まれびとの旅   作:サブレ.

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第五十八話

まずは太った方が掴みかかってくるので、とりあえず抜いた剣で受け止める。その背後を老人に取られそうになり、一度剣から手を離して伸びて来た手を背後に倒れることでかわす。そのままの勢いで剣を蹴り飛ばして救出、そのまま腕を軸にして半回転、二人同時に蹴り飛ばすように脚を振り回すがこっちは避けられた。体勢を立て直して、降ってきた剣をキャッチ。

軽く刃こぼれしてる。剣を掴まれた時にコーティングしていた気を奪われた?

この辺りで、悟空たちも駆けつける。

 

「マレビト、無事か!?」

「おう。気をつけろよ、こいつら何か隠し玉持ってるから。エネルギーを吸い取るみたいだ」

「こいつらが人造人間か」

「たぶん、おそらく、きっと、そうじゃないかな、うん」

 

歯切れが悪くなるのは猫の額よりさらに少ない原作知識によるものだ。人造人間か?と聞かれたらそうだけど、悟飯がわざわざ未来から忠告と協力しにやって来たのはこいつらの為なのか?と聞かれたら疑問符が出る。

 

「……なぜ、我々がここに現れるのだとわかった?」

「黙秘」

「ふん、力ずくで聞き出してみたらどうだ?」

「そうか、ならばそうしよう」

 

あっ、ヤバそうだこれ。

咄嗟に踏み込んで老人の目の前に躍り出る。そのまま腕を掲げて、発射されたビームを気をまとった剣で上空に弾き飛ばした。空中で明らかに建物を粉々にできるレーザーが爆発する。

セーフ!

 

「あっぶねえなお前!」

 

この隙に攻撃を仕掛けて来た太っちょはラディッツが、そしてビームを打った老人は悟空が迎撃してくれた。しかしここで戦っても今以上に被害が出るのは間違いない。

移動しないとな……いやマジでなんで街中に出現したんだお前ら。俺とか悟空を殺したいなら直接家に来いよ。インターフォン鳴らしてこい。

 

「マレビト!?」

「安心しろ生きてる!それから人造人間、場所を変えるぞ。お前らがこの辺を更地にしたいなら俺が全力で邪魔してやるよ」

「いいだろう、ついてってやろう。好きな死に場所を選べ、マレビト、孫悟空……」

「!な、なぜ悟空の名を……」

「調べたんだろ。元レッドリボンの科学者だ、ツテも技術も持ってておかしくない」

 

警察が集まってきている。ここに留まり続けるのは得策ではない。まずは悟空が空を飛んで、それから人造人間が後を追う。

に、しても。俺の名前が出たことに驚かれなかったのは先に俺が交戦してたからか、それとも既に俺の名前がそこそこ売れてるからか。後者だなきっと。

 

+++++

 

追いかけて行ったみんなを見送って俺は一人その場に残り、あの二人組がどこからやって来たのかの聞き込み。悟空が心配だけどラディッツとピッコロがいるし大丈夫だろうし。

しかし大して有益な情報は得られない。うーん、どうしたもんか。絶対あの二人、違うんだよなあ。けど根拠が大して鮮明でもない俺の前世の記憶っていう曖昧模糊もいいところなモノのせいで説得力に欠ける。

 

「マレビト!アンタ残ってたの!?」

「よ、ブルマ。まだいたのか」

「まあね。それより意外、孫くんたちと一緒に戦いに行ったんだと思ってた」

「あー、まあ、ちょっとな」

「何、悩んでるの?」

 

見抜かれた、か。こういう直感鋭いところあるよなブルマって。

 

「違和感がある。ただ、説明できない。悟空はラディッツがフォローに入れるし、どうせベジータも合流するだろうから、俺はいらんだろ?だからちょっと考えてたんだけどさ」

「アンタ、ごちゃごちゃ考えすぎなのよ。それをそのまま言えば良いじゃない」

「いや、それじゃ説得力ないから」

「マレビトがそう言ったってだけで説得力の塊よ」

「……そうか?」

「悩んでるなら私に話してみる?」

 

俺は別にこの世界に根ざした存在じゃないし、この前の超化の時にも思ったけど、思考回路があまりにこの世界に似合わない。だからなのか、俺の考えを理解してもらう為に考えをきちんと言語化するようにして来た。

なら、ブルマに相談するのも良いかもしれない。

 

「んー、なんかさ。違うんだよな」

「何がどう違うのよ」

「あの二人がサイヤ人に勝てる未来が見えない」

「……続けて」

 

