第四十四話
「戦力を三つに分けようと思う。ナメック星への先遣隊、本隊、地球残留組で」
しばらく悩んで、出した結論がこれだ。戦力の逐次投入は愚策かもしれないが、どうせ最高戦力今のところフリーザ軍に対してまあまあ弱いし、斥候としての先遣隊みたいなもんだ。
「地球に残る意味は?」
「俺たちの今のアドバンテージのひとつに、一回分のドラゴンボール使用権がある。状況に応じて即座に使えるようにしておきたい。レッドリボン軍みたいな例もあるしな」
「ああ……」
「そっか」
兄弟子がレッドリボンに雇われていた天津飯と餃子が納得したように頷いた。あらかじめドラゴンボールを集め守っておく役目は振っておいて損はない。
「で、先遣隊と本隊だけど。まず俺は先遣隊に入る。これは現地協力者の確保と敵戦力の調査が主な役割かな。本隊は悟空とラディッツの二人。ここが戦力としての要だ。とりあえず二人とも超サイヤ人目指してがんばっといて」
「ああ!」
「わかった」
フリーザ軍を敵に回すし、超サイヤ人という目標もあげたのでとりあえず放っといても修業してくれるだろう。その辺りは信頼している。
「ピッコロは先遣隊な。ぶっちゃけ本隊に入れると郷愁とか感じる余裕もないと思うし、ナメック星人がいた方が、対話とか楽そう。あと俺の修業付き合って」
「そうか」
最後は本音が透けすぎた感があるが、ピッコロは素直に頷いてくれた。まじで最近大魔王の面影を感じなくなってきている。
これで二人か。
「あと一人か二人、先遣隊に欲しいんだけど……どうしたもんかなあ」
「俺ではダメなのか」
真っ先に手を挙げたのは天津飯だ。強さ的には申し分ないが、一つ懸念事項がある。
「んー、悪くはないんだけどさ、天津飯でかいんだよね」
「大きいと何か問題が?」
「例えば、一人乗りアタックボールが一つだけありました、その場には二人います。という状況が起こったとして、天津飯とピッコロがいたらどっちかしか乗れないじゃん」
「……そうだな」
「これが、クリリンと俺なら二人乗れなくもないんだよ」
戦闘ならいざ知らず、こういう場合においては体が小さいことが有利に働くときがままある。そういう意味だと、小柄で技が多彩で、一番欲しいのはクリリンなんだけど……クリリン、一回地球のドラゴンボールで生き返ってるんだよな。
「マレビトの瞬間移動はだめなの?」
「あくまで手段の一つとして考えた方がいい」
そんなホイホイ都合のいい時に瞬間移動できるとは限らないしな。それこそ戦闘中とかの可能性もあるわけで。
「あの、俺行きますよ」
「……いいのか?地球のドラゴンボールでは生き返れないぞ?」
「うーん、でも、俺が適任なんですよね」
「わかった、頼む」
これで先遣隊が俺、ピッコロ、クリリン。本隊が悟空、ラディッツ。地球組が天津飯、餃子、ヤムチャ(とヤジロベー)か。まあまあバランス良く組み分けできたかな。
と、考えてると、さらに一人分の手が上がった。
「あの、僕も行きたいです!」
「えっ」
小さな手は、孫悟飯のものだった。おお、予想外……あっでも本来なら悟飯がナメック星に行ってたな。あれはなんでだっけ、とにかく人手足りねえなっていう感想持ったのは思い出した。
「なに言ってるだ悟飯ちゃん!危ないことは悟空さやマレビトさに任せれば良いだよ!」
「まあまあチチ。悟飯のやつもちゃんと考えて言ったことだろうしさ」
「ポポ、お茶おかわりちょうだい」
「どうぞ」
「ありがと」
新しい熱いお茶をすする。悟飯が行くかどうかは家族の問題だし一度放置。ある程度方針は決まったし、具体的な日数の詰めはブルマたち科学者組のスケジュールにも左右されるだろうし、今ごちゃごちゃ考えることじゃない。あとはあれだな……割とでかい個人的な問題がひとつ残ってるな。
剣、どうしよ。
「マレビト」
「……あ?悪い聞いてなかった」
「マレビトさん、僕も連れてってください!」
「おまえの父ちゃんと母ちゃんを頑張って説得してみろ」
「お父さんとお母さんから、マレビトさんが良いって言ったなら行ってもいいって」
「うおぉい!こら悟空勝手に人を判断基準にするな!」
けっこう大事な話を聞き逃してたっぽい。えーと、俺一応他所の人なんだけど、いいのか!?割と大事なことなんじゃねえのか!?
