まれびとの旅   作:サブレ.

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第七十六話

「臨気鎧装───clock up」

 

気でできた鎧を身にまとい、そのまますぐに加速した世界に乗り込む。それでも基礎的な戦闘力の差は侮り難い差がある。

故に、ブウに対して挑みはしない。やることは挑発たった一つ。邪魔をする、しかし戦わずに逃げる。

 

「オマエ、邪魔だ!」

「そりゃあ結構な感想だ。俺はお前の邪魔をしているからな。だがな?俺がお前を邪魔しているのはお前のせいだぞ。お前が最初の約束を破って暴れ出すから俺は仕方なくお前の邪魔をしているんだ。分かっているか?」

 

猫騙し、フェイント、弾幕と、苛立ちを増幅させるだけの技で時間を稼ぐ。それと同時に、言外に、おとなしくすればこちらも動かないと告げてやる。

ブウはしばし苛立っていたけど、何かを思いついたのかニヤリと笑った。良いこと考えたって顔だ。

乗ってみるか。

あえて動きを緩めて、クロックアップの連続使用の反動が来たように見せかけて大きな隙を作ってやる。瞬間移動でいつでも離脱できるよう準備だけは万全に。

予想通り、ブウは俺の背後を取ったかと思うと左腕の可動域を超える勢いで捻じ曲げて拘束にかかった。

 

「お前は人質にしてやる」

「………………単純思考め」

 

ブウが首を傾げるより早く、自分の腕を“物体”として認識する。それから瞬間移動を行えば、左腕はブウに掴まれたまま引きちぎられ、片腕の俺があいつの向こう側に現れる。

 

「バカか?よく聞けよ魔人ブウ。お前に人質の使い方を教えたのは俺だ。侮るなよ。お前程度の浅知恵を俺が思いつけないとでも思ったか」

 

純粋悪では向こうが上だ。だが、悪知恵についてはブウよりも上だと自負している。

 

「悔しいか?腹立たしいか?なら来いよ。鬼さんこちら、手のなる方へ───」

 

あっ、俺今、手叩けないじゃん。とんだ自虐ネタだよ。

ブウが俺の左腕を握りつぶしたその瞬間、背後に守っていた神殿から大音がした。そこから飛び出してきた一つの影が超加速して、ブウの横っ面を殴り飛ばす。

この加速には覚えがある。しかし、客観的に見るのは初めてだ。

 

「…………クロックアップ」

 

クロックアップの習得方法は単純だ。習得できるまで精神と時の部屋を出入りすれば良い。コスパ悪いから誰もやらなかったけど。

でも今、それを習得して駆けつけた奴がいる。なんだか、すごくテンションが上がって、口角が笑みを描く。

目の前の、スパークを纏う長髪。がっしりとした体格が俺を庇うように立っている。これで喜ぶなって方が無理だろ!

 

「〜〜〜っ!最高だ、ラディッツ!!!」

 

超サイヤ人3にクロックアップの合わせ技!ロマンの塊としか言いようがない!!!

 

「ピッコロ!マレビトを下がらせとけ!」

「言われなくても分かっている!」

 

状況を一瞬忘れてただのファンになってたら、胴体に腕を回されてピッコロに回収された。すまん。

でもこれでバトンタッチってことね、よっしゃ仕事終わり!

 

「ごめんピッコロ!俺もうだいぶ限界だわ!」

「知っているから大人しくしていろ」

「おう!」

 

あっダメだ、高揚が止まらねえ。テンションめっちゃ高い自覚があるけどワクワクしてたまらない。

 

「なあなあ!ピッコロも今度クロックアップ覚えないか!?」

「断る!というかそんな事言っている場合か!」

「場合じゃない!まず神殿に残ってる奴全員ここから退避!ラディッツとブウの戦闘に巻き込まれるぞ!最優先はデンデ、ドラゴンボールとドラゴンレーダー死守!それぞれトランクスと悟天に渡して先に出せ!

大人たちは各々で避難しろ!ピッコロはチビに着いてけ!必要なら武闘会会場に16号いるからヘルプ頼んで良いからな!

