まれびとの旅   作:サブレ.

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第四十九話

「そろそろギニュー特戦隊が来る。なので最後の仕上げをしてしまおうと思います」

「なぜ敬語になる」

「言ったら絶対に『お前な……』って言われる」

「自覚はあるのか」

「ある!」

「おい」

 

ベジータの見張りを頼み、俺は接収していたアタックボールを持ってきた。一度乗り込んで設定をちょっと弄る。そしてボタンを押して外に出ると、ボールは猛スピードで宇宙へと消えていった。

 

「何をしたんだ」

「ギニュー特戦隊は五人で構成されてる。その中で一番弱いのが、時を止める能力持ってるグルドって言うんだけど、そいつの宇宙船にあれをぶつけて宇宙で大破させる」

 

時を止めたとて時間は限られている。しかも止められた所で対処できる訳でもない。激突で死ななくても宇宙空間で生存できなければ、結果は分かる。

ピッコロは予想通りに頭を抑えて「お前な……」と呟いて呻いた。ベジータを治した老人も心なしか引いてる。悪かったな。

 

「だけど、こうした方が効率いいんだよ」

「何のだ!」

「フリーザの怒りは、今は俺に向いてる。頭に血が上ってると言い換えてもいい。だけどギニューはフリーザの忠臣だから、あいつに助言されて頭が冷える可能性もあるんだ。そこで、卑怯な手段で仲間を失ったら」

「ギニュー特戦隊が怒るだろうな」

「マレビト、あなたにフリーザとギニュー特戦隊の狙いが向くのでは」

「そのとーり。俺を殺すことが最優先事項になり、ドラゴンボールのことが頭からすっぽ抜ける……までいかなくても、優先順位が大幅に下がる。ナメック星への関心は更にその下だ。そして俺が無駄にしぶとければ、時間稼ぎにはなるだろ」

 

俺に強い力の方向、つまりヘイトを向けさせることで悟空やラディッツやピッコロ、クリリンに悟飯、そしてナメック星人が自由に動けるようになるわけだ。

実際、クリリンたちにはドラゴンレーダー使ってベジータの隠したドラゴンボール持ってきてもらってる訳だし。

あと、宇宙を漂ってるドラゴンボールに意識が向かないようにしたいってのもある。

ピッコロはめっちゃ複雑そうに俺を見てる。

 

「俺は、ギニュー特戦隊を倒せばいいんだな?」

「まあね。あと、ギニュー特戦隊倒し終わったら悟空とラディッツと一度合流してから、ナメック星のドラゴンボール呼び出して二人の潜在能力を解放してほしい。それぐらいの時間は稼げるし」

 

ドラゴンボールにできるのは製作者と同じ範囲のことだけ。逆に言えば、製作者にできるならドラゴンボールにもできる。

どれだけ鍛錬してきたとしても、保険をかけておくに越したことはない。

 

「ナメック星のドラゴンボールはみっつの願いが叶う。二人の潜在能力の解放なら問題ないだろう。もっともナメック語でなければポルンガは呼び出せないが……あなたたちなら問題はない」

「お、そりゃラッキー。残った願いの使い道は任せた!頼んでいいか?」

「当たり前だ!」

「よし」

 

これで下準備は整った。あとは俺が死なないように頑張るだけだな。最悪、地球のドラゴンボール使ってナメック星の残った人たちを避難させても良いわけだし。

と、迫るフリーザとの戦いをひしひし感じていると、静かな老人の声が俺たちに問いかけてきた。

 

「あなたは、何故そうまでして時間稼ぎに徹するのだ」

「……そんなに?」

「ああ。マレビト、お前は自分で何をしているのか分かっているのか」

 

ピッコロまで聞いてくるじゃん。ただこれは、俺のサイヤ人という種族に対する見解というか、そういうのが割とでかいからなあ。

 

「んー、なんと言うか、これは俺個人じゃなくてサイヤ人っていう種族そのものに対する考え、なんだ、けど」

 

ぐわん、と脳が揺れた。足元がおぼつかなくなり、景色や音にフィルターがかかったような感覚になる。

俺が後ろに引っ込んで、アスラが前に出てきたようだ。

 

