まれびとの旅   作:サブレ.

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人造人間編
第五十四話


この前悟空の進捗確認しに行ったら、後ちょっとで習得できるとの報告をもらった。いいことだ。

俺はなんというか、流石に自力で生み出せる気がゼロなのはやばいので補助技を開発する必要に駆られ一年間研究する羽目になった。ラディッツがいなかったら仕事と両立できなかったかもしれない。感謝しないとな。

なおラディッツはいい感じの雰囲気の人ができたしばらく後に超サイヤ人になってた。わかりやすいなお前。

 

 

「マレビト、なんだその格好は」

「新技というか補助技。ほら、気って意識してなかったら漏れて感知されるじゃん?だから漏れないようにするための覆いみたいな感じの。気を意図的に消さなくても良くなったから楽だわ」

 

久々にピッコロに会ったときは、丁度補助技が完成したところだった。やはり気を固めて、今回は視覚として表されているのが臨気鎧装との違いだろうか。シンプルなロングコートなので夏は見た目暑苦しいのが欠点といえば欠点かな。

技名は……ウィザードローブにしよう。なにが魔法使いなのかは知らんが。

 

「そこまでして気を消してどうするつもりだ」

「まあ俺にも色々あんのさ」

 

自分の気の割合が減りまくったせいで、外部から見た俺の気がごっちゃごちゃのミックスジュース的な、なんか大変なことになってんだよね多分。

これまでは隠せてたけど、今後はもっと歪になってくだろうし、後単純に消耗減らしたい。

 

「そもそも、臨気鎧装の最大強化倍率と超サイヤ人の強化倍率はイコールだが、臨気鎧装の技術に関しては正直頭打ちなんだよ。なら超サイヤ人の強化に気を配った方がいいんだが、その分必然消耗も大きくなるわけだ。そんな中で俺は時間稼ぎをするわけでな」

 

臨気鎧装と超サイヤ人、多分両立できないんだよな……あれかなり神経使うから、感情暴走モードに入るあれとは相性悪い。悟空やラディッツも超サイヤ人と界王拳の両立無理って言ってたし?

その点、こっちのローブは気を消すっていう作業の自動化みたいなものだからそこまで神経使わなくてもいいのが楽。これなら超サイヤ人とも両立できそうな気がする。

 

「超サイヤ人にはなれそうなのか」

「わからん!」

「堂々と言う台詞か!」

 

怒られた。いやほら、俺が最初に超化しかけた時と今って状況違うから、主に魂的な問題で。

怒りとか憎悪のトリガーが別方向に向かってる可能性があってな……そこから見直さねばならないのがちょっと。

 

「そういうそっちは?新技とか開発できそうなのか?」

「当たり前だ」

「そりゃすげえ」

 

ちょっと得意げなピッコロに昔のチビを思い出すのは、ナメック星のデンデとかと出会ったからだろうか。あの時はバタバタしてて昔のピッコロを思い出す余裕もなかったなあ。

改めて、でかく育ちすぎじゃねえかなこいつ。

 

+++++

 

『お父さんが帰ってくるのって今日ですか?』

「そう。時間とか大体指定してたし、まあ今日中には帰ってくるだろ。のんびり待ってればいいから」

 

悟飯と電話でそんな会話を交わしつつ、楽譜をめくっては書き込みをしていく。最近ピアノにも触れてなかったから、久々に音を出して遊んでいる。はーひふーへほーなあの曲をなんか完成させねばならないような気がしたので。

余談だけど、チチは張り切って悟空のためにご馳走を量産しているらしい。俺も誘われたけど遠慮した。家族水入らずで楽しんでくれればいい。

と、いうか。家族全員揃うとかマジで死ぬほど羨ましいので視界に入れないでおきたい。

もちろんそんな内心は見せないで通話を切った。ピアノの前に座って鍵盤を押す。

 

「『世界はやがて、俺のもの』……なんか微妙にシンクロしてるし」

 

まあこの宇宙を二分する戦いがあるとして、その片翼は間違いなくフリーザだろうし間違ってはない。もう片方がサイヤ人だとは限らないがフリーザであることだけは謎に確信している。

まあ将来的に鍛えたら、という仮定の話ではあるが……。

 

「……もしかして最終的にフリーザに相対する戦力ってバーダックか?」

 

なんてこった、悪と悪の戦いになってしまった。もう終わりだこの宇宙は。仕事しろよ上位神。

そんな、考えたところで何がどうなるわけでもないことに心の中で文句を言いつつ楽譜と睨めっこすること数時間。

なんかフリーザの気が近付いてきた。マジか。直感ってこういうのを言うのか?

