まれびとの旅   作:サブレ.

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第七十話

未来悟飯のカルテ見るに、未来の俺も一応、戦闘以外では寝込んでいるか車椅子生活だったらしい。よかった、俺が特別ひ弱なワケじゃなさそうだ。いやだいぶ弱ってんだけど。

一回風邪拗らせた時に喀血して、一周回ってテンション上がったのは内緒である。

さて、やることは山積みだ。いわゆる終活というやつである。宇宙ふらふらしてる時はいつ野垂れ死ぬか分からなかったから、こうして呑気に死ぬ準備をしているというのもおかしな話だ。

とはいえ、法律的な云々はとっくに片付いているのであるが。となれば、やることは限られる。ペンを準備してノートを開いた。

 

+++++

 

ベジータが押しかけてきた。なんでさ。

 

「や、珍しいな。お茶とコーヒーどっちがいい」

「どちらでもいい」

「んじゃお茶な。16号、頼む」

「ああ」

 

ベジータがどっかりとソファーに腰掛ける。もらったお茶を飲みながら、わざわざ押しかけてきたベジータを存分に観察した。珍しいこともあるもんだ。

 

「で、なんか用?」

「……惑星ベジータの歴史を編纂しているとは本当か?」

「ああ、その話?ホントだけど。つっても聞き取り調査メインだし、歴史自体大雑把だよ」

「教えろ」

「家庭教師しろってか。不定期ならいいよ」

「それでいい」

 

体調の振れ幅が大きすぎて自分でも明日の状態が読めない。まあこの日!って決めた日に向けて数日かけて体調整えるくらいはできるんだけどさ。

思い立ったが吉日、早速ノートをコピーして渡す。自分用メモみたいなものだから解説とか茶々を入れながら。

 

「こうして見ると、面白いくらい破滅に向かってるよな」

「自業自得と言いたいのか」

「そっちよりは因果応報が近いかな」

 

必ずしも因果がめぐる訳じゃない。それでも、縁というものはある。良くも悪くも。

それを言い出したら、俺よりドラゴンボールに縁のあった奴なんていくらでもいただろうし、キリがないといえばそうだけど。

 

「貴様の記憶の、“ドラゴンボール”とやらの記録はないのか」

「言ったじゃん。忘れたって。そもそも俺、ドラゴンボールに特別な思い入れとかないし」

 

忘れたのだ。遠い昔の話。思い入れがあったのは日曜日の午前中、家族四人が揃っていたあの時間であって、テレビの中身ではなかった。

かめはめ波だって、親子の共通の話題で楽しいごっこ遊びだった。真剣に練習したこともあったけど、大きくなるにつれて記憶の片隅に埋れていくような、大切だけどいつか手放していく、そんな存在で。

 

「記録思い出したところで、なにが変わるわけでもないしな。それに七割くらい消化したもん」

 

覚えていることは少ないが、それでも悪い結末でなかったことだけは覚えている。バッドエンドだったらいわゆる“トラウマ”になっていただろうし。

 

「俺が手を出してきたことに意味があるのか無いのか。物語は良くなっているのか悪くなっているのか。なにもわからない。もしかしたら致命的な失敗を犯したのかもしれない。頑張って来たけど、ストーリーと何も変わっていないのかもしれない。

 だからまあ、覚えてないのと大して変わらないんだよ。俺がなにを思い出そうと頑張っても無意味」

 

ラスボスの存在を預言した分で元取れてんじゃないかな。

 

「マジで未来知りたかったらバーダックに聞いた方がいい」

「……いや、いい」

「そう言うと思った」

「ラディッツはこの事を知っているのか?」

「未来視?」

「違う。歴史だ」

「バーダックがどれだけ教えてるかによるな。超サイヤ人の定義とか条件について話したことはあるけど」

 

興味がない訳じゃないんだろうけど、多分その関心は実感が湧く範囲……父親の実体験で収まっているんじゃないかなあ。

あと、ラディッツは自分の罪はともかく、サイヤ人全体の罪を背負うつもりはさらさらない。バーダックも子供に自分の罪を渡すような奴じゃないし。

その辺あいつらドライだ。

 