 あとピッコロ、俺その辺におろせ。ブウを留めておける程度に意識には残ってるはずだ」

 

ざっくりした指示を出したら、ピッコロは俺を抱え直した。おい。

 

「降ろせ言ったじゃん」

「お前が降りたところで足手纏いだ、おとなしくしていろ」

「へーい」

 

頭上ではラディッツとブウがものすごいスピードで激突している。ここまで爆風が届くってやっぱすごいな。心配なのは体力か。確か3ってかなり消耗激しかったはず。

……と、なると。この状態のラディッツでさえ“意図した前座”の可能性が高いな。実際悟空ベジータ悟飯がどこにいるのか分からない訳だし。

 

「まだあるよな、隠し球」

「お前は、どこまで把握してるんだ」

「いやなにも。全部ただの推測と咄嗟の判断」

「…………心強いな」

「そーかい」

 

腕もげた死にかけの心強さとかそこまでな気もするけどな。

ピッコロの腕の中で体勢を整える。そのままピッコロは空を飛んで、神殿から離れた場所に移動した。そこにはデンデ、トランクス、悟天が揃っていた。そして、俺たちの気を察知したのか16号がサタンと犬を連れて飛んできた。

例の奴らは置いてきたな。まあ聖人君子でもないし妥当か。

 

「よ、久しぶり」

「16号、マレビトを頼む」

「任された」

「俺は荷物か?」

 

受け渡されて次は16号の背中に乗る。せっかくだエネルギーいただこう。対魔人ブウ戦でほとんど使い切ってすっからかんなんだよ。

 

「体調はどうだ」

「分からん」

「なに?」

「ラディッツの超サイヤ人3&クロックアップ見てテンション上がって脳内麻薬ドバドバ出たせいで正確な状態判断できてないんだよ」

「……何をやってるんだお前は」

「なんかすまん」

 

でも不可抗力だと思うんだ。

 

「テンション馬鹿みたいに下がっているより良いって思って」

「まあそうだが」

「なあ、マレビトさん。これからどうすんだ?」

 

チビことトランクスの疑問に、俺も首を捻って思考する。

どうするって言われてもなあ。

 

「はっきり言ってさ、魔人ブウどうにかするだけなら俺らが動く必要ってまるでない」

「え、そうなの?」

「先先代神か」

「うん。少なくともあいつは、地球含めて三ヶ所のドラゴンボールを把握してるし、あの魔人ブウよりも強い。少なくとも宇宙全滅はあり得ない」

 

世界の隙間で会ったから断言できる。先代神の記憶を有しているピッコロもそこは納得しているようだ。

 

「だけどさ、このまま好き勝手やらせるの、腹立たね?」

「うん」

「まあな」

 

気を読む。ラディッツの気は消えた。エネルギーを消耗し尽くして隠れているか、死んだか、それとも……吸収されたか。

そして今は強さを手に入れた悟飯が戦っている。

16号の背中から、チビ二人を見下ろした。それから、デンデに視線をやる。

 

「一矢報いたいか?」

 

こくりと二人が頷いた。

 

「じゃあ、やってみるか。…………デンデ、先先代神から預かり物とか貰ってない?」

 

あの未来視で魔人ブウ復活がまるで読めてないってことはないだろ。未来悟飯に対してドラゴンボールのヒントまで残したような奴だ。

案の定デンデは頷いて、ポケットからピアスを二つ取り出した。受け取って観察すると、確かにそれは使い方次第で切り札になりうる物だった。

 

「へえ、ポタラか。……流石バーダック、どっからカツアゲしてきたんだか」

 

あいつの交流関係どうなってたのかちょっと聞いてみたいんだけど。真面目に。

 

「トランクス、悟天。使ってみるか。これを使えば合体できて、今以上の力が手に入る。分離はできないってことになってるが、まあドラゴンボールでいけるだろ多分」

「ほんと!?」

「ブウには勝てないけどな」

「ええ!?」

「変身する意味ないじゃん!」

「無いぞ。闇雲に向かったところで負けて終わる」

「つまり、マレビトは負けて終わらない手段を考えているということか」

「まあな」

 

気の充電が終わったので背中から降りる。まだ小さい子供の前にしゃがみ込んで目線を合わせて、ポタラを目の前に突きつけた。

 

「一寸法師になる気はあるか?」




ポタラ合体したトランクス悟天って名前何になるんでしょうね
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