まれびとの旅   作:サブレ.

62 / 86
第六十一話

ピッコロの気が変化している。これは、もしかして神様と融合したのだろうか。ナメック星でも融合してたし、神様とピッコロの先代の大魔王は元同一人物だし選択肢としてはアリっちゃアリか。

……稀人の知識、把握してそうで怖いなあ。

向かい合ってる生き物の方から、試しにバレない程度にエネルギーを遠隔で吸い取って解析してみると、やはり感じ取った気と同じだ。孫悟空、ベジータ、ラディッツ、ピッコロ、更にはフリーザやコルド大王といったものまで混じっている。

しかしこれでも完全体ではない、と。ピッコロが上手い具合に聞き出してくれた情報に頭が痛くなる。

あとどーでも良いけど、俺自身の気がまるで無いのは、常に気を消してるせいで「コイツ弱い」的な判断をされたのだろうかなんなのか。

 

「エクスカリバーはピッコロを巻き込むな……よし」

 

剣を下手に構えて、瞬間移動できるように意識を集中させる。生き物は、両手を体の前で独特の形に構えた。孫悟空が愛用し、俺が大昔に何度も真似た、かめはめ波の構え。

しかし、実際に放たれたそれの強さは大した事ない。これならかめはめ波そのもののフォローはいらない。必要なのはその先、ブラフの後。

 

「シッ!」

 

生き物がピッコロの背後を取った、その時を狙って瞬間移動で更に後ろを取る。剣を振りかぶって、突き刺した瞬間の尻尾をそのまま切り落とす。そのまま襟首を引っ掴んで後ろに転がって退避した。

よし、上手くいったな。

 

「助かった。しかし来ていたのか」

「散々ニュースで騒がれてた」

 

ピッコロと二人、並んで変な生き物と対峙する。相手は余裕綽々、では無い。しかし焦ってもいない。逃げ隠れして力を貯める、雌伏の時と割り切ってる、と考えて方が良さそうか。

つーか孫悟空ラディッツベジータといったサイヤ人が丸っと使われてるんなら、今の段階で強さに自信があるなら調子乗ってる筈だし。

 

「なあ、変な生き物。なんで俺の気はないのに他のたくさんの人たちの気はあるの」

「変な生き物ではない。私は人造人間だ。名をセルという。そして、お前はパワーレーダーに映らないほどの強さであるからして、細胞は不要だとコンピューターが判断した」

「…………」

 

必要にかられて気を消してるだけなのにそう言われるとなんかクッソ腹立つ!

イラっときたのを察してか、ピッコロがいい感じに色々聞き出してくれたのはありがたい。そして、タイムマシンでこの時代に乗り付けたのはやはり、こいつであるらしかった。んで、狙いは完全体になるために17号と18号を取り込むことと。

あー、なるほど。そう繋がるのか。

 

「それはやだな」

「なに?」

「17号も18号も俺を殺しにきてるのに、お前に吸収されてハイオシマイ、は嫌だ。あと単純にセルのことは嫌いだからお前に殺されたくないんだけど」

「どういう理屈だ」

 

そういや、どういう理屈なんだろう。俺もよくわかんないや。なんで人造人間のことは良くて、セルは駄目なのか。

多分、深く考えたらまずいやつだ。

そうしてたら、未来悟飯とクリリンまで駆けつけた。その隙をついて、セルは太陽拳を使って逃亡した。

やべえ、やらかしたかもしれん。慌てて飛び上がって上空から見下ろすも、どこに逃亡したかまるでわからない。海中を通った可能性も考えると……気を探っても、ソレらしきものはまるで無かった。むしろラディッツが近づいてきてるし、一歩遅れてベジータもいる。

 

「しまったな、やらかしたかも」

「お前がやらかすのは今更だろう」

「上から降ってきながら傷口抉るのやめて」

 

ラディッツに文句を言いつつ、二人のサイヤ人、更に遅れて天津飯が合流してきたので、概ね何があったのかを説明した。セルが完全体になりたがっているという説明に、二人のサイヤ人は対照的な反応だった。

具体的には、完全体になる前に倒そうぜ!って方針を肯定したのがラディッツで、反対したのがベジータだ。

……あれだな。ベジータはサイヤ人が宇宙一だっていう誇りがあってそれを証明するために完全体に勝利したくて、ラディッツはそもそも最強親父を間近で見たからそいつよりどう見積もっても弱いセルに大した拘りないんだろうな。

