まれびとの旅   作:サブレ.

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第六十八話

なんかバーダックが世界の隙間的な場所にいた。俺は死んでないし、そのためか肉体があるので普通に体痛いし。目の前のバーダックは不機嫌そうだし。

 

「あ?俺がここにいたらおかしいか」

「おかしいってか、来ていいの?神様でも滅多に近づかない場所でしょここ」

「できるかできないかで言うなら神は全員できんだよ。やりたくねえだけだ」

「へー」

 

そういやこいつ元神様だった。せっかくだし疑問を解消しておこう。

 

「ところでなんで地球で神様やってたの?つーかよくできたね」

 

すると、バーダックははぁー!と大きくため息をつく。そして大きな手を俺の頭にかぶせた。成長が止まっているため、手のひらにすっぽりと俺の頭が被さった。嫌な予感がするのと同時に、指に力が込められて。

 

「あだだだだだ!!!痛い痛い痛い!!!」

「て、め、え、の!せいだ!!!」

「俺!?」

 

え?俺なんかやらかした?特に何かした覚えはないんだけど。そんな感情が顔に出たのか、バーダックは更にイラっとしたように手を離すと、俺の脳天にチョップを入れた。結構いい音が鳴って思わず頭を押さえてしゃがみ込む。

なんかこの感じ懐かしいな……。

 

「テメェは稀人だ。なにをしようと上の神が評価をすることはねえ」

「うん、知ってるけど」

「だがな、テメェがなにをやったかの事実は存在する」

「あ?……あー、なるほど?」

 

つまり、だ。

俺が良いことをしたという事実があったとしよう。神様はそれを評価しない。だが、善行という事実自体は残る。それが組み合わさると、書類上の評価と現場の実態で齟齬が発生するのだ。一つ一つは小さくても、積み重なれば無視できない大きさとなる。

それを回避するには、俺のやってきたこと全てを『誰かが稀人を使って間接的にやったこと』にしなければならない。

 

「つまり……俺のやったことが良いことも悪いことも、バーダックがやったことになってる?もしかしてバーダック、書類上でだけ『昔ヤンチャしてた良い人』的な扱いになってんの?」

「………………」

 

無言で目を逸らされた。バーダックが神様になれたカラクリはこれか。

 

「笑い転げていい?」

「ダメに決まってんだろ」

「だめかー」

「テメェのせいで俺は神様なんてモンをやるハメになったんだが」

「精神と時の部屋謳歌してたじゃん」

「それとこれとは別だ」

「開き直ってやがる。でも神様なんて断ればよかったのに」

「色々あったんだよ」

 

なんか、肩を落とすバーダックに積年の苦労を見た。お疲れ様……いやバーダックに降りかかった災難の八割くらい俺由来だけど。

 

「でも、お宅の息子さんのカカロットくんとラディッツくんは今日も元気だったよ」

「そういうところがムカつくなテメェは」

「孫生まれたの知ってる?」

「当たり前だ」

 

まあ手紙残してたしな。

 

「テメェが一回馬鹿なことで死にかけるから待っててやったんだろうが」

「馬鹿言うな。アホと言ってくれ。つーか暇じゃない?ここ」

「結構色んな未来が見えるから退屈しねえ」

「こいつ未来視をTV代わりに使ってやがる。今どこにいるのさ。ラディッツは親父はどっかフラフラしてんだろくらいのノリだったけど」

「小惑星バンパだな」

「僻地」

「うるせえよ。飛ばし子とその親父がいるみたいだから会いに行ったんだよ」

「ああ、同胞探訪したのね。どうだった?」

「酒酌み交わしたらポックリ行った」

「はい?」

「知らねえよ向こうが勝手に満足したんだよ」

「変なところで神様経験値出すなよ」

 

そのサイヤ人に何があったかは分からんけど、言い分見るにあれか。気を張り詰めてるところにバーダックが来て良い感じに精神の負の部分浄化されて、気が抜けたところをぽっくりか。

良いのか悪いのかよくわかんねえなこれ。

 

「それでキレたガキとちょっと戦って」

「何やってんの?」

「詫びもかねてしばらくそこにいるな」

「とりあえずお前に息子が増えたことはわかった」

 

良い年して弟が増えたことを報告される息子の気持ちにもなれ。

いや、むしろ息子の方もいい年してるからまだマシか……。

 

「とりあえず新しい息子さん待ってんなら帰りなよ」

「それはテメェを帰してからだ」

「へ?」

 

目の前にバーダックが手を差し出した。親指と中指で作られた輪っかが額を狙っていて、あっこれわかるめっちゃ痛いやつだ!

