待ってる間、色々と疑問が浮かんできたので脳内で整理する。
まず第一に、なぜベジータとナッパは地球に狙いを定めたのだろうか。ナメック星人のドラゴンボールなら、ナメック星に行くのが一番手っ取り早いはずなのだ。だというのに、辺境と言ってもいい地球に目を付けた理由は?
そして第二に、ラディッツと悟空の父親がフリーザ軍の脱退という道を選んだ理由だ。少なくとも表向きは、惑星ベジータの消滅は巨大隕石の衝突という名目が立っている。男性のみが生き残ってしまい絶滅が確定したサイヤ人の風当たりは強い。少なくとも、俺がサイヤ人を名乗ることをやめる程度には。そんな中で、少なくとも保護を受けられるフリーザ軍を抜けるほど、ラディッツの父親には目算があったのだろうか。それとも、少なからずあるメリットを無視するほどの何かがあったのだろうか?
そして第三の疑問。神様と呼ばれる者や界王、界王神らにとって俺は非常に厄介な存在だ。今の神様にピッコロ関係の問題に首を突っ込まないよう言われたのも頷ける。俺が挟まると悪いことも悪いことだと指摘できなくなりかねないからな。
だが、そしたらなぜ、カリン様も神様も俺を軽々と迎え入れたのだろうか。自分の判断というにはあまりに統制が取れているから、おそらく誰かの意思ではあるはずだ。
で、この三つの疑問。一つに繋がってそうな気がするんだよなあ。
「……と、近づいてきたか」
二人分の気が近付いてきたので思考を止める。今考えることじゃない。
わー悟空めっちゃ強くなってる。追い抜かれてる。当たり前だよなあ!頼もしいことこの上ない!あとラディッツ、尻尾が復活してそう?
「久しぶりだな悟空!に、ラディッツ」
「マレビトにいちゃん!」
「マレビトでいいって、お前の兄ちゃんこっちだろ」
「えーっ、でもオラにとってはにいちゃんだぞ」
「体格差見てみろ、どっちかと言うと俺の方が弟だわ。……そういやラディッツもでかいな」
「俺はおまけか!」
「俺とお前の交流時間何時間だと思ってる!」
軽口を叩きながらも、とりあえず気を探って瞬間移動の準備を整える。戦闘は……劣勢だけど誰も死んでない、よしよし。
「じゃあ行くぞ!」
二人が俺の肩に手を置いたのを確認して、瞬間移動!視界が一瞬で雲海から荒野へと切り替わる。あっちこっち敵のサイバイマンが倒れていて、こちら側の味方と思わしきサイバイマン一族が数人、無傷とは言わないまでも健在だ。
……まあ育ってすぐ即戦力と、少なからず“修業”ができるのとでは、ほぼ確実に後者の方が強いよな。というか以前はオリジナルレベル一体だけだったのに、今はオリジナル超えるサイバイマン一族が何人かいる。したのか、修業。
そして、目の前には戦闘のためかアーマーが崩れて半裸状態のナッパに、無傷のベジータがいる。
で、瞬間移動の関係上中央に俺、左右に悟空とラディッツ……なんか俺がリーダーみたいな配置になってるし。一番弱いのに。
「ふん、ついに現れたか……そして生きていたか、腑抜けのサイヤ人に弱虫ラディッツ」
「チッ、相変わらず神経を逆撫でするヤロウだ。……久しいな、ベジータ」
「腑抜けは否定できないな」
「それで?わざわざ何をしにきやがったラディッツにカカロット。まさかこのオレたちを倒すなどというくだらんジョークを言いにきたのではあるまいな?」
中身サイヤ人じゃないからな俺。腑抜けって言われても納得しかできんわ。
あとアスラちょっとうるさい。静かにしてて。
アイコンタクトで、ピッコロに離れるよう伝える。ピッコロは心得たように、クリリンやヤムチャ、悟飯を連れて場を離れてくれた。助かる。
「ジョークになるかどうかは戦ってみないと分からんだろ。強い方が勝つんじゃない、勝った方が強いんだよ。俺たちもお前らもサイヤ人、御託のケリは戦いでつけようぜ」
「ハッ、確かにな!」
「オイ、マレビト。きさまはナッパをやれ」
「分かってる。ベジータは二人に任せた」
大猿化できない代わりに、パクった界王拳の最大倍率が大猿化とほぼ同程度。ナッパならどうにでもなる。
