まれびとの旅   作:サブレ.

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第六十七話

時の流れが遅くなる。止まっているのではと錯覚するほど俺の動きだけが明瞭で、高速戦闘に慣れている筈なのに、それ以上に世界が停止していた。

剣を振るう。セルジュニアの首と胴体を斬り離し、蹴りで胴体に風穴を開け、背中の羽をもぐ。そこまで長くない制限時間の中で可能な限りセルジュニアに攻撃を仕掛けて回り、全てのセルジュニアがバラバラになったところで制限時間が来た。

うん、なかなか使い勝手がい。

 

「clock over」

 

時間が戻ってくる。瞬間、セルジュニアだった肉片があちらこちらへと飛び散った。周囲からは俺が突然高速で動き出して、突然元に戻ったように見えるだろう。

 

「何だ、今のは……」

「これがマレビトの新技か……!」

 

周囲の驚愕を受けながら、クロックアップに必要なクールタイムが経過するのを待つ。連発は流石にきついというか、ある程度元の時間流に戻っておかないと加速した世界に置き去りにされかねないんだよな。あと単純に気の消費量重いわコレ。一回使っただけでしんどい。

 

「これが策か……すばらしい……!」

 

いい傾向だ。

クールダウンが終わり、再びクロックアップが使えるようになる。重心を落として、もう一度、今度はセルに真っ直ぐに向かって行けるように構える。

 

「clock up」

 

周囲が再び停滞する。

馬鹿正直に真っ直ぐに……これ以上ないくらいにスピードを上げてセルを両断しにかかる。

しかしそれは、狙いを真っ直ぐに定めていたせいで生じた死角から飛んできた尻尾の攻撃で邪魔された。

 

「くっ!」

 

狙いがブレる。くそ、やっぱり上手くいかんなあ。ここでそのまま倒し切れたらいちばん良かったんだけど。

そのまま無理矢理斬りかかるものの、カウンターで放たれた太陽拳で目をやられ動きが鈍る。このスピード、もしかしたらクロックアップ直前に動作を読んで放ってたのか?

そして、そのまま両腕を掴まれて捕獲された。

───よっしゃあ!!!かかった!!!

 

「マレビト!」

「こなくそ……おい離せよ!」

「ふっふっふ……そう言うな。お前のその技は魅力的だ」

 

よし!!!狙い通り!!!あとは全力で抵抗しつつ抵抗ごと捻り潰されれば勝ち確定!!!

 

「臨気鎧装がそう簡単に砕けると思ったか?」

「そう簡単には砕けずとも、時間をかければ壊せるということだ」

「腹立つなお前」

 

尻尾が全力で俺を吸収しようとして、気で作り上げた鎧がピシリと悲鳴を上げた。全力で鎧構築を頑張ってるけど、無理だなこりゃ。

周りは俺が下手に捕まってるせいで、助けようにも助けられず歯噛みしてる状態。ある意味助かったかも。俺を助けようとして死んだら本末転倒ってやつだし。

あっ、後ろに悟飯いるんだった。なんか言わないと。えーとえーと。

 

「気にすんな。言っただろ、フォローするって」

「でも!マレビトさん!」

「怒れないのも、怒りたくないのも、当たり前だ。嫌だったんだろ?」

「っ!」

「だから気にすんな。俺の今の行動がフォローになったかは知らんが、気に病むことじゃない」

 

よし、これで現代の悟飯に言い残すことはオッケー。

 

「そろそろか」

「お前にだけは殺されたくなかったわバーカ」

 

流石に限界が来た。背中に突き刺さる太い針を覚悟した。

ら、背後でなんかすごい気の爆発が起こり、次の瞬間セルの尻尾が千切られた。その隙に首根っこを引っ掴まれ背後から抱きしめられるようにしてセルから引き剥がされた。

 

「……未来悟飯に、悟空。に、えーっと?」

 

同じ道着を着た二人組に助け出される形になっている。ご丁寧に剣まで回収されていて。

そんでもって、目の前では悟飯の纏う気が増大していて、バチバチとスパークみたいなのもあって。

……うーんと、これは?

 

「質問があります」

「あ、はい」

「なんで悟飯クン覚醒してんの?」

「マレビトさんがセルに殺されそうになったからです」

「…………えっ」

 

マジで?

