわよ。孫くんと家族が三人、飛ばし子?が一人、軍に入ってるのが二人、王子様が一人なら合計で七人でしょう」
ぴん、と手を挙げてブルマが指摘してくる。一度内心で首を傾げて、それからぽんと右手で太腿を打った。
「いや、俺もサイヤ人だから数合ってる」
「……は!?」
「聞いてないぞ!?」
「言ってねえし」
「いい!?けどにいちゃん、尻尾ないじゃんか!」
「俺の一族は突然変異種で尻尾がないんだよ」
「そのようは話は聞いたことがないが……」
「まあ昔の話だしな。俺そもそも長生きで、惑星サラダ世代というか、それこそ系譜的にはヤモシの──って、俺の話はいいんだよ」
「つまり少数派の変わり者ってことなのか?」
「そうなるかな。案外、別の宇宙じゃ尻尾がないサイヤ人がメジャーかもしれないが……と、話がずれたか。とりあえず、サイヤ人という種族と今の状況について簡単に話すぞ」
サイヤ人と惑星ベジータの顛末、あとフリーザ軍との関わり。これらをある程度かいつまんで話す。ついでに俺が千年くらい生きてることもさらっと話したが、ここは適当に流した。本題じゃないからな。
「これでサイヤ人が何をしていたか大体分かったかな。じゃあ俺からも質問だ。ラディッツは所属がないみたいだがどういうことだ?サラダ出身の俺みたいなフリーはそう居ないだろ」
「そうだな、俺自身、惑星ベジータが消滅するまではフリーザ軍に属していた」
「ふうん?」
「だが、惑星ベジータと共に消滅したと思われていた親父が生きていてな。親父自身の軍籍が死亡扱いとなっていたため、母星が消えた後に親父に連れられる形で軍を抜けた。今は侵略には一切関与していない」
「へえ、珍しい」
サイヤ人は全体的に、家族への情が軽いというかドライなところがあるから、わざわざ迎えに行ったとはまた変わり者である。個体差があるとはいえ、ここまで目をかけるのはあまり聞いたことがない。
「その親父は?」
「何年も前、俺が十六の時に別れてそれっきりだ。親父のことだからどこかで生きているとは思うが」
「けっこうドライね……」
「サイヤ人はこんなもんだな」
ただ、ラディッツがフリーザ軍に入っていない理由は分かった。長らく話し込んでしまったが、悟空を振り向くと話についていくので精一杯なのか目を白黒させている。
「えーっと……つまりおめえはオラの兄ちゃんなのか?で、オラの父ちゃんも生きてるんか」
「そうだと最初から言っている。親父は今の動向を把握している訳ではないが……くたばってはいないだろうよ」
「にいちゃん二人だとややこしいな。悟空、今度から俺のこと名前呼びするか」
「えっ」
そっちの方がいいだろ。それに、本題にもそろそろ入りたいしな。
「じゃあ本題と行こうか。ラディッツ、地球に来た目的は?」
「先に言った二人のフリーザ軍所属のサイヤ人が地球に目を付けたらしい。俺はその情報を手に入れて、先んじて地球へ飛んだ。地球にはカカロットが飛ばされていた、という話は母さんから聞いていたからな」
「警告ってわけか……襲撃のタイミングは?」
「今から一年後といったところだ」
「時間があるのかないのか……」
俺たちの実力を図るようなマネをしたのも納得だ。悟空を叱っていたときの俺ごとき、という表現からして、その二人のサイヤ人の実力はラディッツより上と見て良いだろう。
ラディッツはその辺りも想定内だったのか、ひとつ頷いて、ポケットからよく分からん札のような、チケットのような、そんな紙切れを二枚取り出した。
「よって、カカロットは俺と共に界王星で修業を行う」
「えっコネあんの?」
「二人分だがな」
準備良すぎてビビるわ。
「界王星ってなんなんだ?」
「地球に神様がいるだろ?宇宙のいろんな星にも神様がいて、それを統括する上司が界王様。界王様が住んでるのが界王星」
「へえ、じゃあサイヤ人にも神様がいるのかしら?」
「いるなー。見たことあるし」
なりたいとは思わなかったけどな、なんとなく。
「じゃあ悟空とラディッツはそっちで修業……として。あとは各自でやるか。天津飯たちにもこのことは伝えておかないとな。ブルマ頼んで良いか?」
「え、ええ良いわよ」
「ならばこれを使え。俺にはもう必要ない」
そうして差し出されたのは、スカウターだった。うわあ久々に見た。意外に侮れないんだよなこれ。
「とはいえ、このままだとフリーザ軍と通信が繋がる可能性が高い。慎重に扱え」
「ありがとう、早速分解してみるわ。うまくいけば複製できるかもしれないしね」
「通信が繋がるのか……?」
「俺も親父も、こういうのは不得意だからな。下手に弄らず放っておいた」
「確かにそっちの方が良いかもな」
そして早速、悟空とラディッツはカメハウスから飛んでいった。一旦神様の神殿まで赴き、そこから蛇の道を通って界王星を目指すらしい。あいつチチに何も言ってないんだが良いんだろうか……まあいっか。家庭の問題に首を突っ込むものではない。馬に蹴られるのは嫌だ。
「じゃあ俺たちは各々修業ということで」
俺も流石に強くならないとダメだ。カメハウスに別れを告げて、家に戻る。
しかし、やり方を考えないといけない。ガムシャラに強くなるだけじゃダメだ。もっと効率的な強化を──と考えたところで、ドラゴンボールの記憶の一つが引っかかった。
界王拳、という技だ。
これは自分の戦闘力を倍化する技術だったはず。しかし界王星に行けない俺は界王拳を習得できない。ならどうする?
界王拳をパクったオリジナル技を開発するんだよ。
幸い、モデルは頭の中にあった。前世の仮面の向こう側、夢中になったヒーローを模倣すれば良い。気で装甲を作って体にまとい全身の身体能力を底上げする。イメージがつきやすいように、イメージをカブトムシがモデルのヒーローで統一。腕に、脚に、全身に、アーマーを装着するように……。
「………………」
一旦イメージを止める。家の中に入ってまっすぐ固定電話を目指した。なんだかんだでかけ慣れた電話番号をプッシュする。目的の人物はすぐに俺の電話に出てくれた。
『ハロー。久しぶりだねマレビトくん』
「もしもしブリーフ博士?人体模型と骨格標本ってどこで注文すれば良いかわかるか?あとカブトムシの専門書と人体解剖図も欲しいんだけと」
今年の投稿はこれで終わりとなります。読んでくださった皆様、ありがとうございました。
次の投稿は一月十日を予定しています。