えーっと、とりあえずいろんな問題がひと段落したところで。
「全て説明しろ」
「はい」
inカメハウス。色んな人に注目という名の監視をされている。ちなみに俺がめっっちゃ眠いことを全力で主張したら椅子を貸してくれたけど、隣で未来悟飯が自主的に正座していた。
「先に言っておきますと、マレビトさんは今寝たら一ヶ月くらい起きません。そして、起きたらかなり体調が悪化しています」
「見てきたように言うなお前」
「見てるので」
「そりゃそうか」
お茶を濁してる時間がない。眠いのでさっさと終わらせよう。どーせ喋ったところで何が起きるわけでもないし。
「俺の事情は、肉体面と魂面の二つがある。まず魂面、稀人という存在から話す」
「オラはマレビトが何者でも別にいいんだけど、そっちから話すんか?」
「体調面のことを黙っていた理由でもあるからな。さて、まず俺はこの世界の出身じゃなくて、全く別の異世界からやってきた」
ここで異世界というものが、未来悟飯のやってきた未来世界や平行世界、別の宇宙なんかとは比べ物にならないくらい別の世界であることを熱弁する。半分くらいそこはどうでもいいっていう顔してるけど。
「それがどう問題なんだ」
「俺のいた世界で、この世界ってアニメとか漫画になってるんだよ」
「は?」
「アニメって、マレビトが昔作ってた」
「そう、あんな感じ。タイトルはドラゴンボール。主人公は孫悟空」
「オラ?」
「そう。まあぶっちゃけほぼ覚えてないんだが。熱心なファンでもなかったし。実際悟空に会うまでこの世界がドラゴンボールだってことも気付いてなかった」
日曜日の午前中にやってなければ普通に見なかったと思う。
まあ魂面での話はこれで終わりでいいか。そこまで深い話をするつもりもない。つーか深く掘り下げたらメンタルやられる。
「で、話は肉体面に移るけど。嫌気性症候群っていう、先天的に尻尾を持たないサイヤ人のみに発症する遺伝子疾患があるんだよ。症状はセルに言ったのと同じ。今は気を一切作れないから、元気玉の技術の亜種みたいなものでこう、ちょっとずつ気を集めて消費して生きてる」
「マレビトが筋斗雲を愛用するのもそれが理由か」
「そゆこと。そのレベルで節制しないと回んない」
「なぜもっと早く言わなかった?」
「そっすよ。マレビトさんも水くさいなあ」
「そうか?」
そもそも誰かに言うって発想からなかった。未来の俺も、バレたから共有してるってだけで自分から言うつもりは無かったんじゃないかなあ。
気づいたときからこうだから、これが特別である自覚がないというか。
それにまあ、ドラゴンボールと気づいたときから避けられない問題も見えてたし。
「で、俺が限界まで悟られないよう頑張ってた理由だけど、ここに俺がドラゴンボールのアニメを見てたってことに繋がってくる。俺が悟空を見て“ドラゴンボール”を思い出したように、ほとんど忘れてても全部忘れた訳じゃないんだよ」
「具体的に何を覚えていたんだ?」
「主人公の孫悟空。ボス勢……フリーザとかセルとか。ベジータも思い返せば知ってたかも?未来から来たイケメンと、人造人間。
そして、アニメってさ。始まりと終わりがあって、終わりがいるならラスボスもいるわけだけど。セル、ラスボスじゃないんだよ」
「つまり……セルより強い敵が現れるということか」
「そのとーり。そこまではなんとか頑張りたかったワケだ。まあ無理だったけどな。すまん、ギブアップ」
しん、と空間が静まりかえった。セルとの激闘が終わった直後にこれより上の敵が来ますって言われたらそりゃそうなる。
「そいつはいつやって来る?」
「さあ、忘れた」
でも確か悪い結末ではなかったし、じゃあなんとかなる。