モヤモヤが大きいなら、別の方向から整理してみよう。多分前世の記憶以外の部分にヒントがあるはずだ。

例えば、エネルギーを吸い取る技。あれ、フツーに俺でもできる。むしろワザワザ気を高めたり触れたり気功波にしないと吸収できないあいつらより、元気玉みたく遠距離で吸い取れる俺の方が上手だ。

 

「エネルギーを吸い取るなら、プラスαの一押しは他人に依存する。“その程度”の能力で、そもそもサイヤ人を殺せるのか。……と、いうか」

 

吸い取る力が本命なら、俺が最後まで残ってる筈ないんだよ。

俺の嫌気性症候群は、気を生み出せなくなる病だ。

他人に気を奪われれば、当然、死ぬ。

だというのに、俺が最後まで残ってたってことは、他人から気を吸収できる奴ではなく───

 

「……俺が奪ってなお継戦できる個体が本命か!」

「は?奪ってって何を……あっ、マレビト!」

 

地を蹴って空を飛ぶ。気の増大をヒントに全力で荒野に向かってまっすぐに。しかし流石は人造人間、気配が何もない。

北の山に到着したあたりで周囲を見回すと、目の前で一つの影が戦闘している光景が見えた。カラフルな色合いで背の低い、不気味な人型の生き物には見覚えがある。

 

「サイバイマン一族……いや、バイオーム人間か!」

 

そういやいたなそんな奴ら!当然こいつらもゲロの作品だろう、厄介な!剣を抜いて一度山肌に足をつける。一気に踏み込んで剣を振りかぶり、そのまま一体を葬った。弱点は特に変わってないな、いつも通りで良さそうだ。黒いフードを被った人影が驚いたようにこちらを振り向く。

 

「マレビトさん!」

「落ち着け、溶解液だけ気をつければ良い。状況は?」

「お父さんが心臓病を発症して、ヤムチャさんと一緒に離脱しました。ピッコロさんラディッツさんはゲロの捜索に邪魔なこいつらの巣を破壊に行っています!」

「自動で増殖するのか……?気を消す能力まで完備してるとは」

 

落ち着いて気を探ると、ごちゃごちゃした気配は三箇所ある。ここの近く、ラディッツがいる場所、ピッコロがいる場所。

ここまで沢山いると逆に好都合だ。

 

「あんまりやりたくないんだけどな、しゃーないか」

 

手を軽く上に向ける。離れた二箇所のバイオーム人間から死ぬまで気を搾り取る。そこそこまあまあ集まった生命エネルギーのうち半分以上を自分に蓄え、必要分だけを使い元気玉モドキを生成。そのまま巣に撃ち込めば、はい全バイオーム人間駆除完了。

なんかあっけなかった。

 

「……相変わらずですね」

「悪かったな!」

 

フードを取ってそんなことを宣ったのは、未来から来た孫悟飯だった。約束通りこの時代にやって来たらしい。生き延びていたようで何よりだ。それにしても。

 

「なんか、気の感知が難しくなったな」

「マレビトさんの技を真似してるんです。ほら、最初に過去に来たときはラディッツおじさんもお父さんもすぐには俺に気付かなかったでしょう」

「……そーいえば。俺は似たような技を使ってるから、耐性があったってことか」

「あの日は必要以上に混乱しないように使いました」

 

完全シャットアウトではないが、撹乱とかには使えそうだ。ホントにそれだけかは知らんけど。そんな話をしつつ俺たちはバイオーム人間の全滅を確認してからすぐに空に飛んだ。

上空から、概ね荒野が見下ろせる。死角になってる部分も多く、ここから見下ろしたところでわからないことも多い。

 

「マレビトさん、あの二人の人造人間……太った男と老人は、俺の言っていた人造人間ではありません」

「大丈夫分かってる。気付いたのさっきだけど」

「流石ですね。しかし、こうなってはどこにいるのか……」

「分かるだろ」

「え?」

 

未来悟飯がびっくりしたようにこっちを見た。そんな驚かなくてもいいだろ別に。

 

「落ち着いて考えろ。ゲロの立場になれ。シロウトが逃げ隠れたいならどうするかだ」

「は、はあ」

「まず、バイオーム人間の巣は三箇所。そして研究室は一箇所。科学者にとってとても大切な場所だ。さあ、どこに配置する」

「それは……まさか」

「ああ」

 

空から元巣の三箇所を見下ろした。三つを結べばトライアングル。地形に多少邪魔されつつも概ね綺麗な正三角形を描く。

ならば、研究所は───

 

「当然、ど真ん中だよな」

 

今度は空中を蹴って、狙いを一箇所に定める。

洞窟のある大きな岩肌。垂直に切り立った崖が見える。

さて、まずは威嚇と行こうか。屋根を突き破る勢いで突撃すれば、突き破れこそしなかったけど大きな人工の音が辺りに響いた。

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