改めて、バーダックの奴どんな進化してんだか。

 

「マレビトさんは」

「俺は完全体にしなくて良いんじゃね、って方向に賛成。アレが得意げになるの腹立つ」

「私怨じゃないですか」

「あはは、まあな」

「チッ、せこい作戦ばかり立てやがって」

「俺に言われても今更としか。じゃ、俺は人造人間がいる可能性高いし一旦家に帰る。俺と人造人間ならお互い気を感じ取れないし、戦闘になっても感知するのに時間稼げるだろ」

「気をつけろ……死ぬなよ」

「頑張って逃げ惑うから大丈夫。セルはよろしく」

 

相手がどんな判断をするのかは置いといて、情報を渡すに越したことはない。少なくともいざという時に相手が何を狙ってるかで戦術の幅は変わってくるし。

そんなわけで、とりあえず筋斗雲を呼んでのんびりと空を走って自宅に到着。畑とかは無駄に荒らされたりはしてなかっだけど、足跡はあって、器用に鍵だけ壊されたドアの向こうでは偉そうに足を組んだ17号、そして立って待ち構えていた16号18号がいた。

 

「お揃いなようで。出迎えもできず悪いな。お茶とコーヒーどっちが好き?」

「何?」

「腰を落ち着ける場所もないんだろ?じゃあ殺し合いの前に茶の一つくらい飲んでけばいいのに。なんかあったっけ……」

 

唖然とする三人に背中を向けてキッチンの戸棚をいじる。たしか仕事の関係者からもらったクッキーの詰め合わせがここに……お、あった。

やっぱり貰い物で普段はあまり使わないティーセットがあったので、紅茶を淹れてクッキーを並べて置いた。俺もなんか疲れたので、配膳終わらせてから、マグカップに紅茶を淹れて飲む。

うーん、まあまあ。

 

「毒でも盛ったの?」

「フツーに仕事してて毒なんて常備しないから。フリーザと一緒にしないでくれ。つーか毒なんぞ入れてないのはそこの16号が分かってんだろ」

 

指差してやると、やはり穏やかな表情の16号がその通りだと頷いた。二人は顔を見合わせてから、そしてお互いティーカップを手に取ってクッキーを食べた。

 

「ま、お茶を出したのは多少下心あってさ。ちょっと連絡というか、情報共有しときたいのさ」

「情報共有?」

「未来から、セルとかいうゲロが作ったなんかようわからん生き物が来襲してる。目的は完全体になるために、人造人間17号と18号を吸収すること」

 

ピクリと二人が反応した。セルという未知の人造人間に対してか、吸収という言葉か。

 

「この俺に逃げろってか?」

「さあ、その辺は好きにすれば?俺、三人の保護者でも制作者でもないし。個人としては吸収されたら困るから情報だけ渡してるってだけ」

「自分を殺そうってやつに対して、呑気だね」

「別に俺、セルは嫌いだけど、三人は嫌いじゃないし」

「なぜだ」

「へ?」

「なぜだ、と聞いている」

 

いや、二度言わんでもいいじゃんか。ちょっと待って考える、というか感情に形をつけて言語化するから。

うんうん悩んでる間、三人は俺に攻撃を仕掛けるでもなくじっと待っていた。注目度たっか。

 

「ああ、んー、なんつーか」

「…………」

「俺はレッドリボン軍を孫悟空と一緒に潰したから、孫悟空と二人並んでお前らの殺害対象に入ってる。けどセルは俺の気がパワーレーダーに映らないから、細胞の吸収対象から外した」

「つまりどういうことだ」

「お前たちは俺を仲間はずれにしなかった。だから嫌いじゃない。セルは俺を仲間はずれにした。だから嫌い。バーダックと孫悟空は大好き。サイヤ人が好き。ナメック星人が好き。地球が好き。神様は一部除いて嫌い」

「それだけか?」

「それだけ」

 

言語化すると案外単純というか、子供っぽい理由ではある。しかし俺にとってはそうそう譲れない価値基準であるのも確かだ。

人造人間はしばし黙っていたが、やがて立ち上がると俺に攻撃を仕掛けることもなく扉を開けた。

 

「殺さないのか?」

「お前を殺したところで、喜ばれちゃ意味がない」

「人をドMみたいに言わんでくれないか」

 

そうして、三人はいなくなった。後には紅茶が飲み干されたティーカップと、食べ終えたクッキーの包装が綺麗にまとめて置いてあった。

地味に律儀だな。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。