まれびとの旅   作:サブレ.

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第五十六話

状況を整理しよう。

約十五年後、悟飯は現状唯一の戦士となった。……ん?

 

「実質一人って言ったか。厳密には一人じゃないのか?」

「はい。ですが、この時代にはまだ生まれてないんです」

「なるほどね」

 

悟飯がこちらに来たのは、下手に未来を変えないようにという思惑もあったのだろう。さらに年齢は最高でも十五、もしかしたら更に下の可能性もある。たしかに戦力として換算するには少々心許ない。

 

「ドラゴンボールは使わなかったのか?」

「それが、ピッコロさんが死んでしまいドラゴンボールが使えなくなってしまったんです。お父さんはそれより前に死んでしまっていますし、マレビトさんは座標がわからないからナメック星に飛びようがない、と言っていました」

「ああ……」

 

俺の座標指定型が裏目に出てたのか。場所が分からないなら瞬間移動もやりようがないからなあ。

 

「なあ、オラの病気って仙豆でも治らないのか?」

「病気には無力だぞ仙豆」

「……はい。さすがの超サイヤ人も病気には勝てなかったんです」

 

仙豆で病気が治るなら俺はとっくに治ってる。が、そのあたりの解決策を何も持たずに悟飯がこっちに来てるとは考えにくい。

その思考通り、悟飯が渡してきたのは心臓病の特効薬だった。症状が現れたときにこの薬を飲めば完治するとのこと。

ずっる。

おっと、思考が。

 

「やった!これでその人造人間っちゅー奴らと戦えっぞ!」

「お前ほんとにサイヤ人思考だよな」

「マレビトさんもサイヤ人ですよね?」

「悟空たち……というかバーダック系譜のサイヤ人とは根本的に進化ツリーがズレてるし。それに一応突然変異種だしな」

 

あと、魂の出身地が別世界なのでそこが原因か。大昔は侵略とか画面の向こうの話な甘ったれた平和の中で生きてきたもので。

 

「そういや、タイムマシンかなんか使ってこっち来たのか?」

「はい。ブルマさんが作ってくれました」

「流石に独力でこっちには来れなかったか」

「お祖父さんと一緒にしないでください」

「そりゃそっか。じゃあもうひとつ質問。人造人間ってさ、“気”はあるのか」

「!」

 

たとえば、ハッチャン。メタリック軍曹。初期型と言われるであろう彼らに気は存在しない。

技術力が上がったのなら、当然強さは上位互換。それに気が存在しないという部分を重ねられれば、極めて厄介だ。

 

「流石マレビトさんです……その通り、奴らに気は存在しません」

「まじか、厄介だな」

「そうだな、ただまあ、なんとかなるだろ」

「そうなんか?」

「他人事みたいな顔すんなお前。むしろ要はそっちだぞ」

「?」

「ちょうど目の前に、“気が読めない練習相手”がいるだろうが」

 

いやあ、絶妙なタイミングだったなウィザードローブの開発。

 

「俺で慣れておけ」

「〜〜っ!やっぱりすげえやマレビト!」

「重い!」

 

体格差を考えろ!俺がどれだけチビだと思ってる!あっ自分で考えて悲しくなってきた。せめてもうちょっと伸びたかった。

上から降ってきたような勢いで抱きつかれて流石に抵抗する。ぐいぐい悟空を押しやってなんとか脱出した。成長した息子の前だぞ自重しろ。

 

「マレビトさん、お父さんをよろしくお願いします」

「やれるだけやってみる」

「お父さん、マレビトさんをお願いします」

「おう、任せとけ」

「では、俺は一度ここで失礼します。三年後にまたお会いしましょう」

「生きろよ、悟飯」

「じゃあまた三年後……というか、そっちにとっては数ヶ月後になるかもしれないのか。とにかくまあ、また今度会おう」

「はい!」

 

未来悟飯はそうして去っていった。少し経って、タイムマシンと思わしき機械に乗って空に消えていく。ほほー、なるほど、あれがタイムマシンなのか。多分CC製だろうな。見えてるか知らんけどとりあえず手を振っておこう。ほら、離陸する飛行機に手を振る的な感じで。

 

「…………あっ」

 

なんで俺が地球からいなくなったのか聞くの忘れた。

やらかしたか?ま、いいや。どうせ俺のことだし。

 

+++++

 

そうして、やはり発達した聴覚で話を聞いていたピッコロに補助してもらいつつ、三年後に人造人間が現れるという話をした。みんな、流石に衝撃を隠せないでいる。特に悟飯。だよな。