というかしてくれ。
「まあまあ。マレビトの事情もわかったことじゃ。そろそろ休ませてやってもいいじゃろう」
「そうだな。それに、目標もできたしいいんじゃないか?」
「ああ。あの悟飯をさらに超えてやればいいんだろう」
「ふん、貴様なんぞに頼らずとも問題ない」
わあ、純血サイヤ人血の気多い。
だが今はこれ以上ないくらい心強い。あと眠たい。
悟飯もいるし、大丈夫か。
「未来でもマレビトさんの体調は同じようなものだったので、俺から状態の引き継ぎをしますよ。カルテは持ってきたんです」
「あら、準備いいじゃない」
「引き継ぎがスムーズ。すまん、寝る」
「ああ、休め」
「おやすみ」
「おやすみ〜」
ふー、と息を吐き切ると眠くなってきた。ベッドに移動するのも億劫だったので、背もたれに身体を預けて目を閉じる。
あー、やっとねれる。
+++++
目が覚めたら一ヶ月以上経過してた。未来悟飯は流石に帰っていて、俺は病院で寝転がってた。これ体力落ちてそう。
色々検査して、打つ手なしで退院。そりゃそうだ。大体この病気、治そうと研究されたことすらない気がする。アスラが生まれたの内戦真っ只中だし。そもそも試行錯誤するには患者の絶対数少なすぎる。そりゃドラゴンボールと神様も治せんわ。
迎えには雇用関係継続中の悟空がやってきた。俺の家もずっと掃除手入れしてくれてたらしい。ありがたい。
「マレビト、体どうだ?」
「まずだるい。あと、眩暈がひどいな。その時の体調にもよるけど、頑張らないと自力で立つのも辛い時がある」
「だからマレビト、これに乗ってるんか」
退院するときに車椅子に乗っているので、誰かに押してもらう必要ができた。悟空に迎えにきてもらったのはこの辺が理由だ。電動にしても良いんだけど、俺の家が山の中だからなあ。
「まあ、必要なときに戦闘には出れるから」
「出なくていいよ。マレビト、戦うのつれえんだろ」
「まあな」
「オラたちが頑張るから」
「そうかあ」
にしても悟空力強くていいな。人気のないところに移動してからサクッと瞬間移動。悟空が。家には瞬間移動できるようにラディッツが待機してた。この兄弟、雇ってたから俺の家把握してて楽だ。
ラディッツはピッコロと一緒に土木工事して手すりとか付けてたらしい。意外なところで気が回る。
ひと段落したところで、ラディッツは帰っていき、悟空と仕事の話をした。端的に言うとこれから仕事が介護メインになりかねないので、会社?都合で退職しないと言う話をだな。
「やだ」
「おい」
退職金出すし悪い話じゃないと思うんだけど。
「それに、退院までの間に話したんだけど、多分16号が住み込みでこっち来る。悟空と16号仲良くないじゃん。大変だと思うよ」
「でもやだ」
「おい」
こんなに我儘だったっけ?
そんな感じで押し切ることができず、じゃあ嫁から説得してもらおうとチチに電話した。
『マレビトさ、悟空さがなにかやらかしたけ?』
「いや別になにも」
『だったらいいべさ。おらだって悟空さには働いてほしいだ』
だめかー。こうなったからには最後の頼みの綱ブルマに電話した。
「孫くん?このままでいいじゃない。お金が問題なら私が持つわよ」
とりつく島もない。そんな感じでクビを切れず大人しく雇用契約は継続することに。
おかしいなあ、決定権俺にあるはずなんだけど。
そのあと、16号の引っ越してくる部屋を悟空に整理してもらってから、チチの持ってきたご飯を食べる。
寝る前の半分以下しか食べられなくてビビった。入院生活のブランクありきとはいえ、これは流石にやべえな。俺食料から微々たる気を取り込んでたんだけど。
……えっ。俺これで生きるの?やばくない?