 

「マレビト、自覚ないんか?」

「なんの?」

「父さん、マレビトさんはこういう人なんです」

「あちゃー、そっか……オラ結構マレビトとは長い付き合いだと思ってんだけど……」

「……お察しします」

 

なんか親子二人で通じ合ってるし。

 

「にしても、これが……」

 

これが、孫悟飯の全力か。

なるほど。こりゃ一つの到達点だな。悟空が悟飯の最強を確信したのもよく分かる。悟飯が奪い返してわけてもらった仙豆を何となく手で弄びながら観戦する。

 

「未来悟飯、よく見ておいたらどうだ?」

「俺ですか?」

「そうだよ。お前がいずれ至る境地だぞ」

「なれるんでしょうか。俺の方が、ずっと年上なのに、この時代の俺にまるで敵わない」

「同じ孫悟飯だ。なれるいける。知ってるか?サイヤ人の進化は宇宙より速いんだ。全宇宙の何物よりもな」

 

それにしても、なんか色々と予想外の方向に転がったなあと思う。いや確かに本気出したら一瞬だろうなあとは思ったし、強さに関しては心配してなかった。現に今セル相手に無双してるし。

ただ問題は、その最強の力に振り回されがちなところか。さっきみたいに怒り方が分からなかったり、逆に今みたいに半分バーサーカーと化したり。子供だから当然なんだが。

そして直情型の人間は、セルと相性が悪い。17号がサクッと吸収されたみたいに。

 

「悟飯なにをしているトドメだ!すぐにトドメをさせ!」

「もうトドメを?」

 

俺がセルならどうするかな……試合の負けが確定して勝負に勝つ方法……。

あっ、セルが18号を吐き出してひとつ前の形態に……俺この形は初めて見た。寝てたから。これで全形態コンプリートだ。

思考がズレた。うーん、自爆一択だな。自分が死んでも相手に致命傷与えたい。それに地球粉々にしたら目の前の相手も道連れ狙えるし。

じゃあ自爆体型になったらどっちに移動するかな、元惑星サダラの小惑星とナメック星……いやナメック星貰ったばっかで爆破するのも気が引けるな。それにサダラの現役世代俺だけだし。

よし、小惑星サダラにしよう。まあ、予想が当たったらだけど……。

 

「ゆ、許さん……ゆるさなあーーーい!!!」

「ま、まずい!」

「ありゃ」

 

めっっちゃピンポイントで当たったわ。嬉しくねえ。

背中の剣を下ろして、地面に突き刺す。流石に黄泉路に連れてくのも気が引ける。なんやかんやで長年の相棒だった訳だし。いずれ錆びついて朽ちるだけだとしても、粉々に砕けるよりはマシ、かもしれない。

俺を呼び止める声に振り返らず、歩いてセルの元へと近づく。なすすべない悟飯の横を通りすぎて、ぶくぶくに膨れた自爆モード第二形態セルを見上げる。

ため息が出た。つくづく思考回路が俺と似ている。

 

「なにをするつもりだ……?」

「お前さ、敵対した奴に手も足も出ないくらいなら嫌がらせして死にたいタイプだろ?

 実は俺も同じなんだわ。せめて無意味に死んでいけ」

「マレビトさん!」

 

自爆モードセルに触れて、そのまま瞬間移動。小惑星になったサダラに降り立った。周りになにもない。

時々どうしようもなくなったときに逃げ込んでいた、アスラという個体の生まれ星。

様々な感情が入り混じったセルの表情が爆音と閃光でかき消される。俺も死ぬなーと呑気に思ってたら、突然背後から腕が伸びてきて俺の首根っこを引っ掴まれた。

 

「へ?」

 

そのまま何処へと引き摺り込まれる。爆破の衝撃をある程度受けながらも、俺は臨気鎧装を纏っていないためにいくばくかのダメージを受けながらも俺は死なず。

気付けばなにもない空間に立っていた。ここは……あれか。俺のいた世界に最も近いドラゴンボールの亜空間、メタの境界線という奴だ。漫画で例えると枠線の中のような、暗く狭く何もなくて、神様だって近寄りたくない、いらないものを押し込んでおくのにぴったりな空間。

俺の魂の本来の居場所。そこには。

 

「なにやってんだテメェは」

「えーと?……こっちの台詞なんだが、バーダック」

 

なんでここにいるの?

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