 

「ちょっ、まっ、おちつけおい」

「うるせえ」

「いっだあ!?」

 

+++++

 

ずさ、と荒野に着地した。

頭!頭割れてないよね!?

慌てて額を触って確認するとちょっと傷がついてた。俺が悟空にデコピンする時はちゃんと痛いだけに留めてるのに!

で、ここどこだ。

人気はない。気もない。とりあえず何ヶ所か見回ってみようと思い勢いよく立ち上がり歩き出そうとして。

 

「!?」

 

ぐわん、と世界が揺れて盛大に転んだ。目眩がひどい。あと体もだるい。地面が冷たくて気持ちいい。

やべえな、でもバランス取ればいける。

仙豆をもらっていたことを思い出して、齧る。体が回復したのを確認して、感覚を掴みながら立ち上がって辺りを見回した。

 

「旧ナメック星か」

 

そういや先代神様の出身地ここか。バーダックもその縁で神様パワー使って投げ出したのかもしれない。

ここから、瞬間移動で地球に帰るか。座標指定して、と。

 

「よし……うわっ」

 

座標指定若干ミスった。地球に帰ってきたは良いものの、若干上の方に投げ出されてしまい着地失敗。セルゲームの場所からもかなり離れてるしさあ。

あ、でも地球ちゃんとあるな。よし、セル退治は成功……。

 

「…………あ゛」

 

セルの気が戻ってきた。しかも瞬間移動会得済みで。

マジで!?あいつなんであの自爆で生きてるの悪運強くない!?

あ、でも俺の細胞取り込んでるな。よし死亡確定。あとは時間を稼げば良いのか。俺の仕事分野だなとりあえず乗り込むか。

 

「筋斗雲!っけほ」

 

よし、筋斗雲が来た。眠たい。

ん?眠たい?それよりセルだっつーのバーダックに会えて気が抜けたのか?

気合いを入れ直して、筋斗雲に乗り込んで飛んでいく。ある程度高度を保ちながら上から観察してると……。

 

「…………」

 

あ、セルのやつ瞬間移動に加えて臨気鎧装とクロックアップまで習得してる。そして未来悟飯もなんか超サイヤ人2に覚醒していて、パーフェクトセルvs二人の孫悟飯というトンデモマッチアップが成立してる。怖。

臨気鎧装の硬さとクロックアップ組み合わさったセルって、なんかこう、ゴキブリ的な感じがする。

いやまあ、つまり俺もゴキブリ的能力値という訳だけど。

 

「悟飯!耐えろ!」

「マレビトさん!?」

「にいちゃん!?」

「お前生きていたのか!!!」

「俺が何もせずただセルに吸収されて力を与えるだけだと思うか!」

「……?」

「どういう意味だ」

 

クロックアップを乱用するなら、すぐに限界値が訪れるはずだ。悟飯ならそこまで追い込める。

そうして観戦していると、突然セルが調子を崩した。やっぱり。

 

「体が重い……なんだこれは!貴様、私に何をした!?」

「俺はなにもしてないけど。強いていうなら最初から」

「なに……!?」

 

めっちゃ視線が刺さるな。ムシムシ。

 

「嫌気性症候群。気を生成できなくなる病だ。面白いのが、この病気は遺伝子疾患でな。俺の細胞を取り込んだのなら、逃げられないだろ」

 

事実、発症したしな。

 

「戦闘力に反比例するように生命エネルギーが作り出せなくなり、戦闘力一億を境としてゼロとなる。ガス欠だろ?それが覆せなくなるんだよ」

 

叫び出したいほど羨ましいだろ。お前を狙う二人のサイヤ人が生み出す莫大な生命エネルギーが。

 

「見境なく細胞食ってるから食あたりするんだ、ばーか」

 

筋斗雲に腰掛けて、膝の上に肘を乗せて、頬杖をつく。

眼下で強大なかめはめ波に抗う術を失ったセルが跡形もなく消失した。

で、だ。

何をどう説明しよう。




「ところであの地図ってなんの意味があるの?」
「ドラゴンボール」
「え?ドラゴンボールって神龍とポルンガ以外にいるんだ」
「ナメック星人さえいれば作れるだろうが」
「それはそうだった」
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