ブルマは、今のうちにゲロ倒しとけば?といういろんな意味での禁じ手を発案してきた。確かに一理あるけど、戦闘欲の溢れたサイヤ人×3に大反対にあっていた。さもありなん。

 

「ねえマレビト!アンタもなにか言ってやってよ!」

「その手はアリだとは思うけど、今回はやらない」

「ええっ!?」

「なんで悟飯がビックリしてんの?」

「マレビトさん、手段を選ばないというか、なんでもやりそうなので」

「……否定はしないけど、俺ってどう見えてんだ?」

 

別にドラゴンボールダミー制作とかコンピュータウイルスとか、大したものじゃないだろ。

 

「ま、今回の理由としてはそうだな。今回悟飯は俺たちに特効薬と未来の情報の対価として“人造人間の情報”を欲しがってる。ゲロを今倒すと、それを踏み倒すことになるから」

 

本人はまあまあ納得しそうではあるけど、それは流石にちょっと。礼は尽くせるなら尽くしておきたい。

 

「そんな理由で、俺は今回悟空たちに賛成」

「アンタがそう理屈づけてんなら説得は無理そうね……」

「だから俺はどう見えてるんだと」

 

そんなわけで、三年後に向けて頑張って修業して、平和な未来を勝ち取ろう!っていう方向性で行くことに決まった。

 

「マレビトはどうするつもりだ?」

「ラディッツももうなってるけど、俺はとりあえず超サイヤ人を目指すかな?目標達成したら鬼ごっこでも一緒にやる?」

 

ベジータもとりあえずは超サイヤ人を目指すらしい。なんかよくわかんないタイミングで超サイヤ人化に成功したことを悟空は今知ったのか、それはそれはテンションが上がっていた。

 

「じゃあマレビト!終わったら一緒に鬼ごっこやろうな!」

「おう、目標達成したら声かけるわ」

 

鬼ごっこ?と首を傾げる大多数と、なんだかんだ一年一緒に暮らしてるせいか大体察したラディッツの対比が面白い。一応修業だから。真面目にやってるから。

 

 

「高みを目指して学び、変わる、なあ」

 

高みと言われてまず思い浮かぶのは神と呼ばれたサイヤ人。しかし、そこに至るにはまず超サイヤ人にならなければならないだろう。というか、超サイヤ人をコントロールできずして神の力をコントロールできるとは思えない。

という訳で自力固め、超サイヤ人に挑戦してみよう。前線で使うかどうかはともかく、な。

とりあえず家に帰ってきて、変身のための意識統一。

必要なのは怒りだ。ただ怒るのではなく、あまりに強い無力感、そして憎悪。

俺は何に怒っているのか、そして何なら憎めるのか?

怒りの対象はどうにもならない理不尽。理不尽とは何か?俺にとっては、こちらの世界に押し込められたこと。ある日突然、なんの前兆もなく───

ぐ、と歯を食いしばる。今更ながら、己の身に起こった事実を噛み締めて怒りが湧き上がる。

ふざけるな、と叫びそうになった途端、己の気が爆発的に膨れ上がって、

 

「あっやばいやばい」

 

慌てて心を落ち着かせて鎮火する。気の消費量やばい枯渇しかねない。しかしウィザードローブの力恐るべし、表には一切の無駄な気の漏れがなかった。頑張ってコントロールを覚えれば、辛うじて実戦には持って行けそう。超サイヤ人の次の段階も目指せる、かな?

……というか、そんなことよりも。

 

「……まだ気にしてんの?俺」

 

思わずハァーとため息をついてしゃがみ込んでしまった。いやさあ、こっち、ドラゴンボール世界に来て一千年は経ってるじゃん。流石に向こうの、故郷に戻ることは諦めたよ?それは事実だ。

でもさあ。

……こっちに迷い込んだことに、納得してる訳じゃないのね、俺。

さっくり切り替えたアスラとは大違いだ。なんか、そういうジメジメ湿っぽくて引きずりがちなところ、実にこの世界に似合わない価値観だ。

あー、本当に嫌になる。




ゆるい解説

未来で悟空が死ぬ

なんやかんやあって未来マレビトと未来悟飯だけは生き残る

未来マレビトが色々と頑張ったあとどっかに行く

ブルマのタイムマシン開発が早まる

原作で未来悟飯が死ぬ時間軸の前にタイムマシン開発成功。まだ生まれてない人間が過去に飛ぶとまずくね?ということで未来悟飯が過去にやって来る。二十二歳


未来悟飯が今の所生存してるのはタイムマシンの開発が早まったからであり、原作における死を迎える時間より前に過去に来てる。なので未来悟飯を直接死の運命から救ったのはブルマ。マレビトではない
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