「サイヤ人って、遅いんだ」

「遅い?」

「うん。間に合わない」

「悟空でもか」

「例外はない、かな?少なくとも見たことはないや」

 

ぐわん、と脳が揺れて、世界が戻ってきた。交代するなら先に言えよ。あと意味深な言い方するな、ピッコロがハテナマーク飛ばしてるだろうが。

 

「えーと……まあそんなところ」

「誤魔化すな」

「まあまあ。それよりほら、もうすぐギニュー特戦隊到着するから、ベジータでも連れてって」

 

先ほどから寝たふりをしていたベジータの頭を剣の鞘で突くと、ゴスッという割と良い音がした。不本意な顔でのっそりとベジータが起き上がる。

 

「おそよう?」

「貴様、そのような手段でギニュー特戦隊を敵に回すなど、サイヤ人の誇りはないのか!?」

「俺には不味い埃を食った覚えしかない。あと俺サダラ世代だから、惑星ベジータ時代の誇り云々言われても困る」

「……貴様何歳だ?」

「何年か前に四桁になった」

 

ついでに言うと稀人だし、俺。

中身が色々と違うので誇りとかよくわからん。

 

「ま、そんなわけで今のフリーザとギニュー特戦隊は怒り心頭。機嫌が悪いからうっかりエンカウントなんてしたら慢心もなく潰されるだろ?手ぇ組まない?」

「……チッ」

 

反対しないということは、オーケーってことだな。まあ反抗したところでピッコロに倒されて終わりだと思うけど。

ベジータは意味深な目線を一度俺に向けて、ギニュー特戦隊の元へと駆けて行った。おおむね、戦闘の経験値でも積んでパワーアップを目論んでるんだろう。フリーザに勝てるならなんでも良いや。

 

+++++

 

二人の姿が消えて数分後、気と気のぶつかり合いが始まった。おおー、めっちゃ怒ってるやんギニュー。向こうでは仲間を殺されたギニューがまるで主人公のように悪役ピッコロとその部下ベジータと戦ってることだろう。が、俺お前らが侵略やってたこと忘れてねえからな。特戦隊だなんて名乗りやがって。

おっと、私怨が。

 

「さて……やるか」

 

場所は移動した。ドラゴンボールを集めてる場所でも、誰か非戦闘員がいる場所でもない、だだっ広い荒野。深呼吸をして、剣を抜く。そして、気を少しだけ高める。

予想通り、ものすごいスピードで近づいて来る気がある。しばらく待っていると、不可思議な乗り物ではなく、普通に空を飛んで一人の宇宙人が目の前に降り立った。

小柄だ。俺と同じくらいかもしれない。表情だけはひどく穏やかなようにも見える。それが表だけだってことくらいはすぐにわかった。俺も、にっこりとわざとらしく微笑んでやる。

 

「どうもこんにちは」

「ええ、こんにちは」

「俺はマレビトだ」

「わたしはフリーザです」

 

お互い白々しく挨拶を交わす。浮かべた笑顔の裏側には、お互いに少なくない悪感情が渦巻いている。

こいつがフリーザ。サイヤ人を含めた数々の種族を滅ぼし、友達が頑張って作り上げた星を蹂躙しようとした、気に食わない奴。

が、それはお互い様だろうな。なんせ、こっちはインフラを遠隔でぶち壊したのだから。単独犯や小隊ならともかく、フリーザ軍ほどの大隊となると影響はでかいだろう。

 

「あなたは何故この星にいらっしゃったのですか?」

「古い知人がいるもんで、顔を見せに。そういうフリーザサンはどうしてナメック星に?」

「ええ、わたしを不老不死にしていただこうと思いまして。……もっとも、どこぞの猿に夢とわたしの軍の装備を壊されてしまったのですがね」

「ああ、そりゃあ、とっても楽しいニュースだ」

「…………初めてですよ。このわたしをここまでコケにしたお馬鹿さんは。

 ───絶対に許さんぞ虫ケラ!!!」

「はっ、虫ケラか……褒め言葉だな!!!」

 

フリーザが気を高め、こちらに飛びかかってくる。剣で拳を受け止める俺の口元には、笑みが浮かんでいたに違いない。

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