「あいつは、フリーザ軍だった」

「言ってたな」

「脱走した。あいつと行動を共にしていたフリーザ軍は全滅し、唯一残ったカメラには成人したサイヤ人と思われる男が映っていた。下級戦士は顔のタイプが少ないから、誰かを特定するに至らなかった」

「それは初耳だ」

「サイヤ人でありながら、屈辱を味わうことなく逃げ出しておきながら……」

 

ふむ、屈辱か。確かに不満がなければ裏切ろうとも思わないよな。

最初から飛ばし子という手段でコミュニティからはずれたカカロットやバーダックにできた新しい息子とラディッツとでは違うのだろう。

 

「直接言えばいいのに」

「何か言ったか」

 

無自覚なのか?

 

「別に。あー、ノートは今のところここまで。また新しくまとめたら連絡しようか」

「ああ」

 

そうしてベジータは帰って行った。窓から。

玄関から出てけよ。

 

+++++

 

「うげ」

「人を見るなりうげとはなんだ」

 

季節の変わり目で風邪拗らせて入院した。ので、見舞いに悟空がやって来たが、俺の腕に刺さった点滴見てあげた悲鳴に思わず突っ込む。失礼だなこいつ。

 

「えー。だって痛そうじゃんか」

「慣れだよこんなもん。てかそんなに注射苦手だったっけ?」

 

先端恐怖症……ではないよなあ。単に苦手なだけか。ある意味予想通りというか、イメージ通りというか。

 

「これ、持ってきたぞ」

「おーありがと」

 

悟空に配達を依頼していた剣が手元にやってきた。そうそうこれ!ライナスの毛布じゃないけど、これが手元にあると安心感が違うんだよ!

 

「お見舞いのお菓子あるけど食べるか。冷蔵庫にゼリー入ってるから」

「いやいいよ」

「む、そうか。お茶入れてもらってもいい?」

「うん」

 

悟空が入れてくれたお茶を飲んでひと段落。ふー、やっぱり熱いお茶は美味しいなあ。

 

「今度さ、俺がスポンサーになって武闘大会開こうかなーって思ってんだけど来る?」

「!それいいな!」

「俺だって久々に武闘会見たいし?それにほら、サタンにも職権濫用して会えるじゃん」

「さ、サタンか」

「いやー呼ばないわけにはいかないじゃん。あ、もちろん解説役とか振っておくから」

 

流石にあの猛者の中にサタンを放り込むのは気が引けると言うかなんというか。

 

「結局、マレビトは一回も出なかったな」

「見てるだけで楽しいしな。それにほら、出場の方が好きだったら、今この状況は結構悔しくて仕方ないと思うんだ。だからこれで良かったんだよ」

 

俺の趣味がボードゲームっていうのも、こうしてみると最適解だったのかもしれない。

病院のベッドの上でもできるし。暇なんだよ入院って。

 

「オラ、マレビトのやつの何が楽しいのかよくわかんねえや」

「言うなあ。お宅の次男坊くんはベジータとブルマのところの長男坊くんと一緒によく遊んでるけど」

「へえっ、そうなんか」

 

ただ、面白さがよくわかんない悟空の方が子供二人より遥かにボードゲーム強いんだけどな。そりゃ十数年付き合わせた訳だし、つまり悟空のボードゲーム歴の方が子供たちの人生より長いんだし。

 

「話を戻して。武闘大会は来年くらいに開きたいなーって思ってる。賞金たくさん用意するから楽しみにしてろよ」

「マレビトも無茶すんなよ」

「生きてるだけで無茶してるようなもんだしなあ」

「じゃあやらなくていいよ」

「やだやる。だって悟空の優勝もっかい見たいんだよ」

 

 

そうして一年後開かれた大会では、並み居る強敵を打ち破って悟空が見事に優勝を果たした。全試合をサタンと並んで特等席で、それはそれは楽しく観戦した。ひっさびさにテンション上がった。

ちなみに決勝は悟飯対悟空の親子対決。悟飯は勉強メインにシフトしつつも超2形態を保っていたけど、悟空の体力消耗度外視強化形態の超サイヤ人3に一歩及ばず敗北してた。

お前そんな大人気ない……そんなに悟飯に負けたの悔しかったのか……。




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