と慄いていたら、悟空が俺をじっと見つめて語り出した。
「もし悟飯が行くとしたら、マレビトと一緒に行くことになるだろ」
「そうだな。本隊には組まないな」
「で、もし逃げるとしたら瞬間移動で帰ってくるだろ」
「……そうだな」
「じゃあ、マレビトが連れてっても大丈夫ってなったら良いかなって」
「くそう思いの外理論的だ」
確かに両親の元を離れて遠出するなら引率者の許可を得るのは当然の道理ではあった。こっちとしても正直、抵抗はない。何故ならアニメ漫画としてのドラゴンボールにおいて孫悟飯はナメック星に行っていたからな。
「とりあえず俺の問題解決してから答え出すから待ってて」
「問題ですか?」
「剣が壊れた……くそ長い付き合いだったのに……」
思い返したらじわじわダメージ入ってきてテーブルに突っ伏した。あれ別に名刀とかそんなわけでもないから代用品でもいいっちゃ良いんだけど、流石に愛着ってのが湧くとな……。
「剣って、マレビトさんがいつも持ってるあれですか」
「そー、クリリンのいうあれ。元気玉から守れなくってさ……」
伏せたままぼそぼそと後悔を口にする。女々しいのは自覚済みだが一回とことん落ち込ませて欲しい。
「あ、あの……」
「ん?」
「マレビトさんの剣なら、集めました……破片ですけど」
「マジで!?」
なんでも昨日俺が回復しつつ被害状況確認したり仕事の調整してる間に悟飯がヤムチャたちと一緒になって集めておいてくれたらしい。ざらざらと取り出された金属の破片は間違えようもなく俺が使っていた剣の成れの果てだ。
「うわあやった!!!よしこれ鋳潰して加工し直し……あっでもどこに頼めば……」
「神にでも頼めばいいだろう」
「先に直してきてもらえば?」
「いいの!?ありがとよしじゃあちょっと行ってくる!あとミスターポポ、悟空か神様使ってた宇宙船あったよなどっちか場所わかんない?」
「どっちもわかるぞ」
「じゃあその場所リストアップお願い行ってくる!おーい筋斗雲!」
外に飛び出して筋斗雲を呼ぶ。駆けつけた筋斗雲に飛び乗ってまずはカリン塔へ。そこから一気に空飛んで神様の神殿に乗り込む。
「さわがしいな」
「あっ神様!ねえこれ直してくれるか!?」
「直してやるからおちつけ」
ざらざらと風呂敷包みから取り出した金属片が山になる。神様が指を向けて力を使っただけで、金属片はあっという間に元通りの剣になった。試しに握って振り回し、何度か鞘に収めて抜刀を繰り返す。完璧に元の剣だやったあ!
「も、戻った!俺の剣が戻ってきた!神様ありがとう!!!」
「なに、大したことではない」
「俺にとっては大したことなの!」
嬉しさのあまりその場で何度も飛び跳ねて感情を発散する。ちょっとずつ落ち着いてきて、はしゃぎすぎたような気もするけど、無理もないことなので自分を納得させる。
「騒いでごめんな。じゃあ俺はこれで」
「うむ」
「そうだ、もしよければ一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「神様さあ、悪の心持ってたら神様にはなれないよって先代神様に言われたじゃん。あれってさ、『どの口で』って思わなかったの」
すると、神様はしばらく黙った。沈黙が漂う数分の後、徐に神様は口を開く。
「マレビトよ。世の中には、思っても口に出さない方が良いこともある」
なるほど、思ったんだな。