剣を抜く。意識を集中させて戦闘力を向上させる。イメージは装甲を纏った変身。黒いライオンのように、赤いカブトのように。身体の機能を邪魔しないよう、気で肉体を強化していく。
まず、俺が飛び出した。ナッパを悟空たちやピッコロたちから引き離すように移動しながらなナッパの攻撃を捌く。
現在の倍率は二倍、その上で相手より少しだけ弱く“見える”ように、あえて防御と回避だけに専念する。
「さっきの口はどうしたァ!」
「さあな!」
重たい攻撃を受けて吹き飛ばされる。あえて力を受け流したので、そこまでダメージはないが、ナッパは完全に油断したみたいだ。
よし、ここまでは狙い通り。
取った距離を利用して、剣を上段に構える。さて、どう動くか。
「エクス、カリバー!」
やや弱めに放ったビームが、真っ直ぐナッパに飛んでいく。その結果を待つより前に、振り下ろした剣を持ち直した。
ナッパは予想通り、両手でビームを相殺する。閃光が視界をくらませ、砂埃が立ち上がる。それを目掛けて、ナッパの懐に瞬間移動した。かなり大きな体格差、油断、そして瞬間移動という移動の利。全てがこちらに有利に働く。
「しまっ……!」
「ばーか」
そのまま、構えていた剣を振り抜いた。事実上半裸になっていたため、一切の攻撃は相殺されず剣の全てが鳩尾にめり込み、そのままナッパは岩をいくつか破壊しながら、かなり遠くまで吹き飛んだ。多分内臓もひとつかふたつ潰しただろうか?
「……んー、なまくら」
弱点の尻尾はともかく、流石に鍛えた肉体は斬れないか。なまくらという呼び方は言い過ぎにしても、切れ味は流石に敵わないらしい。
「アロンダイド」
気円斬の応用技。単に剣の切れ味を追加するだけだが、こういうときにはひどく便利だ。
サイヤ人は、死地から復活したときが一番厄介である。千年生きてる俺が言うから間違いない。昔馴染みもそんな感じでめっちゃ強くなってた。らしい。昔馴染みのは直接見たことないけど。
足を踏み込んで、遠くに飛んでったナッパに肉薄する。流石に腕か脚の一本二本、取っておかないとまずい。
そして肉体の強化倍率を二倍から三倍に。これで戦闘力はナッパを上回った計算になる。あくまで計算上、油断はならないが。
「き、きさまっ!いつのまにっ!」
「悪いな!」
「がぁっ!」
剣を振りかぶって、振り下ろす。斬れ味が格段に向上した剣は今度こそ片腕を切断した。バランスを崩したナッパの鳩尾に勢いのまま蹴りを喰らわせて、地面に沈める。地面に伏せたナッパに対して鋒を突きつけた。
「……勧告だ。これを断ればチャンスはないぞ。降伏を勧める。少なくとも今の俺はお前より強い。俺もせっかく残った数少ない同胞を無闇矢鱈に殺したくはないんだ」
言っててなんだけど、これ、悪役ムーブしてんな俺。
ナッパはしばらく負けたことが信じられないのかギリギリと俺を睨みつけていたが……やがてニヤリと不敵に笑った。嫌な予感が全身を駆け巡る。
「……お前、何を企んでいる?」
「はっ、さっさと殺さないなんざ甘かったな!」
「いったい何を……っ!?」
強烈な違和感に、空を見上げた。地球には現在月がない。ピッコロが破壊したからだ。だというのに空には小さな満月が輝いていて……
「っ!パワーボールか!」
パワーボールを使うには、かなりのエネルギー……気を消耗する。おそらく悟空とラディッツはベジータのことを後一歩の所まで追い込んだのだろう。満月の力により、尻尾があるナッパの体が、段々と巨大になっていく。
一旦後退して距離を取る。片腕が無くなったとはいえ、大猿化による強化はあまりに厄介だ。
「あー……くそ、やらかした。腕より先に尻尾切り落としときゃ良かった」
俺自身に尻尾がないからか、月が無い時点で油断していた、と言ってもいいかもしれない。紛れもなく落ち度である。
視界の端では、同じように大猿と化したベジータとラディッツが巨大化したまま取っ組み合っている。押されているのは、服装から判断するにラディッツの方。そこにこのナッパを加えてしまえば押し切られるのは目に見えている。
「っし」
小さく息を吐いて切り替え。にしてもなんだこの怪獣大決戦は。
だから尻尾のあるサイヤ人は厄介なんだ!