まれびとの旅   作:サブレ.

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第五十九話

硬い、エネルギー弾とかアロンダイドとか使わないと駄目かな。簡単に壊せるとは思ってなかったけど思いの外硬度があった。が、どでかい音が響いたのと、未来悟飯が気を高めてくれたおかげで、散らばっていたみんなが集合してくる。

 

「マレビト、お前何やってたんだ」

「ちょっと考え事?未来で大暴れしてた人造人間はあの時の二人じゃないよなって」

「ああ、あの時の……気付いてたのか」

「まさか。これなら未来悟飯から直接聞いても大して変わらなかった」

「そんな話は後にしろ。どうやって中に入る」

 

しかし、建物自体が硬い。加えて全員人造人間のおかげで中の様子を探るのも一苦労だ。だが外壁が硬いなら内部は脆いと相場は決まっている。幸い俺は派手な動きをせずとも自分の位置を移動する手段を持っている。

 

「じゃあ俺が中から開けるわ。あとよろしく」

 

座標を指定して、瞬間移動で中に入る。こういう時に便利だよな。

中は、ごちゃごちゃと機械で埋め尽くされていた。こういうのはよく分からん。そして、人造人間が増えてた。

スタイリッシュなデザインの、男と女。雰囲気がかなり似通っている。米粒の半分以下の原作知識が一致した感覚に嘆息した。

これだ、人造人間。

 

「ふむ、わざわざ一人で乗り込んできたか、マレビト」

「どーも」

「さあ二人とも、先ずはあいつを殺せ」

 

ゲロはやけに自信満々だが、二人の意識は俺よりも、ゲロの手にしたなんかの機械に向いている。なんだろあれ、と俺も考えてると、背後のドアが吹っ飛ばされた。おい、俺が瞬間移動した意味。いやもう目的は達成したけどさ。

 

「マレビトさん!無事ですか!?」

 

未来悟飯がやたらと切羽詰まった声を出すので、生きてるよという返事の代わりに背後に向かって軽く手を振った。それに今ゲロが持ってるやつ、未来悟飯への対価になるかもしれない。

うん、ちゃんと未来悟飯に報いることができそうだ。ちょっとだけ肩の荷が降りた気がする。ちょっとだけ。

あとはあれだな。未来悟飯を生きて未来に帰さねば。

ただまあ、取らぬ狸の皮算用をしていても意味がない。さて、ゲロが手に持っているそれの正体をはっきりさせるか。

 

「なあDr.ゲロ。それ、なあに?」

 

あえてゆっくり含みを持たせて指差してみれば、ゲロが驚愕の表情で手元を振り向いた。

ビンゴ。

その隙をついて、17号がゲロからコントローラーを取り上げた。

 

「こいつは俺たちを緊急停止させるためのコントローラーだろ?もしもの時のために……」

「緊急停止コントローラー!?」

 

その言葉、否、情報の重要性は未来悟飯も気付いたらしい。17号が演技をしてまで奪い取ったという事実とその重要性。しかも俺たちを侮っているのにブラフを蒔く意味はない。今この瞬間は破壊されてしまうが、まあタイムマシン作った未来のブルマなら作れるだろ。

さて、これで未来悟飯への恩返しは終わった。あとはこいつら倒すだけか。

まあ人造人間、俺らに背を向けてゲロ殺した上に16号を起こそうとしてる訳だが。

 

「させるか!エクス……」

「か、め、は、め……」

「魔貫光……」

 

ゲロとの内乱はともかく、敵が増えるのはやってられん!

俺が剣を上段に構えたのとほぼ同時に、未来悟飯とピッコロもまた構えに入る。

 

「カリバー!!!」

「波ぁー!!!」

「殺砲ー!!!」

 

三つの閃光が真っ直ぐに人造人間たちに向かい、洞窟どころか山そのものが吹き飛んだ。爆発と同時に退避したが、クリリンにやるなら先に言えと言われたので素直に謝る。

いやでもほら、事前に言ったら避けられるし、そもそも奇襲かけても逃げられたし……。

 

「だめだったか」

「優先順位高く狙われてる身としては、さらに増えるとか流石にキツいぞ?」

「つまらんことをしたな」

「俺にとってはつまらなくないんですが」

 

ただでさえ貴重なリソースなんだぞ!