楽譜を置いてピアノの蓋を閉める。一度大きく伸びをしてから、剣を背負った。

 

 

筋斗雲で乗り込んで行ったら一番最後だった、さもありなん。気を探ると、フリーザとあとは、コルド大王か?ちとヤバいかもしれんな。

 

「遅れてごめん、来たぞー!」

「うわあ!?」

「驚かせるなマレビト」

「なんかごめん」

 

とりあえず謝っとこう。でもこれまで以上に気を消すのがデフォルトになるから取り敢えず慣れて欲しい。

俺が最後なのでベジータ含めて全員が揃ったことになる。メイン火力は超化できるラディッツと超化級の倍率強化できる俺ってところかな。

よもや俺がメイン戦力張るとは。

頭上を横切る巨大な宇宙船に、二つの気が揃っている。間違いない、コルドとフリーザだ。宇宙船が着陸したのか、わらわらと小さな気まで上陸を始めた。

 

「ラディッツ貴様、あれに勝てるのか?」

「なぜ俺だけに聞く……勝てるかは知らんが、戦わないで逃げ出すと思ったか?」

「この逃げ腰は時間稼ぎとやらに拘る腰抜けだからな。……もっとも、貴様もフリーザから尻尾を巻いて逃げ出した弱虫という点では同じか」

「事実だけど逃げ腰と腰抜け同時に言う必要あったか?それにまあ何とかできるだろ。ここにはサイヤ人がいるんだから」

 

つーかベジータ口悪い。あとラディッツの弱虫に言及するのはなぜだ。

ラディッツは気を消しつつ、いつでも戦闘に移れるように精神を研ぎ澄ませている。俺もまた、剣を抜いて戦闘体制に入った。

 

「どっちとやりたい?」

「俺はどちらでも構わん」

「じゃあ俺フリーザね」

 

囁くような会話をした、その直後。

突然巨大な気が現れたかと思ったら、ザコの気配が一瞬で消えた。この気には心当たりがある。思わず自分の斜め後ろ……この場に集まっていたうちの一人、悟飯のことを見た。視線が急に向いて驚いたのか、戸惑った子供の顔が視界に映る。

 

「え?」

「だよな、いるよな……てか」

 

あの気は、悟飯と同一のものだ。クローンか、もしくは……。

ともかく、脅威は去ったと思っていいだろう。ただ、この悟飯と同一の気の持ち主がどういう意図をしているのか読み切れないのだが。

 

「!なっ、なんだこの気は!?」

「超サイヤ人か……!?」

「みたいだな、ラディッツ行けるか?」

「当たり前だ!」

 

とりあえず対抗できそうな俺とラディッツで先行する。山を越えて見えた視界の先に、超サイヤ人特有の金髪は見えない。というのも、サイヤ人と思わしき人影がフード付きマントを着ているせいで人相が分からないのだ。

しかしその男は圧倒的な強さによって、なんと片腕しか使わずに復活したフリーザと更にはコルド大王まであっさりと倒してしまった。

とりあえず敵か味方か、それだけ見極めさせてもらうか……。

 

「やあ、初めましてサイヤ人。名と顔を明かしてもらえるか」

 

そう言いながら、フードを被った人影の前に降り立つ。観察していると、マントの内側が不自然に凹んでいた。なるほど、片腕しか使わなかったんじゃなくて“使えなかった”わけか。

 

「貴様は何者だ?どのようにして生き残ったサイヤ人だ?」

 

飛ばし子の存在を知っているラディッツは、生き残りのサイヤ人が知っている以上にいることにそこまで疑問を感じていないらしい。風貌はわからないが、とりあえず男ではあるらしいな。

 

「……あなたたちになら、大丈夫でしょうか」

 

フードを被ったサイヤ人は、悩んだ後にそっと顔を覆う布に手をかけて脱いだ。その素顔に、ラディッツは驚愕を隠し切れずに絶句した。俺は予想が確信に変わり、そっと息を吐いた。

俺の朧げな記憶によると、ここで未来から来た何者かがいたはずだ。そしてそれはいわゆる“新キャラクター”であり、孫悟飯ではなかった。

しかし、目の前にいるのは紛れもなく、孫悟飯なのである。

 

「お久しぶりです……マレビトさん、ラディッツ叔父さん」

 

小さな子供が、青年と呼べるほどにまで成長していた。顔には大きな傷があって、腕は一本足りていない。

しかし、目の前で彼は生きている。それが何を表しているのか、俺には判断がつかない。だから今の俺が言えるのは一つだけだった。

 

「…………ラディッツのこと『おじさん』って呼んでたの?」

「そこか!?」


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