人造人間は何事か話し合ってから、俺の方に向かって来た。そりゃレッドリボン壊滅に密接に関わった俺を殺したいだろうね!

ありゃ、でもなんでまた。命令して来たゲロは殺してのに。

後でピッコロに聞くか。

 

「マレビト、俺たちはお前を殺す」

「させるか!」

「この俺を無視するな!てめぇらの相手はこのベジータ様だ!」

「ハッ、面白くなってきたな」

 

順番にピッコロ、ベジータ、ラディッツの発言である。とりあえず一対一の構造はできたけど、問題はエネルギーが無限なことだな。

よし煽るか。

 

「憎んでる生みの親が死んでもゲロの言葉にしか存在意義を見出せないのか。人造人間も大変だな、さっさと親離れしたら?」

 

言ってて自分に刺さった。

俺もまあ、前世の価値観に縛られることでしか存在を確立できない異物であるし。強さも技も、別の世界から引っ張ってきたものだし。

でもそれを見せたら負ける。他でもない自分自身に。負の感情に形を与えたら、それが自分に突き刺さるわけで。

 

「八つ当たりか使命感かは知らないけどさ。かわいそうに!」

 

心臓が握りつぶされたように痛い。人造人間に向けた心にもない言葉のはずなのにな。

いや、思ってもないことならそもそも浮かばないわなこんな言葉。

 

「アンタ、よっぽど死にたいらしいね」

「みたいだな。殺したいなら真っ先に殺してみろよ。俺以外の奴に八つ当たりなんてしないでさ。ま、できたらの話だけど……無理か。ヘタクソだもんなお前ら」

 

瞬間、三人の人造人間が全く同じタイミングで飛びかかってきて、それぞれベジータ、ラディッツ、ピッコロに受け止められた。それを確認してから適当に座標を設定する。

 

「じゃあな〜」

「マレビトさん!」

 

瞬間移動でどっか行こうとしたら、未来悟飯が慌てて俺に手を伸ばした。そして景色が変わり、そこは鬱蒼としげる山の中。ひときわ目立つオレンジ色の道着があった。

 

「なんて無茶をするんですか!?あれじゃマレビトさんを人造人間が狙って」

「あのな、そもそも人造人間の狙いは俺と孫悟空の二択だ。悟空が動き回れない以上、俺が囮になるのが最善だろ。あれだけ煽っとけば、真っ先に俺を狙ってくるだろうし、気を消す技もある」

 

要するに地球全体を使ったかくれんぼだ。保険として、下手に周囲を巻き込まないような煽りの内容にしてみたけど、どこまで通用するかは知らん。

巻き込むようなら表に出る。

 

「マレビトさん、あなたは未来でも同じように行動しました。人造人間たちが周囲を巻き込むことを厭わなかったため、あなたは常に正面に出ていた」

「あらま」

 

まじか。

 

「でも、時間稼ぎこそ俺の本分だぞ。最低限、悟空が復活するまでは動ける俺が」

「違うんです、だめなんですマレビトさん。だから、あなたが宇宙に去ったんです……身体が、戦えなくなるほどの限界を迎えたから」

「……え」

 

嫌気性症候群は一つの段階を迎えたと言っていい。ガンで言うステージは最大値に到達したと思っていたけども。

そう言えば、神龍は神様ができる範囲のことしかできないって、言ってたような。

まさか。

 

「……まさか、まだ先があるのか?この病気に?」

「はい」

 

未来悟飯は、この病気のことを知っていたらしい。だから俺を追いかけて来たのか。だから、同じく病気で倒れる悟空に俺のことを頼んだのか。

 

「臨界点はどのタイミングだ」

「わかりません……でも、戦っていたら、いずれ」

「……はー」

 

嘘だろおい。

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